
ソフトバンク株式会社は、2026年度から2030年度にかけての新たな中期経営計画を発表しました。通信インフラの企業からAI時代の社会インフラ企業へ進化する――。今回の中期経営計画では、成長戦略として「Activate AI for Society」を掲げ、AI(人工知能)を社会全体へ実装していく次の5年間の姿が示されています。この記事では、その概要を解説します。
目次
AI時代の社会インフラ企業への進化を掲げた長期ビジョン

今回の中期経営計画の背景には、ソフトバンクが掲げる2030年度までの長期ビジョンがあります。ソフトバンクは2023年5月の決算説明会で、2021年度を起点とし、2030年度をゴールとする長期ビジョンを示しました。これは、10年間で次世代の社会インフラを構築するという事業目標であると同時に、ソフトバンク自身の変革に向けた決意表明でもありました。
この長期ビジョンは3つのフェーズで構成されています。2021~2023年度の第1フェーズでは必要となる技術の研究開発、2023~2025年度の第2フェーズでは、AIの事業化に向けた技術実装を進めてきました。そして、2026年5月11日に行われた2025年度の決算説明会で発表された内容が、長期ビジョンの総仕上げとなる第3フェーズに当たります。
「Beyond Carrier」の次へ、「Activate AI for Society」

第2フェーズまでのソフトバンクは、「Beyond Carrier」をスローガンに掲げ、携帯電話やブロードバンドなどの通信ネットワークを基盤に、LINEヤフーやPayPayなどのアプリやサービス、法人向けの各種DX(デジタルトランスフォーメーション)関連のソリューションを提供してきました。近年はそこへAIを加え、より高度なサービスを提供するための準備を進めてきました。
AIは現在、学習段階から高度な推論を行う段階へ移行し、社会の中で価値を生み出すフェーズに入りつつあります。
こうした準備が整う第3フェーズでは、「Activate AI for Society」を新たに掲げました。全ての事業でAIの可能性を起動させ、社会への実装を進めることで、その恩恵を社会の隅々まで届けるとともに、企業価値の向上を目指します。
事業セグメントについても見直しを行い、AIインフラやAIサービスを中心とした構造へ再編。AI社会インフラ企業への進化を加速させます。

今後、AIはチャットによる対話だけでなく、自律的に判断・行動しながら人や企業を支援する存在へと進化していきます。物流、医療、金融、製造など、あらゆる産業でAIが常時稼働し、社会インフラそのものを支える時代が到来しようとしています。
ソフトバンクは、この変化を「AIを構築する時代」から、「AIを社会へ実装する時代」への転換と捉えています。今回の中期経営計画は、その社会実装を本格化させるための5年間とも言えます。
AI共存社会を支えるAI計算基盤とAIデータセンター

さまざまな場面で活用が広がるAIですが、それを支える上で欠かせないのが高度なAI計算基盤とAIデータセンターです。
AIの学習や推論には、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)を用いた大規模な計算処理が必要となります。ソフトバンクはすでに1万基以上のGPUを搭載したAI計算基盤を稼働させており、単に数をそろえるだけでなく、高速かつ高度な計算ができるよう最適化された、国内最大規模のAI計算基盤を構築しています。
一方で、強力なAI計算基盤には大量の電力が必要となります。こうした課題に対し、ソフトバンクは分散型AIデータセンターの構築を進めています。

例えば、北海道苫小牧市や大阪府堺市などを中核のデータセンターとして分散配置するほか、中小規模のデータセンターを全国各地に展開することで、電力の地産地消を図り、効率的な利用を推進します。
さらに、AIエネルギーマネジメントシステムの開発や革新型バッテリーの事業化、再生可能エネルギーの活用にも取り組み、AI需要の拡大による電力需要に対応しながら、2030年度のカーボンニュートラル達成を目指しています。
AIと電力、通信、エネルギーを一体で設計することで、持続可能なAI社会インフラの構築を目指しています。
「Sarashina」と「クリスタル・インテリジェンス」が切り開くAI活用

こうしたAI計算基盤とAIデータセンターというインフラを整えた上で、ソフトバンクはさまざまなAIサービスを展開していきます。まず、金融・電力・医療・物流など、国内15分野の重要インフラを担う約3,000社に対し、ソブリン性を備えたクラウドとともに、AIサービスを提供します。
経済安全保障の重要性や地政学リスクが高まる中、データやシステムを自国内で保持・管理したいというニーズが高まっています。ソフトバンクは、こうしたニーズに対応した安全性の高いクラウドサービスを提供していきます。
大規模言語モデル(LLM)についても、ソフトバンクの子会社であるSB Intuitionsが開発を進める国産LLM「Sarashina」を展開。金融、電力、自動車、行政など、それぞれの業界や企業に特化した形で導入を進めます。
また、今後は自律的に業務を行う「AIエージェント」の活用が企業活動において重要になっていきます。将来的には、企業内のAIエージェント同士が自律的に連携することで、企業活動そのものを支援することが想定されています。
ソフトバンクは、こうしたAIエージェントの実装を通じて、業務効率化だけでなく、新たな働き方や産業構造の変化も見据えています。

ソフトバンクは、その中核となる「クリスタル・インテリジェンス(Crystal Intelligence) 」を2026年中にサービスを提供開始予定です。まずは大企業への導入を進めながら、長期ビジョンの第3フェーズの5年間を通じて、企業活動のさまざまな場面へAIを実装していきます。
コンシューマ、金融、LINEヤフーでもAI活用を加速


中期経営計画では、AIインフラやAIサービスが中心テーマとなっていますが、主力であるコンシューマ事業や、今後の成長領域であるファイナンス事業についても重点施策が盛り込まれています。
携帯電話をはじめとするコンシューマ事業では、2026年4月に発表した新料金プランの浸透を図りながら、PayPayを中心としたグループ経済圏の活用や、長期利用ユーザーへの施策強化を進めています。

また、お客さまとの接点であるショップ運営や、サービスの基盤となる通信ネットワークの構築・整備においてもAIを積極活用し、さらなるサービス品質向上や新たなライフスタイルの提案を目指します。

ファイナンス事業では、PayPayやPayPayカードを中心とした決済サービスの拡大に加えPayPay銀行の成長、グループ企業とのシナジー創出を進めます。
特に、米ナスダック市場への上場を果たしたPayPay株式会社は、グローバルな事業展開を追求するとともに、国内でも新規サービスの展開を検討し、さらなる事業拡大に挑戦していきます。
また、多くの顧客接点を持つLINEヤフーでは、AIエージェントサービスとして、一般ユーザー向けの「Agent i」、企業や店舗向けの「Agent i for Business」を展開。AIエージェントによる利便性向上や新たな顧客体験の創出を通じて、事業成長を目指します。
2030年度の財務目標と継続的な増配

こうした事業成長を通じて、ソフトバンクは2030年度の財務目標として、連結営業利益1.7兆円、連結純利益7,000億円を目指す方針を示しました。

また、株主還元については、2026年度の普通株式1株当たり配当金を8.8円に増配する予想を発表し、中期経営計画期間において利益成長に合わせた継続的な増配を目指す方針を掲げました。
今回の中期経営計画では、AIを社会全体へ実装し、企業価値を伸ばしていく姿勢が明確に打ち出されました。
通信、AI、データセンター、電力、金融など、さまざまな事業を横断しながら、ソフトバンクはAI時代の社会インフラ企業への進化を加速させていきます。
中期経営計画
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(掲載日:2026年5月29日)
文:ソフトバンクニュース編集部





