
約10年にわたる研究開発を経て、空飛ぶ基地局「HAPS」がいよいよ日本上空で試験サービス(プレ商用サービス)を実施します。2026年8月中旬以降、日本上空で飛行性能や通信性能などを確認し、2027年以降の商用サービス開始を目指します。7月23日に開催された説明会では、ソフトバンク株式会社 プロダクトR&D本部 ユビキタスネットワーク企画統括部 統括部長の上村征幸が、試験サービスの概要や機体・通信・地上設備の準備状況を紹介しました。
目次
約10年の研究開発を経て。「HAPS」実用化への現在地

ソフトバンク 上村征幸
ソフトバンクがHAPSの研究開発に着手したのは2017年。上空約20kmの成層圏からモバイル通信を提供する「空飛ぶ基地局」の実現を目指し、機体開発や通信技術の研究、国際標準化活動などを進めてきました。

HAPSは、気流が安定した成層圏を飛行し、地上のスマホへ直接モバイル通信を届ける次世代の通信インフラです。災害などで地上の通信インフラが被害を受けた際の通信確保に加え、山間部や離島など通信が届きにくい地域へのサービス実施、さらにはドローンなど3次元空間に向けた通信基盤としても期待されています。
そしていよいよ2026年夏より、2027年以降の商用サービス開始に向けて日本上空で試験サービスを実施する計画です。
上村は、「約10年にわたる挑戦を経て、海外で技術検証を積み重ねてきました。ついにこの夏、日本上空で試験サービスを実施します。日本の気象条件下での飛行性能や上空からの通信性能、周辺の地上通信網への影響などを確認しながら、商用サービス開始に向けた運用方法を確認していきます」と語りました。
商用サービスを見据え、飛行性能・通信性能・干渉影響を確認

日本上空での商用サービスを見据えた今回の試験サービスでは、日本の気象条件下での飛行性能や上空からの通信性能、周辺の地上通信網への干渉影響を確認します。そのための準備として、米国でのテストフライトや通信試験、国内に設置する地上ゲートウェイの整備などを実施してきました。
日本の気象条件下での安定した飛行性能
今回の試験サービスで使用するのは、米Sceyeが開発したLTA(Lighter Than Air)型HAPS。 日本での試験サービス実施前に、2026年3月に米国でテストフライトを実施しました。ニューメキシコ州ロズウェルからブラジル・ナタール沖まで、12日間超にわたり1万km以上を飛行。長期間にわたる成層圏での安定運用に必要な機体性能や運用上の信頼性を検証しました。具体的には、風に流されず一定の場所にとどまり続けられるかを確認し、88時間以上誤差1km以内で定点滞空できることを実証しました。

また、昼間は太陽光で発電・充電し、夜間はバッテリーから電力を供給する仕組みが正常に動作することや、昼夜の気温変化によるヘリウムガスの膨張・収縮を適切に制御しながら安定して飛行できることも実証しました。 こうしたテストフライトの成果を踏まえ、日本上空で実施する試験サービスでは、日本の気象条件下でも同等の飛行性能を発揮できるかを検証します。
上空約20kmのHAPSから地上のスマホへの通信

HAPSから通信サービスを提供するためには、HAPSとスマホを直接つなぐサービスリンクと、HAPSと地上の通信設備などを接続し、コアネットワークおよびインターネットへとつなぐためのフィーダリンクが必要です。そこで、ソフトバンクのスマホと、今回の試験サービスで使用する無線機をつなぎ、さらに日本のソフトバンクのコアネットワークへと接続する通信試験(End-to-End試験)を実施しました。この試験では、日本上空での試験サービス実施に向けて、音声通話やSMS、データ通信が正常に利用できることを確認しました。
日本上空での試験サービスでは、上空約20kmを飛行するHAPSから、地上のスマホへ音声通話やSMS、データ通信などを確認し、地上の携帯電話サービスと同等の通信品質を実現できるかを検証します。
既存の地上通信網への干渉影響
災害時には、停電や通信回線の断絶によって一部の地上基地局が停止することで、HAPSの通信エリア内で停波した基地局と稼働している基地局が混在することが想定されます。そのため、HAPSが広い範囲に通信を提供した際に、既存の地上基地局とどのように連携できるかを確認することも重要です。
試験サービスでは、既存の地上基地局との間でどのような電波干渉が発生するかを確認します。今回の試験サービスの結果を踏まえて、商用サービスに向けて「HAPSと地上通信網との協調動作」が円滑に行えるかを検討していきます。
空飛ぶ基地局を自動追尾する地上ゲートウェイ

試験サービスを支える地上設備として、高知県でHAPSとソフトバンクの通信ネットワークをつなぐ「地上ゲートウェイ」の設置準備を行いました。地上ゲートウェイは、上空約20kmを飛行するHAPSとソフトバンクのコアネットワークを接続するための設備です。既存設備から光ファイバーと電源を接続し、上部に備えたアンテナがHAPSの位置を確認しながら自動で追尾します。
通信回線・電源設備
地上ゲートウェイ

地上ゲートウェイを設置する際には、スマホアプリでHAPSの飛行空域を確認しながら、障害物がなくHAPSとの見通しの良い場所や向きを選定します。また、災害時には車両などで必要な場所へ運搬し、短期間で設置できる運用も想定しています。

上村は、「準備は万端に整っています。日本上空での試験サービスを通じて、HAPSの可能性を感じていただければと思います」と、この夏の試験サービス実施という新たな挑戦へ期待を込めました。
(掲載日:2026年8月3日)
文:ソフトバンクニュース編集部




