対談 エネルギーで未来を開く
渡辺俊美
TOKYO No.1 SOUL SET
THE ZOOT16
猪苗代湖ズ
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馬場一
ソフトバンク株式会社
プロダクト&マーケティング統括
新規事業開発室 執行役員 室長

CO2を削減する再生可能エネルギーをいかに広め、未来を開いていくのか?

CO2を削減する再生可能エネルギーをいかに広め、未来を開いていくのか?東日本大震災以降、くらしと活動を大きくシフトさせたというミュージシャン、渡辺俊美さんをお招きし、ソフトバンク(株)馬場一との対談をお届けします。渡辺さんは福島県富岡町の出身。福島第一原発の事故により、故郷はいまだ警戒地域です。状況はいまだ変わらぬ中、これからをどのように進めていくか。二人が実感する子どもたちへの想いとともに語っていただきました。

なぜ、再生可能エネルギーを提供しているのか?

馬場:2011年に東日本大震災がおきて、被災地で長期間停電しました。電気通信事業を営むソフトバンクでは電波を届ける通信基地局への電力が途絶えたことで停波し、自分たちで何とかせねばということになりました。電力は一つの大きな発電所から送電線を使い遠くの町まで電気を送っています。だから、一ヵ所の発電所がダウンすれば広大なエリアの電力に影響する。なので、使う地域に近い場所からの分散型の発電が求められたんです。一つがダメでもほかでまかなえる。地元に小さな発電所をという発想ですね。そのときにわれわれはエネルギーに関心を持ち始めました。

「なぜ、再生可能エネルギーを提供しているのか?」について語るソフトバンク(株)馬場一

渡辺:やはり東日本大震災がきっかけで動き出したのですね。

馬場:ええ、当時は500人ほど本社から現地へ出ていました。まずは皆さんが安否確認の連絡を取れるようにと。

渡辺:そのときの発電のエネルギーはどうやって?

馬場:ガソリンです。自衛隊などから特別に手配いただき、通信網を保ちました。それがたぶん2ヵ月ほど続きました。人間の力ではコントロールできない大事故でした。電気がなければ通信サービスを提供することができないという大きな課題に、われわれの中で気付いたんです。そして、2012年から日本各地でCO2排出量が少なく持続可能な電源として太陽光発電を始めました。そして2016年4月には、電力自由化で家庭に電気を販売できるようになり、電力小売事業に参入したんです。

どうやったら歌を伝えられるだろう?

「どうやったら歌を伝えられるだろう?」ということについて語る渡辺俊美さん

渡辺:僕が育った福島県川内村は福島第一原発から20キロ圏内にあります。両親や姉の家族は富岡町にいましたが、震災から6日目に全村避難になりました。その後、国から除染してもらうにしても実費が掛かり補助金が出ないので、川内村の家もやむを得ず壊しました。そうして現在はまっさらな土地になりました。いま両親と姉の家族は茨城県に住んでいますが、いわば避難している状態に変わりはないんですね。

馬場:その変化は計り知れないですね。渡辺さんの活動も変わりましたか?

渡辺:はい、とても。僕がいちばん変わったのは「何をすればいいのだろう?」と、常に自分に問うようになったこと。当時、現地の状況が分からず、ギターを持って避難地域に行きましたが、歌える状況ではなかった。かき集めた支援物質を持って行っても、何か足りないと。その足りないと感じたのは、皆さんのお話を聞くことだったんですよね。いかに大変なことだったのかを聞かせていただきました。そして、しばらく時間がたち、ようやく「一曲歌っていいですか?」と言うことができたんです。歌うことが当たり前のように活動をしてきましたが、あのときを境に、どうやったら歌を伝えられるようになるのかと考え方が変わりました。

馬場:伝えることのかたちが大きく変わったんですね。

渡辺:相手の話を聞く、その人の立場になる。これまでの人生で何が足りなかったのか。それが震災後、よりリアルに見えてきましたね。何事も「反対する」ではなく、争いをせずに自分たちでできることをしたいと思うようになりました。ライブをしながら、なるべく電気を使わない節電の工夫を広めています。ある時、そんな中で出会った会津の人たちが、自分たちで電気をつくる話をされていて、「これだ!」と思ったんです。いままでの常識とは別に、選択肢を増やすことが僕らの役割なのかなと。そんなふうに考えが変わっていきました。猪苗代湖ズの活動では、福島県の方々はとても応援してくれています。事情を知らない人から売名行為だと批判を受けたりもしましたが、「ぜひ現場に来てください。何だったら一緒に現場に行きましょう」とSNSで声を掛けたりもしていました。紅白歌合戦に出たとき、僕の故郷の町の人々はその99%が故郷にいなかった。それがテレビを見ることで一つになれればいいかなという想いで演奏していました。

目の前のコミュニケーションから。なぜお弁当をつくるのか?

