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3Dで積載状況を「見える化」。5G活用によるトラック配送業務効率化に向けた実証実験

3Dで積載状況を「見える化」。5G活用によるトラック配送業務効率化に向けた実証実験

加速度センサーなどを設置した積み荷で、トラックの積載状況を確認

ネット通販などの需要拡大で、トラック物流は今や生活にとって欠かせないものとなっています。

しかしながらその一方で、ドライバーの高齢化や人員不足などにより、片道運行の発生や集荷作業での待ち時間、配送の多頻度化、積み荷の小ロット化など配送作業の負荷増大が深刻化。そのため物流業界は、先端技術の導入による作業の自動化や省人化および積み荷の積載率向上など、配送業務の効率化を目指しています。

そこで、5GやIoT機器向けのLTE規格であるCat. M1(カテゴリーエムワン)などを活用して物流の効率化や省力化を実現し、課題を解決しようという実証実験が、日本通運の江古田流通センター(東京都練馬区)で行われました。

  • 総務省の「多数の端末からの同時接続要求を処理可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負」委託事業。Wireless City Planning(WCP)、日本通運、シャープの3社が共同で実施

トラック積載状況の「見える化」で、ドライバーの負荷軽減へ

トラック積載状況の「見える化」で、ドライバーの負荷軽減へ

実証実験が行われた日本通運 江古田流通センター

実証実験は、ソフトバンクが開発した可搬型5G設備「おでかけ5G」や各種センサーなどを活用して、加速度情報、温度情報、位置情報、重量情報などといったさまざまなデータを取得。主に発送元から集荷センターを結ぶ「ファーストワンマイル」での作業を効率化する集荷システムの構築を目的に、プラットフォーム上ですべてのデータを管理し、リアルタイムに配送データを共有することを検証しました。

  • 5Gの基地局とコア設備をセットにしたもので、設置したエリアにおいて、高性能でプライベートな5Gのネットワーク環境を構築できる。

5GやMECサーバーを活用し、トラックの積載状況を「見える化」

すべての荷物に、加速度センサーや通信機器を搭載

まず、トラック荷室の積載状態を確認するため、トラック荷室内にLiDAR(レーザースキャナー)※1を設置。そこで取得した荷室の点群データを「おでかけ5G」のネットワークを活用して管理者へ伝送します。

荷物の位置情報をLiDAR(上部中央)で測位し、点群データとして伝送

荷室の積載状況(左)がLiDARによってスキャンされ、3Dの点群データ(右)としてリアルタイムに確認できる

5Gの大容量通信とMEC(Multi-access Edge Computing)※2 サーバーを活用し、荷室の点群データをリアルタイムで伝送することで、積載状況の「見える化」を実現しました。

  • ※1レーザーを照射して対象との距離などを測定する光センサー技術
  • ※2端末から近い位置にデータ処理機能を配備し、通信を最適化・高速化する技術

さらに、複数の荷物に取り付けた高頻度でデータを送信するセンサーを用いて、5Gの多数同時接続通信を実施。加速度データおよび位置情報データを基に、荷物が荷室へ積み込まれたかどうかをMECサーバーによって自動で判定。これにより、積載率の低いトラックの空きスペースを把握しながらその場所を有効活用できるほか、荷室への積み残しも自動でチェックできます。

「見える化」によってオンデマンド集荷が可能になることで、ドライバーの負荷軽減とトラックの積載率向上が期待されています。

センサーから収集されるさまざまなデータをシャープが開発したアプリケーションで「見える化」

最短走行ルート設定や集荷・配送を自動マッチング。手配工数を75%削減

走行ルートや配送中のトラックの情報が確認できる

このほか、日本通運の奈良ロジスティクスセンター(奈良県大和郡山市)では、配送中のトラック情報の「見える化」による荷物の自動マッチングも検証。ドライバーがタブレット端末を所有して管理者と同じ情報を共有することで、急な集荷・配送などのイレギュラー対応の工数を削減。さらに状況に応じて、自動で計算された走行ルートによって、最短時間で現場に向かうことができるようになります。

この自動マッチングシステムにより、月あたり約600分発生していたイレギュラー集荷作業がわずか45分にまで短縮。集荷・配達時に発生する待ち時間など、「ファーストワンマイル」での配送作業員の負荷に対する解決策に有効であることがわかりました。

さらに、Cat.M1を採用した温度センサーを荷物に取り付け、管理者が遠隔からリアルタイムで温度を確認する実験も行われ、常温品と冷凍品の混載した状況でも適切な温度管理下で配送ができることを確認。輸送力の向上と効率化に向けた貨物混載の実現性が高いことが明らかになりました。

物流業界で課題とされるトラックドライバーの不足や働き方改革などに対応するため、積載率を上げて効率化と省力化を目指す、新たなシステムの構築が望まれるなか、実験を担当したWireless City Planning 先端技術開発本部 5G試験課の田島裕輔は「今回の取り組みを踏まえ、MONETコンソーシアムとの連携でさらなる物流の効率化を目指していきたい」と抱負を語りました。

先端技術で日常生活が劇的に変わる時代へ

次世代通信技術「5G」によって、人と人だけでなく、あらゆるモノとモノがつながるIoT時代が本格的に到来します。

先端技術を用いた新たなサービス・ソリューションの実現に向け、さらなる技術開発に取り組んでいます。

(掲載日:2020年3月9日)
文、撮影:ソフトバンクニュース編集部