東京大学エクステンションとソフトバンクが対談 DXを実現する従業員教育とは

2023年8月21日掲載

DX 教育、DX 人材

近年「リスキリング」などの言葉が注目されたように、企業の競争力を向上させるためには従業員教育が不可欠な要素になりました。しかし、ChatGPTのような生成AIをはじめとする新たなテクノロジーの台頭と、急速なビジネス環境の変化により、OJTなど従来の教育手法ではDX人材の育成に不十分になっています。そこで、これからの企業成長を実現するために必要な従業員教育の打ち手とは何かを、東京大学エクステンション株式会社 山本代表とソフトバンクの社内ベンチャー「Axross Recipe for Biz」の事業責任者 藤原との間で行われた対談をもとにご紹介します。

目次
東京大学エクステンション株式会社 山本代表

山本 貴史 氏

東京大学エクステンション株式会社
代表取締役社長

Axross Recipe for Biz 藤原 氏

藤原 竜也

ソフトバンク株式会社 AI戦略室 「Axross Recipe for Biz」 事業責任者

テクノロジーによる変化は不可逆

藤原: 昨今、ChatGPTをはじめとする生成AIが大変話題になっていますが、それを取り巻く声には必ずしも賞賛だけでなく、慎重論も多く聞こえてきます。この現象に似たこととしてはスマートフォンの登場があるのではないでしょうか。私が学生の時分ですが、普及しはじめたスマートフォンを大学の授業では禁止すべき、という議論がありました。しかし、当時の私の実感としてもスマートフォンがなかった時代にはもう戻れない、授業で有効活用した方が良いと思いました。ChatGPTを取り巻く環境もスマートフォンと似たような方向性になっていき、やがては社会に欠かせないものになるのではないでしょうか。

山本代表: 新しい技術が世に出ると、それに反対する声も必ず上がります。若い世代の方には信じられないかも知れないのですが、Googleなどインターネットの検索エンジンが広まったころ、それらの業務利用を禁止した会社がありました。
今はChatGPTも出てきたばかりで、さまざまな反響を巻き起こしてますが、藤原さんが仰るように今後、皆が使わざるを得ない状況になっていくでしょう。
私もChatGPTの使い方を色々と試してみています。以前、私の所に某金融機関が大学発のベンチャーを支援する方法について相談に来たことがありました。先日、そのときに相談された内容と同じ質問をChatGPTにしたところ、私の意見とほぼ同じ答えが得られました。
ほかにも、アメリカのユニークな銀行によるスタートアップ支援の事例を3つ教えてくださいなどと質問すると、カンザス州の銀行がスタートアップとどう関わっているのかとか、ボストンの金融機関がどういう取り組みをしているかなど、さっとまとめて教えてくれます。こうしたことを自分で一から調べるとなると大変ですが、ChatGPTを使えば10秒程度で分かるので、情報の探索における革命だと思います。

DX 教育、DX 人材、対談

人材像の未来と学習の重要性

山本代表: 学習というと学校がまず思い浮かびますが、大学などの教育機関は、より大きな企業に就職するための通り道のようになっていた面があります。そして、就職した後、人はあまり学ばなくなってしまう問題もテレビ番組や新聞などでたびたび取り上げられてきました。しかしChatGPTが生まれたように、現代は技術や社会の移り変わりが加速していますので、学び続けなければ置いて行かれてしまいます。そのため、どんな学校を出たかという「学歴」だけでなく、どんなことを学んできたかを示す「学習歴」も今後、キャリア評価で重視されるようになっていくでしょう。学校を出た後も学び続ける人材の重要性が増しているのです。
こうした学習を支援するため、東京大学でもリカレント(生涯)教育プログラムや社会人向けのデータサイエンススクール、アントレプレナー(起業)スクール、AI特別講座などを展開し、企業の従業員教育の助力をさせていただいています。

藤原: 私が事業責任者を務めているソフトバンクの教育ソリューション「Axross Recipe for Biz」にも、機械学習概論とベーシックコース、データサイエンス入門と情報倫理などのプログラムを東京大学さんから提供いただいています。また、ソフトバンクでは学習を中心にした人材配置を進めており、素養がある従業員にスキルを学ばせ、実際に業務に活用させたり、もう一段階済めてプロジェクトリーダーの経験を積ませて会社の将来を担う人材として成長させるなどの打ち手をとっています。
このような動きは日本企業でも今後広まると思いますし、従業員が学習できる環境作りはどんな企業でも必須と言える時代がすでに来ていると考えています。

