RAG(検索拡張生成)とは? LLMをビジネスで利活用するための切り札

2024年8月9日掲載

RAG(検索拡張生成)とは? LLMをビジネスで利活用するための切り札

ChatGPTを初めとした大規模言語モデル (Large Language Model; 以下LLM) が話題になっており、導入する企業が急増しています。

企業は膨大なデータから目的となるものを探し出し、業務効率化と顧客体験の向上を実現することが求められています。
しかし、生成AIはインターネット上に公開されている情報をもとに学習をしていくため、社内データや機密情報の学習は行うことができません。また、情報セキュリティの不安もあります。

このような状況の中、注目を集めているのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という最新技術です。RAGは、情報検索と言語生成を組み合わせることで、LLM単体では得られない情報を含んだ正確で自然な文章生成が可能です。

この記事では、RAGの仕組みや利点・欠点を説明し、ビジネスにおける実装方法や有効的な業務活用の仕方を紹介します。皆さまが課題解決やRAGの理解を深めるためにお役立ていただければ幸いです。

目次

RAGとは

RAGとは、最新の自然言語処理(NLP)技術の一つで、検索ベースと生成ベースのAIモデルを組み合わせたものです。

従来のLLMでは、事前学習済みデータに依存するため、最新の情報の反映やアップデートが困難で、また、企業内データの利用は情報漏えいのリスクとなります。そこで、RAGを使用し、学習データ以外のデータベースからリアルタイムに情報を取得することで、この問題を解決することができます。

RAGは、LLMと組み合わせることで、単に検索データを要約するだけでなく、知識を処理し、より自然で文脈がつながる説明文を生成することができます。

RAGの仕組み

RAGの仕組み

①入力した質問やデータのエンコーディング

ユーザーからの質問や要求(クエリ)は、RAGに入力されると、まず自然言語処理(NLP)技術を使って解析されます。解析をすることによって、クエリを構成する単語や文章の構造が分析され、その意味や文脈が把握されます。

このエンコーディングでは、大量のテキストデータから単語の意味や関係性を学習し、各単語を数値のベクトルで表現します。このベクトル表現は、クエリの意味や文脈を数値的に表現したものとなります。

②関連情報の検索

次のステップでは、ベクトル表現にエンコーディングされたデータを用いて、外部データベースから関連する情報を検索します。クエリのベクトルと各データのベクトル表現の類似度を計算し、最も関連性の高い情報を抽出します。

この処理により、質問に関連する最新かつ正確な情報、または社内でのみアクセスできる情報を得ることが可能になり、生成される回答の質が向上します。

③抽出した情報の統合と文脈理解

生成された応答は後処理され、文体を調整し、不適切な内容をフィルタリングすることで、より高品質な応答が提供されます。これにより、ユーザーに適した形式の応答と信頼性のある情報を提供することができます。

④回答の最適化

ユーザーからの質問や要求(クエリ)は、RAGに入力されると、まず自然言語処理(NLP)技術を使って解析されます。解析をすることによって、クエリを構成する単語や文章の構造が分析され、その意味や文脈が把握されます。

このエンコーディングでは、大量のテキストデータから単語の意味や関係性を学習し、各単語を数値のベクトルで表現します。このベクトル表現は、クエリの意味や文脈を数値的に表現したものとなります。

回答の最適化

RAGを使う6つのメリット

正確な情報提供

RAGの実装により、検索ベースと生成ベースのモデルを組み合わせることで、リアルタイムに最新情報を検索し、正確かつ信頼性の高い文章を生成する能力が向上します。これにより、ユーザーに対してより正確な情報を提供することができます。さらに、豊富な知識やデータを活用することで、高品質な回答が可能となります。

コンテキスト理解

RAGは情報検索と言語生成を組み合わせることで、クエリや文脈に基づいた意味のある文章を生成します。これにより、ユーザーがどのような情報を求めているかを理解し、それに対して適切で自然な応答を生成することができます。文脈や要求に応じた回答を提供することで、ユーザー満足度を向上させるだけでなく、このコンテキスト理解の能力により、より個別化された情報サービスを提供できるという利点もあります。

迅速な情報更新

RAGの実装により、外部データベースからリアルタイムに情報を取得し、アップデートすることができます。これにより、最新情報の反映や迅速な情報更新が可能となります。ユーザーに常に最新の情報を提供することで、正確な回答を迅速に提供することができます。

機密情報の保護

RAGは学習データ以外のデータベースから情報を取得することができます。このため、特定の機密情報を含む企業内データの利用を制限することにより、機密情報の漏えいリスクを低減できます。適切な情報セキュリティ対策とプライバシー保護対策を実施し、安心してRAGを活用することができると同時に、ユーザーの個人情報や企業の機密情報を守りながら効果的な情報提供を行える点が利点です。

豊富な知識活用

RAGは基盤となるLLMが事前学習で獲得した豊富な知識を活用します。この知識は幅広いトピックを網羅し、高品質な回答を提供するために使用されます。RAGの実装により、多様な分野において精度の高い情報を提供できるため、ユーザーのニーズに幅広く応えることができます。また、事前学習済みのモデルを使用するため、独自の学習データを用意する必要がなく、実装のスピードが向上します。結果として、幅広い知識を活用しながら高品質な情報を迅速に提供できるというメリットがあります。

