
今から約10年後、これまで以上のスピードで進化し続けるAIにより、人々の暮らしはどのように変化しているでしょうか。スケジュールを管理する、調べものをする、文章や画像や音楽を作る…。専門的な知識やスキル、時間が必要だったことも、より身近にチャレンジできるようになり、働き方や学び方、ものづくりの方法まで変えていくはずです。それが当たり前になる時代を生きる子どもたちと共に、これからAIとどう向き合っていけばいいのでしょうか。
2026年7月に「マンガでわかる! 小学生から知っておきたいAIとの上手なつき合い方」が出版されます。この書籍を監修した、ソフトバンクでAI推進の責任者を務める宮澤弦に話を聞きました。

ソフトバンク株式会社 常務執行役員
宮澤 弦(みやざわ・げん)
LINEヤフー株式会社 上級執行役員 生成AI統括本部長を経て、2025年8月からソフトバンクのグループ全体のAI活用をけん引する責任者として、AIエージェントの活用拡大や生成AIによる全社変革をはじめ、国内外のパートナーとの連携推進などを担当。
目次
これからの子どもたちはAIとともに育つ “AIネイティブ世代”

学習や教育の現場でAIを使う際、保護者や先生はさまざまな不安があるのではないでしょうか。
「宿題や課題に使ったら、どこまでが自分の力と言えるのか」
「便利な半面、考えずにAIに頼る習慣がつかないか」
「使い方を誤って、トラブルにつながらないか」
そうした悩みについて、子どもも大人も考えるきっかけになる書籍が、『マンガでわかる! 小学生から知っておきたいAIとの上手なつき合い方』です。ソフトバンクのAI推進を担う部門の責任者である宮澤が監修を務めるこの書籍では、AIを最前線で見つめてきた立場から、子どもたちがAIと “よき相棒” としてつき合っていくためのヒントを伝えています。
宮澤 「この先10年で、AIにより生活が大きく変わります。そうした時代に成長していく子どもたちは、 “AIネイティブ世代” です。大人もまた、仕事や日常でAIを使い始めたばかりで、急速に進化する技術と向き合い、模索している真っただ中。すぐに正解を出すのが難しい問いだからこそ、親子や学校で一緒に考えていく必要があります」
マンガで子どもにも大人にも分かりやすく。AIと良い関係を保つための入門書
このマンガに登場するのは、とある小学校の5年生です。AIなどの最新技術に興味のある子もいれば、パソコンなどはちょっと苦手という子も。さまざまな立場の子どもたちに対して、指南役として登場した「宮澤さん」は、「大人になるころには、AIがもっと身近で当たり前のものになってくる。これから一緒に学んでいこう!」と話しかけます。

マンガの他、イラストや図を使った解説で、AIの仕組みや、得意なこと・苦手なこと、使うときに注意することなどを詳しく知ることができます。やさしい表現が使われており、子ども一人で読むのに最適。保護者目線では、読み進めていくうちに「じゃあ、未来を見据えてどうすればいいの?」と、あれこれ質問したくなるはず。そうした気持ちに応えるように解説が充実しているので、大人も学びなおしやすい内容になっています。

各章の最後には素朴な疑問に回答するパートが。直球の質問に思わずドキッとしますが、「宮澤さん」の答えは大人にも参考になります。また、コラムではプロンプトの書き方やコツ、より良い答えを導き出すためのヒントなども掲載されており、すぐに実践できる情報が満載です。

書籍化に際し8時間以上に及ぶ取材が行われ、改めて考え直す時間にもなったと振り返る宮澤。変化の激しいテーマのため、3年後でも読んでもらえる内容を目指したと言います。
宮澤 「『AIを宿題に使っていい?』など、子どもが本当に聞きそうなトピックが多く出てきます。本質的な問いかけに答えるのはとても気の張る作業でしたが、その分全力で向き合えたと思います」
AIにより未来の可能性が広がる。AIの最前線を知るからこそ伝えたい、早くから使いこなす力の重要性
自身も小学生の子どもを持つ親でもある宮澤に、AIとともに育つ子どもたちへの思いや、親子でAIと向き合うヒントについて聞きました。

