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AIは社会で使われてこそ価値になる。若手エンジニアが挑む国産生成AIの社会実装

AIは社会で使われてこそ価値になる。若手エンジニアが挑む国産生成AIの社会実装

ソフトバンクは、AI事業へのシフトを進めるとともに、AI時代を支える次世代社会インフラの構築に向けた取り組みを推進しています。AI活用がさまざまな分野へ広がる中、その実現に向けては、技術開発だけでなく、活用方法の検討や社会実装までを見据えた取り組みが求められています。
今回、ソフトバンクでAIの企画、開発、社会実装に携わる3人の社員に、それぞれの仕事やAI社会を支える基盤づくりへの思いについて話を聞きました。

AI時代を支える。それぞれの立場で挑むミッション

AI時代を支える。それぞれの立場で挑むミッション

まずは、3人がそれぞれどのような仕事に取り組んでいるのか、話を聞きました。

福地 成彦(ふくち・あきひこ)

SB Intuitions株式会社 プロダクト開発本部Sarashina開発部

福地 成彦(ふくち・あきひこ)

生成AIの研究開発を担当。利用シーンを意識しながら、実際の業務で活用しやすいAIの開発に取り組んでいる。

五十嵐 凌汰(いがらし・りょうた)

ソフトバンク株式会社 次世代戦略本部 第1部 企画開発課

五十嵐 凌汰(いがらし・りょうた)

AI活用の企画・推進を担当。お客さまの課題を踏まえながら、業務への活用方法の検討や提案を行っている。

太田 康貴(おおた・やすたか)

ソフトバンク株式会社 次世代事業開発本部 戦略渉外室

太田 康貴(おおた・やすたか)

新しい技術を社会へ広げるための取り組みを担当。事業化や社会実装に向けた環境づくりに携わっている。

皆さんの担当業務について教えてください。

福地 「生成AIの研究開発に携わっています。50名を超える開発チームの一員として国産LLM『Sarashina』の開発に取り組んでおり、性能を高めるだけでなく、利用される場面を想定しながら、利用する人にとって使いやすいAIを開発することを大切にしています」

五十嵐 「AIを自治体や企業の業務で活用してもらうためのソリューションの企画・開発を担当しています。国産生成AI『Sarashina』を活用しながら、お客さまの課題を聞き、どのような業務で役立てられるのかを考えたり、プロトタイプを開発したりしています。『作って終わり』ではなく、『どうすれば使ってもらえるのか』を考えることが私の役割だと思っています」

太田 「AIなどソフトバンクの新しい技術の社会実装に携わっています。どれだけ優れた技術でも、使われなければ意味がありません。技術を実際のサービスや事業につなげる環境をつくるため、社内外や関係省庁との連携や仕組みづくりに取り組んでいます」

AIとの共存社会に向けて次世代インフラを構築し、継続可能な未来を支える

ソフトバンクでは、AIを社会実装するための基盤づくりが進められています。皆さんは、ご自身の仕事をその中でどのように位置付けていますか。

福地 「日本のAIインフラのコア技術をつくる役割だと考えています。単に海外モデルとの性能を競うのではなく、『何を作れば日本の社会課題を解決できるのか』『日本語や日本の文化・商習慣に合ったAIとは何か』を考えながら開発を進めています。そうした視点で、日本に最適化されたAIの基盤づくりに取り組んでいます」

太田 「AI技術を社会で活用できる形にしていくことです。AI活用を推進するためには、行政と民間の双方がそれぞれの役割を果たしながら連携していくことが欠かせません。行政は制度整備や方向性の提示、民間は技術開発や社会実装を担う。その両者が共通の価値観を持ち、一つのチームとして取り組めるよう橋渡しをすることが私のミッションです」

五十嵐 「こうして開発された技術を、実際に自治体や企業の業務課題の解決につなげていくのが私の仕事です。技術を実際の業務価値につなげるためには、お客さまの業務プロセスを丁寧に伺いながら、『AIに何を任せ、人がどこで判断するのか』『どの業務に組み込めば本当に価値が生まれるのか』を設計していくことが重要だと思っています。プロトタイプを作り、実際に使っていただきながら改善を重ねることで、技術を現場の課題解決につなげていくことにやりがいを感じています」

