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進化した電池の先に広がる無限の可能性。ソフトバンクの次世代電池開発|SoftBank SDGs Actions #8

進化した電池の先に広がる無限の可能性。ソフトバンクの次世代電池開発|SoftBank SDGs Actions #8

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsに取り組んでいるソフトバンク。いま実際に、どのような取り組みが行われているのか、担当社員が自らの言葉で事例を紹介します。8回目は、次世代電池の開発に関する取り組みです。

今回、話を聞いた人

宮川

ソフトバンク株式会社
テクノロジーユニット 先端技術開発本部 先端マテリアル研究室
宮川 絢太郎(みやかわ・しゅんたろう)

2020年から次世代電池の開発業務に従事。次世代電池に使用する材料開発を担当しており、さまざまな材料を組み合わせ、電池の試作、評価、解析などを行っている。

次世代電池に最適な「材料の組み合わせ」を探す

検証用の電池を試作している様子

検証用の電池を試作している様子

普段目にすることが少ない黒子のような存在の電池ですが、その進化は世界に大きなインパクトを与えます。例えば、現在広く普及しているリチウムイオン電池が市販されたのは、1990年です。そこからノートパソコンが登場し、スマホ、ドローン、EVなど、新しいデバイスが次々と生み出されていきました。電池の進化はデバイスの進化に直結しています。

現在のリチウムイオン電池から高エネルギー密度化(軽量化)や安全性、コストなどを大幅に改善した「次世代電池」へ切り替わっていく過渡期に差し掛かっており、これから私たちが想像している以上のデバイス革命が始まっていくでしょう。

私は、ソフトバンクが開発している次世代電池の材料開発を担当しています。電池の構造は大きく正極、負極、電解液、セパレータ、集電体の5つに分けることができ、この内の1つでも構造が異なると全く違う性能を示します。そのため、次世代電池に最適な材料の組み合わせを検討し、次世代電池を開発するのが主な業務です。

具体的な開発の進め方としては、次世代電池に関する論文やメーカー調査などで常に最新の情報を収集しながら、ポテンシャルのある次世代材料や技術をベンチマーク。そして、実際に電池の試作品を作ってみて、性能評価を行うことで材料や技術の良し悪しを判断するという感じですね。

電池の試作に関しては、市販されている材料やメーカーから入手した材料を使い、つくば市にある「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」で実際に作ることもあれば、共同開発しているメーカーに依頼するケースもあります。特に次世代材料は市場にないため、共同研究先とコンセプトの設計や材料を合成するところから始めるケースもありますね。そして、宇都宮市にある「ソフトバンク次世代電池Lab.」では、こうした試作品の評価試験を行っています。

NIMS-SoftBank先端技術開発センター
ソフトバンク次世代電池Lab.

左:NIMS-SoftBank先端技術開発センター、右:ソフトバンク次世代電池Lab.

上:NIMS-SoftBank先端技術開発センター、下:ソフトバンク次世代電池Lab.

電池の進化はサービスの「誕生」と「拡張」につながっていく

「電池の進化はデバイスの進化に直結している」と話しましたが、電池の進化は社会に2つの変化をもたらします。

1つ目の変化は、新しいデバイスを活用したサービスの誕生です。電池性能の限界によってこれまで実現できなかったことが、次世代電池の登場によって実現するケースですね。ソフトバンクがデジタルデバイドの解消などを目指して開発を進めている、成層圏通信プラットフォーム「HAPS」などがこれに該当します。

HAPS

もう1つの変化は、既存のサービスが大きく拡張することです。例えば、ドローンはすでに使われているものですが、用途はまだ限定的です。しかし、電池が進化して長時間の飛行が可能になれば、本格的な宅配業務などでも使われるようになるでしょうし、建造物の検査やデジタルデータ作成といったクリティカルな用途でも活用が進んでいくでしょう。

