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「現代のテクノロジーはAI抜きでは語れない時代に突入し、AIの驚異的な進化をいかに企業成長に取り入れられるのか、分岐点に立っていると言っても過言ではありません」
2024年10月3日に開催された、ソフトバンク最大規模の法人向けイベントSoftBank World 2024の中で、ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一は、AI時代における日本企業の在り方やソフトバンクが取り組むAI活用・次世代社会インフラの構築について講演しました。
本記事は、2024年10月3日に開催されたSoftBank World 2024での講演を再編集したものです。
プレゼンテーションの冒頭で宮川は、19世紀にイギリスの自動車産業で起きていた実例を元に、新たなテクノロジーを実装する際の姿勢について言及しました。
「19世紀のイギリスは、『領土』『時価総額』『貿易額』といった分野で世界の中心でした。しかし自動車産業に関しては、鉄道や馬車といった既存産業の仕事が奪われるという不安から、普及を妨げるために制定された『赤旗法』と呼ばれる悪法が30年間続いたことで、その発展が阻害されました。それ以降、イギリスは一度も産業革命の中心になることはなく、たった一つの政策ミスが国際競争で大きな遅れを取ることにつながった一例です。
こうした事例は過去の話ではなく、現代日本の基幹産業である自動車産業においても同じことが言えます。完全無人自動運転(ロボタクシー)が大幅に普及しているアメリカや中国といった国と比較してみると、日本でのロボタクシーは公道走行が許可された2023年4月から1年半経っても、4カ所で実証実験している段階に留まっています。日本政府はこれを2027年までに100カ所以上に広げると言っていますが、『本当にこのスピード感で大丈夫なのか』という不安は拭えません」
新たなテクノロジーが社会に浸透していくという意味では、現代のキーテクノロジーであるAIについても同じように考えられるのではと宮川は続けます。
「ChatGPT 3.5が公開されてから2年ほど経ち、テキストの生成からスタートして、画像、動画、音声まで生成できるようになりました。2024年9月にリリースされたOpenAI o1の実力は博士号レベルの高度な推論能力を持つほどまでに進化してきています。私は、昨年のSoftBank Worldで、シンギュラリティ※に到達するのは2025年ではないかと話しましたが、実はもう到達しているのではないかと感じています。
数年以内には、全人類の叡智の10倍である『AGI』、10年以内には1万倍の『ASI』に達するのではと考えていますが、これを分かりやすくするためにAIモデルをIQテストにかけたとある調査データを見てみましょう。人間の平均値のIQが100だったのに対して2024年5月に発表されたGPT 4oはIQ90なので人間の上位75%のレベルでした。その5カ月後にリリースされたOpen AI o1は一気にIQ120に届き、上位10%まで急激に進化していることが分かります。このスピードでAIが進化し続けた場合、もはやIQテストでは測ることができず、人間には理解できない世界に入ってくるわけです」
※シンギュラリティ=進化したAI(人工知能)が人間の知能を超える時代の到来。技術的特異点。
このような驚異的な進化を遂げているAIに対し、日本のAI活用の現状について、残念ながらAI後進国となっていると警鐘を鳴らしました。
「先進国31の国・地域におけるビジネスでのAI活用率というのを調べてみました。世界の平均75%という活用率に対し、日本は32%と完全に周回遅れの状況でした。ではその原因はなぜなのかを考えてみると『我々のAIとの向き合い方』が理由の一つになっていると思います。
日本は世界で唯一生成AIの活用に消極的というデータもあり、今後生活になくてはならない存在になるAIに『必要性を感じない』と感じる方が多い状況です。しかしながら、好む・好まざるに関わらずAIの時代は確実に来ます。この重要な局面において、経営層の我々としてはAIへの取り組み方を間違えてはいけないのです。
世界ではAIが競争力を強化する『武器』だと考えている企業が多い一方で、日本では『単なる業務効率を上げるツール』であると考えている企業が圧倒的に多いのです。このAIに対する捉え方の違いが活用率の差を生んでいるのです」
つまり、世界の企業は守りではなく、攻めのAI活用へシフトし始めているのです。AIに先進的に取り組む企業ほどAIを「価値創出の原動力」として期待を寄せていると強調しました。
ではAI活用をどう捉えるべきなのか、宮川は続けます。
「AIを使うということはどういうことか。業務の大半をAIに置き換えていくと、AI活用自体をゴールだと考えている人にとっては『AIに仕事を奪われた』と不安に駆られます。しかしAIを上手く活用することで、個の能力を拡張して新たな業務をするチャンスが生まれます。つまり攻めのAI活用というのは、企業の事業領域を拡張することで新たな価値を生み出すことだと考えると整理しやすくなるのではと考えています。
AIを使いこなす社員が会社の中にどれほどいるのかが、これからの企業の競争力に直結していくわけです。これまで経営資源と言われていたヒト・モノ・カネ、ここにAIが加わり、経営者が新たな経営資源を味方につけることができるのかが、企業の明暗を分けると思っています」
テクノロジーの進化に乗り遅れた企業は仕事を奪われて衰退していき、逆にチャンスと捉えて積極的に活用する企業は新たな価値を作り出す側に立つことができる。現代の潮流であるAIの進化に足踏みをせず、積極的に取り込んで改革を推進できるのかという経営者の選択が、非常に重要であると語りました。
続いて宮川はAI共存社会に向けた「新たな価値創出」として、ソフトバンク社内での取り組み状況を紹介しました。
これらの取り組みは社員が積極的にAIを活用することで実現していると強調しました。
また、本イベントで創業者 取締役の孫正義が語ったパーソナルエージェント同士が知識を共有し合うような時代の到来を見据え、現在の通信基盤からAI時代のあらゆる産業の基盤へ進化させる必要があると説明しました。
「AIとの共存社会に向けて、皆さんがAIを使って進化の波に乗れるように、我が社なりの準備をしています。AIトラフィックを支えられるようなモバイルネットワークの大改造、AIデータセンターの構築やそれに伴った発電など、皆さまに胸を張って使ってくださいと言える日本の社会インフラを作っていきたいと思っています」
確実に到来するAI時代に向けて、ぜひ一緒に新しい日本を作っていきましょうという熱いメッセージとともに講演を締めくくりました。
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