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300年成長し続ける企業とは? ~ソフトバンク平成史③~

300年成長し続ける企業とは? ~ソフトバンク平成史③~

「ソフトバンク新30年ビジョン発表会」

紆余曲折がありながらも参入した携帯事業は軌道に乗り、モバイル・インターネットの世界の到来を見据え、他社に先駆けて販売したiPhone やiPadなどの「スマートデバイス」を通じて、データ通信時代の牽引役としての追い風が吹いたのも束の間。平成20年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが倒産した“リーマン・ショック”が起こります。世界中の企業が大打撃を受けるなか、ソフトバンクもその例外ではありませんでした。

ソフトバンクのその年の決算発表日を1週間前倒し、これまで発表してこなかった業績予測(2年分)のほか、キャッシュフローの予測と借入残高予想の発表も合わせて行い、自らの透明性を高めることでこの危機を乗り越えました。

目次

創業30年、300年続く企業とは何か?

創業から30年後の平成22年、ソフトバンクは再び次の30年に向けたビジョンを掲げることを決定し、約1年をかけて「新30年ビジョン」策定の検討に入りました。「新30年ビジョン」は、創業の原点に立ち返りビジョンや戦略をより明確にするという目的で策定され、ソフトバンクのグループ企業も合わせて約2万人の社員ほかに、多数のツイッターユーザーも巻き込んだ大プロジェクトとなりました。

300年成長し続ける企業を目指す

平成22年6月の株主総会で孫は、「これはおそらく、私の人生で一番大切なスピーチになるでしょう。そして私の現役時代最後の、30年に1回の大ボラです」として、ソフトバンクの「新30年ビジョン」を発表しました。

ソフトバンクの経営理念「情報革命で人々を幸せに」は、創業以来変わらない理念ですが、「新30年ビジョン」においては、30年後の世界を想像したうえで、ソフトバンクの事業が次の30年の世の中でどう人々の幸せのために貢献できるのか? ソフトバンクがグループとして将来進みゆく方向性、理念を定め、その理念達成に向けて、今後300年間成長し続ける企業になるためのDNAを設計するためものとして考えられました。

これから300年の間に人類は史上最大のパラダイムシフトを体験し、人々のライフスタイルが大きく変化していく中、ソフトバンクは最先端テクノロジーと最も優れたビジネスモデルによって、その理念を実現したいと考えています。

この「新30年ビジョン」の発表の中では、後の事業戦略に結び付き実行された、いくつかの象徴的なアイディアについて触れています。

感情を持ったロボットとの共存

300年後の世界では脳型コンピューター(学習するコンピューター)が生まれている。知性を持ったコンピューターが危険な場合、むしろハート(高い次元の感情)を持たせて超知性を実現するのが正しい進化である。ほとんどの発明の主役がコンピューターやロボットになる場合、知的で優しさを持つロボットと共存する社会は、必ずしも破壊的な社会ではない。

高次元のネットワーク、クラウド、ストレージ

コンピューターチップの能力が高くなる中、あり余るほどの情報は無限大のクラウドに格納されネットワークでつながる。それによって教育も医療も決定的に変わり、仕事の仕方も変わる。クラウドが人類最大の資産になり、そこに人類のあらゆる知恵と知識、人工知能の知恵と知識が蓄積されていく。

戦略的シナジーグループ

少なくとも30年後には、世界の人々がもっとも必要とするテクノロジーやサービスを提供する会社になりたい。それには特定のテクノロジーや特定のビジネスモデルにこだわらない、世界で最も優れた企業とともにライフスタイルを革新する“パートナーシップ戦略”が重要になる。優れた叡智を持ち、優れたエネルギーを持つ同志たちと一緒にパートナーとしてやっていく。出資比率30~40%ぐらいの資本提携による、同志的結合の集団を作りたい。

ソフトバンクの「新30年ビジョン」について

ソフトバンクアカデミア開校

「新30年ビジョン」では、後継者育成のための教育機関として「ソフトバンクアカデミア」を開校することについてもコミットし、平成22年7月に開校しました。アカデミアの目的はただ一つソフトバンクの後継者を作るということで、孫が校長に就任します。入校のチャンスは社内外にあり、現在約300人が入校しています。

