
2026年8月に実施したHAPSの通信試験では、スマホへの通信だけでなく、その先の活用を見据えたさまざまな技術検証も行われました。HAPSの通信を利用したドローンの自動飛行、成層圏でデータを処理するエッジコンピューティング、さらに飛行中のHAPSを地上からレーザー光で追尾・測距する実証です。
9月17日に開催した記者説明会で、プロダクトR&D本部 ユビキタスネットワーク企画統括部 統括部長の上村征幸と、次世代NTN開発部 部長の藤野矩之が、三つの技術検証の成果と、その先に描く「3次元通信ネットワーク」の構想を紹介しました。
目次
HAPS×ドローンで広がる、災害時・平常時の活用
今回の試験ではHAPSとドローンとの通信にも成功しました。ソフトバンクが独自に開発しているクラウド型GCS(Ground Control Station)を使用してドローンを遠隔制御し、HAPSの通信環境下で自動飛行を実施。飛行制御、位置情報の送信、映像伝送を安定して行えることを確認しました。


上村は、「HAPSとドローンの組み合わせは非常に効果的だと思っています。災害時にHAPSで通信を復旧させるだけではなく、ドローンで被災地の様子を映像で撮ったり、物資を運搬したりすることもできる」と活用イメージを説明しました。
例えば、道路が寸断されて人がすぐに入れない被災地でも、HAPSで通信エリアが形成できれば、その通信を利用してドローンを飛ばし、被害状況の確認や物資輸送などに活用できます。災害時だけでなく、平常時には離島や洋上での監視、物流、送電線や道路などのインフラ点検、山林監視といった用途も想定されています。

ソフトバンク株式会社 上村征幸
世界初、成層圏でエッジコンピューティングを検証
今回の試験では、将来のAI時代を見据えた新たな技術検証にも取り組みました。その一つが、HAPSを活用したエッジコンピューティングです。
HAPSにモバイルコアと処理用のウェブサーバを搭載し、スマホから送られたデータをクラウドまで送ることなく、HAPS上で処理してスマホへ返す試験を実施。その結果、応答処理時間は往復平均68ミリ秒となり、クラウド上で処理する場合と比較して通信の遅延を40%以上低減しました。HAPS内で応答処理を行い、その結果をスマホへ返す試験に成功したのは世界初※1です。

ソフトバンクがAI時代のネットワークインフラとして取り組む「AI-RAN」にも触れながら、地上だけではなく上空でもエッジコンピューティングを活用していく可能性を説明しました。

- ※1
HAPS上にモバイルコアとウェブサーバーを搭載し、スマホからの通信を地上ネットワークを経由せずにHAPS内で応答処理し、その結果をスマホへ返す試験に成功したのは世界初。2026年8月23日時点の公開情報に基づく(ソフトバンク調べ)。
世界初、数十km先を飛ぶHAPSを地上からレーザーで追尾・測距

将来の光無線通信の実現に向けたレーザー測距の実証も行われました。ソフトバンク、一橋大学、国立極地研究所は、高知県室戸市に小型レーザー測距装置を設置し、HAPSには「コーナーキューブ反射鏡」を配置した反射装置を搭載。プロダクトR&D本部 ユビキタスネットワーク企画統括部 次世代NTN開発部 部長 藤野矩之が、実証の成果と今後の構想を紹介しました。


藤野は、「地上からHAPSに搭載したコーナーキューブ反射鏡へレーザーを送り、返ってきた光を再び受信して、その時間から地上の装置とHAPSとの距離を測る実験です。一見するとシンプルですが、相手は成層圏を飛行しています。地上から数十km離れたHAPSの位置を捉え、その動きに合わせてレーザー光を当て続ける必要があります。HAPSに搭載しているのは数cmの装置です。地上から数十km離れたこの装置を狙って、レーザーをしっかり当てて追従することができました」と、実際にHAPSに取り付けていたコーナーキューブ反射鏡を手にしながら、その難しさを解説しました。

成層圏を滞空するHAPSに地上からレーザー光を送信して追尾しながら、HAPSに搭載したコーナーキューブ反射鏡からの反射光を地上で連続的に受信するレーザー測距に成功したのは世界初※2です。
現在の地上ネットワークでは、基地局や通信拠点を光ファイバーでつないでいます。しかし、成層圏を飛ぶHAPSや宇宙を周回する衛星まで光ファイバーを引くことはできません。そこで、光そのものを空間へ飛ばして通信する「光無線通信」の研究開発を進めています。

藤野は、「NTN(Non-Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)を組み合わせた『3次元通信ネットワーク』の領域では光ファイバーを引くことができません。その代わりに光を無線で飛ばしてコネクションをつくる必要があります」と説明。光無線通信では、飛行するHAPSの位置を正確に捉え、レーザー光を当て続ける技術が欠かせません。今回のレーザー測距は、その実現に向けた重要な検証となります。また、実証を通じて、地上と成層圏の間における光の減衰量や、大気による揺らぎなどのデータも取得しました。
- ※2
成層圏を滞空するHAPSに地上からレーザー光を送信して追尾しながら、HAPSに搭載したCCRからの反射光を地上で連続的に受信するレーザー測距の実証に成功したのは世界初。2026年9月8日時点の公開情報に基づく(ソフトバンク、一橋大学および国立極地研究所調べ)。
得られたデータを、HAPSの光無線通信装置の開発へ
一橋大学、国立極地研究所、ソフトバンクは今後、成層圏と地上の間で光がどの程度減衰・変動するのか、また、飛行するHAPSの動きに対してどのように追尾できたのかを分析します。
その結果をもとに、HAPSへ搭載する光無線通信装置の仕様や搭載方法、通信相手を見つけて光を当て続けるための捕捉・追尾技術などの検討を進める予定です。
また、ソフトバンクはNICT、アークエッジ・スペース、清原光学と共同で光無線通信装置を搭載した小型の低軌道衛星を開発しており、2026年中の打ち上げを予定しています。その後、低軌道衛星と地上間で光無線通信を実証し、2027年には低軌道衛星とHAPS間の双方向の光無線通信を検証する計画です。

藤野は「来年にはHAPSにも光無線通信装置を搭載して、衛星、HAPS、地上をしっかりつないでいく。そこまで実証を進めたい」と今後の計画を説明しました。

ソフトバンク株式会社 藤野矩之
地上から成層圏、そして宇宙へ。目指すのは「3次元通信ネットワーク」
こうした取り組みの先にあるのが、地上の通信ネットワークにHAPSや低軌道衛星などのNTNを組み合わせた「3次元通信ネットワーク」です。

上村は「これまでのモバイルネットワークは、地上に設置された基地局を中心とした、いわば2次元の通信ネットワークでした。そこにHAPSや衛星などを組み合わせることで、これまで地上でつくってきたモバイルネットワークに空間軸を加えて、3次元の空間でサービスを提供できるようにしたい。10年ほど前から取り組んできましたが、ようやくその姿が見えてきたと思っています」と、今後への期待を込めました。
ソフトバンクは、今後も衛星・HAPS・地上を高速・大容量の光無線通信でつなぐ「3次元通信ネットワーク」の実現に向け、技術検証を進めていきます。
- 世界初、HAPSを地上から追尾してレーザー測距する実証に成功(2026年9月17日 ソフトバンク株式会社 プレスリリース)
(掲載日:2026年9月30日)
文:ソフトバンクニュース編集部
UTXでソフトバンクが目指す世界

ソフトバンクは、地上のモバイルネットワークと、人工衛星や成層圏通信プラットフォームを活用した非地上系ネットワークを融合することで、いつでもどこでもつながり続ける世界を目指します。





