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HAPS航行の安全を支える運航管制技術の展望

#HAPS #運航管制 #航空交通管理 #飛行シミュレーション

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1. HAPS航行の安全を支える技術要素

ソフトバンクでは、成層圏通信プラットフォーム(HAPS)からの通信サービス提供に向けて、様々な技術開発を行っています。本記事では、「HAPS航行の安全」を支える技術要素について説明していきます。

HAPS航行の安全を支える要素は大きく分けて「機体システム」「操縦者」「運航管制」の3つから成り立っています。ここで「運航管制」とは航行状況の監視や機体の入れ替え、問題発生時の機体の再配置などを行うことを指します。安定した通信サービスを継続して提供するために、通信サービス提供者自身がこの「運航管制」を主体的に行い、HAPS運用全体の安全を担保することが重要になります。

HAPS運行管制技術の位置づけ | HAPS航行の安全を支える運航管制技術の展望

2. HAPSの運航管制における課題

通常の旅客機では、飛行時間は24時間以内で、操縦者が1名以上搭乗して運航します。これに対して、数カ月の長期飛行をするHAPSは、操縦者が地上にいるリモート操縦で運航します。また、操縦は事業性の観点から少数の操縦者で多数の機体を管理する「M:N操縦」を目標としています。さらに、成層圏への上昇・降下時にはジェット機が頻繁に行き交う空域を抜けて運航する必要があります。

HAPSオペレーションの全体像 | HAPS航行の安全を支える運航管制技術の展望

運航管制には様々な観点での検討が必要です。今回は、以下4つの主要な課題を説明します。

課題概要

①空域監視

ドローンやVFR機(有視界飛行方式)、航空管制下の航空機、ビジネスジェット等との安全な離隔距離の確保

②運航計画管理

気象やエネルギーバランスを考慮した運航計画の予測と最適化

③成層圏管制

成層圏を利用する各社が協調して運航データの共有を行うアーキテクチャへの適合

④制度整備/適応

現地の航空当局などから事業許可を得て、監視や遠隔操縦などを行うための基準の策定

HAPS運行管制の主な課題 | HAPS航行の安全を支える運航管制技術の展望

3. HAPSオペレーションのステップアップ

こういった課題を解決していくためには、サービス拡大期のオペレーション像に向けて、オペレーション全体のステップアップを図りながら着実に進めていかなければなりません。

そのため、まずは1機につき1人の操縦者が、空域を広く確保した状態で飛行状況を監視しながら航行させるオペレーションの確立から行っていきます。その後、運航管制のさらなる効率化に向け、M:N監視や航空管制機関との連携、シミュレーションによる運航計画の予測と最適化など、より難易度の高いオペレーションを可能とする研究開発を行っていきます。

HAPS運行管制のステップアップイメージ | HAPS航行の安全を支える運航管制技術の展望
  • ※1 FIR:世界の空の航空交通が円滑で安全な流れを促進できるように、航空機の航行に必要な各種情報の提供と捜索救難活動が行われる空域のこと
  • ※2 C2リンク:HAPS操縦用のコマンドアンドコントロール通信

4. HAPSの航空交通管理分野における研究開発

現在ソフトバンクは、国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 (以下、「電子航法研究所」) と、HAPSの航空交通管理分野における共同研究契約を締結しています。

HAPSが成層圏に上昇するまでには、既存の様々な航空交通が行き来する空域を通過しなくてはなりません。
既存の航空交通と親和しながらHAPS航行の安全とサービスレベルを担保するためには、どのような空域を選定して飛行計画を立てるのかが極めて重要です。

ソフトバンクがこれまでの実証で培ってきたHAPS機体の諸元データ及び気象データなどから飛行シミュレーションを行い、航行に必要な領域を算出します。さらに、季節や時間帯、高度帯などで様々な特徴がある既存の航空交通環境のシミュレーションを行い、航行に必要な領域を確保できる空域候補を算出することによって、最適な飛行計画を立てることが可能となります。

このように、ソフトバンクのHAPSにおけるノウハウと電子航法研究所の航空交通管理分野に対する分析能力を掛け合わせることによって、HAPSの当該分野における課題を解決していきます。

HAPSの航空交通管理分野における研究開発 | HAPS航行の安全を支える運航管制技術の展望

今後HAPSは、通信サービス以外にも災害等の地表状況の監視や環境モニタリングなどでの活用が見込まれています。
HAPSプロジェクトを牽引してきたソフトバンクは、HAPS航行の安全をリードするべく、運航管制技術に係る研究開発を推進していきます。

Research Areas
研究概要