アカデミアでは、経営シミュレーションゲームや自主勉強会、ソフトバンクグループの経営課題を題材としたテーマに基づくプレゼンテーションプログラムなどを通じて、受講生同士が一年間切磋琢磨します。入校後は年に1回、総合成績による「入れ替え戦」が行われ、下位20%は新たな入校生と入れ替わる仕組みとなっており、受講生同士がプレゼンテーションを採点するというシビアなものですが、何度でチャレンジできるオープンな環境です。

孫の特別講義では、事業に取り組む中でどのように遂行し、困難を乗り超えたか? など実体験に基づいた具体的な事例をケーススタディーとして紹介しています。それらが孫自身の経営哲学を25文字の漢字で表した「孫の二乗の兵法」の中のどれに該当し、指針としてどう生かされたのか? といったビジネスエッセンスが伝授され、真のリーダーとなり得る人材の育成が行われています。

ロボット事業への参入

「新30年ビジョン」では、今後は脳型のコンピューターが生まれるとの予想し、人間の知性を越えたコンピューターの暴走を止めるには、本当に高い次元の感情が必要で、そのためには、優しさや愛情という“感情”をコンピューターに持たせることが重要としています。

「新30年ビジョン」から4年後の平成26年、ソフトバンクが秘密裏に進めていたロボット事業は、ついにお披露目されます。ロボットの名前は「Pepper(ペッパー)」。ヒト型のヒューマノイドで、人間の9歳児を想定した大きさ。「世界初の感情認識パーソナルロボット」と紹介されました。人工知能を搭載し、クラウドを通じて常に知識を学び、胸についたタブレットや音声で人間と意志疎通ができる、コミュニケーションに特化したロボットです。

「Pepper」の誕生は、「新30年ビジョン」策定の過程において行われた、ソフトバンクのグループ各社社員によるプレゼンテーション大会がにおいて、ロボットに関する提案が優勝したというのも、大きなきっかけのひとつになっています。

未曾有の大災害、東日本大震災で行った復旧活動

衛星通信用の設備を利用した基地局の復旧作業

平成23年3月11日、宮城県沖を震源とする地震が発生しました。地震の規模はマグニチュード9で、観測史上最大の地震でした。この大きな揺れが引き起こした津波のほかに、福島第一原子力発電所の原子炉が制御不能に陥ったことも相まって、未曾有の大災害となりました。

ソフトバンクの通信設備も多大な被害を受け、震災翌日3月12日午前の時点では、一時的に3,700局を超える基地局設備が被害を受けて電波が停止する状態(以下、停波)となりました。この影響により、東北地方の一部地域では携帯電話が圏外となりご利用できない、またはご利用しづらいなどサービスに支障が生じました。

これまでに経験した事のない規模の被害を受けた基地局設備に対して、余震も続くなか、現地の安全を確認しながら応急復旧活動を行いましたが、停波した原因の約8割は停電の長時間化でした。広範囲に渡って停電が発生する中、電力が回復していない地域の基地局設備に対しては、発電機を搭載した移動電源車や、小型の発電機となる可搬型発電機を使用して電力供給を行うことで少しずつ基地局設備を復旧させていき、震災から約1カ月後となる4月17日時点には、一部の立ち入り禁止区域等を除いて支障サービスエリアが概ね震災前の状態まで復旧しました。

応急復旧活動では、現地の体制に加えて本社部門含む全国からの応援要員も順次追加して、のべ1,000人を超える規模で対応を進めましたが、応急復旧機材や体制など、当時は備えが十分ではない事も多く、東日本大震災での応急復旧活動を通じて経験したことを教訓に、組織的に応援要員を集める仕組みや可搬型の基地局開発などにも取り組み、その後の災害時に生かしました。

