
画像の認識・理解技術に関する国内最大規模の会議「第29回 画像の認識・理解シンポジウム MIRU2026」が、2026年8月3日から6日まで出島メッセ長崎で開催されました。ソフトバンクは、画像解析とシステムの障害調査を支援する2つのAIソリューションを展示。現場での活用を見据えて開発するソリューションを、デモンストレーションを交えて紹介しました。
画像解析と障害調査を支援。自社開発の2つのAIソリューションを展示
MIRUは、画像認識やAIの研究に取り組む学生や研究者、企業の技術者が集まり、研究成果の発表や技術交流を行うシンポジウムです。会場には企業ブースも設けられ、各社が開発中の技術や研究成果を紹介しました。
ソフトバンクは、AIや機械学習を活用した技術開発の取り組みを学生に知ってもらうとともに、来場者から技術へのフィードバックを得ることを目的にブースを出展。展示したのは、エッジデバイス内で画像解析の一連の処理を完結させるソリューションと、システムの障害調査をAIが支援するエージェントです。3日間で約200人の学生や研究者がブースに訪れ、長時間にわたり技術について意見を交わす場面もありました。

画像取得からレポート作成までをエッジデバイス内で完結
多くの人の注目を集めた画像解析のAIソリューションは、会議室などの部屋の様子から忘れ物の有無を判断し、レポートとしてまとめるというもの。デモンストレーションでは、オフィスの会議室を模したジオラマに設置されたカメラが室内を撮影し、AIが画像から忘れ物を検知して、その内容をレポートにまとめる様子が披露されました。

会議室を模したジオラマ。椅子には忘れ物として小さなスマホが置かれている

ジオラマ内の情報を認識し、生成したレポートがモニターに表示される
忘れ物を椅子の上やロッカーの上など、さまざまな場所に配置しても、AIが画像内にある忘れ物を検知し「椅子の上にあった」など具体的な位置まで含めてレポートを生成します。一連の処理を行っているのは、片手で持てるほどの小さなエッジデバイス。小型のデバイスが画像の分析からレポート作成までを処理する様子に、多くの来場者から驚きの声があがりました。

スマホと同じくらいのサイズのエッジデバイス
ソフトバンクではこれまでも、オフィスの会議室を利用している人数の可視化や、施設への入退場者数の把握など、画像解析ソリューションを自社で開発・運用してきました。従来のシステムでは、エッジデバイスで画像から必要な情報を抽出した後、その情報をクラウドへ送り、高度な解析や結果の可視化などを行う構成が中心でした。
今回開発した技術は、画像の取得からAIによる分析、結果の可視化、レポートの生成まで、全ての処理を一つのエッジデバイス内で完結させた、よりソブリン性を意識したシステム構成です。

小型のエッジデバイスで利用できる計算資源には限りがあります。画像の認識や解析にはVLM(Vision-Language Model:視覚言語モデル)だけではなく、画像を明るく補正する機能や、画像内の物体を事前に検出する機能など、AIエージェントを補助する複数のツールを使用。VLMと周辺ツールを組み合わせることで、限られた計算資源の中でも安定した分析結果を得られるよう工夫しています。特に、一度に多くの指示やルールを与えるのではなく、対象画像において重要な観点に絞って分析するように、VLMに与えるプロンプトと周辺ツールの利用のバランスを調整しています。
こうしたエッジデバイス内での処理は、個人情報を扱う環境や、企業独自のノウハウを扱う工場などでの活用が見込まれています。また、クラウドにデータを送る必要がないため、即時性の向上も期待できます。
システムの障害原因の調査をAIエージェントが支援
もう一つのソリューションが、システムの障害調査をAIで支援する分析エージェントです。画像解析システムの規模が大きくなるほど、障害発生時に確認しなければならないログや監視データも増えます。また、大量の情報から原因につながる手がかりを見つけるには知識や経験が必要で、対応できる担当者が限られることが課題となっていました。
このソリューションでは、システムでアラートが発生すると、その内容をもとに原因の仮説を立て、検証に必要なログやメトリクスを自ら判断して収集・分析します。ただし、AIが全ての操作を自動で実行するわけではありません。デバイスの再起動やシャットダウンなど、サービスに影響を及ぼす可能性がある操作に関しては、AIがレポートを作成し、担当者に承認を求めます。一方、ログの確認などサービスに影響しない調査はAIが自動で行い、人による最終判断とAIによる自動化を組み合わせることで、安全性を確保しながら障害対応を支援する仕組みです。

来場者からは、「ここまで原因を特定できるんだ」「レポートを見ると概要の理解が早い」といった声もあり、分析内容の具体性や、AIが障害調査を支援する仕組みに関心が寄せられました。
開発を担当した次世代クラウド基盤開発本部 AI基盤開発部の藤本彩菜は、今回の出展を通じて、来場者からAI技術への高い関心を感じたといいます。
「ソフトバンクが開発したAIソリューションに、多くの学生の皆さんが関心を寄せてくださり、技術への期待の大きさを実感しました。実際に展示に触れていただきながら、さまざまな方と技術について意見を交わすことができたことも、今後の開発につながる貴重な機会になりました」
さらに、「画像の取得から分析、レポートの作成までをエッジデバイス内で完結する仕組みを実現できたことは、大きな成果の一つです。今後、より軽量で高性能なAIモデルが登場し、エッジデバイスの性能も向上していくことで、エッジ上でできることはさらに広がっていくと考えています。今回開発した仕組みをプロトタイプとして、さまざまなユースケースでの検証を重ねながら、実際の案件への活用にもつなげていきたいです」と、今後の展望を語りました。
(掲載日:2026年9月4日)
文:ソフトバンクニュース編集部