渡辺俊美さんとソフトバンク(株)馬場一

渡辺:震災後ストレスになったのは、やはり食べ物のことです。いったい、どの食品が安心なのか。例えば、東京のスーパーマーケットに並んでいる野菜が本当に安全なのか。どの産地ならいいのか?農薬は?じゃあ外国産は?僕がそうなんだから、世の中の人たちはもっと考えているんだろうという想いでした。

馬場:私もそうでした。ガイガーカウンターを買いましたもの。

渡辺:僕は、まず身の周りのことが気になりました。安全なものを食べさせたいという気持ちで、息子が高校卒業まで弁当を作って持たせていたんです。

馬場:渡辺さんの『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』という本、すごく素敵ですね。しかし、続けるのは大変だったでしょう?

渡辺:そうですね。あるとき、息子に「ワンコインで買う弁当とパパが作った弁当、どっちがいい?」と聞いたら「パパの弁当がいい」と言ってくれたんです。その言葉がうれしくて、これもう、ねじり鉢巻きしてやり続けよう!と決めたんです。これはかなりの任務ですが、息子と弁当を通じて会話しているように感じられて、だんだん弁当作りが自分の楽しみになりましたよ。

馬場:毎日のことですからね。どんな工夫を?

渡辺:ライブで地方に行ったら、その土地の食材を見つけてきて作りました。後は季節ですよね。息子に「人間は季節のものを食べると元気になるんだよ」と話した後に、季節の食材を弁当に盛り込んだり。食べることの楽しさだったり、想像力だったり、弁当の中にはいろんなものが詰め込めると思いまして。

馬場:食べようという前に、まず感謝しますよね。作ってくれたお父さんにもそうだけど、卵を産んでくれた鶏や命を食べさせてくれる牛や豚に感謝する。

渡辺:僕だけが作ったんじゃなくて、みんなが携わってくれている。

馬場:はい。そういうことをだんだん教えることができる。「いただきます」の意味が分かるんですね。

渡辺:あれほど学校や勉強を嫌がっていた息子が、自ら大学に行きたいと意志を示してくれて。それはパパもちゃんと弁当を作るね、という約束をずっと継続したからだと思ってます。勝手な想像ですけれど。

馬場:人間形成のベースがきっとそこにできたんでしょうね。

渡辺:お子さんとお話は?

馬場:ええ、すごくいっぱいします。長男はもう勤めていますが、次男とは特に。次男は中学のとき半年ぐらい登校拒否をしていたんです。家で勉強はしていたので卒業はしたんですが。それで、「その後どうするの?」と聞いたら「ニュージーランドへ行ってくる」と。

渡辺:ほう。みんなと同じじゃなくてもいいんだと?

馬場:そうです。僕らの世代は人と一緒じゃないと、という風潮もありましたけれど、そうじゃないんですね。それで英語の勉強をして、いまちょうど高校三年生の年頃ですが、大学卒業の認定試験のようなものを受けてぶらぶらしてますね。

渡辺:いいですね。父からの否定がなかったんですね?

馬場:はい。長い人生で2年や3年のブランクがあってもあまり変わらないですよ。

渡辺:そう思います。僕の場合も、息子が1年間高校へ行かなかったんですが、小中学校とは違って、いわば初めての選択ですからね。そこは肯定してあげたい。それでしばらく放っておいたら、一つ上の先輩から「高校、面白いよ」という一言があって、「やっぱり行きたい」ということになったんです。

馬場:相手の気持ちを考えて、何か行動してくれればそれでいいんですよね。

渡辺:僕にはやっぱり音楽が大きいですね。THE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)の1stアルバムは特に聴いてほしい(笑)。曲ではやっぱり「人にやさしく」ですよね。また中学生になったら、とりあえず尾崎豊とかね。成長の段階でどうやって触れ合うかということ。一緒に歌を歌ったり、何かともに行動することがすごく大事だと思うんです。

馬場:親子だろうが他人だろうが、ともに苦しむということですね。尾崎豊はうちの次男も聴いています。すごいなぁ、もう30年も前の彼の歌がこうしていまの子たちに響くんだから。