次世代電池の開発は、単純に電池の性能を上げるだけではなく、社会をより良く変えていくサービスの「誕生」と「拡張」につながっていくものなんです。

一般的なメーカーとは違う、独自の開発アプローチ

開発アプローチ

ソフトバンクは通信サービスを提供している企業で、いわゆるメーカーではありません。そのため次世代電池においても、独自の視点でユニークな開発アプローチで取り組んでいます。

一般的な電池開発では、商用化の観点から「改善」を重視します。既存の電池性能をどう上げていくか。いわゆるマーケットインの考え方で、採算性も計算しやすい開発手法です。

一方で、ソフトバンクは「成層圏を飛行するHAPSに半年間だけ使用できる電池」など、ピンポイントな用途で次世代電池を開発しようとしています。利用用途から逆算する開発は、一般的なメーカーではほとんど行われていない非常に珍しいアプローチです。

2021年11月には、Enpower Greentech Inc.との共同研究で、リチウムイオン電池の質量エネルギー密度を大きく上回り、世界最高レベルとなる質量エネルギー密度520Wh/kgのリチウム金属電池の試作と実証に成功したことを発表。また、2021年12月には、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究で、質量エネルギー密度500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発したことを発表しました。こうした成果も独自の開発視点から生まれたものだと言えると思います。

NIMSとの共同開発の内容

NIMSとの共同開発の内容。世界中で報告されているリチウム空気電池性能の調査結果。右上に点があるほど高性能の電池となる

しかし、材料開発は思い通りに進まないことの方が圧倒的に多いです。全てが思い通りにいったらノーベル賞ものなので当然ですが、毎日うまくいかないことばかりですね(笑)。

その中で自分自身で意識しているのは、本質的なメカニズムを理解をすること。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、メカニズムだけを追求すると開発効率が悪くなってしまうので、結果を軸に研究を進めることは珍しくありません。

ただ、私は次世代電池の開発に携わってまだ2年ほどです。基礎をおろそかにしたくないですし、小さな積み重ねがいつか開発のブレイクスルーにつながるのだと信じています。

時代を変えるターニングポイントに携わりたい

ラミネート電池の試作品

ラミネート電池の試作品

私は以前からSDGsに強い関心を持っていました。そして今、日々の業務についてもSDGsとの結びつきを感じることができていて、とても恵まれていると感じています。

繰り返しになってしまいますが、電池の進化の先には無限の可能性が広がっています。世界をより良く変えていくためにSDGsが定めているゴールの達成には、テクノロジーやデバイスの進化が必要であり、その基礎を担う電池の進化も必要不可欠です。

また、次世代電池開発の一環として、レアメタルを使用しない有機電池・空気電池の研究も進んでいて、実現すれば資源の消費抑制や環境保全へとつながっていきます。

社会を大きく変える可能性を秘めた次世代電池。その実現に貢献できるような開発に携わることで、私自身も時代のターニングポイントに関わりたいと思っています。

先端技術研究所が研究開発を進める重量エネルギー密度が高い次世代電池

先端技術研究所が研究開発を進める重量エネルギー密度が高い次世代電池

次世代電池の開発におけるリーダーシップをとることを目指し、2021年に次世代電池の早期実用化に向けて「ソフトバンク次世代電池Lab.」を設立し、研究開発を加速させています。
ソフトバンクが取り組む次世代電池開発(先端技術研究所)

ソフトバンクのマテリアリティ②「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」

サステナビリティ

ソフトバンクは、SDGsの達成に向けて6つのマテリアリティ(重要課題)を特定。そのうち、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」を踏まえた「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」では、次世代電池を搭載予定の成層圏通信プラットフォーム「HAPS」などを通じて世界中のインターネット通信を拡大させ、誰もが情報へアクセスできる環境の提供を目指しています。

(掲載日:2022年1月31日)
文:ソフトバンクニュース編集部

ソフトバンクのSDGsへの取り組み

サステナビリティ

ソフトバンクは、すべてのモノ・情報・心がつながる持続可能な社会の実現に向け、企業活動や事業を通じて、さまざまな社会課題の解決に取り組んでいきます。