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- 2024.02.14
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ACTIVATORS TALK【戦略室 室⻑編】「個」の力を最大化させて、アンワイアード社会へ
#その他 #社員紹介 #ActivatorsTalk
<プロフィール>

基盤技術からソフトウェアまで。幅広い研究で「便利な明日」をつくる

―先端技術研究所では「アンワイアード」をテーマに、社会実装をゴールとした研究開発を行っています。具体的なビジョンについて教えてください。
「Unwired(アンワイアード)」は直訳すると「無線」です。しかし、先端技術研究所が目指すアンワイアード社会とは、ケーブルだけでなく、あらゆる物理的・地理的な制約から解放された新しい世界を指します。たとえば、ウェブサービスやクラウドの進化・普及によって、さまざまな場所でテレワークが実現可能になり、私たちはコンピューターの使い方から解放されました。これも1つのアンワイアード社会の実現と言えるでしょう。
技術の進化は、生活や技術の使い方に少しずつ変化を与えていきます。暮らしが一気に変わるわけではないので、人々はその変化に気づかないかもしれません。しかし、10年前と今では、デジタル化による著しい環境の変化を誰もが自覚できるはずです。今後はコンピューターやスマートフォンだけでなく、多くの機器がネットワークに接続し、デジタル情報のやりとりが飛躍的に増加。AI技術によるシームレスな情報処理によって、一般的にさまざまなデジタル情報サービスを利用する時代が到来します。先端技術研究所は、この先のアンワイアード社会の実現に向けた基盤づくりに取り組んでいます。
―アンワイアード社会に向け、具体的にどのような取り組み行っていますか?
ソフトバンクは携帯通信事業者なので、通信技術に関する研究・開発を推し進めています。一方、それだけではアンワイアード社会の実現はできません。計算基盤や電力基盤といった基盤づくりへの注力が必要不可欠です。たとえば、AIチャットなどのアプリケーションには大量の計算資源が必要になります。そのため、先端技術研究所では地域ごとに計算基盤を配置し、全国を網羅する高速ネットワークと組み合わせて、理想的な基盤の構築を目指しています。
また、昨今のソフトウェアの進化は目覚ましく、それまでハードウェアによって制限されていたサービスが、ソフトウェアの進化で場所や機材を選ばず運用可能になりました。今後もソフトウェアの研究・開発は重視していきます。基盤技術からソフトウェアに至るまで幅広い分野を研究領域とし、昨日よりも新しい、昨日よりもおもしろいを目標に、「便利な明日」をつくるための取り組みを行っています。

―先端技術研究所は研究・開発組織として、どのような特徴があるのでしょうか?
先端技術研究所では、「情報革命で人々を幸せに」というソフトバンクの企業理念のもと、新しい技術の社会実装に向けた研究・開発に励んでいます。国内で4社しかない携帯通信事業者としての利点を活かし、他業種では実現し難いサービスや技術の実現に向けた研究・開発に注力している点が大きな特徴です。
現在、早期社会実装に向け、3年や5年といった短いスパンでプロジェクトを見直す体制をとっています。研究というのは成功するかどうかが確実ではない場合もあり、万が一失敗した場合、研究期間が長いほど多くの手戻りが発生してしまいます。そのため、先端技術研究所では短いサイクルでプロジェクトを回し、企業や大学などさまざまなパートナーと連携しながら、いち早いサービスの実現や社会実装を目指しています。
―島さんが所属している戦略室はどのようなことを行っているのでしょうか?
先端技術研究所では、Beyond 5G/6Gに向けた次世代ネットワークや自動運転、次世代電池、成層圏通信プラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」など、多岐に渡る領域の研究・開発を行っています。基盤技術からサービスまで、すべてに共通した目標は企業理念の実現です。そのために今やるべきことを見極めながら、優先順位を変えたり、網羅性を確認したりするのが戦略室の役目です。各部署の部長をはじめ、それぞれの技術を熟知したActivatorsとともに議論しながら戦略を練っています。
―戦略室の活動において、どのような苦労や難しさがありますか?
研究・開発する中で、何が正解かわからない。それは当然、すべての研究者同様、私も一緒です。そのため、「現時点でこれは正しいのか」「目指す未来は間違ってないか」を常に考え、確認しながら戦略室の活動を進めています。1人で考えていてはなかなか前に進みません。だから優秀なActivatorsと議論し、ときには反対の意見を聞いて検証したりもします。研究の結果がわかるのは数年先なので、それまでの間、正解からずれないように方向性を見極めることが大切。なかなか一筋縄ではいきませんが、やりがいは大きいですね。
先端事業企画部のサポートを受けながら、技術の社会実装を目指せる場所
―島さんは2022年にソフトバンクに入社しましたが、それ以前のキャリアについて教えていただけますか?
大学卒業後、電気メーカーに就職し、今で言う情報家電の研究開発に5年ほど携わりました。その後、インターネットの通信会社に転職し、インターネットプロトコルという通信規約の研究開発や実装を経験。また、インターネット技術の標準化を推進する任意団体の「IETF」に参加し、技術仕様の議論や提案も行っていました。
―先端技術研究所に入って驚いたことはありますか?
まず驚いたのは、個性豊かなタレントを持った人がたくさんいることです。いわゆる研究者だけでなく、サービスの運用や現場の作業などの経験が豊富な人もたくさんいます。研究室しか知らない人にとって、彼らの知識や経験は得難いものです。また、大学院で研究の基礎的な経験を積んだ新たなメンバーも増えています。彼らがロケットスタート的に活躍し、知識や経験を与えてくれることも組織の活性化につながっています。

