フォーム読み込み中
デジタル化が加速する現代ビジネスにおいて、システム間のスムーズな連携は組織の効率性を高める鍵となります。ワークスタイルは多様化し、それらを支えるように多くのSaaSが存在しますが、組織内には複数のサービスが存在し、それらの連携は容易ではありません。
iPaaS(アイパース)は、こうした異なるアプリケーションやサービスを統合し、デジタル化を加速します。このブログでは、IT部門やDX担当者が頭を悩ませるシステム連携の課題を解決するための、iPaaSの基本概念から主な機能、メリット、そしてクラウド時代におけるその重要性までを分かりやすく解説します。
西辻 陽平
ソフトバンク株式会社
IT統括 iPaaS事業開発本部 プロダクト開発課 課長
2020年に新卒でIT企業にエンジニアとして入社し、各種DXプロジェクトに従事。関わったプロジェクトでは三谷大臣政務官賞やGood Design賞を受賞。
2023年5月、現在ソフトバンクで最年少の本部長として活躍する平岡 拓が当時代表を務めていた「パンと水と」に、取締役として創業から参画。iPaaSや生成AIの分野でスクール事業や自社プロダクトの開発に従事。2023年12月にソフトバンクの孫 正義会長に平岡らとプレゼンテーションを行い、2024年3月からソフトバンクへ参画。現在は生成AIエージェント「satto」を手掛けるiPaaS事業開発本部に所属する。
iPaaS(アイパース)とは、Integration Platform as a Serviceの略で、異なるアプリケーションやサービスをクラウド上で統合し、情報連携させるためのプラットフォームサービスです。iPaaSを用いることで、オンプレミスとSaaSの連携、SaaS同士の連携が可能になります。
近年、ビジネス環境においてのデジタル化は急激に進み、在宅勤務をはじめ、多様なワークスタイルに対応するため、複数のSaaSを利用する機会が増えました。SaaSは「必要なときに、必要な分だけ」を選択できる便利さがありますが、組織やタスクごとに異なるサービスを使う場合、情報の連携ができず、手作業で連携を図ったり、システム開発をして連携を行う必要があります。
iPaaSは異なるアプリケーションやサービスを円滑に連携させる「接続の枢軸」としての機能を提供します。これにより、システム間の壁を取り払い、DX化をさらに促進させることが可能になります。クラウドサービスが主流となる現代において、ビジネスにおける業務効率化や自動化を支える重要な役割を担うことになるのです。
最大のメリットはデータ連携:
iPaaSを導入することで得られる最大のメリットは、異なるシステム間のデータ連携を効率的に行える点にあります。従来、異なるシステムの連携は、高度な技術や多額のコストが必要でしたが、iPaaSはこれを低コストで実現することができます。
業務効率化を実現:
iPaaSは異なるアプリケーションやサービス間での情報連携を可能にし、業務効率を加速させることが可能です。組織内でのデータ管理方法は多種多様で、従来のオンプレミスに蓄積された大量のデータを抱えている場合や、オンプレミスとSaaSとをどちらも利用している、異なるSaaSを複数利用しているなど、さまざまなケースが存在します。こうした状況でも、iPaaSは異なるプラットフォームやサービスを一つに結び付ける役割を果たすので、組織全体のデータ管理の効率化を図ることができます。
スケーラブルであること:
iPaaSのメリットとして、スケーラブルであることも挙げられます。ビジネスの成長や変化に合わせ、今後新たに必要なシステムがあっても、すでに導入しているサービスとスムーズに連携できるため、将来的な拡張計画にも容易に対応できます。また、iPaaSはクラウドベースのサービスであるため、オンプレミスシステムに比べて初期投資が少なく導入が可能です。
一方で、iPaaSの導入にはいくつかの注意点もあります。特に、企業独自の複雑な統合ニーズに対応するためにはカスタマイズが必要となる場合があり、技術的困難や、コストが発生することがあります。iPaaSは海外のサービスが多く、日本独自の統合ニーズとの連携が難しかったり、サポートが英語であることもあるので、検討時には注意が必要です。
また、iPaaSはインターネット経由でサービスを利用するため、ネットワークの信頼性やセキュリティの確保が重要な要素となります。データのプライバシーとセキュリティを確保するためには、適切なセキュリティ対策が施されたサービスを選定し、常に最新の状態を保つ必要があります。
iPaaSを選択する際には、これらのメリットとデメリットを十分に検討し、企業の現状と将来のビジョンに最も適したプラットフォームを選ぶことが重要です。
iPaaSと似た用語にIaaS、PaaS、SaaSがあります。またRPAとの違いについて分かりやすく表にまとめました。それぞれの特徴やメリット・デメリットがあります。
項目 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
iPaaS(Integration Platform as a Service) 読み:アイパース | 織内でバラバラに使われている個別のサービスをつなげて、自動化できるプラットフォーム | ・異なるシステム間の統合が可能 ・開発時間とコストの削減を実現でき業務効 率化につながる ・柔軟なスケーラビリティ | ・複雑な統合には専門知識が必要 ・海外サービスが多いのでサポート面での懸念がないか確認が必要 |
IaaS(Infrastructure as a Service) 読み:イアース、アイアース | インフラのみを提供するクラウドサービス。OSやアプリケーションは自社で準備し、ハードウェアの購入や管理はほかでする場合に適する
| ・ハードウェアの購入・管理が不要 ・柔軟なリソース管理でコストカット ・オンプレミス並みの自由な環境構築 | OSやアプリケーションの整備や運用・保守は自社で行うため技術的な知識や費用が必要 |
