「アノテーション」とは? なぜAIに欠かせないのか、活用事例や作業方法も解説

2023年6月22日掲載

「アノテーション」とは。なぜAIに欠かせないのか、活用事例や作業方法も解説

生成AIに大きな注目が集まるのに伴って、「アノテーション」という単語を耳にした方も多いのではないでしょうか。本ブログでは、AIをより高精度に活用していくために欠かせない作業工程である「アノテーション」について、事例や具体的な作業方法を含めて解説していきます。

目次

アノテーションとは

アノテーションとは、情報を整理したり解釈を明確にすることを目的に、データにラベルやタグを付けることです。
対象となるデータは、文章、図や画像、音声、動画など広範囲に及びますが、例えば画像の場合は物体の種類や位置・大きさ・色・形・方向といったものに、音声の場合なら発音やアクセント・話者の情報や感情などでデータにタグ付けすることができます。

このアノテーションによってタグ付けされたデータが、AIの機械学習時に利用する「教師データ」となります。つまり、アノテーションはAIの機械学習において極めて重要な「前処理」であり、この前処理によって初めて有効な教師データが作られます。

さまざまなAI技術は、アノテーションによりタグつけされたデータを機械学習モデルが理解し、パターンを抽出することにより生まれています。つまり、AIモデルの信頼性とパフォーマンスを向上させるためには、正確なアノテーションに基づく高品質なデータが不可欠と言えます。

現代は、膨大な情報がオンラインにアップロードされ日々データが増加しています。これらのデータ処理・抽出を手動で行うのは煩雑なため、ミスが生じる可能性が高くなります。しかし、アノテーションを用いることで、高い正確性を持つ機械学習技術を使用することができ、データの品質を高めることができます。
また、データ処理にかかる人間の負荷を削減し、作業の効率性を改善することができます。

アノテーションの種類

アノテーションにはいくつかの種類があり、①画像・動画、②音声、③テキストの3種類に大別できます。それぞれの項目について見ていきます。 

①画像・動画

画像データや動画データに対して行われるアノテーションは以下に細分化されます。

・物体検出(オブジェクトディテクション): 画像内の特定のオブジェクトや領域を検出する。

 

・領域抽出(セグメンテーション): 画像内の異なる領域や物体をセグメント化するものや、画像内の複数のオブジェクトを個別にセグメント化するインスタンスセグメンテーションがある。

領域抽出(セグメンテーション)

 

・キーポイント検出(キーポイント): 画像内の特定のポイントや特徴を検出する。

 キーポイント検出(キーポイント)

 

・オブジェクトトラッキング:ビデオ内の特定のオブジェクトの動きや位置を追跡する。

②音声

音声データに対して行われるアノテーションは以下に細分化されます。

・音声トランスクリプション:音声をテキストに変換する。
・発話区間検出: 音声データ内の発話区間を検出する。
・発音:音声内の特定の音素や発音パターンを認識する。

③テキスト

テキストデータに対して行われるアノテーションは以下に細分化されます。

・エンティティ抽出:テキスト内の特定のエンティティ(人名、場所、組織など)を抽出する。
・意図分類:テキストの意図や目的を分類する。
・感情分析:テキスト内の感情や意味のニュアンスを分析する。
・文法構造解析:テキストの文法構造や依存関係を解析する。

アノテーションの活用事例

こうしたアノテーションが活用されている事例を分野ごとにご紹介します。

医療

CT、MRI、X線などの医療画像に対して、疾患部位を検出するために利用されます。画像診断における医師の診断思考をサポートするだけでなく、治療プランの作成・手術計画の立案に貢献します。
また、病名や治療法、副作用などをマークすることで、疾患の研究や治療法の改善、副作用の減少につながる研究も進んでいます。

教育

文章に対して単語の意味や品詞、文法構造などをアノテーションすることで、機械学習による自動翻訳やテキスト解析の精度を高めることができます。

製造業

製造プロセスにおいて、画像の特定部位をアノテーションすることで自動的に不良品の検出を行うことができ、生産効率の向上が期待されます。

自動運転技術(車両認識)