移動基地局車を配備し、臨時の衛星基地局を設営して避難所での通話を可能に

自然エネルギー事業への参入

ライフラインとしての通信事業を支えるために不可欠な電力の停波や、福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、ソフトバンクグループではエネルギー問題を日本全体の課題と捉え、安心・安全な自然エネルギーの普及・拡大を図ることが解決策の一つであるとの考えから、再生可能エネルギー事業への参入を決定しました。

平成23年10月には自然エネルギーの普及促進に向けた事業を行うSBエナジー株式会社を設立し、再生可能エネルギー特別措置法による固定価格買取制度が適用された平成24年7月には、グループ初となる自然エネルギーによる発電施設「ソフトバンク京都ソーラーパーク」(京都市)と「ソフトバンク榛東ソーラーパーク」(群馬県榛東村)の運転を開始しました。その後も日本全国で太陽光発電所や風力発電所をはじめとした自然エネルギー発電事業を推進し、自然エネルギーの普及、拡大に努めています。

また、平成29年10月には初の海外事業となるモンゴル・ゴビ砂漠における風力発電を開始し、このほかに新たにエネルギー事業のコアビジネスとして、AI・IoTなどのテクノロジーとエネルギーの融合事業、リチウム開発やESS(Energy Storage System)などを通じて蓄電技術によるエネルギーのタイムシフトに関連する事業、太陽電池セルの最新技術や高精度の天気予報システムへの投資事業などにも取り組んでおり、自然エネルギーがすべての産業を再定義する時代に向けたエネルギープラットフォームの形成を加速しています。

平成28年3月、ソフトバンクグループは、北東アジアでの電力網の国際連携に関する調査の実施、ならびに事業性の評価を行うことを目的とした覚書を、中国、韓国、ロシアの代表的な電力会社と締結しました。これは、再生可能エネルギーを効率的に発電できる場所で発電してアジア地域の国家間で国際融通するというビジョンである「アジア・スーパー・グリッド構想」の実現向けた初のアクションで、将来的にアジア広域を大規模な国際送電網でつなぐことにより、自然エネルギーで懸念される時間帯や気象条件による不安定性を解消し、必要なときに電力を相互に活用できるようにするための解決策となるプロジェクトです。

ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク(平成26年 運転開始)

このほか、平成24年には電力の売買業務および売買の仲介業務を行うSBパワー株式会社を設立して、再生可能エネルギーを活用した電力サービス「自然でんき」の提供を開始。契約ごとにSBパワーから「J‐クレジット」認証事業へ、活動支援金を拠出して環境保全活動支援を行っており、低炭素社会の実現に取り組んでいます。

  • 省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによって、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度

また、平成23年7月には全国の道府県で構成する「自然エネルギー協議会」と、政令指定都市で構成する「指定都市 自然エネルギー協議会」を自治体と共に設立しました。協議会では全国34道府県、19都市の自治体が自然エネルギーの普及促進に向けた情報共有を行い、国に対して定期的に政策提言書の提出を実施しており、ソフトバンクグループは両協議会の活動に賛同する約200社の民間企業を代表して、事務局として活動しています。

挑戦することで未来を変えることができる! 「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」をサポート

「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」は、東日本大震災の被災地域である岩手県、宮城県、福島県の高校生を、カルフォルニア大学バークレー校で行われる3週間の集中コースに無償で招待し、帰国後の地域活動を後押しするプログラムです。生徒たちは米国で地域貢献と問題解決を学び、学んだことを生かしてそれぞれの地元で地域貢献活動を行います。

「東北の高校生が夢をつかみ、チャレンジするための一歩としてこの経験を生かし、東北の復興を担うリーダーになってほしい」という思いから、公益財団法人 米日カウンシル-ジャパンと米国大使館が主導する「TOMODACHIイニシアチブ」の趣旨にソフトバンクグループ株式会社が賛同し、平成24年にスタート。これまで約900人の高校生が参加しています。

カリフォルニア大学バークレー校は、孫の母校です。留学中に新しい文化やライフスタイルに触れたことで自身の人生が大きく変わったとし、本プログラムに参加する高校生に向けて、毎年ビデオメッセージを送っています。

(掲載日:2019年4月24日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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