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週20時間未満から働く「ショートタイムワーク」って、どんな働き方?

週20時間未満から働く「ショートタイムワーク」って、どんな働き方?

ソフトバンクは、障がいなど何らかの理由で長時間勤務が難しく就労の機会を得づらい方を対象に、「週20時間未満」という超短時間で就労できる働き方「ショートタイムワーク」を2016年に導入し、多様な人々が共に働くことができる環境づくりに取り組んでいます。

最近の取り組み状況についての説明会が開催され、CSR本部 多様性推進課の担当者が「ショートタイムワーク」導入の背景や今後の展開への思いを語りました。

20時間未満から働く「ショートタイムワーク」が生まれた背景

「ショートタイムワーク」は、障がいなどの事情により長時間勤務が困難な方が「週20時間未満」から就業できる働き方のこと。東京大学先端科学技術研究センター(以下、東大先端研)の近藤教授が提唱する「超短時間雇用モデル」を基に近藤教授とソフトバンクで仕組み化し、2016年からソフトバンクで導入されています。

導入の背景には、東大先端研とソフトバンクが2009年から取り組んでいる障がい児支援の取り組み「魔法のプロジェクト」を通して実感した障がい者雇用の現実と、日本型の雇用習慣への課題感があったと言います。

「魔法のプロジェクト」とは、タブレット端末などのICT機器を特別支援学校などに所属する児童・生徒と教員に1年間無償で貸し出して学校や家庭で活用していただき、その実践事例を研究・公開することで、障がいのある子どもたちの学習・生活支援を促進することを目的とした実践研究プロジェクトです。

このプロジェクトを通して「学校教育の後も、それぞれの能力を発揮できる環境・場所が必要だと考えるようになった」と「ショートタイムワーク」の取り組みを始めたきっかけについて、CSR本部 多様性推進課の横溝は振り返りました。

20時間未満から働く「ショートタイムワーク」が生まれた背景

現在、日本型の雇用は、基本的に週40時間以上の労働で、職務定義がなく、新卒の一括採用が主で、長時間労働ができて幅広い業務に対応できるジェネラリストが求められがち。

障がい者の雇用促進については、社会制度として企業などに義務付けた「障がい者雇用率制度」がありますが、基本的には週30時間以上、短時間雇用の場合でも週20時間以上働くことが必要となっています。

20時間未満から働く「ショートタイムワーク」が生まれた背景

障がいや難病などを抱えている18~64歳の障がい者約352万人のうち雇用されている障がい者約58万人を除く、およそ300万人の人が制度の対象からはずれてしまうという現状について、 「雇用率制度の算定対象外となることが、障がい者雇用がなかなか進まないという課題になっているのではないか。短時間であれば働くことができるけれど長時間勤務は難しいという方は、働く機会を得られていないのではないか」と、横溝は指摘します。

20時間未満から働く「ショートタイムワーク」が生まれた背景

業務を定義してから人を雇用、シングルスキルでも活躍できる

「ショートタイムワーク」とは、どのようなものなのか。
一般的な日本の雇用では、先に人を採用して後で仕事を当てるような新卒一括採用方式であるのに対して「ショートタイムワーク」は「仕事を先に決める」のが大きな特徴。

東大先端研の近藤教授が提唱する「超短時間雇用モデル」では、「職務を明確に定義する」「超短時間から働くことができる」「本質的業務以外は柔軟に考慮する」「同じ職場で共に働く」の4つの要件が定義されている。

これを基に企業などの業務担当者は業務内容を細分化し、その中で担当者が少し苦手とする業務や他の人に分担してもらった方が生産性が上がる業務など、依頼したい業務を明確に定義して切り出し、ショートタイムワーカーに依頼するというもの。

ショートタイムワーカーは、定義された業務ができる人を求人募集するので、本人の特性や経験を生かすことができ、業務を依頼した担当者は、空いた時間を自分の担当する「コア業務」と言われる業務や新しい業務に充てる時間が創出でき、生産性の向上にもつながっています。

業務を定義してから人を雇用、シングルスキルでも活躍できる

営業だったとしても、企画力からコミュニケーション力、交渉力、分析力、語学力などさまざまな能力が求められる一般的な雇用と異なり、たとえば「語学力」のようなシングルスキルで活躍するというのが「ショートタイムワーク」の考え方なのです。

個人の特性や経験を生かしてさまざまな業務で活躍中

ソフトバンクのショートタイムワーカーの雇用状況は、2016年に開始してから累計で54人。常時20人ほどの勤務者がいて、年齢は20代から50代まで。累計67の部署で受け入れ実績があります。業務内容は、契約書の処理やデータ入力、郵便物の仕分けなどの事務作業の他、スキルを生かして翻訳や記事作成など、さまざまな業務に職場の他の従業員と同じ環境で取り組んでいます。

個人の特性や経験を生かしてさまざまな業務で活躍中

  • 「ショートタイムワーク」の業務例。雇用に係る費用は雇用する各部署で予算化されている

直近では、アノテーションというAIモデル開発業務において、自身の特性を生かしているショートタイムワーカーも。アノテーションとは、AIの機械学習モデルの開発に必要な教師データを作る際に、画像などの範囲を指定しタグをつける作業のこと。集中力や正確さ、根気が求められる業務で、就労支援機関を通して適正のある方を募り採用したところ、業務内容が本人にとてもマッチしていて、アノテーション業務の経験は全くなかったものの、既に1,000以上のアノテーションを担当。高品質なデータの作成により、開発スピードの向上にも貢献していると言います。

個人の特性や経験を生かしてさまざまな業務で活躍中

「ショートタイムワーク」が当たり前の選択肢になる世の中へ

現在ソフトバンクで働くショートタイムワーカーの就業時間は、週30時間以上の勤務換算で積算すると7.4人分の雇用創出にまで拡大。受け入れ部署やワーカー自身の工夫などを事例集にまとめてシェアすることで、スムーズな雇用につなげる工夫の他、日報などによる業務内容の確認体制、ワーカー向けの相談フォームや、3カ月ごとに面談の場を作るなど、双方が安心して働ける環境づくりも行われています。

「ショートタイムワーク」が当たり前の選択肢になる世の中へ

受け入れ部署の効果としては、生産性の向上の他にも「同じ部署で共に働くことで障がいのある方への理解が深まった」という声があり、ショートタイムワーカーからは「収入が得られるということ以上に、働けるという意識からの自信を獲得できている。働けて嬉しい」という声があると言います。

「ショートタイムワーク」が当たり前の選択肢になる世の中へ

今後の展開について横溝は「障がいのある方だけでなく、難病や闘病中の方、子育て中や介護中の方などが時間や場所、個人の状況に縛られず、自分らしく活躍できる環境作りを『ショートタイムワーク』を通して目指していきたい。多様な人々が共に働ける働き方が当たり前の選択肢になっていること、求人情報などで選択肢として当たり前に選べたり、多様な働きかたへの後押しにつながっていくような、そんな取り組みにしていきたいと考えています」と語りました。

  • ソフトバンクでは人事部が行うフルタイムの正社員の障がい者採用と、CSRが担当部署となる週20時間未満の「ショートタイムワーク」があり、後者は雇用機会の創出の目的でアルバイトの形で運用されています。

「ショートタイムワーク」を社会に普及させる

ソフトバンクは企業/自治体と共に「ショートタイムワーク」の普及に取り組む「ショートタイムワーク・アライアンス」を2018年に発足させ、現在216の企業・団体が参加しています。

ショートタイムワークアライアンス 特設ページ

(掲載日:2022年9月29日)
文:ソフトバンクニュース編集部