コスト削減

RAGの実装により、コスト削減のメリットが得られます。LLM単体では最新情報の追加やアップデートが困難でしたが、RAGを用いることで外部の情報をリアルタイムに取得し、迅速なアップデートが可能です。これにより、大量の学習データを維持するためのコストや時間が削減されます。さらに、機密情報を制御するためにリソースを投入する必要もありません。したがって、RAGの実装によりコスト効率の向上が実現され、企業の運用コストを削減することができます。

RAGのユースケース

RAGの使用事例は多岐にわたりますが、共通しているのは、正確な情報や自然な文章の生成を必要とする場面での活用という点です。以下にいくつかの具体的なユースケースをご紹介します。

FAQ応答

RAGは、よくある質問(FAQ)に対する回答を生成する際に活用されます。RAGは検索ベースの情報と生成ベースの文章生成を組み合わせて、より詳細でコンテキストに即した回答を提供します。企業のカスタマーサポート、ヘルプデスクなどでのFAQ応答が効率化されます。

技術文書の生成

RAGは技術文書の自動生成にも活用されます。技術的な情報を持つ検索結果から適切な情報を抽出し、専門家が説明するような文章を生成します。エンジニアや開発者向けのドキュメント作成やAPIドキュメントの自動生成に利用されます。

バーチャルアシスタント

RAGはバーチャルアシスタントやチャットボットの応答生成にも用いられます。ユーザーの質問や要求に対して、正確な情報や適切な応答を生成することができます。迅速なサポートやカスタマーエクスペリエンスの向上に貢献します。

コンテンツ生成

RAGを使用して、ブログ記事やニュース記事などのコンテンツを生成することも可能です。検索結果と生成モデルを組み合わせることで、トピックに関する詳細な情報を含んだ読みやすい文章を生成することができます。

RAGの構築方法

RAGの構築方法

①データソースの作成

RAGからLLM に渡すデータとして用いたい社内情報や機密情報は、PDFや各種テキストファイルやExcel、CSV などのファイル、社内データベース、GoogleDriveなど多種多様なデータやシステムが挙げられます。
その中から使用目的に即したものを選択します。また、LLMに渡すため正確性が高いデータであることが求められます。

②ベクトルデータベースの構築

検索エンジンの効率的なデータ処理を実現するために、検索対象となるデータソースを数値のベクトルに変換します。これにより、検索エンジンはベクトル化されたデータを処理しやすくなります。テキストの場合は、自然言語処理技術や特徴抽出手法を用いてベクトル化を行い、その他の形式のデータにも適切な変換手法を適用します。これにより、検索エンジンは数値のベクトルをもとに高速な検索やインデックス構築を行い、ユーザーに迅速かつ正確な検索結果を提供できるようになります。

③LLMの選択

ChatGPTやClaudeなど、LLMの選定には、自社のニーズに最も適したLLMモデルを選ぶことが重要です。適切なモデルを選ぶためには、下記の点などを慎重に考慮する必要があります。

  • モデルの言語生成能力:文章の自然さや正確性などを評価する際に重要な要素です。
  • 対応言語:自社の需要に適合しているかどうかも重要なポイントです。
  • ライセンス条件:商用利用やクレジット表示などに関する制約を確認する。

これらの要素を総合的に評価し、自社のニーズに最も適したLLMモデルを選ぶことが大切です。

④検索エンジンの設計・開発

社内データ検索のための検索エンジンを開発し、LLMとの連携を考慮します。検索結果はLLMへの入力に最適な形式で出力し、テキストやメタデータの抽出・整形を行います。これにより、検索エンジンからのデータはLLMの分析や知識抽出プロセスにシームレスに組み込まれ、効果的な情報利活用を実現します。

⑤検索エンジンとLLMの連携

検索エンジンとLLMを連携させる仕組みを開発する必要があります。ユーザーからの質問をLLMで解析し、関連するキーワードを抽出して検索エンジンに渡します。検索エンジンはそのキーワードを用いてデータを検索し、結果をLLMに入力します。LLMはその結果をもとに文脈に即した自然な回答を生成します。この連携により、ユーザーは質問を直接検索エンジンに投げることなく、より応答の質の高い回答を得ることができます。

⑥UIの開発

実際にユーザーが使用する画面の設計〜開発を行います。ユーザーからの入力をLLMに渡し、LLMが適切な応答を生成した後、それを画面上で適切に表示できるようにします。その結果、ユーザーは直感的な手段で質問や情報の提供を行い、LLMからの自然な回答を受け取ることができます。応答の表示は、テキスト、音声、画像などの形式を適切に処理し、ユーザーに最適な情報提示方法を提供します。

RAGを有効的に業務活用するために

上記で触れました通り、RAGを業務で活用するメリットは多くあり、構築自体もそう難しいものではありません。ただ、本番環境での使用に耐えうるようにするためには、性能を改善するための戦略を検討する必要があります。

性能改善には、検索ベース側、生成ベース側双方でのアプローチが必要ですが、検索側で対応すべきことの1つにデータの前処理があります。特に、社内データをRAGに取り込む際は膨大なデータをいかに効率的に前処理(構造化)を行い、引用元となる正しいデータを選択することができているかの検証が必要です。

▶関連リンク:生成AIを業務活用する際に役立つRAGと社内文書を活用する上での課題

ソフトバンクはRAGの回答精度を向上させるための支援サービスを複数提供しており、お客さまのRAG活用状況に応じた、適切なサポートが可能です。RAGの回答精度に関するお困り事がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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