DX人材育成を阻む3つの課題

藤原: DX推進における人材育成の重要性は増すばかりですが、一方でそれが上手くいっている企業ばかりではないようです。2021年に一般社団法人 日本能率協会が発表した調査結果によると、人材の育成・活用戦略がDXの推進における課題と回答した企業は9割に上りました。

このように、人材の育成が思うように進んでいないのには以下3つの課題に原因があると私は分析しています。

課題1「学ぶ時間がない」

従業員が新しい知識やスキルを学習する重要性は高まっているが、家庭の都合などもありまとまった時間が取れず、学びを定着できないことがある。

課題2「研修などの評価ができない」

研修や教育がどのような効果を出しているのか把握することが難しい。そのため、対象の研修や学習サービスを今後も使い続けるべきか、確証を持てない。

課題3「知識の実践ができない」

人材に教育を施しても、その知識を実践しDXを推進できるような機会の用意が難しい。この対談でお話ししてきた通り、DXを推進できる人材を社内に揃えていくには、従業員教育が決定的に重要です。そこで、こうした課題を解決し、デジタル技術を学ぶためには学習ソリューションを活用するのが最適ではないかと考えます。

学習課題の解決に役立つ「Axross Recipe for Biz」

藤原:「Axross Recipe for Biz」はソフトバンクの社内起業制度から生まれた、最新技術の活用に特化した学習プラットフォームです。オンライン・研修・ハッカソン(実践ワークショップ)の3つを軸としていて、「Recipe(レシピ)」という名前の通り、データサイエンスなどのスキルを料理のレシピのように実際に手を動かしながら学習することができ、AIやデータ活用といったデジタル技術の習得に必要な学びを提供します。また、以下の特長をもち、先に挙げたDX人材育成の3つの課題を解決することができます。

課題1「学ぶ時間がない」

解決⇒オンライン学習メインで場所を選ばず、少しの空き時間でも自由に学習を進めることができる。

課題2「研修などの評価ができない」

解決⇒従業員の学習状況や行動変容を観測する機能があり、運用評価がしやすい。また学習が進んでいる従業員・停滞している従業員の発見にも役立つ。

課題3「知識の実践ができない」

解決⇒各Recipe(学習テーマ)はエンジニアが実務で得た知識がもとになっているので、実践的な学習ができる。また、ハッカソンで知識を試す機会も用意できる。
また、オンラインによる遠隔での学習だけでなく、組織に知識を一気に行きわたらせるのに適した研修サービスや、ChatGPTなどのツールを業務で活用するための方法について学べるコンテンツも揃っているので、企業が最新のテクノロジーを学ぶために最適です。

今後も企業の成長を維持するために

山本代表: 近年、社会人学習に対する関心が非常に高くなりました。日本企業では人材の流動性が海外に比べるとそれほど強くないので、ChatGPTのような革新的なテクノロジーを活用したり、DXの実現でビジネスを変革しようという際には、社内の従業員への教育が決定的に重要な要素です。特に、企業の競争優位に直結する領域にこそ、こうしたデジタルに詳しい人材を内製化していることの強みが発揮できるので、なるべく外注せず内部に蓄積していった方が良いと考えます。

藤原:「自分は文系だから・・・」などの理由でデジタル分野に苦手意識を持ってしまう方もいますが、文系理系などの括りで学習する範囲を狭めてしまうことはもったいないと思います。私自身、学生時代はずっと文系だったのですが、社会人になった後に各種のデジタルスキルを学びました。その結果、PYTHONを使ったデータ分析などができるようになり新たな道を拓けたので、キャリアを作る上で学習は重要だったとの実感を持っています。企業で働く皆さまにもぜひ、自分や自社の可能性を信じて学習とその実践に邁進していただきたいですね。そうした取り組みが、企業の未来を支えていくと信じています。

本記事でご紹介した「Axross Recipe for Biz」は実践で得たノウハウが詰まったDX・AI人材育成のための学習ソリューションです。興味がある方はぜひ下記からお問い合わせください。また、記事ではご紹介しきれなかった、東京大学とソフトバンクにおける人材育成の考え方や取り組みなどを、対談本編ではご覧になれます。

▶対談ウェビナー:「東京大学エクステンションとソフトバンクが対談 ChatGPTとAIがもたらす従業員教育の未来と必要な打ち手とは

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永沼 雄
ソフトバンクビジネスブログ編集チーム
永沼 雄
2009年以降、B2B業界で海外営業やマーケティング活動に従事。2021年よりソフトバンクの法人部門にて、オウンドメディアでDXやサイバーセキュリティ分野のマーケティング活動を行っている。

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