PaaS(Platform as a Service) 読み:パース | アプリケーション開発のための環境を提供するクラウドサービス。開発ツール、実行環境、データベースなど。アプリケーションは自社で用意する場合に適する。 | ・環境構築が不要のためすぐに開発に専念できる
| ・オンプレミスやIaaSと比較すると開発環境の自由度が低い ・開発環境をカスタマイズすることが難しい ・セキュリティの条件を確認する必要がある |
SaaS(Software as a Service) 読み:サース、サーズ | ソフトウェアをサービスとして提供するクラウドの製品形態。日常的に使っている多く(メール・オフィスソフト・顧客情報管理ソフトなど)がSaaSで導入直後から使用が可能 | ・インターネットに接続できればどこでも利用可能なのでテレワークにも最適 ・運用・保守の手間が不要・導入後すぐに利用可能 | ・自社開発システムに比べカスタマイズ性が低い ・セキュリティの条件を確認する必要がある |
RPA(Robotic Process Automation) 読み:アールピーエー | ソフトウェアロボットを使用して人間の行う繰り返し作業を自動化する技術 | ・人的ミスの削減 ・人的コスト削減 ・生産性の向上 | ・初期導入にコストと時間がかかる ・複雑なプロセスの自動化は難しい |
iPaaSは、ビジネスプロセスの効率化や自動化を実現するサービスですが、RPA(Robotic Process Automation)は人間がコンピューターで行う作業を自動化するソフトウェアを指します。これらの明確な違いは、iPaaSがシステム間の連携を自動化するツールであるのに対し、RPAはコンピューターの操作を自動化するツールであるという点であることを押さえておきましょう。
iPaaSには4つのタイプがあり、それぞれに特徴があります。
レシピ型:事前に設定されたテンプレート(レシピ)を使用して、異なるアプリケーションやサービスを簡単に連携させることができるタイプです。レシピ型iPaaSは、使いやすさと迅速な導入が特徴で、技術的な深い知識がなくてもビジネスのニーズに応じて迅速にシステムを統合し、業務効率を向上させたい場合に有効です。
活用イメージ:マーケティング部門での各種ツールの連携、営業部門でのCRMとスケジュー ル管理ツールの連携など、特定の業務プロセスを簡単に自動化したい場合
ETL/ELT型:データを抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)するプロセスを自動化するタイプです。データウェアハウスへのデータ統合やビッグデータの処理に適しており、大量のデータを異なるデータソースから統合し、分析可能な形に変換して格納する際に利用されます。
活用イメージ:人事部門での従業員データの集約や分析、経理部門での財務データの統合とレポーティングなど、大量のデータを扱い、データウェアハウスに格納する必要がある場合
EAI型(Enterprise Application Integration):異なるアプリケーション間でデータを統合し、システム間のデータフローを効率化してアプリケーションの相互運用性を高めることが特徴です。複数の異なるシステムやアプリケーションが存在する企業に適するとされ、例えば、CRM、ERP、会計システムなど、それぞれ異なる目的で導入された複数のシステムをスムーズに連携させたい場合に有効とされています。
活用イメージ:IT部門での異なる業務アプリケーションの統合、製造部門での生産管理システムと在庫管理システムの連携など、複数のシステム間でのデータ連携をスムーズに行いたい場合
ESB型(Enterprise Service Bus):異なるシステムやアプリケーションをつなぐための中継点の役割を果たすタイプです。「バス」とはデータやサービスのやりとりを仲介する通信路のことで、これを介して各システムが疎結合(互いに依存しない状態)で接続されます。このタイプは、システム同士が直接やりとりをするのではなく、中央のバスを通じて間接的に通信するため、一つのシステムを変更してもほかのシステムに影響を与えにくいという特徴があるため、システムの追加や変更が容易になり、柔軟なシステム統合が可能です。異なるシステムを持つ大企業や、異なる技術やプロトコルを使用するシステム間での統合が求められる場合に適しています。
活用イメージ:大企業や組織全体でのシステム統合、複数の部門や地域にまたがるシステムの統合など、大規模で複雑なシステム環境を持つ場合
※活用イメージは一例であり、組織のニーズや規模、環境に応じて最適な型を選ぶ必要性があります。
企業のDX化やAI技術の進歩により、テクノロジーが急速に進化し続ける中、iPaaSはビジネスの形を変革し、新たな価値を創出する中核技術としての地位を確立しつつあります。アプリケーションやデータソースのシームレスな統合により、企業が直面するデータサイロ(情報が孤立し連携されていない様子)の課題を解消し、業務の効率化・自動化を実現します。データ活用の最大化を実現することで、ビジネス価値はより一層高まっていくことでしょう。
今後生成AIなどの先進技術との統合が進むことで、企業の成長に貢献していく位置付けとなるかもしれません。iPaaSの進化とともに、ビジネスの可能性も無限に広がっていきます。
今後もiPaaSに関する新しい情報を更新していきます。関連ブログは以下からご参照いただけます。
異なるシステムやアプリケーション間でデータをシームレスに統合、またオンプレミスとクラウドの両方の環境と連携することができる統合プラットフォームです。システム統合、データ連携、マスターデータの管理、APIの管理など、さまざまなビジネスプロセスを効率化することができます。
条件に該当するページがございません