ソフトバンクが導く6G時代:アンワイアード社会への革新

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1. 6Gとアンワイアード社会基盤

6Gという言葉を聞くと高度な通信技術の話を連想しがちですが、私たちはもう少し広い意味で6Gを捉えています。通信技術はもちろん必要ですが、私たちの目的はデータをやりとりすることではなく、そこから得られるサービス、少し抽象的に表現すれば何らかの体験を得ることではないでしょうか。

6Gが実現するのは、より高速で効率的な通信だけではありません。それは可能性の境界を押し広げ、新しいライフスタイルに合わせた体験を届けるために必要な要素の一つです。私たちは、6Gを単なるデータ伝送の機能としてではなく、社会の未来を形成する多様なサービスや体験を可能にする基盤であると考えています。先端技術研究所では、現在の技術の制約から解き放たれた未来のデジタル社会をアンワイアード社会と定義づけ、その実現のための研究開発を進めています。

アンワイアード社会基盤は三つの要素から構成されます。一つ目は通信基盤です。デジタル社会において情報をやりとりするための基盤は欠かすことができません。二つ目はデータ、すなわち情報そのものです。私たちが活用するデータは指数関数的に増えており、年間データ生成量はゼタバイトの規模に達しているという報告もあります。人間だけが情報を生み出す時代は終わり、センサーやロボットなどのIoT機器が生み出す情報、またそれらの情報を基に、AIなどが人間に変わりさまざまな付加情報を生み出す時代となりました。それらのデータを適切に管理・活用し、新しいサービスを作っていく必要があります。三つ目は、そのデータを処理する計算基盤です。増え続けるデータをどう処理するのか、どこで処理するのか、あらゆる過程に計算機が必要になります。この三つの要素をバランスよく組み合わせ、私たちの生活がより豊かになる社会を構築するための仕組みがアンワイアード社会基盤です。

6Gとアンワイアード社会基盤 | 6Gが支えるデジタル社会

もちろん、前述の三つの要素は、これまでも存在していたものですし、現在でも組み合わせて利用されているものです。では未来のデジタル社会基盤と、今のそれとで何が異なるのでしょうか。私たちは、要素技術の品質と実現される機能の連携レベルが飛躍的に向上する点がその答えだと考えています。

例えば、世界中から個人がオンラインでライブビデオを配信するといったサービスは10年前には実現できませんでした。そもそも技術的な制限によって実現できないと思い込んでいた、と言うのが正しいかもしれません。しかしながら、技術は発展し、通信帯域、動画コーデック、サービスエリア、カメラやスマートフォンの発展などが複合した結果、新しいサービスが誕生しました。これからも同様のことが起きるでしょう。今私たちに想像できないサービスも、ボトムアップ的に進んでいく要素技術と、クリエーターの想像力によって生み出されます。


私たちは将来のみなさんの想像力に必要になるだろうアンワイアード社会基盤の構築を目指しています。一つ一つの要素技術を洗練し、技術が想像力の足枷にならない世界を作ります。

2. 6Gとアンワイアード社会の実現に向けて

新たなサービスを創出する要素技術とはなんでしょうか。個々の要素技術の革新はもちろん必要ですが、これまでとは異なり、何か一つの要素技術の高度化が新しいサービスの実現に直結することは少なくなっていきます。

今までと変わらず、これからも重要な技術になるのは通信の高度化です。大容量通信が実現したことで、私たちは映像や音楽をシームレスに楽しむことができるようになりました。しかしながら、例えば遠隔会議などを利用している状況で、やはり直接面と向かって話している時は違う、さまざまな違和感を覚えている方も多いのではないでしょうか。この問題の原因として、遅延の問題、画像のデータ処理方法や表示デバイスの制限、映像や音響以外の感覚の欠落など、さまざまな理由が考えられます。単に通信品質を上げただけでは解決しない、複雑な領域に達しています。

計算資源の分散化

これから現れるサービスに求められる条件を予測するのは簡単ではありません。しかしながら、今の要素技術を組み合わせることでより柔軟性の高いサービスの下地を作ることは可能です。そのための一つとして、私たちが注力していることの一つが計算資源の分散化です。先ほど挙げた遅延の問題は、物理的な距離の影響を大きく受けています。遅延を短くするためには、距離を短くする必要があります。エッジデータセンターのような形で計算資源をさまざまな場所に分散配置し、通信端末とサービスの場所を近づけることで問題の一部が解決できます。計算資源を分散配置することで、サービスの構築方法にも柔軟性を持たせることができます。今は大規模なデータセンターを構築して、あらゆるサービスを集約して運用する形が一般的ですが、必ずしも全てのデータや処理を中央に集める必要はありません。全国に計算基盤が分散配置してあれば、手元のデータを近傍のデータセンターで処理することができるようになるでしょう。大規模データセンターの課題の一つに巨大な電力消費が挙げられますが、地域分散が進むことで電力基盤のより効率的な運用も可能になります。