利用シーンを見据えながら、価値あるAI活用を実現する

利用シーンを見据えながら、価値あるAI活用を実現する

社会で実際に使われるAIを生み出し、広げていくために、3人はどのような視点で仕事に向き合っているのでしょうか。利用シーンを想定した開発や、お客さまに価値を届けるための取り組みについて語ってもらいました。

利用者の声から価値を磨く

AIを実際に活用してもらうためには、どのような工夫が必要だと思いますか。

太田 「AIで何ができるのか、利用する人の課題をどう解決できるのかが伝わって初めて活用につながると思っています。お客さまからも『どんな業務で活用できるのか』『導入するとどんな効果が期待できるのか』といった質問をいただくことが多いです」

五十嵐 「そうですね。例えば、『制度や補助金に関する情報を、必要な人が探しやすくする』といった活用方法を提案するとき、資料だけで説明しても、なかなか利用イメージが伝わらないことがあります」

利用イメージをどのように伝えているのでしょうか。

五十嵐 「簡単なプロトタイプをつくり、実際に触ってもらうこともあります。資料で説明するだけではなく、利用イメージを確認していただくことで『この表現の方が分かりやすい』『こういう使い方もできそう』など、より踏み込んだフィードバックをいただくことができ、開発側では気づけない改善ポイントが見えてくるんです」

福地 「開発の現場としても、実際の利用シーンが見えていると利用する人がどんなことを求めているのかを考えながら開発や改善ができるので勉強になりますね」

AI社会を支える基盤としての国産生成AIの重要性

太田 康貴(おおた・やすたか)

AI活用への期待が高まり、利用シーンが広がる中で、それを支える基盤の重要性も増しています。さまざまなAIサービスやソリューションが生まれる中、国産生成AI「Sarashina」にどのような期待が寄せられているのでしょうか。

皆さんは現在、国産生成AIの「Sarashina」の開発に携わっていますが、どういった分野でのニーズがあるのでしょうか?

太田 「特にニーズが大きいと感じているのは行政領域です。行政では機密性の高い情報や個人情報を扱う場面も多く、安全・安心に活用できる環境が求められます。そうした中で、国内で開発・運用される生成AIへの期待は大きいと感じています」

五十嵐 「デジタル庁で実施した案件では、補助金や行政手続きなど多くの情報を扱う一方で、それらが複数の文書に分散していたり、表現が複雑だったりするため、必要な情報にたどり着くまで時間がかかるという課題がありました。
そこで『Sarashina』を活用し、補助金情報から受給対象者を類推して補足情報として提示する取り組みを行いました。行政サービスは、必要としている人に正しく届くことが重要です。だからこそ、日本語や日本特有の制度文脈を踏まえながら、複雑な情報を整理できる『Sarashina』への期待は大きいと感じています」

五十嵐 凌汰(いがらし・りょうた)

行政領域では生成AIに対する期待も大きい一方で、求められる要件も異なるのではないかと思います。実際にどのような特徴がありますか。

五十嵐 「行政領域ならではの特徴として感じるのは、『誤解なく、正しく届ける』ことへの期待の大きさです。行政が扱う情報は、制度や補助金、行政手続きなど利用者の意思決定に関わるものが多いため、分かりやすいだけでなく、その情報が何に基づいているのかを示すことも求められます。AIに任せる部分と人が判断する部分を明確にしながら、引用元の提示や確認フローも含めて設計していくことが重要だと感じています」

太田 「そうですね。行政領域では、企業以上に情報の取り扱いに厳格さが求められると感じています。私自身、関係省庁の方々と議論する機会もありますが、行政への信頼は社会の基盤そのものです。そのため、制度やルールを正確に伝えることはもちろん、個人情報や機微な情報をどのように扱うのかといった観点も非常に重視されています。AIを活用する際にも、安全性や説明責任を担保しながら進めていくことが求められていると感じています。開発の観点からはどのように見ていますか」

福地 「意外かもしれませんが、開発の立場から見ると、行政領域だからといって特別なユースケースを想定する必要はあまりありませんでした。デジタル庁が公開している生成AI活用事例を見ても、RAGやエージェントなど、生成AIの活用方法としては非常に模範的な使われ方がされています。むしろ、行政文書らしい表現への対応といった細かな調整以上に、エージェント性能や業務フローへの適応力など、幅広い業務で活用できる汎用的な能力を高めることを意識して開発しています」

