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SF映画の世界はもう実現している? ソフトバンク AI部門 部長とAI専攻学生の対談

近年、ビジネスでのAI活用への期待が各方面で高まっています。多くの企業がAIの導入を発表しており、ニュースをにぎわす「ディープラーニング」「ビッグデータ」などのキーワードを耳にすることも多いのではないでしょうか?

あらゆるビジネスを変革し、根幹に関わるといわれているAI。社会にとってどのような存在になり、どのような役割を果たしていくのでしょうか。 ソフトバンク株式会社 IoT & AI技術本部の山田聡と、AIを研究している現役大学院生に話を伺いました。

山田聡

ソフトバンク株式会社 IoT & AI技術本部 AIエンジニアリング部 部長 山田聡

AIプラットフォームの開発、システム運用、アーキテクチャの検討、社内へのAI導入支援、最新アルゴリズム研究などを担当。ソフトバンクが取り組むAI技術を推進するリーダー。

郭林昇さん

東京工業大学 情報理工学院 情報工学系 修士課程1年 郭林昇さん
JEES・ソフトバンクAI人材育成奨学金 受給生

中学生の時に初めて作成したプログラムを通してコンピューターと対話できることに感動し、AI研究を志す。深層学習など多くの機械学習アルゴリズムの課題である「汎化ギャップ」を最小化するため、正則化項設計を研究。

石川裕地さん

慶應義塾大学 理工学研究科 総合デザイン工学専攻 前期博士課程1年 石川裕地さん
JEES・ソフトバンクAI人材育成奨学金 受給生

コンピュータービジョンの実験に触れたことがきっかけで、大学院からAIを専攻。ロボットが人の行う動作から推定学習を行い、物体およびその扱い方を推論する手法を研究するとともに、動画から人の行動や状況を解析する「動画認識」を研究。

SFの世界は遠い未来の話ではない!?

AIエンジニアリング部 部長 山田聡

AIと聞くと、映画「2001年宇宙の旅」や「ターミネーター」シリーズに登場する、自律的に思考するコンピューターやロボットを想像してしまいます。

石川

イメージとしては分かりやすいんですが、日々研究をしている身からすると、一般の人が思い描くAIと実際に研究の進んでいるAIとでは、少し乖離があるように思うんですよね。

郭

そうですね。僕も研究に携わり現状を知っているだけに、SF映画の世界が実現するまでには、目の前に壁がいくつもあって「無理だろう…」と思う部分もあります。その一方で、この先どのくらいのスピードでAIが進歩していくのか、想像できないところです。
以前、「平成を振り返る」というテーマのテレビ番組を見ていたのですが、平成のはじめの携帯電話を見ると、今のスマホなんて当時では想像できないツールですよね。そんな技術進歩のスケール感を知ると、今後20年でAIが想像もできないような進化をして、映画の世界のようなことが起こっていても不思議ではないなと。スマホへの進化も、いくつも壁を乗り越えて、現在のような形になったんですものね。

山田

僕は、SF映画の世界観というのは、実は今のこの時代でも形を変えてすでに存在しているのではないかと思うんですよ。

石川

郭

そうなんですか!?

山田

人の顔はしていませんが、「ターミネーター」は自動運転やドローンだったり、「HAL」はGoogleアシストやAmazon Echoだったり。姿形や中身は違うかもしれませんが、実質同じ役割を果たすものがすでにあると言えるのではないでしょうか。方法はいろいろあると思いますが、AIの助けを借りることで、SF的な世界はあっという間に実現するように思っています。

 

しかし、AIだけで全てが実現するわけではありません。その周辺のテクノロジーや環境が整うことも必要です。完全な自動運転ができる世界というのは、すぐには難しいかもしれません。しかし、例えばスマートシティーのように街ごと設計し、環境を整えるといったさまざまな工夫をすることで、人が運転する必要のない完全な自動運転の実現に近づくんだと思いますね。

なぜ今AIなのか――。AIブームの背景とは。

そう言われてみれば、映画の世界もそう遠くない気がしてきました。現在、ありとあらゆる領域でAIが話題になっていますが、その背景を教えてください。

山田

いろいろな要因が重なりあっていますが、近年のAIブームの背景にあるのは、ディープラーニング技術の大幅な進化です。ディープラーニングによって、画像や文章などさまざまなデータをより正確にコンピューターが認識できるようになり、今までできなかった分野への応用が可能になりました。
このディープラーニングに欠かせないのはビッグデータです。インターネットの普及や通信技術の進化により、流通するデータ量が爆発的に増え、高速化した通信網が実現した今だからこそ、発展した技術とも言えます。

AIの分野にソフトバンクではどのように取り組んでいますか?