計算資源の分散化 | 6Gが支えるデジタル社会

計算資源の分散配置と言葉で書けば簡単ですが、その実現にはさまざまな技術的な課題が考えられます。分散された基盤をどう連携させ管理するのか、分散データセンター間の通信ネットワークをどう設計すべきか、障害が発生したときに影響を抑えるための技術は何か、大規模データセンターと比較したときにコストメリットはあるのか、などなど、単純な課題ばかりではありません。分散計算を実現するためには、光ネットワークなどの広域高速通信、HAPSや衛星通信などの非地上系通信(NTN : Non-Terrestrial Network)、海底ケーブルなどの冗長回線、仮想化などの計算資源管理技術、耐障害性に優れたネットワークプロトコル技術など、複合的な技術開発が必要になります。

今、AIの普及によって計算資源の需要が拡大しています。今後も新しい技術の出現によってより大量の計算資源が必要になっていくでしょう。古典計算機とは異なる技術で社会問題を解決する量子計算機の実用化も進みつつあります。少数の大規模データセンターにデータを集約して処理する時代は終わりを迎えています。必要な人にいつでも潤沢な計算資源を提供できる基盤が必要です。

すべてをつなぐ通信技術

計算資源と同時に通信の革新も必要です。通信速度はこれからも向上していくでしょう。現在使われている周波数に加え、センチメートル波やテラヘルツ波、光などを活用し、より柔軟で高速な通信エリアを構築できるようになります。計算資源と同様、通信技術にも仮想化の波が訪れます。ソフトウェア処理で通信をアップグレードする世界、あらゆる場所にいつでも通信サービスを構築できる世界が必要です。先に述べた分散計算基盤はこうした通信の新しい要求にも対応します。

また、通信は人間だけが使うものではなくなっていきます。センサーやロボット、ドローンなど、今後は私たちが直接操作する端末以外の通信が主流になっていく世界もありえます。今はまだ空中に存在する物体向けのエリア構築は検討されていませんが、通信エリアを2次元から3次元へ拡張する時代が迫っています。地上の基地局が空中を含めて端末を収容したり、HAPSや衛星通信を活用して今はまだ電波の届かない山間部や海上へ広くサービスを提供し、人とモノがいつでもつながる世界を構築しなければなりません。3次元的なネットワークの展開は、同時に耐障害性の向上にも貢献します。通信サービスがライフラインとなった今、自然災害の多い日本では特に重要な要素です。

将来に向けた電波資源の効率的な利用の検討も必要になります。周波数は事業者ごとに大きく分割して割り当てられていますが、技術の進歩とともにより高精度な管理も可能になるでしょう。利用効率の悪い従来のサービスをデジタル化して刷新する必要もあります。ケーブルを新しく敷設することで通信帯域を拡大できる有線と異なり、電波はその資源の総量が決まっている有限な資源です。最大限に効率的に利用できるような技術の革新、また制度の革新が必要です。

データ管理とプライバシー

デジタル化が進む社会においてデータの価値はますます重要になってきます。計算基盤と通信基盤があっても、データなくしてはどんなサービスも意味がありません。すでに私たちの手元には、自分自身に関する膨大なデジタルデータが存在しています。これらを活用するためには、データを処理する計算基盤と、計算基盤とデータをつなぐ通信が必要です。同時に、あらゆるデータがデジタル化されることで、その取り扱いにも細心の注意を払う必要があります。個人のデータは、個人向けのサービスの品質や利便性を高めることができる一方、取り扱いを誤るとプライバシー・リスクの問題を引き起こしてしまいます。自分の情報の流通や処理を自分の意思で管理できる基盤が必要です。

今、さまざまなデータが社会に流通しています。携帯電話の位置情報や無線センシングを活用した人流データ、天候や大気の情報のような気象データ、バスの運行情報や自動車の経路など、公共組織や民間組織がサービスの一部として収集するサービスデータ、空撮画像や衛星画像などの環境データ、ありとあらゆる情報がデジタル化されています。しかしながら、今の段階ではこれらのデータを安全に活用していく基盤がありません。それぞれのデータを適切な範囲に流通し、互いを関連させて新しい価値を生み出す産業が生まれてくるでしょう。

データを正しく扱うためには、データの安全性を確保する通信技術、データの信頼性を担保する認証技術、データの利用を制御する認可技術が必要です。これらの技術も、計算基盤が提供する計算資源と、それをやりとりする通信技術なしには実現できません。

3. 計算資源・通信基盤・データ管理の三位一体の戦略

ソフトバンクでは未来の基盤を構築するための取り組みとして12の挑戦を定義しています。一つ一つの課題に取り組み、要素技術の革新を継続していくことで、それらを横断的に活用した新しいサービスの下地が構成されます。アンワイアード社会とそれ以前の社会に明確な区別はないのかもしれません。技術の進歩は段階的であり、私たちの生活も少しずつ変化しています。しかしながら、間違いなく言えることは10年後のサービスは今では想像もできないものが溢れているということです。私たちはその実現のために計算資源、通信基盤、データ管理の三つの要素のさらなる発展と強い連携が必要だと確信しています。

Beyond 5G/6Gに向けた12の挑戦 | 6Gが支えるデジタル社会

アンワイアード社会に向けた研究開発を通じ、ソフトバンクが掲げる「情報革命で人々を幸せに」できる社会を実現します。

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