
AIの進化や事業環境の変化に伴い、企業に求められる人材像も大きく変わりつつあります。
ソフトバンクでは、AIの社会実装を進める成長戦略「Activate AI for Society」を掲げ、その実現に必要な人材構成への転換を進めています。その中で重要な取り組みの一つが、社員一人一人のリスキリングです。
AI時代に求められる人材とはどのような人材なのか。そして、社員が新たな領域へ挑戦できる環境をどのようにつくっているのでしょうか。
リスキリング施策を担当する人事担当者と、クラウド人材育成を支えた担当者、そしてリスキリングによりキャリアチェンジを経験した社員2人の社員に話を聞きました。
目次
AI時代を勝ち抜くための「リスキリング」という選択

AIの進化によって、これまで当たり前だった仕事や必要なスキルは大きく変わり始めています。
ソフトバンクでは、事業環境の変化に応じて必要な人材構成を見直す中で、既存社員が新たなスキルを身に付け、成長領域へ挑戦するためのリスキリングを進めています。ソフトバンクでリスキリング施策を担当する人事担当者に、AI時代に向けた人材育成の考え方を聞きました。
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事総務本部 人材戦略部
小嶋 菜穂(こじま・なほ)
全社の事業戦略に沿った人材戦略の策定、異動・配置施策等を担当
AIの進化や事業環境の変化に対応するためには、経営戦略に応じて必要な人材ポートフォリオを柔軟に見直し、最適化していくことが重要だと考えています。その中で、経営人材やAIエンジニア、DX人材、グローバル人材など、新領域を支える人材の育成・確保を重点的に進めています。
新領域を担う人材だけではなく、既存事業を支える人材も含め、全社員が技術の進化を常にキャッチアップし、自ら必要なスキルを学び続け、アップデートしていく姿勢が求められると考えています。
求められる人材が変わる中、今いる社員がこれまで培ってきた経験を、どのように次の成長へつなげていくのか。小嶋は、新しい業務や成長領域へ挑戦する機会をつくることにも意味があると話します。
既存事業で培った経験を生かしながら、新しい業務や成長領域へ挑戦する機会をつくることは、社員の成長だけでなく、会社が新領域へ移っていくことにもつながります。
社員が希望するポジションに応募できるジョブポスティング制度も、そうした挑戦の機会の一つです。2024年度には、クラウド開発事業を担う部門で、研修やOJTによる育成を前提とした募集を実施しました。
約140人が新たな領域へ。クラウド人材を社内から育てる

AI時代を支える次世代インフラ構築を担うクラウド人材の確保に早くから取り組んでいたソフトバンク。2024年度に実施されたのは、社内人材をクラウド領域へ育成することを前提としたジョブポスティング制度です。
現在、ソフトバンクでソブリンクラウドやソブリンAI、AI計算基盤などの開発・構築に携わる社員の中には、この取り組みをきっかけに、新たな領域へキャリアチェンジした社員がいます。研修プログラムの準備・運営を担当した社員に、当時の背景を聞きました。
ソフトバンク株式会社 技術統括 共通プラットフォーム開発本部 戦略部
権 度延(グォン・ドヨン)
本部戦略企画および本部PMOの推進を担当。2024年度に実施したクラウド開発事業のジョブポスティングにおいて、研修プログラムの企画・運営を担当。
取り組みの背景にあったのは、ソフトバンクの長期ビジョンにおける次世代社会インフラ構築です。その中核となるクラウドの開発体制を早期に強化するため、企画と技術の両面で多くのクラウド人材を確保する必要がありました。
一方で、すべてを外部採用で確保することには限界があります。そこで、社員にリスキリングの機会を提供し、クラウド人材として育成する方法の一つとして、この取り組みを実施しました。
参加したのは、法人部門、コンシューマ部門、技術部門など、さまざまなバックグラウンドを持つ社員でした。この取り組みを経て、約140人が技術領域や企画領域の業務へ移り、現在ソブリンクラウドやAI計算基盤などの開発・構築に携わっている社員もいます。
営業からクラウドエンジニアへ。未経験からの挑戦

