人流データの重要性〜経験や勘に頼らない出店戦略〜
2024年2月22日更新
2023年8月8日掲載
新型コロナウイルス感染症の影響で我々の生活環境は激変し、生活スタイルの変化は小売業や飲食業界に大きな影響や課題を残しました。リモートワークの定着により郊外に移り住む人が増え、オフィス街の飲食業界は大きな打撃をうけました。
そんな今だからこそ、小売業や飲食業界における出店、退店、業態変更などの判断は、科学的な数値データを基に、戦略を練っていく必要があります。
本ブログでは、小売・飲食業界のコンサルタントを行う、株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ 代表取締役の榎本様と、位置情報を専門としたビックデータを扱う、株式会社Agoop 取締役 兼 副社長 兼 COOの若谷様の対談をもとに、今後、小売業や飲食業界が出店戦略を行うために重要になる要素を分かりやすく紹介します。
コロナ禍が小売・飲食業界に残した課題
最近は、商業施設などがある都心部を中心に人流が戻り、社会が活気を取り戻しつつあります。社会としても行動制限が緩和され、外食をすることへの抵抗感が減少し、インバウンド需要も目立ってくるようになりました。
その一方で、コロナ禍は完全に収束したわけではなく、これからも我々の生活に影響を与える可能性があります。リモートワークを取り入れる企業が増えたことで、オフィス街においてはまだ人流がもとの状態に戻っているとは言えません。
小売・飲食業界は、コロナ禍で過酷な状況を経験してきました。特に飲食業はこの3年間で大きなインパクトがあった業種と言えます。2022年と2019年の売り上げ高を対比してみると、「パブ・居酒屋」のジャンルは-68.5%と、大きな打撃を受けたことが分かります。ほかの業態でも売り上げはマイナスに転じており、唯一ファーストフード業界が、テイクアウトやデリバリーの需要で売り上げを伸ばしたという結果が見えました。
また、以前から人口減少問題が叫ばれており、コロナ禍がそれに拍車をかけるように、外国人労働者の減少や働き手不足という状況が続いています。物価や光熱費、建設資材の高騰も、こうした環境をさらに深刻化させていると言えるでしょう。そうした中だからこそ、小売業や飲食業界においては、データをもとにした科学的な出店や退店の判断が必要なのです。
店舗開発の課題
小売・飲食業にとって、店舗開発は最も重要なミッションです。いかに新店を増やし続けるかが、成長している証拠と言えるからです。店舗開発の仕事は非常にプロフェッショナルな領域だと言われています。新店や移転を検討する際の、不動産や地主との巧みな交渉術が必要であったり、「この場所にビビッと来た!」というような鋭い感性など、業務範囲におけるあらゆるポイントで専門性が高く、豊富な経験と高いスキルが必要とされています。それ故に、社内で人材が育ちにくく、開発担当者は引く手あまたで流動化しやすいということが課題となっていました。
出店や退店・業態の変更は効率的に判断をしていく必要がありますが、経験や勘で意思決定している企業も少なくありません。環境の変化が激しい昨今では、客観的データに基づいた戦略や見直しが重要となります。
科学的数値に基づいた出店戦略が企業の成長を左右する
これまで特定の人材の経験や勘に頼っていた部分に「人流データ」を取り入れることで業務を定量化することができ、リアルタイムに現状を把握できます。また、数値的な裏付けを行うことで、どんな環境の変化にも左右されない店舗開発の検討が可能となります。
これまでも科学的根拠にもとづくデータは存在していたものの、国勢調査や経済センサスをもとにしたGIS(地理情報システム)データであったため、情報の更新にタイムラグがありました。リアルタイムの解析でない場合、コロナ禍のような急激な環境の変化には追いつくことができないのです。これまでの豊富な経験や勘に「人流データ」という情報源を加えることが、出店戦略を成功させるための鍵となり得るのです。
人流データに期待できること
人流データを活用することで、その場所が出店候補地として相応しいかを、居住者や来訪者の人口や属性分布から判断できます。例えば、道路や建物などの細部にわたる場所で通行人が進む方向を確認できたり、移動量を把握することが可能です。主要な導線を特定し、出店の検討に役立てることができます。人口に対して店舗が少ないかどうかも、データから読み取ることができます。
また、慢性的な渋滞があるエリアは、出店を検討する上で大きなマイナス要因となります。渋滞していると、人はそこを早く抜け出したいという心理が働くからです。渋滞の情報や車の動きを確認することで、最適な出店配置を検討することにつなげられるでしょう。
人流データの活用で戦略を強化
今回の対談に参加したAgoop社は、位置情報を専門としたビックデータを扱っています。スマートフォンのアプリケーションからGPSデータを取得するという仕組みで、通信キャリアを特定せずにデータを取得しています。そのため、2,000万人という大規模なサンプルを用いており、高精細・狭域集計が可能です。また、人数の変化だけでなく性別や年代別の増減やペルソナを分析することも可能です。
人流データの活用で、経験や知識が豊富になくても出店の判断となる出店戦略を行うことができ、競合との差別化にもつながるでしょう。小売・飲食業に携わっておられる方は、出店戦略はもちろん経営戦略におけるトレンドや人流データの有用性について考えてみてはいかがでしょうか。
人流データ分析を活用した戦略検討
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