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地域交通×竹内由恵 ~MaaSで地方の移動手段はどう変わる?~

PROJECT 02 地域交通×竹内由恵 ~MaaSで地方の移動手段はどう変わる? PROJECT 02 地域交通×竹内由恵 ~MaaSで地方の移動手段はどう変わる?

前回、テレビ局での勤務を経て現在は静岡に移住し、車社会や高齢化など暮らして感じる地域の課題解決に、デジタルの力が役立つ可能性に触れた竹内さん。
今回は地域の移動問題を解決する手段として注目されている「MaaS」について、言葉は聞いたことあるけど具体的にはどんな内容なのだろうか。ソフトバンクでMONETを使ってMaaS事業を推進する上村さんにお話を伺ってみました。

PROFILE

  • 竹内 由恵
    TAKEUCHI YOSHIE

    竹内 由恵(たけうち よしえ)
    タレント(元テレビ朝日アナウンサー)

    1986年、東京都生まれ。2008年にテレビ朝日アナウンス部に入社後、多くの看板番組を担当。結婚を機に退社し、夫の勤務地である静岡での暮らしをスタート。35歳で長男を出産。現在は、バラエティー番組から報道番組まで幅広い分野で活躍中。

  • 上村 実
    UEMURA MINORU

    上村 実(うえむら みのる)
    MONET Technologies株式会社
    事業推進部 部長

    株式会社ウィルコム(旧 株式会社DDIポケット)を経て、2011年にソフトバンク株式会社に合流。
    コンシューマ・法人部門、新規事業の立上げ、企画推進を歴任した後、公共事業推進部の責任者を経て、2019年2月よりMONET Technologies株式会社に出向。現在は同社のMaaS推進部 兼 ソフトバンク MaaS事業推進部を担う。

MaaSでできること① 配車予約もできる!利便性を高める新しい公共交通の形

今回は移動問題を解決する「MaaS」についてお話しできればと思います。

竹内

アナウンサー時代も、MaaSという言葉を耳にしたことはあるのですが、どんなテクノロジーなんですか?

上村

クルマや人の移動などに関するさまざまなデータを活用しながら、タイプや運営事業者の異なるいろいろな交通手段を一つのサービス上に統合し、より便利な移動を提供することです。地域の移動における社会課題の解決や、新たな価値やサービスの提供が期待されています。
例えば、利便性が高く効率的で新しい公共交通を実現するサービスがあります。バスなどとはまた違い、アプリで配車予約をして家の近くや乗降ポイントまで車に来てもらい、目的地まで連れて行ってもらう… といったサービスを提供しています。

竹内

配車予約をして目的地まで連れて行ってもらうって、ちょっとタクシーみたいですけど、公共交通機関なんですね。

上村

はい。地方の公共交通には利用者の少なさや使いにくさといった課題があります。それをテクノロジーを使って最適化し、ある程度は解決できるんじゃないかと思っています。

竹内

私も実際にバスを利用していて「バスが今どこにいるのかなかなか分からない」と感じたことがあります。そんな悩みを解決してくれるんですね。

上村

そうですね。あとは、乗りたいときに乗れない、バス停が遠くて使い勝手が悪いなどの問題もあります。

竹内

なるほど。近い停留所が2カ所ある時、どっちを使ったほうが速いかなども分かるとうれしいです。

上村

そのような足元の問題を解決する他、車両とサービスが高度化していくと外出する機会が増えてもっと便利になっていくので、結果的にそれが地域の活性化につながるのではないかと考えています。

将来的には自動運転車両を使ってサービスを提供することを目指しているのですが、自動運転のレベルが上がると最終的にはドライバーがいなくなり、車の中自体が一つの空間、部屋になりますよね。後ほどご説明させていただきますが、その空間を使って新たな価値を創造するサービスを提供することを今は考えています。

とはいえ、実現にはまだ時間がかかるので、まず先にサービスをつくり、テクノロジーが追いついたら自動運転車両にサービスを乗せていきたいと考えているところです。
これはもう少し未来の話ですが、ぜひ達成したいですね。

すでにはじまっている!全てを新しい公共交通サービスに変えた富岡市

新しい公共交通サービスのお話がありましたが、実際にはどのように活用されているのですか?

