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ブラインド型訓練で見えた災害時の事業継続力。全社BCP訓練を通して実効性のある体制へ

ブラインド型訓練で見えた災害時の事業継続力。全社BCP訓練を通して実効性のある体制へ

今後発生が懸念されている大規模災害の一つ、南海トラフ地震。国の想定では、広範囲にわたって甚大な被害が発生する可能性が指摘されています。情報通信という現代では欠かすことのできない事業を展開する、ソフトバンクなどの通信事業者には、災害発生時の事業継続が求められます。

ソフトバンクは、大規模災害の発生を想定したBCP(事業継続計画)訓練を毎年実施しています。昨年は、首都直下地震を想定して発災直後の対応を中心に訓練を実施。今年2026年はその取り組みを踏まえ、初動対応から後対応までの一連の動きを確認しました。

今回の訓練の狙いや課題について、担当者に話を聞きました。

ソフトバンク株式会社 法務・コーポレートガバナンス本部 リスク管理室 リスク対策部

間宮 優(まみや・ひろ)

シナリオを知らせない「ブラインド型訓練」で大規模災害時の行動を検証

「紀伊半島沖を震源とするマグニチュード9.1、最大震度7の地震が発生——」

これは実際に発生した災害ではなく、ソフトバンク社内で行われた全社BCP訓練のために用意されたシチュエーションでの設定です。このような大規模な災害が発生したときに、各部門がどのように対応できるのか。事前に訓練のシナリオを伝えない「ブラインド型」で行い、その場で与えられる被害状況などの情報を基に、各部門から参加した担当者が都度考えながら状況判断をし、災害への対応を行っていきます。

また、今回の訓練は、ソフトバンクのグループ会社であるLINEヤフー株式会社やPayPay株式会社と共同で行い、災害時におけるグループ間での連携や情報共有体制を確認し、組織としての本当の対応力を確認することを目的としました。

訓練開始 — 南海トラフを震源とするマグニチュード9.1、最大震度7の地震が発生

今回の訓練では、休日の深夜3時に、紀伊半島沖を震源とするマグニチュード9.1、最大震度7の巨大地震。これにより、東海・近畿・山陽・四国地方を中心に甚大な被害を受け、さらにその5分後には、東海地方から九州地方の太平洋沿岸にかけて大津波警報が発令されました。9割のエリアで停電が発生し、携帯電話・スマートフォンによる通信が不可になるという非常に厳しい状況を想定しました。

災害が発生すると、各部門が一斉に動き出します。すぐに緊急災害対策本部が設置されると、基地局などの通信設備やシステム、設備への被害状況の確認や、社員の安否確認などの情報収集を行い、対策本部に情報を報告します。同時に、技術・IT部門では通信ネットワークの復旧作業、営業部門はお客さま向けのサポート対応、管理部門は社員への情報伝達など多岐にわたって対応を進めます。

ソフトバンクニュース編集部が属する広報部門でも、各部門から断続的に集まる情報を整理しながらメディア対応を行ったり、公式サイトやSNSでの情報発信を行います。

11時間後に最大震度5強の余震が発生。再び情報収集・整理が必要に

各部門が情報収集や復旧対応に追われる中、発災から約11時間後に最大震度5強の余震が発生しました。再び、基地局や通信設備、システムなどの被害状況の確認や、社員の安否確認などの情報収集が必要になります。集まった追加情報を踏まえて、対策本部への報告内容を見直さなければなりません。

間宮 特に難しかったのは、情報が完全でない中で優先順位を判断することです。時間が経つにつれて、各部門から膨大な情報が集まってきますが、その中から対策本部に報告しなければならない重要な情報を、取捨選択して簡潔に整理する判断力が求められました。

時間経過後の対応を通して見えてきた課題と対応力

BCP(事業継続計画)が本当に機能するかどうかは、事前に想定したプロセスに沿って各部門が対応できるか、さらに想定外の事態が起きたときに臨機応変に対応できるかが、分水嶺になるそうです。

間宮 各部門との連携では、技術・IT部門が収集した通信設備やシステムへの影響、営業部門がお客さまへの影響をそれぞれ整理し、それらの情報を管理部門が全社視点で取りまとめて報告するという一連の流れを確認することができました。また同時に、グループ会社のLINEヤフーやPayPayとも情報を共有しながら、グループ間で迅速に連携できる体制の実効性も検証することができました。各部門がバラバラに動くのではなく、会社にとって最善の形を考え、組織として確かな情報をまとめ上げる。そのプロセスを確認できたことは大きな収穫でした。

今回の訓練では、初動対応だけでなく、時間経過後の対応まで確認しました。その狙いを教えてください。

間宮 大規模な災害が発生した場合、その災害対応は短時間で完結するものではありません。昨年の訓練では、地震発生直後の安否確認や被害情報の第一報といった初動対応が正しく行えるかを検証しました。一方、南海トラフ地震のような広範囲に及ぶ災害では、発災直後に把握できる情報はごく一部に限られ、時間の経過とともに少しずつ被害の全体像が明らかになっていくことが想定されます。そのため、一定時間が経過した後にも、都度集まってくる被害情報や各部門の対応状況を適切に取りまとめ、経営判断につながる形での報告ができるかを検証することで、全社BCP体制の実効性を一段高めることを目指しました。

全国のさまざまな拠点から420人以上のBCP担当者が訓練に参加

訓練を終えて、参加者の反応はいかがでしたか?

間宮 緊急対策本部会議への報告内容に関して、初動対応よりも続報の方が難しかったとの声が多くありました。発災後に徐々に増え続ける情報から、優先して報告すべき情報を整理する必要がありますが、今回の訓練ではその準備中に余震が発生したことで、一度まとめた内容を速やかに見直す必要があり、実際の災害さながらの対応が求められたことが印象に強く残りました。

また訓練中は、参加者全員にオンライン会議に参加してもらい、リアルタイムに災害のシナリオを共有しました。画面上にはAIで生成したニュース映像やナレーション音声を流し、実際の報道を見聞きしているかのような状況を用意しました。視覚と聴覚の両方から絶え間なく情報が入る設計にしたことで、参加者は「発災中」という緊張感の中で判断を迫られ、これまでにない臨場感のある訓練にできたと思います。

訓練のアップデートを重ね、より実効性のある強靭な体制を

今回の訓練を通して見えてきた課題や今後の抱負を教えてください。

間宮 時間経過とともに増大する情報の整理や優先順位付けなど、今後磨くべき具体的な課題が明確になりました。あわせて、LINEヤフーやPayPayなどグループ各社との連携や役割分担をさらに具体化し、グループ全体の事業継続力も強化していかなければなりません。

災害はいつどこで発生するか分かりません。ソフトバンクには、情報通信という社会インフラを担う企業として、どのような状況下でも事業を継続する責任があります。今回、ブラインド型訓練にAIを取り入れるなど内容を一段進化させたことで、実践に近い形で組織の対応力を確認する機会にできました。訓練の参加者からも「確立された体制があるからこそ、想定外の事態でも冷静に動けた」という声を多くいただきました。社員一人一人の意識を高めるとともに平時からの備えを積み重ね、BCPを単なる計画に留めることなく、実効性のある強靭な体制へと磨いていきたいと思います。

(掲載日:2026年3月11日)
文:ソフトバンクニュース編集部