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高精度測位サービス「ichimill」を活用した水位計で地域のため池を守る|SoftBank SDGs Actions #12

高精度測位サービス「ichimill」を活用した水位計で地域のため池を守る|SoftBank SDGs Actions #13

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsに取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、担当社員が自らの言葉で紹介します。12回目は、高精度測位サービス「ichimill」を活用した、防災に役立つ水位計のソリューションです。

今回、話を聞いた人

秦 健太朗(はた・けんたろう)

ソフトバンク株式会社 法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部 Service Design室 サービスデザイン第3部 高精度測位サービス推進課
秦 健太朗(はた・けんたろう)

ソフトバンクに入社後法人営業からスタートし、社内のフリーエージェント制度を利用して高精度測位サービスの事業に携わる。大学では宇宙分野に関わる活動を行い、小型ロケットを打ち上げるサークルに入っていた経験から、将来はソフトバンクの宇宙ビジネスの開拓が目標。

高精度測位サービスでため池の水位をリアルタイムに観測

測位サービスというと聞きなれないかもしれませんが、GPSであれば車のカーナビやスマホの地図アプリなど、広く日常で使われなじみ深いと思います。ソフトバンクが提供している高精度測位サービス「ichimill」は、GPSなどの衛星測位システムと当社独自の基準点を組み合わせ、位置の測定誤差を数センチメートル以内に抑えます。GPS単独の測位をはるかにしのぐ高精度測位を実現し、工事現場や農業などをはじめ、活用の場が広がっています。

私はこの「ichimill」を利用して、農業用のため池を監視する水位計の事業に携わり、各地の自治体に赴いて導入のご相談を承ることや、技術部門との連携によるサービス品質の向上などを担当しています。

フロートの上に位置を測るための装置と通信機器、ソーラーパネルと蓄電池を積載

フロートの上に位置を測るための装置と通信機器、ソーラーパネルと蓄電池を積載

このサービスはセンサーを載せた無人の “小舟” をため池に浮かべ、水位の情報をモバイルネットワークを通じてリアルタイムで上げるというもの。2022年2月にサービスを開始し、今は複数の自治体と一緒に、2023年度以降の導入に向けた実証実験を行っているところです。

ため池とは、降水量が少なく河川が少ない地域で、農業用の水を貯めておくための人工的な池のことです。農業が主な用途ではありますが、多様な生物のすみかや地域の人々の憩いの場であり、古いものは地元を守る神様的な存在だったりもします。雨量が多い場合には一時的な受け皿として、洪水や土砂崩れを防ぐ役割も果たします。規模は大小さまざまですが、農林水産省の資料によると、全国に15万4,000カ所もあるそうです。しかしこのため池が、今、危機に直面しつつあるのです。

危機に瀕する全国のため池

危機に瀕する全国のため池

日本は少子高齢化という長期的な課題を抱えていますが、これはため池の管理にも直接影響しています。前述の通りため池は農業で使われますが、その農業の担い手は年々減少中です。農地が縮小していくと、ため池の必要性も低下します。それに加え、近年は台風の大型化に見られるように水害が増加傾向にあります。局地的な激しい降雨に見舞われると、本来洪水を防ぐ役割のあるため池が、逆に牙を向いてくることも起こりえるのです。

特に防災面では、ため池の水位の変化を日々監視する必要がありますが、ほぼ全てのため池が「目視」というアナログな手段で管理されているのが実情です。しかも多くの場合、現地に赴いているのは高齢者。雨が強い日にため池を見に行って、増水に巻き込まれてしまう事故が後を絶たず、また農業と同様に後継者不足が顕著なため、近い将来、管理者が不在で遺棄されるため池が発生しかねない危険な状況にあるのです。

そこで私たちの水位計の活用を、ため池の管理をしている自治体の担当者の皆さまに呼びかけています。

デジタルの押し付けではなく納得して使ってほしい

「ichimill」の水位計は、導入がとても簡単に行える構造であることが大きな特長です。設置作業も池に浮かべるだけですので、環境にもよりますが、1時間程度で完了します。同様に、移設や撤去も短時間で行えます。電力は備え付けたソーラーパネルでほとんど賄っており、完全な暗闇になったとしても6日間程度は稼働できる蓄電池を搭載しています。コスト面でも従来の水位計より、はるかに安価なものとなっています。

デジタルの押し付けではなく納得して使ってほしい

自治体は、防災面での計画や行政のデジタル化、管理を行う人たちの安全確保、コスト面での採算性など、さまざまなアプローチで検討しています。特に人口減少を慢性的な問題として抱える自治体には、持続可能な地域社会づくりの観点からも、多くの好意的なご意見をいただいています。私は、自治体の担当者だけでなく、実際にため池に赴く管理者の方、その多くはご高齢者ですが、そうした皆さんへも丁寧に説明することも重要だと考えています。毎日ため池に足を運ぶのには、それぞれの経緯や理由があり、それは尊重されるべきです。もし、スマホなどのデジタル機器になじみがないことに不安をお持ちでしたら、将来的な人手不足を補うことや、長期的な地域の安全確保に貢献できることを説明し、デジタル化の押し付けではなく、納得してご利用いただけるようにしたいと思っています。

人命に関わるという強い使命感を持って

ソフトバンクはSDGsについて非常に力を入れている会社です。社長をはじめとする役員も積極的に発信していますし、私自身も技術を推し進めることで、実際に物事が変わっていく様子を目の当たりにしています。社内でも啓発の研修などが積極的に行われて、私も例えばマイノリティの人々への考え方などは、以前とはだいぶ変わったと実感しています。一方で、世の中もSDGsという言葉を聞くことが多くなりましたが、中には、果たしてそれが本当に良い影響をもたらすのかと、疑問に思ってしまうことが正直あります。SDGsは誰かが良いことを言っていたからと単純に受け入れるのではなく、ちゃんと自分の頭で考えて、それぞれの是非を判断しないといけないのではと思うのです。

人命に関わるという強い使命感を持って

実はこれまで、自分の携わっている仕事とSDGsを、直接絡めて考えることはあまりありませんでした。水位計は防災対策の役割を担っていますし、人命に関わるものという使命感を私は強く持っています。でも改めて考えてみると、人口減少への対応やアナログでやってきたことのデジタル化など、地域の持続性への貢献という観点でSDGsの要素を強く持つと感じました。目先のことだけでなく、5年後、10年後も使って良かったと言ってもらえるようなサービスを心がけていきたいです。

(掲載日:2022年9月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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今回の紹介した内容は、SDGsの目標「1、2、3、8、9、11、17」に対し、「DXによる社会・産業の構築」に貢献することで、SDGsの達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。

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