それぞれ異なる経験やスキルを持った状態から、新しい領域へ踏み出した社員たち。ここからは、エンジニアとしてキャリアチェンジに挑んだ2人の経験と、その挑戦を支えた仕組みを紹介します。
ソフトバンク株式会社 技術統括 共通プラットフォーム開発本部 クラウド技術部
清野 幹人(せいの・みきと)
コンシューマ営業を約7年間経験した後、ジョブポスティングを利用してクラウド技術領域へ異動。現在は、社内のクラウド利用部門や法人営業を技術面から支援するエンジニアとして従事。
コンシューマ営業として経験を積んできた清野。技術領域への挑戦を決めた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
ジョブポスティング制度の募集が始まった頃、今後も営業一本でやっていくのか、それとも新しい成長領域に挑戦するのかを考えていた時期でした。会社が今後成長させようとしている事業のど真ん中に携われる内容で、そこに一番魅力を感じました。自分がエンジニアになることは考えたこともありませんでしたが、「この機会は一生に一度かもしれない」と思い、応募を決めました。
不安はありましたが、「研修を用意するので、やる気があれば挑戦してほしい」という募集だったため、むしろワクワクしたのを覚えています。それでも、仕事では堅実に進めるタイプなので、私にとってはかなり大きな挑戦でした。
エンジニア未経験の社員も含まれる中、参加者のIT知識や経験には大きな幅がありました。そこで研修は一律ではなく、一人一人のスキルに合わせて設計されました。
参加者のIT知識や経験には差があったため、全員に同じ内容を提供するのではなく、スキルに応じて研修を分けました。初心者にはITの基礎から段階的に学べる研修を用意しました。基礎研修後は、応募した分野に合わせた専門研修を行い、実際に手を動かす演習も取り入れました。
また、定期的な1on1を通じて、技術の習得状況だけでなく、本人が不安や挫折感を抱えていないかも確認するなど、技術面と心理面の両方を支えることを意識しました。


清野も、最初の2カ月間は研修に専念し、ITの基礎から学び始めました。しかし、実際の仕事に入ってから、研修とは異なる難しさに直面したと振り返ります。
もともとエンジニアだった人には基礎的な内容でも、私にとっては「何が何だか分からない」という状態でした。その中で、最初の2カ月間を研修だけに専念できたことは大きかったです。一方、実務に入ってからは、知識として学ぶことと、それを使って成果を出すことの違いを感じました。どの部署の誰に相談し、どのようなゴールを目指せばよいのかも分かりませんでした。研修後の方が、難しさを感じる場面は多かったですね。
そんな場面で頼りになったのは、一緒に研修を受けた仲間の存在です。研修後は別の部署に配属されましたが、同じタイミングで新しい領域へ移った「同期」のような感覚があります。今でも分からないことを聞いたり、情報交換をしたりしています。相談できる仲間がいたことは、とてもありがたかったです。
現在、清野は社内でパブリッククラウドを利用する部門や法人営業を技術面から支援しています。営業と技術。一見すると大きく異なる二つの領域ですが、営業時代の経験は、現在の仕事にどのように生かされているのでしょうか。
技術職でも営業職でも、さまざまな部署や社外の関係者と関わりながら仕事を進めます。誰かと何を決め、どのように進めるかという「推進力」は、営業時代に培ったものです。
技術部門と企画部門との間に入り、ベンダー様に確認すべき内容を相手に分かる言葉へ置き換えて伝えるなど、相手に動いてもらうために、どのように言葉を組み立てるかという部分でも、営業経験が生きていると思います。
挑戦を経て、清野のキャリアに対する考え方も変わったと言います。
以前は、自分のスキルをどう増やすか、どう深めるかという視点でキャリアを考えていました。今は、自分ができることを使って、どのような人や事業に貢献し、どんな価値を出したいかという視点で考えるようになりました。
異動前は、それまでのキャリアを捨てて始めるつもりでした。しかし実際には、今の自分が貢献できている部分は、前の組織で培った経験によるところが大きいと気付きました。
専門分野を越えた学び直しで見つけた新たな世界

