アノテーションは内製?外注?それぞれの利点と選び方を解説
2023年9月5日掲載
アノテーションはAIモデル構築で必須な作業であり、機械学習プロジェクトを進めるためには、教師データのアノテーションが不可欠です。しかし、膨大な工数が発生するアノテーション作業を限られたリソースの中で内製で全て行えるのか不安だったり、外注するにしてもどの会社を選べばよいか分からない方も多くいるでしょう。
本ブログでは、アノテーション作業を内製で行なった際の課題と解決法、さらにアノテーション外注サービスの利点と注意点についても解説します。
アノテーションとは何か?
アノテーションとは、さまざまなデータに意味を持たせるためのタグ付け作業です。この作業によりAIモデルに学習データを提供し、正しいデータの認識を可能にします。
機械学習を行うためには、参考となる「教師データ」が不可欠です。タグ付けが行われていないデータをAIに供給しても、何が正確な情報かをAI判断できないため、情報の認識が行えません。アノテーションによって整備された教師データを利用して機械学習を進めることで、正確なデータの生成や情報の認識が可能となります。
アノテーションはテキストや画像、音声など、さまざまな分野に適用されます。希望する内容に基づいてアノテーションデータを作成することで、効率的な機械学習を進めることが可能です。
正確には、上記のタグ付けの工程のみがアノテーションとされますが、AI開発の現場では
・元データ(データセット)の収集
・ アノテーション作業(ラベリング)
を同時進行で行うことが一般的で、これをあわせてアノテーション作業と呼ぶことが多いです。
※アノテーションに関して「アノテーションとは?AI・機械学習との関係と活用事例や作業方法も解説」の中で詳しく解説しておりますので、こちらの記事もご確認ください。
教師データの品質は、収集される元データが重要
AIの学習に必要な教師データを作成するには、画像や動画、テキスト、音声など、さまざまな種類の元データが必要です。
例えば、画像認識の場合、建物の外観画像や食べ物の写真。動画認識では、スポーツの試合の映像や映画のシーンの動画、自然の風景などの動画が必要です。音声認識のためには、電話会話データや会議の録音データ、交通アナウンスの音声。自然言語処理では、レビューやソーシャルメディアの投稿、翻訳データ、医学論文などの文章データが必要となります。
アノテーションに用いるデータの一部は無料で利用できるデータセットやウェブから取得できるものもありますが、商用利用が制限されたり、実際に開発したいAIモデルに適さなかったりすることもあります。そのため、実際に構築したいAIモデルに合わせて、必要なデータを自社で集めてアノテーションを行う必要がほとんどです。
また、アノテーションを始める際には、元となるデータがなく、データ収集からはじめなければならない場合があります。
高精度なAIモデルを構築するには十分なデータ量が不可欠であり、限られたデータでは学習が足りず、望む精度を達成することは難しいです。したがって、多量のデータを収集することが重要ですが、自社のみでデータを収集する事はリソース面・ノウハウ不足で困難なケースも多いです。
有償のデータセット提供サービスの活用
データセットと聞くと、先述の無償データセットを思い浮かべることが多いかもしれませんが、実際には民間の企業も多くのデータセットを提供・販売しています。
こうしたデータセットには、無償提供データセットには含まれていない、特定のニッチなデータ(例えば、法人の商談中のオンライン会議中の動画・東京都内限定の走行データなど)を提供する場合もあります。そのため、より専門的なAIモデルの開発の際には企業からデータセットを購入することを検討する価値があります。
アノテーション作業の実態
アノテーション作業自体は非常にシンプルです。AIに学習させたい画像や音声データに対してテキストを入力したり、画像内の特定の対象物を選択するだけでアノテーションが完了します。
ただし、高精度のAIモデルを開発するためには大量のデータが必要です。また、1つのデータに複数のタグを付ける場合、作業にかかる時間は増加します。
例えば、人の写真に対して以下のタグを付ける場合、性別、身長、体重、年齢など、多くのタグを付ける必要があります。そのため、1つのタグを付ける場合よりも時間がかかることが想定されます。一つ一つの作業は単純なアノテーションですが、AI精度を向上させるためには対象を一つずつ手作業でラベリングする必要があります。
また、AI開発に必要なデータは数千〜数万枚必要なケースが多く、データ作成に膨大な工数が発生していることが実態です。
アノテーション作業は内製?外注?
