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より多くの人に5Gを使ってもらうために。ソフトバンクが取り組む5Gエリアの拡大

より多くの人に5Gを使ってもらうために。ソフトバンクが取り組む5Gエリアの拡大

2021年から全国的に利用地域が拡大され、本格的な運用が始まると言われている5G。ソフトバンクは、2021年2月15日に新たなSoftBank 5Gのサービスエリアマップを公開しました。そこで、ソフトバンクのモバイルネットワーク戦略の担当者に、5Gのエリア拡大について、現在の取り組みと今後の展開を聞きました。

話を聞いたソフトバンクの技術者

藤野 矩之

ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット ネットワーク企画統括部 技術企画部 ネットワーク戦略課 課長 藤野 矩之(ふじの・のりゆき)

2007年に入社し、8年ほど新規ビジネスでのネットワーク検証などに従事後、開発部門を経て、5Gネットワークに関わる戦略検討や企画策定業務に携わっている

4Gとは異なる、5Gの基地局整備

ソフトバンクに割り当てられた5Gの周波数帯は、3.7GHz(ギガヘルツ)と28GHzという高い周波数帯。高周波数帯は電波が遠くまで飛びにくいという特性があり、カバー範囲が狭い。また、建物などの遮蔽(しゃへい)物の影響を強く受けるため、電波の伝わり方が弱くなります。

藤野「広い範囲をカバーするのに向いていないという周波数の特性から、特に28GHzに関してはかなりの数の基地局を展開しなくてはなりませんが、ゼロから基地局整備をするのは時間もかかり、現実的ではありません。そこで、現在LTEで使用している周波数を5Gに用いることで、5Gの連続的なカバーエリアを作ることを考えました」

5Gエリア拡大を早期に実現するNR化

5Gエリア拡大を早期に実現するNR化

LTEで使用している周波数を5Gに用いると、どんな利点があるのでしょうか?

LTEで使用している周波数帯域を転用(NR化)することで、面展開による5Gエリアの広域カバーを実現するという考え方です。新たに割り当てられた、5Gの高い周波数帯の電波特性は、広い範囲をカバーするのに向いていませんから、エリア拡大を早期に実現する施策として、NR化に取り組みました。

NR化とは

NRとは 4Gに対して新しい無線を意味する「New Radio」の略。LTEで使用している周波数帯を「既存周波数帯」と定義し、その電波を5Gという次世代の通信規格に準じた技術に置き換えること。LTEの設備を転用できるものは最大限に有効活用し、機器・ソフトウエアアップデートにより5G化または5G転用することを指す。

ソフトバンクは複数の周波数帯を所有しており、それぞれの電波の特性に合わせて、冗長性を生かしたネットワークの構築・運用をしています。

ソフトバンクに割り当てられている周波数帯

ソフトバンクに割り当てられている周波数帯

例えば、都会はスマホ利用者が密集しており、データの使用量が多いため周波数が大量に必要になりますが、帯域幅が狭い低い周波数帯は、データ容量を多く扱えません。そこで、帯域幅が広い周波数帯を使うようにするなど、状況に応じて周波数帯を組み合わせたネットワーク構築をしています。

広い5Gエリアを作っていく基本的戦略も同様に、需要が多いところは広いエリアをカバーできる低い周波数と帯域幅が広い高い周波数帯を組み合わせるなどして、お客さまのニーズに対応するようにします。

周波数帯に合わせたネットワーク作りについて、もっと知りたい方はこちら

5Gエリア拡大の第1歩。それは法改正による既存周波数帯のNR化実現から

より多くの人に5Gを使ってもらうために。ソフトバンクが取り組む5Gエリアの拡大

用途によって4Gを組み合わせることで、5Gネットワークを早期に提供するということですね。

はい。既存周波数帯の転用をするということです。ところが、これが一筋縄ではいきません。そもそも法律で認められていなかったんですよ…。

法律で認められていないとは、どういうことでしょうか?

周波数は、法律によってそれぞれの使用用途が決まっているんです。つまり、LTEの基地局は5Gに転用して使うことができない。

しかし、5Gはスマホだけではなく、地域活性化や産業基盤としての役割も求められており、全国への普及が大切になります。そのため、広範囲、かつ早期の5G普及には、既存の周波数でのエリア拡大を考えざるを得ないわけです。最終的には「4Gの周波数帯を5Gへ転用する」議論が進められた結果、ようやく省令が改正されて4G周波数の一部を5Gに利用できるようになったんです。4GのNR化の早期実現は、ソフトバンクも積極的に支持していたので、本当に良かったです。

5Gのエリア拡大にはそういった苦労もあったのですね。NR化について、具体的にどのように取り組まれたのでしょうか?