上村

まず全国の自治体が抱える課題の一つとして、高齢化率が上がり、免許返納が年々増加している一方、公共交通があまり使われなくなった状況があります。

これは群馬県富岡市での実例なのですが、車がなくても生活できる環境に変えてしまおうということで、もともとあったバスやコミュニティバスを、全てわれわれのサービスに変えました。タクシーのような車両をアプリで予約してもらい、自宅から市役所、または温泉施設までといった日常の足として、市民の方に利用いただいています。狙いは、高齢者が自動車を所有しなくても生活できる環境です。

※画像はイメージです

竹内

実際にもう動いているんですね。地方は車社会にも関わらず、運転できない高齢者が多いので、すごくいい取り組みだと思います。

上村

富岡市のサービスでは、乗降ポイントはだいたい300m以内に配置され、市内に400カ所以上あります。高齢者でも歩いていける距離になっているので、気軽に利用いただけています。

竹内

400カ所もあるんですか!乗降ポイントがたくさんあると、思ってたよりも時間がかかりそうで心配にはなりますが、時間を気にせず、歩くには距離がある場所へ行きたいときには便利ですね。

上村

はい、使い勝手が良かったことから、新型コロナウイルスが流行する前の公共交通機関と比べ、今では約2倍の方に利用いただいています。

竹内

タクシーを利用するとなるとお金もかかりますが、こちらのサービスは気軽に利用できる料金設定なのですか?

上村

そうですね。利便性や料金を含めて実際の利用者さまのアンケート結果で高い満足度を回答いただいています。行きたかったけれど今までなかなか行けなかったところが、料金の面も含め、気軽に行けるようになったのが一番大きなメリットかと思います。
最近では、LINEからも予約ができるようになりました。専用のアプリからだけだと難しい人も、LINEからなら利用しやすいようです。

竹内

たしかに。LINEなら家族と連絡するために高齢の方でも使っていらっしゃることが多いですもんね。

MaaSでできること② 市役所が家の近くにやってくる!新たな価値を創造するサービス

先ほど新しい価値を創造するというお話もありましたが、他にはどのような取り組みがありますか?

上村

MaaSは地域が抱える医療・福祉・行政などの課題と組み合わされることで、その役割はますます拡大しています。移動によって新たな価値を創造するサービスを考えていますが、まずは、実現可能で需要があることから取り組んでいます。例えば病院や市役所、コンビニなどの機能のついた車が家の前にやってくるとか。

竹内

それは便利ですね。市役所とか、案外行くのが大変ですもんね。子連れで行くともっと。待ったりもしますし……。

上村

今日は実際に車両を用意しているんです。ぜひ見てみませんか?

竹内

意外とよく見慣れた車のカタチですが、思ったより中がとても広いですね。中に机などが置ける造りになっているのが面白いです。車というより一つの部屋みたいで、これだったら気軽に利用したいと思えそう!

上村

床部分には数本のレールが敷いてあり、車内のレイアウトを目的に合わせて変えられるようになっています。今日はモバイル市役所のバージョンなんですよ。

車の中には、通信機器や必要に応じて住民票が発行されるような機器を搭載することが可能です。

竹内

マイナンバーカード申請が呼びかけられていますが、なかなか市役所に行くのが難しい方にとっては便利ですね。これなら気軽に説明を聞けそうです。

上村

マイナンバーカードの受付での利用はたしかに多いですね。

そのほかにもたくさん!移動図書館・診療・投票所も

竹内

静岡でもやっていますね!身近な小山町でも取り組んでいるのは驚きです。

上村

小山町では移動図書館を実施しました。

竹内

移動図書館!いいですね。喜ばれそうです。

上村

団地の前にある公園に駐車して行ったんですが、そうすると団地に住んでいる親御さんやお子さんが気軽に利用できるようになり、中で絵本を見たり貸したりすることができます。そういった取り組みを通して利用者も増え、これまで図書館を利用していなかった人にも使っていただくきっかけになりました。