アノテーション作業を内製するか、外部に委託するかを選択する際には、以下の点を考慮する必要があります。
内製の場合:- 自社内でAI開発の専門知識を持つチームがある場合
- 社内リソースでタスクを効率的に進められる場合
- タスクを外部に委託することに問題がある場合
外部委託の場合:- 専門知識を持つスタッフが不足している場合
- 教師データの品質をより担保したい場合
- データ収集・アノテーションが内部では難しい場合
アノテーションの完全内製化は難しい
アノテーションはAIの認識精度に大きな影響を及ぼすだけでなく、内部の機密情報を扱う場合もあり、企業はアノテーションを社内で行いたいというニーズもあります。しかし、その実現には多くの企業が直面する課題があります。以下に、アノテーションの完全内製化に関連する課題について詳しく解説します。
1.専門スキルとトレーニングの課題
アノテーション作業は専門知識と正確なスキルが必要です。社内でこれらのスキルを持つ人材を見つけたり、必要なトレーニングを提供することが困難な場合があります。また、専門スキルの獲得に時間がかかるため、プロジェクトの遅延が発生する可能性があります。
2.コストと効率性の課題
アノテーション作業は時間と労力がかかるため、内製化には人件費やトレーニングのコストが発生します。また、作業効率の確保やスケーリングにも課題があります。大量のデータを処理する場合、迅速な作業が難しくなることがあります。
3.品質管理が難しい
アノテーションの品質管理と一貫性の確保は重要ですが、社内での管理は複雑化する可能性があります。アノテーター間のバリエーションやヒューマンエラーが発生しやすく、一貫性を保つための労力が必要です。
4.大規模なプロジェクトに対応が難しい
成長するプロジェクトに対応するためには、適切な人材とリソースを確保する必要があります。しかし、内製化においてはプロジェクトが急速に成長した際に人材不足やリソース不足が発生する可能性があります。
アノテーション作業を適当に省略することは、期待されるAI開発の成果を阻害し、予想以下の性能しか得られない可能性があります。モデル構築や精度検証、調整なども行う必要がある機械学習エンジニアには、アノテーション業務に適切な時間を確保することは難しいでしょう。
アノテーション外注サービスの利点
完全内製化は難しいアノテーション業務ですが、外部委託することで効率的にAI開発を行うことが出来ます。ここでは、アノテーション外注サービスを利用するメリットについて解説します。
1.コスト削減と効率向上
外部委託することで、自社のリソースを利用する必要がなく、人件費を削減できます。自社でアノテーション作業を行う場合、AI関連の専門知識を持つ人材を確保する必要があります。アノテーション専任の人材を確保することで、人件費や管理コストがかかり、企業にとって負担となります。しかし、アノテーション外注サービスを利用することで、新たな人材の確保が不要となり、人件費を削減しながら開発作業を進めることができます。
2.専門知識とスキルの活用 アノテーション作業はデータの特性に合った正確なラベル付けが必要です。外部の専門的なアノテーターは、その分野の専門知識とスキルを持っており、高品質なアノテーションを提供できます。
3.大規模なプロジェクトへの適用 大量のデータをアノテーションする場合、内部のリソースだけでは対応が難しいことがあります。外部に委託することで、大規模なプロジェクトにも柔軟に対応できます。
4.品質の向上と一貫性の確保 アノテーションはデータの品質や一貫性に直接影響を与える重要な作業です。外部のプロフェッショナルによるアノテーションは、品質の向上と一貫性の確保につながる可能性があります。また、外部のアノテーター同士の独立性も保たれ、バイアスや主観が最小限に抑えられることがあります。
アノテーション外注サービスを選ぶ際のポイント
アノテーション外注サービスを利用することで効率的にAI開発が進められますが、最適なサービスを選ばなければ、スムーズに進めることはできません。ここでは、アノテーション外注サービスを選ぶポイントについて解説します。
1.自社の要件に適合しているか
アノテーション外注サービスが得意とする分野や強みが、自社の要件に合致しているか確認しましょう。画像アノテーションやデータ収集など、特定の業務に特化した会社が存在します。
2.品質保証と一貫性
アノテーション外注サービスが品質保証プロセスをどのように実施しているか確認してください。一貫した品質を提供できるかどうかが重要です。サンプルデータや品質評価の方法についても質問しましょう。
3. セキュリティ体制の確認
アノテーション外注サービスには企業の重要なデータや情報を預けることになるため、セキュリティ体制を詳細に確認しましょう。国内での開発を行なっているかの確認や、データロケーションにも留意した方が良いでしょう。
4.プロジェクト管理とコミュニケーション
サービス提供者とのコミュニケーションやプロジェクト管理の方法がスムーズかどうかを確認してください。効果的なコミュニケーションがプロジェクトの進行に影響を与えます。
5.大規模なプロジェクトに対応できるか
サービス提供者が大規模なプロジェクトに対応できるスケーリングの能力があるか確認してください。プロジェクトが成長しても品質を維持できるかが重要です。
6.利用料金の確認
アノテーション外注サービスへの依頼にはコストがかかります。必要な教師データの量やアノテーションの種類に応じてコストが変動することを確認しましょう。基本的には案件によって利用料金は異なるため、アノテーション外注サービスを提供している企業に問い合わせをする必要があります。
アノテーション作業はAI開発において重要な要素であり、それを効率的に行うためにはアノテーション外注サービスの活用が一つの解決策となるでしょう。
まとめ
本記事では、アノテーション作業を内製で行う際の課題、解決策について解説しました。自社でアノテーション業務を進める場合、人材の確保や教育、時間の制約などの問題が発生する可能性があります。そのため、アノテーション外注サービスを利用してAIエンジニアの負担軽減、作業効率化を図ることが重要です。
ソフトバンクが提供するTASUKI Annotationでは、自社開発をした半自動アノテーションツールを専門人材が活用することで、高速・高品質・安価にアノテーション外注サービスをお届けしています。
アノテーションに関するご相談はこちらまでお気軽にお問い合わせください。その他TASUKI Annotationが提供するサービスに関してはこちらをご確認ください。
TASUKI Annotation
AI開発プロジェクト必要なアノテーション(教師データ作成)を支援するサービスです。アノテーションに特化したサービスであるため、良質な教師データがどなたでも・早く・低コストに作成でき、AI開発プロジェクトの成功を支援します。
詳しくはこちら