AI+心理学をメンタルヘルスに応用した「連信科技」のチャットボット
2022年3月28日掲載
近年の中国では、ストレスを解決するためのソリューションが登場しています。今回は、対ストレスソリューションで結果を出している浙江省杭州にある企業「連信科技」のサービスをご紹介しましょう。
連信科技は、AIやビッグデータやIoTなどのテクノロジーのメンタルヘルスサービスへの応用や、心理学におけるビッグデータ活用の分野において中国トップクラスのポジションにいる企業です。
同社が開発した心理AIロボットサービス「連小信(Psybot)」は、各地域の地方政府や企業などで導入されています。たとえば、地方政府ポータルアプリを通じて地元住民がサービスを利用できるようになっていたり、企業の社員がメンタルサポートのサービスを受けられるようになっていたりといった具合です。
新型コロナウイルスが最初に武漢で感染拡大した際、同社は「連小信(Psybot)」ベースの「心理支援天使」というサービスをリリース。ロックダウンと不安で参っていた人々のストレス解消のために活躍しました。
展示会での連信科技(出典:捜狐)
連小信に悩み事を入力すると、AIによる自動カスタマーサポートのように最適なアドバイスをしてくれます。しかも質問に対して回答して終わるのではなく、質問者に対してさらに質問を投げかけて、その答えをもとに質問者にとって最適なアドバイスをしてくれるのです。さらに、ストレス解消ができるミニゲームや瞑想やライフハックコンテンツも用意されており、アドバイスによってはミニゲームや瞑想などに誘導することもあるそう。
「自分の思いを伝えたいけど他人の目が気になる」「他人からの判断が怖い」「夜中に不眠の悩みを打ち明けたいけど友人や家族の休息に影響しないか心配で話せない」「人には言えない秘密がある」……こういったさまざまな悩みを、AIによる対話で解決できます。AIがカバーする領域で解決する場合、サービス提供側は人材を必要以上に用意する必要がなく、また人に相談するのが不安な利用者にAI相談が用意されていることは、メリットに繋がるでしょう。
連小信(出典:百度)
商品の自動カスタマーサポートと少し似ていますが、異なるのは利用者は様々な悩みを抱えていること。研究開発では多額の投資コストを必要とし、参入者が非常に少ない状況です。そうした中で連信科技は、世界的に有名な高等教育機関の心理学研究開発学者とデジタルインテリジェンス技術開発者の協力をもとに、IT×心理学サービスをリリースしたのです。
同社の感情認識モデルの認識精度は92.8%と、同社サービスのリリースを重ねるほどに高くなりました。またとある発表では「8つの大きな感情カテゴリーと45の細分化された感情タイプの認識を実現し、さらに各感情を強度に応じて10段階に細分化することで、より正確なメンタルヘルスサービスを提供することが可能になった」と報告しています。要はより細かく感情分析ができるようになり、高精度な対応が可能になったということです。また精度だけでなく速度も向上、認識効率は9ms以下を実現し、瞬時の回答や的確な回答を容易に実現することができるようになったとのことです。
社区矯正プラットフォーム(出典:麗水司法)
新型コロナ感染拡大以前からこのサービスは存在し、以前は個人向け以外では、犯罪者矯正サービスとして活用されていました。中国の司法システムで決まった住宅地(社区)エリア内で執行猶予を行う「社区矯正」というシステムがあるのですが、ここでの矯正プログラム「浙里連心」の中で同社サービスが活用されました。
結果をリモートでAI管理することで、矯正対象者へのケアへのブレがなくなり各人に同じクオリティのプログラムが提供でき心理改善が期待されるだけではなく、矯正対象者と日々面接するコストが削減されます。また管理者サイドからは、コロナ感染危険度を3色で表現する「健康コード(健康碼)」のように各矯正対象者を緑、青、黄、オレンジ、赤の5色に分ける「気持ちコード(心晴碼)」で、行政内の各地域の状況を確認できるようにしたとのこと。
連信科技のある杭州はアリババの企業城下町として有名ですが、加えて積極的にスマートシティ関連の新しい取り組みを行う街でもあります。「健康コード」は、杭州市とアリババがともに考え実装した機能です。現在は中国全土で使われるようになりました。
2021年1月、連信科技と浙江工業大学は共同で、デジタルテクノロジーで平和な街づくりを目指す「数智平安研究院」を設立、 同6月には連信科技と中国人民公安大学の戦略的提携を行い、心理に関するビッグデータと人工知能研究の共同イノベーションセンターを建設したのです。また警察のニーズに合った心理サービスを提供し、将来的には浙江省から全国に「デジタル統治」技術を普及させることを目指すべく、中国全土におけるスマート心理サービス標準を創案しました。
連心科技は、大量のサンプルから心理ケアAIを作成しブラッシュアップをかけメンタルケアができるサービスを開発。さらに裁判所や警察と提携し、犯罪者へのケアにも活用すると同時に、各人の現状を把握できるようになりました。賛否両論もあるかと思いますが、なかなか中国らしい新しい取り組みではないでしょうか。
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