
災害時、通信は人々の命と安心を支える重要な社会インフラの一つです。通信ネットワークを支える社員は、日々の業務や訓練を通じて、通信をつなぎ続ける責任と使命に向き合っています。中でも被災地での復旧を経験した社員は、現場を目の当たりにした経験があるからこそ、責任や使命の重みをより強く実感しています。
ソフトバンクでは、復旧対応に携わった先輩社員が当時の記憶や経験を若手社員に伝え、通信インフラを担う責任と使命を継承する取り組みをしています。大規模災害における復旧対応を経験していない入社2年目の社員は、先輩社員からどのような話を聞き、何を感じたのでしょうか。

話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 エリア建設本部 東北ネットワーク技術部 技術推進課
下澤 心一(しもざわ・しんいち)
2025年4月にソフトバンク株式会社に入社し、東北エリアでネットワーク運用業務に従事。
「あの日」を経験した先輩社員から記憶や経験を受け継ぐ
普段はどのような業務を担当しているのか教えてください。
携帯電話基地局の機器の保守保全などを担当しています。基地局の設備に不具合が起きたときに復旧対応を行ったり、老朽化した設備の対応などをしています。
災害が起きたときには、通信エリアを確保するための一次対応も担当します。例えば、基地局が被害を受けて使えなくなった場合には、移動基地局車を出してつながらなくなったエリアをカバーしたり、基地局の復旧プランを考えたりします。

保守保全の役割を担うようになってから、大きな障害復旧の現場に臨む機会はあったのでしょうか?
入社してから1年と数カ月が経つのですが、幸いなことに入社してから大規模な災害は発生していません。一方で復旧の実践経験がないことに、徐々に危機感を抱いていました。訓練では、動き方や機材の組み立てなどを丁寧に教えてもらえますが、発災時はそうした余裕はありません。もし今、大きな災害が起きた際に、「現場で臨機応変に対応できるのか」「現場の力になれるのか」と考えたこともあります。
同じように災害時の復旧を経験していない社員がいますが、そうした状況に対してどんな取り組みが行われているのでしょうか?
私の所属する東北ネットワーク技術部では、東日本大震災の記憶や経験を風化させないために、当時を知る先輩社員から若手社員へ、経験や教訓を伝える機会があります。
毎年3月に、震災時の通信ネットワーク復旧に携わった社員から当時の対応を振り返る継承の場が設けられています。震災で何が起きたのか、通信を復旧させるためにどのような対応が行われたのか、現場でどのような思いを持って動いていたのかを、改めて受け取る機会になっています。


また、継承の場だけでなく普段の業務の中で先輩社員から直接当時の話を聞くこともあります。私自身も、東日本大震災の復旧対応を経験した先輩社員に個別に、当時の被害状況や復旧現場の様子について詳しく聞きました。
想像よりはるかに厳しい災害復旧の現場

震災当時の様子や復旧対応に対してどんなイメージを持ちましたか?
震災当時の被害状況がとにかく想像以上に過酷だったことに驚きました。沿岸部の通信設備は津波でほとんど流されてしまい、連絡を取ることも難しく、情報がない中で判断する必要があったといいます。また、通信だけでなく、道路や電力など復旧に必要な周辺のインフラも大きな被害を受けていました。そうした現地の安全性や移動手段、資材、人員、被災状況などから何を優先するのか考え、行動しなければならない。自分が思っていた「復旧対応」のイメージよりも、はるかに複雑で厳しいものだと感じました。


先輩から聞いた話の中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
中でも印象に残っているのは、上長から「全員一度自宅に帰って家族を確認してくるように」という指示があったという話です。通信の復旧にあたる社員自身も被災者であるため、家族の安否が分からない状況は大きな不安につながるとの考えからだったそうです。自分の立場だったら緊急時にその指示が出せるだろうかと考えさせられました。
発災直後は、復旧作業の環境も厳しいものだったといいます。余震が続き、建物内で作業するのが危険なため、吹雪の中、駐車場にブルーシートを敷いて災害対策本部を設置。被災地全体であらゆる物資が不足する状況で、現場では協力会社や他の地域から来た社員から厳しい声があがることもあったそうです。そうした非常事態の中でも、復旧作業に専念できた背景には、家族の安否を確認できたことが大きかったのではないでしょうか。
人々の安心や社内との連携、過去の教訓を “つなぐ”

先輩社員の話を聞いたことにより、通信ネットワークを担うことへの責任感に変化はありましたか?
通信事業者として大切なのは、通信を一刻も早く復旧させることです。ただ、先輩たちの話を聞いて、その先にある意味をより強く意識するようになりました。通信がつながることで、家族の安否を確認できる人がいる。余震が起きたときに現地の状況を知ることができる。私たちがつないでいるのは、単に電波やネットワークだけではなく、人々の安心でもあるのだと、先輩たちの経験から改めて認識しました。
また、現地で復旧作業にあたる社員や協力会社の方の安心・安全も考える責任があると感じました。大規模災害時には、社内の関係部署や協力会社の方たちとの連携が欠かせないのですが、指示を出す際に「安全に動けるのか」「道路は通れるのか」など、現地の状況を想像し、連携することも私たちの役割だと思います。


日々の業務に対する姿勢や意識などにも変化はありましたか?
災害復旧を自分事として深く考え、今まで以上に責任感を持って向き合うようになりました。例えば、防災訓練では実際の状況を想像しながら訓練に取り組むようになりました。普段は使う機会がない設備でも、いざというときのために設置手順や運用方法を頭に入れておかなくてはとより強く考えるようになりました。
また、他部署や協力会社と平時から信頼関係を築いておくことが、いざというときの力になるのだと思い、関係構築を意識するようにもなりました。日頃のメールや電話でのやり取り、直接会ったときのコミュニケーションなど、誠実な対応を今ではより一層心がけています。

先輩社員から受け取った教訓を、今後どのように生かしていきたいですか?
私は当時の混乱や被災地の状況を直接経験しているわけではありません。そして、これから入社してくる後輩たちも、東日本大震災を知らない世代です。何が起きたのか、そのとき通信を守るために何が行われたのか。当時を知る先輩方がいずれ引退していく中で、その記憶や教訓を風化させず今の若手社員、さらに次の世代にもつなぐことは、通信ネットワークを担う私たちの使命の一つだと感じています。
現在は衛星通信や軽量化した可搬型基地局、ドローン基地局、HAPS(成層圏通信プラットフォーム)など、災害復旧の取り組みは大きく進化しています。しかし、どんなに技術が発達しても、極限状態の現場で最終的に地上のネットワークをつなぐのは「人」の力です。
これからは私たちが通信ネットワークを担っていくのだという強い覚悟を持ち、日々の業務や訓練での積み重ねを大切にしながら、次の世代へ使命をつないでいきたいと思っています。
(掲載日:2026年7月15日)
文:ソフトバンクニュース編集部