監視カメラの映像解析に効果的です。人物・車両・物体などにラベルを付けることで、不審者の侵入や監視対象の確認が容易になり、警備員の業務を削減し、セキュリティレベルを向上させます。

防犯・セキュリティ

製造プロセスにおいて、画像の特定部位をアノテーションすることで自動的に不良品の検出を行うことができ、生産効率の向上が期待されます。

アノテーションの作業方法

アノテーションの手法には人手による手動アノテーションと、機械学習による自動アノテーションがあります。

手動アノテーションは人間がデータにラベルを付ける方法で高い精度が特徴ですが、作業量が膨大であるため手間とコストがかかります。また、作業者によって精度に差が出ることもあります。
自動アノテーションはAIを利用してデータにラベルを付ける方法で、手間とコストが大幅に削減されます。誤検知により誤りが生じることがありますが、近年はAI技術を応用した自動アノテーションの進歩により、精度は各段に向上しています。

どちらの手法を選択するかは、時間やコストなどさまざまな条件を考慮して判断する必要がありますが、現在は手動アノテーションと自動アノテーションを併用する方法が注目されています。
手動アノテーションで得た正確なラベルを、自動アノテーションで生成されたラベルとともに学習モデルに与えることで、モデルの精度が向上するという利点があります。
また、自動アノテーションで得られたラベルの誤りを手動アノテーションで修正することで、効率的に品質を向上させることができます。

アノテーションの作業方法のポイント

正確なアノテーションを行うためには、作業方法が重要です。ここでは、そのポイントをいくつか紹介します。

・クラスの設定
アノテーションを行う前に、対象のデータに対してどのようなクラス分類を設定するかを考える必要があります。クラス設定には、データの種類や目的に合わせた適切な分類が必要です。また、クラス設定はアノテーションの正確性にも影響を与えるため、注意が必要です。

・作業手順の確定
アノテーションの作業手順を確定することも重要です。作業手順には、注釈の種類や位置、ラベルの付け方などが含まれます。アノテーションの種類によっては複数の注釈を同時に付与する必要がある場合もあります。このため、作業手順を明確にしておくことで、作業の効率性と正確性を向上させることができます。

・適切な画面表示
アノテーション作業においては適切な画面表示が必要です。表示領域が小さいと注釈をつけるのが難しくなる可能性があります。また、画像の明るさやコントラスト、背景なども、注釈の精度に影響を与えることがあるため、適切に調整する必要があります。

・ヒューマンエラーの考慮
アノテーションは人間が行うため、作業者の疲労や集中力、ミスの発生確率などを考慮して、適切な作業環境を整えることが必要です。また、二人以上の作業者に作業を割り当てて、相互にチェックしあうことで、正確性が向上します。

・ツールの選定
アノテーションツールの選定も重要です。ツールによっては、注釈の種類や編集機能に差があるため、作業効率や精度に影響を与える場合があります。また、ツールが提供する自動アノテーションの精度も重要な要素です。自動アノテーション機能によって作業時間とコストを大幅に削減できますが、誤りが生じることもあるため、適切に選定する必要があります。

以上、アノテーションの作業方法のポイントを紹介しました。これらのポイントを考慮し、スムーズかつ精度の高いアノテーション作業を行うことが重要です。

一方で、上述の通り、アノテーションには一筋縄ではいかない要件の整理や、進行中作業におけるラベリングの柔軟な軌道修正、AI再学習時の学習データ作成(=アノテーション)への人員リソース確保が難しいなどさまざまな問題があります。

ソフトバンクが提供するTASUKI Annotationでは、データ収集から前処理、そしてアノテーション専門人材による柔軟なラベリング、使い勝手がよく自動アノテーションも具備されたアノテーションツールの提供など、お客様の幅広いニーズに応えるトータルアノテーションサービスをお届けしています。
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TASUKI Annotation

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