山田

ビジネスのあらゆる場面にAIが関わるような未来を見据え、世界のAI企業と協業したり、ビジネスにおけるAI活用の取り組みを全社的に進めています。

 

移動通信サービスで活用しているのは、携帯電話の購入時や利用時にお客さまから寄せられる相談にPepperとオペレーターが対応する「チャットサポート」です。

また、契約書など手書きで書かれた文字を読み取ってデジタル処理する「文字認識(OCR)」をディープラーニングと組み合わせ精度を上げる取り組みや、ドローンによる携帯電話の基地局の点検を自動化する仕組みも現在開発を進めています。ドローンに搭載したカメラで鉄塔を撮影して画像認識でさびている箇所を発見することができれば、人が鉄塔に登って行う危険な作業を減らすことができます。

お客さまのサービス利用状況やアンケートの分析などにもAI技術を活用していますし、こうしたノウハウを生かし、法人のお客さまのAI導入のお手伝いもしています。

日本の将来をけん引する「AI人材」を支援

郭さんと石川さんはソフトバンクでインターンシップを経験されたんですよね。

インターンシップ参加者の郭さん(中央)と、石川さん(右)

郭

はい。僕は、文字認識の精度向上のためのコーディングを担当しました。社員の方からインターンシップ期間中に達成してほしい目標を設定されるんですが、そのための手段は自分で考えなければいけないので、最新の論文を参照して、プログラミングに取り組みました。

石川

僕は、スマートフォンの損傷状況を自動で判定する画像認識システムの開発に携わりました。スマホの写真をAIで読み取り、「ヒビ割れ」「液晶漏れ」など損傷具合を判別するシステムです。AIに画像を読み取らせても本来は読み取るべきでない部分を「ヒビ割れだ」と判断してしまうので、精度を高めるにはどうすればいいかを試行錯誤しました。

ソフトバンク社員と肩を並べての業務体験はいかがでしたか?

郭

「学生時代の研究内容が、仕事とほとんど関係ない」と言う人もいますが、ソフトバンクでは学んだことを存分に生かすことができました。

 

大学では明確な目標を定めた上で、情報が整った質の良いデータを使って研究・開発できます。一方実務では、そもそもどのような形で文字認識の精度を高めるべきかも決まっていないし、扱えるデータが開発に適していない場合や、データが不足していることすらあります。しかし、実際の業務では大学ほどしっかりしたデータが整っていないことが当たり前なんですよね。

山田

郭さんは以前から相当なプログラミングスキルを持っていると分かっていましたが、実務では得意分野を生かして、他のメンバーが手をつけていなかったアルゴリズムに率先して取り組んでくれました。石川さんは行動がとても早く、複数のタスクを高い精度でこなしてくれました。プログラミング経験が1年半しかないということをこのインタビューで初めて知って、とても驚いています。

 

ソフトバンクでは、2019年度から公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)の「冠奨学金事業」への寄付を通じ、「ソフトバンクAI人材育成スカラーシップ」(奨学金名称:「JEES・ソフトバンクAI人材育成奨学金」)を立ち上げました。金銭的な援助に加え、今回のインターンシップのような実業務に触れてもらう機会提供も支援の一環としています。

石川

インターンでは、実データを扱う難しさと楽しさの両方を体験でき、貴重な経験となりました。また、奨学金をいただくことで、研究に集中できる環境に身をおけることは、ありがたいですね。

AIは「社会を根本から変える存在」になるのか

皆さんは、今後のAIの未来にどのように関わっていきたいと思っていますか?

郭

AIは人の仕事を代替する存在になっていくはずですが、現状は仕事を補助する程度の役割しか果たしていないことがほとんどです。例えば、文字認識は人の手による入力作業の代替を期待されていますが、今はミスの指摘程度の役割にとどまっているんです。人の作業を代替してくれるようになれば、それは大きな進歩で、その先にいろんな状況に対応できる“強いAI”があると思っています。そんな未来に向けて、実際の課題に取り組む存在になりたいですね。

石川

AIがどんなに発展しても主体が人間だという点は将来的にも変わらないと思っていますし、人がより良い生活を送るためにAIを研究してきました。僕は以前までは研究者になる道を考えていましたが、インターンシップでの経験はとても有意義なものだったので、いろいろな可能性を考えたいと思います。

山田

ソフトバンクでは、新しいAIサービスを積極的に社内で活用することで、業務の効率化に取り組んでいます。また、そこから得た知見を他社にも拡大していきたいと思っています。
一方で、社会を大きく変えうる新しいサービスは、業務の効率化にとどまらず、さらに根幹にAIを取り入れて事業を行っています。ソフトバンクの取り組みでは、みずほ銀行との合併会社であるJ.Scoreの 「AIスコア・レンディング」 がその一例です。映画に登場するような社会やサービスを根本的に変えるAIの開発にも関わっていきたいですね。

文:野口直希
編集:ノオト/ソフトバンクニュース編集部
写真:小野奈那子

「ソフトバンクAI人材育成スカラーシップ」の応募受付中

公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)が、指定の大学に2020年4月時点で修士課程1年次として在籍する学生を対象に、2019年10月15日から2020年1月9日まで「ソフトバンクAI人材育成スカラーシップ」の応募を受け付けています。本プログラムでは、ソフトバンクがJEESの「冠奨学金事業」に寄付した寄付金が、最大100人の学生に100万円ずつ奨学金として給付されます。詳しくは2020年4月に在籍予定の大学にお問い合わせください。

AI人材の育成を目的に、最大で総額1億円の2020年度給付型奨学金プログラムを設立