安心・安全なAI活用を支える基盤を目指して

福地 成彦(ふくち・あきひこ)

利用される場面によって求められることが異なる中で、開発ではどのような点を意識しているのでしょうか。

福地 「研究開発をしていると、どうしても性能の向上に目が向きがちですが、私たちが意識しているのは実際に利用される場面を想定しながら開発することです」

五十嵐 「実際にお客さまとお話ししていても、利用する場面によって求められることはかなり違うと感じますね。開発側では、その違いをどのように見ているのですか?」

福地 「そうですね。例えば、同じAIチャットでも、利用される場面によって求められる応答は変わります。一般向けのサービスであれば親しみやすい表現が求められる一方で、行政領域では簡潔で誤解のない説明が重視されます。『日本語に強い」と一言で言っても、実は場面ごとに評価されるポイントは異なるんです。質問への答え方一つをとっても、実際に利用される場面を想定しながら細かくチューニングを行っています」

AIが社会のさまざまな場面で活用される中で、皆さんが携わっている「Sarashina」をはじめとするソブリン性を備えたAIにはどのような役割が求められると思いますか。

太田 「AI活用が広がる中で、ソブリン性を備えたAIには日本の社会や産業を支える基盤としての役割が求められていると思います。行政や企業にとって、データやノウハウは重要な資産です。そうした情報を安全に管理しながら活用していくためには、国内で開発・改善を続けられる環境が欠かせません。特に行政領域では個人情報など機微な情報を扱う場面も多いため、安全・安心に利用できる基盤への期待は大きいと感じています」

福地 「私も同じように感じています。まず、国内で開発・運用されるAI基盤があること自体に大きな意義があると思っています。例えば、海外サービスの利用制限などによって突然使えなくなるリスクを抑えられることも、ソブリン性を備えたAIの重要な役割の一つです。
その上で、開発者としては日本語を正しく理解し、自然に生成できることが最も重要だと考えています。ただ、日本語に強いだけでは実際の業務や行政の現場では十分ではありません。エージェント機能やツール連携、コーディング能力なども含めて総合的な性能を高めていく必要があります。さらに、医療や行政など、それぞれの分野に最適化されたモデルを開発していくことも今後求められていくと思います」

五十嵐 「まさにそうですね。お客さまと話していると、『機密性の高い情報や社内データをAIで活用しても大丈夫なのか』という不安の声を聞くことがあります。だからこそ、ソブリン性を備えたAIには高性能なモデルであることだけでなく、データをどこで管理するのか、問題が起きたときに国内で改善できるのかといった安心感も求められていると感じています。行政に加えて、医療や教育、コールセンターなど、専門性の高い情報や個人情報を扱う分野でも活用の可能性は広がっていくと思います」

AIが当たり前になる社会へ。それぞれが描く次の挑戦

AIが当たり前になる社会へ。それぞれが描く次の挑戦

AI時代の社会基盤づくりに向けて、今後どのようなことに挑戦していきたいと考えていますか。

福地 「生成AIはテキスト生成だけではなく、画像や音声などさまざまな領域へ広がっています。今後は、そうしたマルチモーダルな国産AIの開発をさらに進めていきたいですね。例えば音声領域では、日本語の読み間違いが少ない音声AI、画像領域では日本語のビジネス資料を理解できるVLM(Vision Language Model)などの開発にも挑戦していきたいと考えています」

五十嵐 「AIを単なる効率化ツールとして導入するのではなく、人とAIがそれぞれの強みを生かしながら、より大きな価値を生み出せる仕組みづくりに挑戦していきたいです。これからは、AIが一部の先進的な企業だけで使われるものではなく、あらゆる自治体や企業の業務に自然に組み込まれていくと思います。そのときに重要になるのは、既存業務の一部を置き換えることではなく、AIがあることを前提に業務やサービスそのものを再設計することです。人とAIが共に価値を生み出せる社会を、一つずつ形にしていきたいと思っています」

太田 「これからは、AIなどのデジタルインフラを『作る・持つ』だけではなく、それを社会の中で活用し、社会課題の解決につなげていくことが重要になると考えています。行政とも連携しながら、AI活用の実例を一つずつ積み重ね、それを社会全体へ広げていきたいです。そうした取り組みを通じて、AI時代の社会基盤づくりに貢献していきたいと思っています」

(掲載日:2026年6月30日)
文:ソフトバンクニュース編集部