AIの進化と共に歩む子どもたちの未来に、どのような可能性を感じていらっしゃいますか?
これからたくさんのことを学び、大きくなっていく子どもたちにとって、AIは将来の選択肢を増やしてくれるものです。
スポーツをしているならもっと強くなるため、創作が好きなら表現の幅を広げるための手助けなど、個性を伸ばすサポート役になってくれるんです。同時に、AIに任せられることは任せ、自分がより得意なこと、好きなことに時間を使う。そうした考え方に自然となっていくはずです。だからこそ、子どもたちには早い段階から “AIを使いこなす” という視点を持ち、育っていってほしいと思っています。
宮澤さんのご家庭では、お子さんもAIを使いこなしているのでしょうか。
小学校高学年の息子は絵を描くことが大好きで、小さい頃から数多くの創作をしており、AIの使い方を知ってからは表現の広がり方が劇的に変わりました。自分で描いた絵をAIでアレンジする、次は絵のイメージに合う音楽を作る、さらにはストーリーを加えてみる。われわれが子どもの頃は、餅は餅屋でそれぞれ特別なスキルが必要と考えられていたのに、一人何役も担えるようになり、今の時代らしい表現方法だと気づかされました。
子どもがAIを使いこなす可能性を知り、ポジティブに受け止めてほしい、というメッセージが本書にも込められているのですね。
はい、今回の監修を引き受けた背景には、AIに対する受け止め方への課題意識がありました。息子が通う学校、また友人や同僚のお子さんの話を聞くと、学校現場などでは「AIはうそをつくから使わせない」「環境が整っていなくて使えない家庭もあるので一律禁止」といった声が根強いようです。生成AIは日々進化しているにも関わらず、数年前にリリースされた、古いモデルのイメージのままで止まっており、「AIは怖いもの、頻繁に間違うもの」と考えられている場面もあるように感じます。危険性だけを強調し過ぎると、AIを使う機会そのものが失われてしまいます。大切なのは、怖がり過ぎるのではなく、正しく知り、試しながら最適な方法を探っていくことだと思います。
最新のAIに仕事として携わっている立場として、AIをどう使えばよいのか、何に注意しなければならないのかを伝える役割があると思っています。子どもたちにネガティブなイメージが固定化されてしまうのは非常にもったいないですね。
本書ではAIの便利さに加えて、注意点や、扱う人としての心構えや学習の大切さも強調していますね。 「ねばり強く聞く力」が必要だという表現が印象的でした。
AIは便利ですが、何でも任せればよいというものではありません。AIの答えをそのまま信じないこと、人を傷つける使い方をしないこと、自分で考えることをやめないこと。基本的な姿勢を、子どもたちにきちんと伝える必要があります。
まだ自身の中でも最終的な答えは出ていないのですが、AIを使いこなすには、物事を論理的に考え、臨機応変に課題解決を遂行する力が必要だと思っています。自分が何を知りたいのか、作りたいのかを言語化し、適切なプロンプトを提示し、出力されたものを解釈して判断して次につなげる。さらに、AIから返ってきた答えをそのまま受け取るのではなく、「もう少し違う視点で考えてほしい」「ここを直してほしい」とねばり強くやり取りすることで、AIの力をより引き出せるようになります。考える努力を続け、人間としての魅力を磨いていくことで、AIに使われるのではなく、使いこなす力が養われていくでしょう。

監修する上で、特に大切にした観点はありますか?
最も重視したのは「AI格差」を埋めることです。AIを使いこなせる子どもと、AIに触れる機会が少ない子ども。その差は、将来の学びや仕事の選択肢にも影響していくかもしれません。子どもには、それぞれに無限の可能性があります。きっかけや機会があれば、チャンスをつかむことができる。困ったときや悩んだときにAIに相談して一歩踏み出す勇気をもらう、そうしたことをこの本を読んで知ってほしいと願っています。
こうした子ども向け書籍の監修にソフトバンクが関わる意義をどう感じていますか?
AIと教育は、これからますます切り離せないテーマになります。社会人にはAI時代のリスキリングが求められ、大学生もAIを使いこなした上で社会に出ていくことになります。そして、小学生を含むより若い世代も、今からAIリテラシーを持つことが必要です。ただし、若い世代になるほど教育の取り組みが進んでいないのが現状です。今回の書籍化によりそうした層にアプローチできることは、AIを含めて次世代社会インフラづくりに取り組むソフトバンクとして、とても意義があることだと思っています。本気でAIに向き合う過程で得た知見を持っているわれわれだからこそ、発信できることがあるのではないでしょうか。ゆくゆくは中高生向けなど、幅広い世代へ提示していけるようになるといいですね。
まずは身近なところからチャレンジ。AI時代を生き抜く準備を始めよう
この本を、親子でどのように活用してほしいですか?
小学生やそのご家庭はもちろん、小学校の先生にも読んでほしいと思っています。先生方も悩んでいるはずですし、必ずしもAIの専門家ではありません。
これからの子どもたちの人生において、AIに全く触れない世界は考えにくくなっていくでしょう。であれば、早い時期からAIを正しく理解し、本を読んで終わりではなく、身近に使える場面でどんどん試してみてほしいですね。絵を描く、調べ物をする、家族旅行の計画を立てる、夏休みの自由研究のテーマを考える。難しく考える必要はありません。そのときはぜひ、子どもが主体になって試してみてください。便利だと知ると、子どもはぐんぐん機能を覚えていきます。3カ月もすれば、親を超えるレベルになっているかもしれませんよ。

最後に、読者へメッセージをお願いします。
大人の価値観を押し付け過ぎないことが大切だと思っています。働くことや学ぶことの意味は、AIによって大きく変わっていく可能性があり、今の当たり前が、子どもたちが大人になるころにはそうではなくなっているかもしれません。AIによりなくなるものもあるかもしれませんが、新しい価値も生まれる。そういう意味で、私は非常にポジティブに未来をとらえているので、あとは変化の激しい世の中を生き抜いていく準備をしていければいいのではと思っています。
一方で、AIに対して明確な答えを持っている人はいません。保護者も先生も、AIの最前線にいる人たちも、不安や迷いを抱えながら、自分なりの考えを探している段階です。だからこそ、AIを正しく知り、試し、考え続けることが大切です。便利だからといって全てを任せきりにするのではなく、自分の意志を持って使っていく。この本が、大人も子どももAIについて考えるための一つの参考になればうれしいです。
(掲載日:2026年7月31日)
文:ソフトバンクニュース編集部
「マンガでわかる! 小学生から知っておきたいAIとの上手なつきあい方」

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