子どもたちへ何ができるのか?「自然でんき」も同じ想い

馬場:大人たちは、自分の子どもはもちろん、日本中、そして世界の子どもたちが大切なわけです。そのみんなが本当にやりたいこと、生まれてきた使命をしっかり果たせるような世の中にしていかないといけない。ソフトバンクは何をできるんだろうか。その一つは少しでもCO2排出量を出さない電気を少しずつ広めていくことです。190ヵ国以上が参加している「パリ協定」があります。産業革命前からの地球の気温上昇を2度未満、できるだけ1.5度以内に保とうという国際的なルールです。これに貢献するにはどうしたらいいのか。それにはCO2を削減し、CO2を出さない、または吸収することをやっていこうと。

「子どもたちへ何ができるのか?「自然でんき」も同じ想い」について語るソフトバンク(株)馬場一

そこで「自然でんき」を広げていくことが僕たちにできる最低限のことだと思います。ただ、CO2の削減、再生可能エネルギーと言ってもなかなか理解が難しく、世の中に役に立っているとことも分かりにくいと考えています。ですからCO2を削減するための植林や間伐、剪定をしている森林保全団体へ、ソフトバンクの利益の中から一世帯のお客さまあたり毎月50円分を支援する取り組みを行っています。寄付先は全国で63ヵ所ある団体の中からお客さまに自由に選んでいただけるようにもしています。2017年11月からは東北エリアでも販売を開始し、福島県にもいくつか支援先があるんです。

渡辺:僕ら大人が常に学ぶことを止めてはいけないと思う。新しい一歩ではなくても、一生懸命に取り組んでいる大人の姿を見て子どもたちが育つ、それを僕は信じているんですよ。先日、会津のお祭りに行き、そこの子どもたちがやっていた雪合戦に混じったんです。子どもたちが真剣だったので、僕も真剣にやりました。子どもたちが泣くまで(笑)。そうしたら今度は集団でやられて(笑)。

馬場:わははは。

渡辺:その後、ギターを持って歌ったら、「あのおじさん、歌っている」って一生懸命応援してくれた。涙が出ました。真剣に遊んだから真剣に返してくれる、そんな子どもを信じたくて。エネルギーや電気、何に対してもですが、大人の役割と真剣に取り組めば、それがいちばんの未来のためなのかなと。

馬場:真剣に対峙しないと、子どもの可能性はせっかくいっぱいあるのに、なかなか表に出てこないですよ。子どもは大きな鐘のようなもので、小さなマッチ棒でたたいてもいい音で鳴らない。こちらがでっかい棒でドーンとぶつかってこそ、すごく音が鳴る。

渡辺:ホントですね。そうして信頼関係がちゃんとできるわけですね。

やる気があれば、やさしい電気は実現できる

渡辺:昨年10月に猪苗代湖ズの初ワンマンライブをやりました。結成7年目にして初の大きなイベントでした。猪苗代野外音楽堂で使ったのは100%太陽光の電力です。もともと、「風とロック芋煮会」の中で「ACO ONE GRAND-PRIX」という素人のミュージシャンが参加する弾き語り選手権をやってたんです。電気を使わずアコースティックだけで音楽ができたらと。でもやっぱり電気は必要なんですよ。それで、できる範囲で、太陽光でやりましょう、と猪苗代湖ズのライブをやった。
僕が小学校の頃、矢沢永吉さんやキャロルを聞いていました。そしてYMOが出てきて、電子音楽にカルチャーショックを受けました。ロックの発展には電気が必要だと。同じように福島第一原発は70年代に発展していきました。でもその時代はエアコンもそれほどなかったし、いまの電力量よりも低かったと思います。でもすごく音楽が生まれ、いいものがいっぱいあった。だから、そんなに電気がなくたって、いいものは生まれると言いたいんです。

馬場:なるほど、両方だということですね。

渡辺:僕はその両方を音楽を通じ、できればいいと思っています。そうして「自然でんき」も使って野外でライブやフェスをしてみたいですね。

馬場:いまソフトバンクが「自然でんき」でお客さまに供給している電力の半分以上が太陽光などの再生可能エネルギーで発電されたFITでんき比率※1の高い電気です。政府では2030年に22~24%を目指そうとしています。再生可能エネルギーというのをもっと広めていきたいと思っているんですね。もっともっと科学を発展させていけば、100%に近い電気がすべて自然の力でまかなえて、CO2が出ないものができると思います。そして普段の生活も、いろんな生産も、おそらく可能だと思います。