営業からエンジニアへと大きく方向転換する社員がいる一方、リスキリングのあり方は、職種を変えることだけではありません。同じエンジニアでも、専門領域を変え、新しい技術を身に付けるという挑戦もあります。
ソフトバンク株式会社 技術統括 共通プラットフォーム開発本部 クラウドインフラ開発部
鈴木 健(すずき・けん)
長年にわたりモバイル端末やネットワーク、アプリケーションの開発・検証に従事。現在はデータセンターファシリティ領域で、設備設計・構築を担当。
鈴木は、長年経験してきたモバイル領域から、ソブリンクラウドを支えるデータセンターファシリティの領域へと専門分野を移しました。そのきっかけとなったのが、50歳で迎えたキャリアの節目です。
以前は、モバイル端末やネットワーク、アプリケーションの開発・検証に携わっていました。現在は、ソブリンクラウドのデータセンターで、機器室の構築を担当しています。サーバーラックやネットワーク配線、電源、空調など、データセンターファシリティの設計や工事に関わる仕事です。
50歳になり、役職定年を迎えるタイミングで、今後のキャリアについて考えるようになりました。新しいキャリアを身に付け、この先も会社へ十分に貢献し続けたいという思いがありました。また、エンジニアとしてこれから成長していく領域で、最先端の技術に触れ続けたいという気持ちもあり、クラウドを学ぶのであれば、まずは一番下の物理レイヤーから入りたいと考えて、インフラ領域を選びました。
専門領域が変わると、使う言葉も扱う技術も全く違います。私はモバイル領域を長く経験してきましたが、現在扱っているのは電気や空調、物理設備です。設備業者の方と話しても、最初は言葉が理解できないこともありましたが、先輩社員に教えてもらいながら、一つ一つ覚えていきました。
こうした経験のある社員の専門転換に対しては、基礎研修とは異なる内容も用意されました。また、研修だけで本配属を決めるのではなく、実際の業務を経験する期間も設けられました。
経験者には、プロジェクトマネジメントやシステム設計など、より実践的な研修を用意しました。
研修後は、すぐに本配属するのではなく、兼務という形で実際の業務に参加してもらい、本人のパフォーマンスや適性を確認するため、配属予定の部門でOJTを行いました。本人が希望する仕事と、現場が求めるスキルをすり合わせながら、本配属につなげています。
現在では、海外のベンダーと直接やり取りしながら、プロジェクトを進める役割を担っています。どのような仕様で設備をつくるか、どのようにリスクへ対応するかを、一人で進められるようになり、リーダーとしてプロジェクトに取り組んでいます。
一つの機器室が完成した時には、目に見える形で成果が残ります。苦労してつくり上げたものが完成することは、エンジニアとして大きな達成感があります。


一番感じているのは、「もっと早く挑戦しておけばよかった」ということです。挑戦する前は、いろいろ考えて、なかなか行動に移せませんでしたが、実際に動いてみると、新しい世界がありました。機会があるときに一歩踏み出すことの大切さを、今回の経験を通じて感じています。
社員の成長と会社の成長の好循環をつくる

2人のように、社員がこれまでの経験を生かしながら新たな知識を身に付け、活躍の場を広げていくことは、組織全体にどのような変化をもたらすのでしょうか。
社員の成長と会社の成長の好循環を生み出すことを大切にしています。社員の成長が会社の成長につながり、そこで生まれた新たな活躍の機会を社員に提供していくという考え方です。
AIによって仕事や求められるスキルが変化する中、リスキリングを通して、社員がこれまでの経験を生かしながら学び、新しい領域へ挑戦する。一人一人の成長を企業の成長を担う力につなげていけたらと思います。
ソフトバンクの人材戦略

ソフトバンクでは、新規事業や成長事業への人員シフトと、社員一人一人の活躍の場を提供するため、従業員が自己成長・自己実現できる環境として、キャリア形成におけるさまざまな機会を提供しています。
(掲載日:2026年8月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部