―島さん自身もそういったメンバーから刺激を受けているのでしょうか?
もちろん、日々たくさんの刺激を受けています。Activatorsがやっていることはすべて興味がありますし、もっともっと話を聞きたいですね。仕事柄マネジメントに時間を割かなければいけないため、十分な時間を取ることは難しいですが、可能な限りミーティングなどに参加し知見を深めています。
―組織全体を把握している島さんから見た先端技術研究所はどんな場所ですか?
なかなか難しい質問ですね……。先端技術研究所に限った話ではないですが、「やりたいと思ったことの筋を通せば実現できる場所」だと思います。筋を通すためにはさまざまなハードルがありますが、上層部にもエンジニア的なバックグラウンドを持ち合わせている人が多いので、共感を得て必要性を理解してもらえることは多いかと思います。
もっとも、企業としては技術開発だけでなく、新しい価値を生み出すことが大切です。その点、先端技術研究所にはサービス化や社会実装を進めるためのサポート部隊として、先端事業企画部という心強い味方がいます。私たち技術者では考えが及ばないようなビジネス的な意見、社会に普及させるための方法などを提案してくれる。こういった支えのもとで研究・開発できるというのはとても心強いです。
―室長としてActivatorsに思うことや期待はありますか?
Activatorsはクセが強い人が多いと感じています(笑)。尖っているとも言えますが、研究者やエンジニアにとっては大事な要素。専門の領域やテーマに関しては人並み以上の集中力で研究に向かい、物事をつぶさに見ることができますから。その反面、周辺のことはたまに見落としてしまうこともあるので、日頃から視野を広げるよう意識しておくといいかなと思います。
たとえば、何かを提案するとき、自分が思うベストのソリューションだけを持ってくるケースが一般的ですが、考える過程でさまざまなオプションを検討したはず。最終的に選ばれなかった数々のオプションの可能性をすべてゼロだと決めつけず、可能性のあるものは提案の1つに加えておくと、ベストなものが頓挫したときにプランB、プランCと試すことができます。このように柔軟性を高めるとより良い活動につながると思います。

―島さんがActivatorsとコミュニケーションを取るために意識していることはありますか?
どんな場面でもActivatorsから説明を受けたら、必ずコメントを残すようにしています。自分の発言に反応がなかったら単純に寂しいじゃないですか(笑)。もちろん、もっと良いプランはないのか、別の選択肢を考えたのかといった確認のためでもありますが。私のコメントによってしゅんとならないように、できるだけモチベーションが上がるような言葉選びを心がけています。なかなか難しいですけど。
Activatorsとして「次の未来をつくった」と誇れる活動を