ソフトバンクは、2020年度内にはNR化した基地局数も含め、5Gで1万局までの拡大を目指しています。NR化の良いところは、すでに面をカバーしている周波数帯を5Gに変えられることですが、ここで重要なのは、どの周波数帯を5Gに変えていくかということ。

LTEを利用されているお客さまに迷惑はかけられませんので、そこをケアしながら、面でどうやってサービスを提供していくのか、が重要なのです。そのために5G時代を見据えたネットワークの構築戦略を立てて、早くから準備していました。

5G時代を見据えた準備として、どのような取り組みをしていたのでしょうか?

最新技術をいち早く取り入れるようにしてきました。実は5Gの電波特性から考えるとエリア拡大がむずかしいことは、周波数の割り当て前からわかっていました。それを見据えて対処できるよう、早いうちから5Gのネットワーク構築戦略を立てていました。

まず、4G時代から「Massive-MIMO(マッシブマイモ)」という技術をいち早く導入し、運用ノウハウを蓄積してきました。これは、複数のアンテナを同時に使ってデータの送受信を行う技術のことです。必要な場所に必要な電波を発射することができる技術なので、電波が届きづらいところでも、十分な速度で通信ができ、人が多く混雑しているエリアでも通信速度が落ちづらい。「Massive-MIMO」は、まさに5Gにおいて重要視される技術なんですよ。

Massive MIMOの特長や仕組み

MIMO(Multi Input/Multi Output)は、複数のアンテナを同時に使ってデータの送受信を行う技術のこと。Massive MIMOは大規模なMIMO、つまり送受信に使うアンテナを大幅に増やしたMIMOということで、通常は4本または8本である基地局のアンテナを、最大128本に増やします。

Massive MIMO

Massive MIMOには、次の2つの特長があります。

  1. ビームフォーミング
    携帯電話は、同じエリアにいる他の携帯電話と基地局アンテナを共有して通信するため、利用者が多くなると通信速度は低下しやすくなりますが、Massive MIMOは「ビームフォーミング」という技術によって、電波を通信相手(携帯電話)に集中して向けることで、他の携帯電話・基地局との電波干渉を防ぎ、通信品質を向上できる特長があります。

    ビームフォーミングで、利用者に専用道路を提供することで快適で高速な通信の利用が可能に

    ビームフォーミングで、利用者に専用道路を提供することで快適で高速な通信の利用が可能に

  2. 空間多重方式
    送信アンテナ数に応じて複数の情報信号(ストリーム)を同時に送信することにより、空間的にストリームを多重化して伝送する方式です。これによって、高めのスループットを維持できるため、パケ詰まりを避けるのに有効になります。

5Gインフラは“共有”するという考え。エリア拡大の早期実現に注目される「インフラシェアリング」

電波特性のほかに、5Gのエリア拡大で重要な課題は何ですか?

4G時代は、スマホ利用者に向けた、快適なネットワーク環境の構築に重点を置いていましたが、5Gはそれに加えて産業と地方活性という観点でのネットワークの設計が重要です。IoTやAIの展開による、地域自治体の社会的な課題をクリアしていくという取り組みがあるため、これまで以上にエリア拡大が急務です。

そこで、迅速にサービスエリアを拡大するために「インフラシェアリング」という手法が注目されています。当社はKDDI社と株式会社5G JAPANを設立し、両社が保有する基地局資産を効率的に相互利用するインフラシェアリングによって、5Gの地方展開を推進していきます。

今後のエリア拡大の予定を教えてください。

まずは、2021年度末までに5万局のエリア展開し、人口カバー率90%超を達成したいと思っています。

現在提供できる5Gの機能は「高速大容量」からですが、2022年度以降から産業ニーズは本格化すると言われています。産業ニーズの高い「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」は5G展開後はすぐに使えるわけではないので、まずは5G専用のネットワークを作って、低遅延などの機能を徐々にいれていくようになると思います。

より多くの人に5Gを使ってもらうために。ソフトバンクが取り組む5Gエリアの拡大

ソフトバンクは、全国約23万カ所の基地局を有しています。これは国内で圧倒な数値。これからも既存ネットワークのサイトを有効活用し、Massive MIMOなどの有力な要素技術を取り入れながら、急増するデータ通信量に対してはどこよりも早く、最新の技術で「先手を打つ」ことで対処していきたいと考えています。

(掲載日:2021年2月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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