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「空の道」がつなぐ災害時のリアルタイム連携。和歌山県すさみ町で進歩する自動航行ドローンによる災害対策

「空の道」がつなぐ災害時のリアルタイム連携。和歌山県すさみ町で進歩する自動航行ドローンによる災害対策

紀伊半島の南西部に位置する和歌山県すさみ町は、南海トラフ地震による甚大な被害が予測されており、対策が急務となっています。ソフトバンクは、これまでもこのすさみ町と連携し、自動航行ドローンを活用した先進的な防災対策を推進してきました。今回は、近隣自治体や自衛隊と連携するなど、ドローンを活用した防災体制強化の最前線について話を聞きました。

ソフトバンク株式会社 プロダクト技術本部 関西IoT技術部

小嶋 祥吾(こじま・しょうご)

2023年からすさみ町でのドローンを使用した実証実験に参加。昨年は国家資格である「二等無人航空機操縦者技能証明」を取得し活動範囲を広げている。趣味はドローンレースで全国のレースに出場すること。

ドローンのリアルタイム配信を共有し、近隣の自治体や自衛隊との連携を強化

すさみ町は、紀伊半島の海岸に面した町であり、南海トラフ地震が発生すると津波により海岸沿いの国道が寸断され、集落や避難所の孤立が複数発生すると想定されています。そのため、すさみ町とソフトバンクはこれまで、自動航行するドローンを使って災害時における避難誘導やリアルタイムでの初動・2次災害調査、災害物資輸送などに連携して取り組んできました。

しかし、災害対策にはまだまだ課題も。その一つが、災害発生時における情報共有です。これまでは、災害状況を隣接する自治体同士で共有する際、データ送信や電話連絡などが必要で、共有に時間を要していました。今回、さらなる防災体制強化のため、すさみ町は自治体をまたいだ防災ドローンによる点検情報共有の検証を実施。この検証では、防災観光ポータルサイト「すさみしるべ」上でドローン映像をライブ動画およびアーカイブ配信することで、迅速な情報共有を可能にします。

海岸線沿いを確認しているドローンからの空撮映像

「特に市町村の境界付近の状況確認は、どちらの町役場からも距離があり、時間がかかってしまっていました。しかし、ドローンで確認した映像を共有することで、手間と時間を大幅に削減できます。検証に参加した、すさみ町に隣接する串本町の参加者からは『災害時に映像で情報共有ができるため、現地に行って確認する場合と比べて、安全面や時間が削減できると感じる』といったコメントをもらいました」

また、隣接する自治体だけではなく、自衛隊ともドローン映像を活用した災害時の連携を強化。自衛隊は災害発生時、事前にどこの海岸沿いから上陸できるのか、どこにどれくらいの被害が出ているのかを、ヘリコプターによる調査で把握した上で災害派遣を行います。ドローンの映像を自衛隊にいち早く共有することで、自治体の判断における参考材料となり、初動対応の時間短縮につながることが期待されます。

ドローン映像を自衛隊が確認している様子

「昨年度に実証を行った際、自衛隊も視察に訪れており、ドローン映像を迅速に共有することで自衛隊の状況判断に役立てられないか、という意見がありました。そうした背景が今回の取り組みにつながっています。ドローンからの映像により、障害物の有無や着岸後の物資輸送の状況把握を事前にできることで、自衛隊による検討の効率が上がるなど、実際に活用できる可能性があることが確認できました」

着陸ポイントを増やし、より柔軟な着陸判断を可能に

すさみ町では、町内でドローン飛行ができる20本以上の「空の道」を設定しています。この「空の道」を安全に航行するためには、緊急着陸ポイントの確保が非常に重要に。緊急着陸ポイントがあることで、飛行中に気象の急変や機体トラブルが発生した場合や、近くにヘリコプターが接近したりした場合でも、迅速に着陸の判断ができるようになります。すさみ町では、より柔軟な着陸判断を実現するため、自治体所有地だけでなく、住民の協力のもと、私有地にも複数の緊急着陸ポイントの設置に取り組んでいます。

「地権者に対して、しっかりと理解をしてもらい合意を得るために、3Dマップを用いた航行ルートや各着陸ポイントの位置関係を視覚的に分かりやすく説明しました。その結果、今回参加された地権者の全員から合意を得られました」

ドローン航行ルートの3Dマップ

平時使用としても活用し、防災×地方創生の両立を目指す

ドローンは平時でも、地域の課題解決に活用されています。すさみ町は道が細い場所が多く点在し、移動が大変な高齢者も多い地域です。そのため、ドローンの緊急着陸ポイントを平時の物流拠点としても活用し、病院からの医薬品やお弁当などをドローンで届ける実証実験にも取り組んでいます。


「私たちは令和3年から、すさみ町と連携してドローンを活用した災害対策に取り組み、避難誘導や被害状況の把握、災害時の物資輸送検証など、実証を重ねる中で多くの知見を得てきました。そして今回のドローンを活用した広域連携での防災の仕組みは、すさみ町にとどまらず、全国の自治体で応用可能であると考えています。今後は、AIを活用した映像解析や自動航行の高度化などにも取り組みながら、このモデルを各地域に広げ、災害に強い地域づくりに貢献していきたいと考えています」

(掲載日:2026年1月29日)
文:ソフトバンクニュース編集部