2023年10月に開催された「ギジュツノチカラ in SoftBank World 2023」で、島さんは先端技術研究所の取り組みについての講演を行った
―アンワイアード社会の実現に向けた戦略を進める上で、先端技術研究所ではどういった価値観を共有していますか?
研究・開発というのは、これまでになかったものをつくり出すことです。 その価値について、研究員自身はもちろん理解していますが、他の人に理解されないことも多い。なかでも、後々になって必要となる技術の価値を現時点で理解してもらうことはとても難しいわけです。そうした困難な中でも、自分が正しい、価値があると思うことはきちんと主張しながら研究・開発を続けていってほしいと思っています。研究・開発には1人で実現できないことが多く、場合によっては会社全体のリソースを使っても難しいこともあるかもしれません。そんなときは頼れる仲間をはじめ、他の企業や学校といったパートナーの協力を仰ぎ、研究・開発を進めることが理想です。他の企業は競争相手ではありますが、社会を良くしたいという志は同じです。そのときどきで手を取り合い、連携していくことが社会のためには必要だと思っています。
―先端技術研究所をさらに飛躍させるために、今、必要なことは何でしょうか?
Activatorsを増やし、先端技術研究所の規模をより大きくしていきたいと考えています。「人数は力」と言うように、リソースが多いとできることが増えていきますから。戦略室において優先度を検討するときに、人数が多ければ優先度を下げずに済んだかもしれない研究・開発もあります。そういった機会損失を減らしていけるようにしていきたいですね。
また、忙しいことを重々承知の上であえてActivatorsに伝えたいのは、自分が楽しいと思う取り組みをあきらめないで継続してほしいということです。先端技術研究所には、直近の成果に結び付かずとも、将来芽が出る可能性がある予備研究を支援する制度がありますので、最大限活用して取り組んでいただきたいですね。将来的に会社にとって大きな価値となるだけでなく、個人にとっても技術の向上につながるはず。ぜひ、いろいろなことに挑戦してほしいと思っています。
―アンワイアード社会が実現したら、どんないいことが起こるのでしょうか?
アンワイアード社会では、世界のすべての人やモノが情報ネットワークで接続され、必要な情報が適切なかたちで処理されて、使いたい人に迅速に届く。また、人間だけでなく、ロボットや自動運転車などに搭載されたAIが自ら情報を活用することが当たり前になるでしょう。それにより、知識レベルや技術レベルに関わらず、お年寄りや外国人など誰もが良いデジタルサービスを享受できる理想的な情報社会が実現するのではないかと思っています。
研究者やエンジニアには幼い頃にSF小説に親しんでいる人が多いですが、昔のSF小説に書いてあった「未来の技術」が次々と実現しています。要素技術もない時点で「未来の技術」を生み出したSF作家の想像力には頭が下がります。私たちもそのクリエイティビティを見習っていきたいですね。

―Activatorsに欠かせない要素は何でしょうか?
常に問題意識を持つことです。「何か改善できることはないか」と意識しながら生活していくことが大事だと思います。今が完璧な世界だと思ってしまうと、技術の発展はなくなってしまいます。もともと問題意識を持ったActivatorsは多いと思いますが、専門の領域外にも興味を持ち続け、見つけた課題をメンバー間で共有していくことがさらなる発展につながると思います。
―Activatorsの1人である島さんのアンワイアード社会実現に向けた意気込みをお聞かせください。
35年ほど前、私がインターネットについて研究していた大学生の頃、インターネットプロトコルが普及し始めました。大学のコンピューターから、今で言う掲示板にアクセスし世界の学術的な情報に触れ、感動したことを鮮明に覚えています。その後、通信技術やデバイスの進化によって、情報量もダイバーシティも飛躍的に拡大。今は誰もがスマホを活用し、世界中の情報を手に入れられる時代になりました。これから先、スマホを超えた新しいデバイスを使って情報をやりとりする世界が訪れるでしょう。未来に向けた最初の1歩となる革新的な技術は、先端技術研究所でありソフトバンクが手がけたい。そうした思いを胸に、先端技術研究所のActivatorsと切磋琢磨しながら活動を続けていきたいと思います。
【コラム】理想のActivatorsとは?
―社会を駆動させる活性因子として、世の中が前進するような研究・開発を行っているActivators。島さんが思う、Activatorsとしての理想の姿とは?

「自分の技術で世界が変わったと言える技術者」です。自分がつくり上げた技術をサービス化できるのは、先端技術研究所で働く醍醐味の1つです。そうした環境的な利点を活かして、「私が次の未来をつくった」と誇れる活動をしてほしいなと思います。Activatorsはみなさん優秀なので、きっとできると期待しています。