
前編では、福岡ソフトバンクホークスのファーム拠点「HAWKSベースボールパーク筑後」の屋内練習場を訪れ、「Trajekt Arc」をはじめとする最新鋭の練習設備などを紹介しました。
後編では、メイン球場「タマホーム スタジアム筑後」の見学に加え、普段はなかなか見ることのできない「選手寮」にお邪魔し、選手たちの食事やトレーニング環境について案内してもらいました。
目次
選手のプレーが間近に感じられる「タマホーム スタジアム筑後」
前編で紹介した屋内練習場を後にし、続いて案内してもらったのは、ファーム公式戦の舞台でもあるメイン球場「タマホーム スタジアム筑後」です。
観客席から全体を見渡してみると、普段「ホークスTV」で2軍や3軍の試合を見ているときとは全く違った感覚に包まれます。屋外球場ならではの開放感に加え、外野フェンスの向こうに広がるのどかな田園風景。そして何よりも印象的なのが、観客席とグラウンドの圧倒的な近さです。この距離感でプロ野球選手のプレーを観戦できるのは、野球好きの子どもたちにとっては最高の環境に違いありません。

北川さん 「ドームとは違って打球音なども響いて聞こえるので、試合の臨場感をより身近に味わっていただけますよ」
このようなファンとの距離感を大切にする筑後では、試合観戦に加えてさまざまなファンサービスも行われています。夏休み期間には子どもたち向けのイベントや、選手も参加する花火イベント開催など、試合以外にも選手とファンが交流できる筑後ならではの企画を実施しているそうです。
北川さん 「イベントの様子は、ひな丸とスタッフがタマスタ筑後公式Instagramで紹介してくれているんですよ」
ひな丸は、HAWKSベースボールパーク筑後のキャラクター。実は北川さん、かなりの “ひな丸推し” の様子。

北川さん 「ひな丸は本当に人気があるんですよ。今年は新入団選手発表会見にも初めてひな丸を呼びました。新しく入った選手たちは、まずみんな筑後からスタートするので、『筑後感』を出したいなと思って」
施設を案内してもらっている途中にも、ひな丸のグッズを見つけるたびに話が弾む北川さん。どうやらその “ひな丸愛” は本物のようです(笑)。タマスタ筑後公式Instagramでは、試合や選手たちの様子だけでなく筑後の雰囲気ものぞくことができます。そんなひな丸は現在「ゆるバース2026(旧ゆるキャラグランプリ)」にエントリー中。筑後を盛り上げるひな丸を、ぜひ投票で応援してください!

1軍でプレーする日のために。同じ広さの球場で身体に感覚を染み込ませる
続いて、特別にベンチやグラウンドの中まで入らせてもらいました。グラウンドに足を踏み入れると、美しく整備された人工芝がキレイに広がっています。

北川さん 「実は、このグラウンドの広さは1軍の本拠地である『みずほPayPayドーム福岡』とまったく同じなんです。1軍昇格を目指す選手にとって、これは非常に大切なポイント。普段から1軍と同じ広さでプレーすることで、守備位置から見える景色や距離感を日頃から身体に染み込ませることができます」
「ファームだから練習用」ではなく、1軍の舞台でプレーする日のために、普段から本番とまったく同じ環境が用意されているんですね。
さらに、2016年の開業以来初めて人工芝を張り替えたそうで、プレーのしやすさだけでなく表面の温度上昇を抑える設計が施されているそうです。前編で登場した西尾歩真選手も「全然違いますね。ゴロも『コロコロコロ』と失速していく感じ。キレイですし、めちゃくちゃ良いです」と、その違いを実感していました。
「暑さ対策はグラウンドだけではないんです」と案内されてベンチへ。たくさんの扇風機に加え、選手の座るシートの背後に、シルバーの見慣れない吹き出し口がありました。


北川さん 「今年からベンチにも空調が付いたんです。ここから冷たい風が出てきます。選手がプレーするグラウンドはもちろん、試合中に長い時間を過ごすベンチにも暑さへの対策が施されています」
野球漬けの毎日を足元から支える。若鷹たちの生活拠点「若鷹寮」

最後に向かったのは選手寮です。この玄関、選手たちの入寮ニュースなどで見覚えがある景色。ここからは、ホークスの元選手であり「若鷹寮」寮長の山口裕二さんに案内していただきます。
中に入ってまず目に留まったのが、寮で生活している選手一覧のボード。そこには、未だ負け無しの11連勝中(9月15日時点)の前田悠伍投手の名前が! さらに、庄子雄大選手や鈴木豪太投手の名前も見つけました。1軍の試合で活躍する選手たちも実際にここで生活しているんだ… と思わず感動してしまいました。