竹内

ネットで本を選ぶよりも、実際に見て選ぶ方が面白い本に出会えたりもしますから、子どもと一緒にいると図書館っていいなって思いますしね。こんなサービスがあったら本が身近になって実際の図書館の利用も増えそうです。

上村

他にもモバイルクリニックの事例があります。公共交通の課題と同じですが、高齢者の方の中には、免許を返納している方もいて、病院まで行きづらい。とはいえオンライン診療はスマートフォンを使えないと利用しにくいですし、往診をするには地方だとお医者さんが少ないなどの課題もあります。
そこを解決してくれるのがモバイルクリニックです。病院にいる先生と車両をつなぎ、オンライン診療をかなえます。

もともとは長野県伊那市から始まった取り組みですが、お医者さんは自分の診療所にいて通常の診療の合間に診ることができるので、基本的には患者さんの診療が滞ることがないんです。

竹内

いいですね。看護師さんはその場にいてちゃんと様子を見てくれるんですよね。「近くになかったらいいや」と放置してしまう症状も、こちらのサービスがあれば定期的にチェックできそうで、来てくれるのはすごくありがたいです。これは患者さんが予約するのですか?

上村

今はかかりつけ病院の看護師さんなどが予約を入れる形にしています。デジタルのことがまったく分からない、スマートフォンも使えないという方も実はデジタルの恩恵を受けられるというのが良いところです。これは国が掲げている「デジタル田園都市国家構想」の考えにもよくマッチしています。

竹内

デジタル技術を自分では使いこなせない方へも、デジタルによって助かる環境をつくるというのはいいですね。

上村

こちらの車両に産婦人科の機能を乗せて定期検診をする事例もあります。お子さんがいるお母さんだと、特に病院に通うのが大変だと思います。だから逆に家の前まで行って、産前産後の検診などをして安心していただく取り組みです。

竹内

病院まで車で30分以上かかるようなところに住んでいると子連れで通院は大変ですよね。これはありがたいと思います。

上村

他にも、同市内では行政でも移動する期日前投票所を始めています。愛媛県新居浜市では18歳から成人ということで、高校で投票所を生徒に運営してもらうという取り組みも行いました。

MONETは日常生活に欠かせない買い物や通院など、移動を便利にするだけでなく、これまでなかった新しいモビリティの価値を生み出し、人々のより豊かで快適な暮らしを実現することを目指しています。

デジタルだけでなくアイデアも重要!MaaSでつくる未来像

MaaSができることについていろいろとお伺いしてきましたが、いかがでしたか?

竹内

移動市役所やモバイルクリニックの取り組みなど、生活者にとってありがたい取り組みばかりですね。私が住んでいる地域でも取り入れてほしいくらい! 医療や行政の他にも、モバイル美容室やマッサージ店なんかあったらうれしいです(笑)。

上村

考えたいと思います!

竹内さんが描いたMaaSで作る未来「移動式美容室」

竹内

お話を伺ってみて、地域ごとに状況が違うので、「こんな問題があるんだ」と、気づかなかったところに意外な問題があることを実感しました。そして、それがデジタルで解決できるということにも驚きましたね。

デジタル化というと先進的なイメージが先行してしまいますが、いい意味でその考えが覆されました。新しい技術に付いて行けない人たちが抱える問題も、実はデジタルの力さえあれば手が行き届く。時代の進化と共に少数派にも優しく、より個が見えやすくなってきているのかもしれません。

デジタルのモビリティという風に伺っていたので、なんと言いますか、「すごい車」が出てくるのかと思いきや、車自体は意外と普通の、普段乗っているような車で。デジタルだけではなく、車をどう使うかというアイデアにも価値があるように思います。

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