
生成AIが身近になる中、子どもたちはAIとどう付き合えばよいのでしょうか。
2026年9月9日、板橋区立上板橋第二小学校で、小学5年生を対象に「AI情報訓練」のテスト授業が行われました。LINEヤフー、ソフトバンクおよび静岡大学が共同開発する教材を使い、児童たちはAIの仕組みや注意点を学び、SNSで見つけた情報が本当かどうかをAIも使いながら確かめました。今回の授業は、児童や教員の反応を教材改善につなげるためのテスト授業となっています。
目次
小学生が体験した「AI情報訓練」。AIと一緒に考え、自分で判断する
授業では、AIの基本的な仕組みを学んだ後、実際にAIを使いながら情報を確かめ、自分で判断するところまでを体験しました。児童たちはどのように「AI情報訓練」に取り組んだのでしょうか。
まずはAIを知る。「AI情報訓練」がスタート

「AIって聞いたことあるかな?」
授業は、静岡大学の塩田真吾准教授からの問いかけで始まりました。質問に答える、文章や画像を作る、分からないことを調べるなど、AIでできることを確認した後、基本的な仕組みも学びます。例えば「昔々あるところに……」と聞くと、多くの人が「おじいさんとおばあさんがいました」を思い浮かべます。AIも、大量の情報からパターンを捉え、次に続きそうな言葉を予測しながら回答を作っていることを、昔話を例に説明しました。
続いて紹介されたのが、AIを上手に使うためのキーワード「なかま」です。

「な」は使う目的、「か」はAIの回答の確認、「ま」はAIに任せっぱなしにせず最後は自分で判断すること。この3つを意識しながらAIと付き合うことが、今回の授業の軸です。 AIを使う目的を考え、返ってきた答えを確認し、最後は自分で判断する。この3つを意識しながらAIと付き合うことが、今回の授業の軸です。
また「AI情報訓練」という名称には、防災訓練のように、一度知識を学んで終わるのではなく、実際にAIを使いながら繰り返し学んでいくというコンセプトが込められています。塩田准教授は、AIが誤った情報を返すことだけでなく、「何でもAIに聞いてしまう」ことも課題の一つとして挙げています。
SNSの情報は本当? AIを使って確かめる

後半は、「学級新聞に載せる情報を考える」という実践です。児童たちには、「寝る前に牛乳を2杯飲む」「毎日10分ジャンプする」と身長が伸びる、とするSNS風の情報が提示されました。この情報を学級新聞に「そのまま使う」「一部使う」「使わない」のどれにするかを考えます。
ただし、すぐにAIへ聞くわけではありません。情報が本当かを確かめる方法には、自分で考える、友達と考える、ネットや本で調べる、専門家に聞くなど、さまざまな方法があります。AIもその一つです。今回は「訓練」として、児童自身がAIへの質問の仕方を考えました。

「寝る前に牛乳を2杯飲むと、本当に身長が伸びるの?」
「毎日10分ジャンプすると身長は伸びる?」
AIに質問した後は、ネット検索でも情報を確認。最後はAIの答えをそのまま使うのではなく、自分で学級新聞に載せるかどうかを判断しました。
授業を受けた児童と、見守った先生はどう感じた?

授業後、児童からは「AIにも間違った情報があるので、本などでも確かめながら使いたい」という声や、「AIに頼りすぎず、自分で分かることは自分で考えたい」という感想が聞かれました。「これからAIを使うときは『なかま』を意識したい」と話す児童もいました。
一方、担任の教員からは、AIの回答をそのまま使うのではなく、元の情報を自分で読み、必要な情報を抜き出し、自分の言葉で考えることの重要性が挙げられました。生成AIが分かりやすい答えを返してくれるようになるほど、教師側がどう使わせるか、自分で考える力をどう育てるかが重要になるといいます。
なぜ今、「AI情報訓練」を開発するのか
生成AIが身近になる中、子どもたちがAIと適切に付き合うための学びも求められています。ここでは、「AI情報訓練」を開発する背景や、3者が取り組む理由を紹介します。
「AIは危ないから使わない」ではなく、主体的に使う力を

左から、LINEヤフー株式会社 サステナビリティ推進CBU CSRユニット 西尾勇気さん、国立大学法人 静岡大学 教育学部 学校教育講座 塩田真吾准教授、ソフトバンク株式会社 サステナビリティ企画室 CSR推進部 部長代行 大田圭一
今回の教材開発の背景には、子どもたちの間にも生成AIが広がる一方で、その仕組みやリスクについて学ぶ機会がまだ十分ではないという課題があります。LINEヤフーは、生成AI時代には「安全に使う」だけでなく、何のために使うのか、どこまでAIに任せるのか、返ってきた答えをどう確かめるのか、最後にどう判断するのかを考える経験が必要だとしています。
教材を共同開発しているのは、静岡大学、LINEヤフー、ソフトバンクの3者です。静岡大学は教育・情報モラル研究や授業設計の知見を、LINEヤフーとソフトバンクは技術やサービス動向、これまでの教育現場支援の経験を持ち寄っています。目指しているのは、技術のリスクを説明するだけでなく、学校の授業で実際に使える教材です。ソフトバンクとLINEヤフーは、これまでも「デジいく」を通じて、子どもたちのデジタル活用能力の育成を支援してきました。今回も、新しいテクノロジーを広げるだけでなく、それに伴う課題にも向き合う取り組みの一つとして教材開発を進めています。
今回の授業は完成版のお披露目ではなく、教材改善のためのテストです。授業時間の配分や、開発者以外の教員でも使いやすい内容にすることなど、実際の授業で見えた点を今後の改善に生かします。教材は2026年11月をめどに無償提供を開始する予定です。今後は情報の真偽だけでなく、誹謗中傷やコミュニケーショントラブル、AIへの相談など、生成AIとのさまざまな付き合い方を考えるテーマへの展開も検討しています。
AIに答えを任せるのではなく、AIと一緒に考え、情報を確かめ、最後は自分で判断する。今回のテスト授業で得られた児童や教員の反応を生かしながら、教材の完成に向けた取り組みが続きます。

(掲載日:2026年10月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部
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