スマートシティに不可欠な”都市OS”を基盤としたデジタル産業の創出とは?

2021年11月17日掲載

東広島市と広島大学そしてソフトバンクは、2021年7月にSociety5.0やスマートシティの実現などを主な目的として包括連携協定を締結しました。その一環で、2021年10月27日に広島大学フェニックス国際センター「MIRAI CREA(ミライ クリエ)」で開催されたシンポジウム「未来社会のデザイン」に、ソフトバンクのデジタルトランスフォーメーション本部本部長 河西が登壇。「産官学で創る未来のソーシャルデザイン」と題して講演を行いました。本記事では、都市OSに必要な産官学連携と、そこで活躍するデジタル人材の育成について語った河西の講演内容を紹介します。

目次

河西 慎太郎

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部
本部長

講演の冒頭、河西は自身が統括するデジタルトランスフォーメーション本部を紹介をしました。

河西「当社のデジタルトランスフォーメーション本部は、日本の社会課題を解決するために、デジタライゼーションやデジタルトランスフォーメーションを活用した新規事業開発を進める部門として2017年に設立された組織です。それから4年間、ヘルスケア・スマートシティ・社会インフラ・物流・フィンテック・スーパーシティと大きく6つの分野において取り組みを進めております。

本組織の設立後すぐに、社会課題とそれを解決するアイデアをメンバー全員で出し合いました。その結果、500ほどアイデアが出たものの、残念ながらほとんどが事業化に至りませんでした。しかし、そこから我々は、社会課題を解決して未来を創っていくためには「共創」が必要であると学びました。つまり、0から1を生み出すのではなく、各業界さらには産官学の垣根を超えて連携し知恵を出し合い、すでにあるものを1から100にしていく、そういったことを共創していくべきだと気づいたのです。

そんな中、2021年7月に東広島市様と包括連携協定を締結させていただきました。今後さまざまな社会課題を解決するサービスを実現するために取り組んでまいります」

未来の日本に必要なものはデジタル人材の育成

次に河西は、世界の産業の変化について触れ、日本の成長にはデジタル人材の育成が重要だと述べました。

河西「世界の企業の時価総額ランキングを見ると、30年前は大半を日本企業が占めており、そのほとんどが通信や金融でした。しかし、現在はほとんどがアメリカのIT企業です。

つまり世界の産業の中心はデジタル産業へとシフトしたのです。しかし、日本のデジタル人材は圧倒的に不足しています。

理由は明白で、日本のデジタル産業が成長していないためです。そのためデジタル産業に携わりたい人材は世界に出て行くという悪循環まで生まれています。それを取り戻すことが大切です。一方で、日本に留まっているデジタル人材はというと、東京圏に集中しています。これも課題だと言えます。

これら課題を解決するためにはデジタル人材の育成と彼らが学んだ事を生かせる場所の提供、そして日本がデジタル国家に変貌していくことが必要と考えます。

ここで重要なのは、デジタル人材が東京圏に集中しないようにすることです。そこで今回の東広島市様との包括連携協定においては、地域循環型のイノベーションを生み出すエコシステムの仕組みづくりをしたいと考えております」

目指すのは”都市OS”で繋がるデジタル産業

産官学が連携したエコシステムの構築に、デジタル人材の育成が必要であると語った河西。

では、デジタル人材の活躍の場となるデジタル産業については、どのようなビジョンを持っているのでしょうか。

河西「産官学連携で創る未来社会というのは、5Gなどによりあらゆるものがつながることで生み出されるデータと、それを分析するAIを活用することで、地域住民が『ここに住んでよかった』と実感するーーそういったことに取り組む必要があると考えます。そのためには遠隔医療やモビリディ、小売、流通、そして教育などデジタル化が遅れている業界を、デジタルインフラーーつまり都市OSで支えていくことが重要です。

※1 MaaS(マース:Mobility as a Service):地域住民などの移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。目的地での医療といった交通以外のサービスなどとの連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にもつながる。

そして都市OSそのものは、5GやAIといったテクノロジーを活用し、データ処理も含め地域分散するーーそんな社会を我々ソフトバンクは描いています。

さらに、我々が有するLINEやYahoo! JAPANやPayPayといったデジタルタッチポイントも活用し、東広島市様や広島大学様と共に新しいデジタル産業や、よりよいSaaS※2を立ち上げられればと考えています。具体的には、小売MaaSや学生や住民が自らの意思で参加し提供するデータの活用、そして地域医療の情報化も実現していきたいと思います」

※2 SaaS(サース:Software as a Service):クラウド上にあるソフトウェアをインターネットを経由して利用できるサービス。グループウェアなどのビジネス向けサービスや家計簿管理アプリなどのコンシューマ向けサービスなど、用途やユーザに応じてさまざまなサービスが提供されている。

東広島市での取り組みを次世代の標準モデルへ

最後に河西は、日本の未来に必要なこと、そして今回の包括連携協定に対する思いを次のように語り講演を締めくくりました。

河西「日本の未来に必要なことは、各業界だけとか部分最適だけに留まらず、日本全体の課題解決に向けて産官学が目線をあわせて議論を行うことです。さらに、そこから生まれたアイデアを、デジタル産業やサービスとして早期に社会実装していくことではないでしょうか。

それはまさに東広島市様との取り組みです。この取り組みを次世代の標準モデルとして全国展開できるよう、しっかりと仕組みを創り上げていきたいと考えています」

今回のシンポジウムでは河西の講演の他、広島大学理事・副学長 金子慎治氏をモデレータとして、広島県副知事 山田仁氏と河西の3者によるパネルディスカッションも行われました。その内容はソフトバンクニュースでお読みいただけます。

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