身体づくりは食事から。プロ選手としての食生活を支える食堂

最初に案内してもらったのは、選手たちの食堂です。
山口寮長 「基本的に毎日日替わりメニューですが、ご飯やパンなどは食べ放題。サラダやデザートもありますし、飲み物も自由に選べます。冷凍庫にはパスタやカレー、焼きうどんなど、選手がお腹を空かせたときにいつでも食べられる軽食も揃えています」
夕食を食べた後に、さらに夜食をとる選手もいるそうです。
山口寮長 「選手は食べて体を大きくしなきゃいけないんです。プロ野球選手、特にこれから身体をつくっていく若手にとっては、食事も大切なトレーニングの一部です。食事は練習や試合のスケジュールに合わせ栄養士がしっかり管理し、夜遅くまで試合がある日にも選手が温かい食事を取れるよう柔軟に対応しています」

鍛えるから整えるまで。身体づくりとケアを兼ね備えた充実設備
次に向かったのは、ウエイトルーム。室内には筋力トレーニング用の器具や、有酸素運動用の設備などがズラリと並んでいます。野球の技術練習とは別に、選手たちはここで自分の身体づくりにも取り組んでいます。


ウエイトルームから部屋へ戻る通路の途中には「アイスバス」が設置されていました。
この日は37℃を超える猛暑で、「今入りたいくらいですね」と思わず口にすると、寮長からは「結構冷たいですよ」と笑いながら返答が。実際に中の水を触ってみると、かなりの冷たさです。

よく見ると、アイスバスの前に置かれたホワイトボードに選手の背番号が書き込まれています。

山口寮長 「アイスバスは人気なので予約制になっているんですよ(笑)」
他にも、サウナなども完備されており、トレーニングで身体を追い込むだけでなく、その後のケアや疲労回復(コンディショニング)まで一括で行える環境が整えられています。

特別に、実際に選手が暮らしている部屋のうち空いている一室を見せてもらいました
育てる側から見た筑後。「恵まれた環境をどう生かすかは選手次第」
最新鋭の練習機器、1軍仕様のグラウンド、そして生活を支える選手寮。筑後には選手が野球に没頭して成長できる環境がこれ以上ないほど揃っていることが分かります。では、実際に選手を育てる指導者は、この恵まれた環境をどのように捉えているのでしょうか。
2026年シーズンから3軍監督を務める大越基監督に話を伺いました。

福岡ソフトバンクホークス 3軍監督
大越 基(おおこし・もとい)
1993年に福岡ダイエーホークスへ入団し、2003年まで11年間にわたりプロ野球選手としてプレー。現役引退後は教員の道へ進み、2007年から2024年まで早鞆高校で教員・野球部監督を務め、長年にわたり高校野球の指導に携わる。2025年から福岡ソフトバンクホークスの4軍監督に就任し、2026年からは3軍監督を務める。
初めて筑後の環境を見たときの印象はどうでしたか?
大越3軍監督 「私はホークスの監督になる前は高校の教員をしていて、高校野球を15年間やっていました。筑後に来て、環境の良さに驚きましたね。12球団全ての施設を見たわけではありませんが、本当に素晴らしい施設だと思います。練習する環境はすごく整っているので、大切なのは、それを選手がどのように生かしていけるかです。
施設だけではありません。食事もそうですし、遠征先でも選手のことを考えた食事が用意されています。宿泊するホテルも含め、選手のことをすごく考えてくれていると感じますね。これだけの施設や栄養面などの環境が揃っているので、ここで選手は本当に伸びてくれると思っています。もし伸びなかったら、『じゃあ何がいけないんだろう』と、こちらが考えさせられるくらいです。これだけの環境を用意してもらっていることに、感謝の気持ちでいっぱいです」
これだけ環境が整っている中で、選手を育成するうえで意識していることはありますか?
大越3軍監督 「あまり余計なことを言わず、まず選手を『見ること』を大切にしています。思ったことをすぐに口にするのではなく、その選手の表情を見ながら、いつ、どこで伝えるのが良いのかを考える。必要なことを『ここだ』というタイミングで伝えるようにしています。
例えば、毎日『練習しなさい』と言い続けていると、だんだん頭に入らなくなってしまうと思うんです。だから、伝えるときも感情的にならず、その選手に言葉が届くタイミングを意識しています」

選手に伝えるタイミングは、どのように見極めているのでしょうか?
大越3軍監督 「これまでの経験が、直感にもつながっているのかなと思います。もちろん、その直感に明確な答えがあるわけではありませんが、『このタイミングで言おう』と感じることがあります。そのときも絶対に感情的にならないようにして、冷静でいることを意識しています。そして、その選手の表情をしっかり見る。ときには、選手にとって言われたくないことでも、伝えなければいけないことがあります。だからこそ、どのタイミングで伝えるかにはすごく気を使っています」
様々な施設を巡ってきたからこそ、大越監督の「この環境を選手がどう生かしていけるか」という言葉が印象に残ります。「HAWKSベースボールパーク筑後」の周辺にはコンビニも見当たらず、寄り道しようにも寄り道のしようがないロケーション(笑)。でも、自然と野球に没頭できる環境こそが、筑後ならではの強みなのかもしれません。
開業から10年を迎えた筑後。ここで汗を流す若手選手たちが、これから1軍の舞台でどんな躍進を見せてくれるのか、今後の活躍が本当に楽しみです。
(掲載日:2026年9月15日)
文:ソフトバンクニュース編集部