渡辺:やる気があれば実現できる。

馬場:ええ、そのためにはどうすべきかを一生懸命研究し開発していけばいいんです。

渡辺:意識の問題もありますね。2011年の1月ですが、「セーブ・ザ・チルドレン」の活動でネパールに行きました。お店に入ると懐中電灯を渡されたりするんです。一日の半分ぐらいは電気が点かない。それでもみんな当たり前に生活しているし、ニコニコしている。僕はキャンドル・ジュンくんと行動して、子どもたちに向けてロウソクをつくるワークショップを開きました。その経験をしてよかったのは、電気は必要だけど、なくても大丈夫。その両方を知らないと、ということでした。

馬場:電気のないキャンプも、いろんな遊びも楽しいですよね。一方で、産業を発展させていく、国力をつけていくこと、また電子音楽にしても、そこには電気がいる。両方なんですね。

渡辺:いま、まだ解決していないのに各地で原発が再稼働しようとしていますね。一方で、地球にやさしい新しい発電のあり方もどんどん出てきている。それがそれぞれの地域でどうやったらケンカしないように前に進むのかなといつも思います。

馬場:それには、対話ですよね。

渡辺:ええ、コミュニケーションだと思います。

馬場:異なる意見がぶつかりあい、新しい意見をつくる作業を対話でしていかないといつまでも対立する。そこで真ん中の意見を取るのではなく、全く新しい意見をつくる作業をしないといけない。

渡辺:いまはある意味真ん中で、もどかしい。でも、自分たちの家族のようにはならないでほしいという願いがあるので、僕は「自然でんき」を応援していきたいし、丁寧に対話を続けていきたいです。

馬場:お弁当と一緒で、何でできているのかということをいろんな人に考えてもらいたいです。何気なく使っている電気もその源は?と、たまには考えてもらえるようにしたい。きっかけが「自然でんき」を使ってもらったり、そのウェブやパンフレットを見てもらったりすることで。それが対話をするための基本的な知識にもなると考えています。

  • ※1
    SBパワー株式会社がこの電気を調達する費用の一部は、当社のお客さま以外の方も含め、電気をご利用のすべてのみなさまから集めた賦課金により賄われており、この電気のCO2排出量については、火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われます。
対談を終えて。渡辺俊美さんとソフトバンク(株)馬場一

対談後記

料金のシミュレーションをしてみる。「こんなに安くなるんですね!」(渡辺)

自然でんきで電気代がいくらおトクになるのか、かんたんにシミュレーションできます。

馬場:いまは月にどれくらい電気をお使いなんですか?

渡辺:だいたい2万円ぐらいが普通なんですよ。

馬場:あ、たくさん使っていらっしゃいますね。大きな家じゃないですか?

渡辺:いえ、二世帯住宅なんですよ。

自然でんきの電気代シミュレーションをする渡辺俊美さんとソフトバンク(株)馬場一

馬場:普通の家庭では20kVAという契約容量はなかなかいらっしゃらないです。基本料金だけでも5,616円ですから。大きめのマンション世帯でも6kVA(60A)以下で1,684円ですから。

渡辺:家族が自宅で仕事をすることもありまして、電気はかなり使いますね。

馬場:契約容量20kVAで623kWhというのは電気使用量としてはそんなに大きくないんですよ。

渡辺:なるほど。ソフトバンクさんでは料金シミュレーションがホームページからできるんですよね?

馬場:ええ。かんたんに。やってみましょう(タブレットを操作する)。ほら、こんなに金額が下がりますよ。

渡辺:え!格段に安くなるんですね。驚きです。

馬場:「自然でんき」は基本料金が掛からないですからね。使った分だけの電気料金のみです。

渡辺:ずいぶん違います。息子に毎日お弁当作っている頃ならもっと助かったかもしれません(笑)。弁当作りで一つ300円を目安に作っていましたから。電気料金が安くなった差額で息子の友達の分まで作れちゃいますね!

料金シミュレーション
渡辺俊美さん(TOKYO No.1 SOUL SET、THE ZOOT16、猪苗代湖ズ)

プロフィール
渡辺俊美さん

[OFFICIAL HP]

福島県出身。90年代初頭「TOKYO No.1 SOUL SET」のボーカル&ギタリストとしてデビュー。福島県で生まれ育ち、福島県人バンド「猪苗代湖ズ」でも活動、2011年にNHK紅白歌合戦に出場。2014年にエッセイ本「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」を発表し、ベストセラーに。翌年にはNHK BSプレミアムでドラマ化。2016年、東日本震災から5年。震災復興の活動で大空に飛ぶ花と復興への想いを表現したANA「東北FLOWER JET オリジナルソング」の作詞・作曲を手掛ける。

撮影:菊地英二 / インタビュー:池谷修一

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