【医療DX】薬局でのスマートフォン活用事例~ユニスマイル薬局の取り組み~
2025年6月27日掲載
近年、デジタル化や効率化の波は広がっており、各現場でさまざまな取り組みが進められています。こうした中で、新たなテクノロジーの導入による業務の変革は、薬局の現場でも着実に進んでいます。
全国28都道府県に357店舗(2025年4月1日時点)の薬局を展開している株式会社ユニスマイル(スズケングループ)では、店舗で働く1,000名以上の薬剤師にスマートフォンを貸与し、業務効率化や人材不足の解消に役立てています。
今回は、茨城県にあるユニスマイル薬局 鹿嶋平井店にて、実際の活用の様子やアイデアコンテストの取り組みについてうかがいました。
薬局におけるスマートフォン活用
処方箋調剤だけでなく、管理栄養士が患者さまの栄養状態をアドバイスする認定栄養ケア・ステーションの運営や居宅介護支援事業所と薬局の併設など、地域包括ケアに取り組んでいるユニスマイルでは、全国で働く薬剤師のうち、社内基準を満たした薬剤師に医療従事者向けスマートフォンを貸与しています。
今回お話をうかがった
株式会社ユニスマイル 取締役 経営企画本部 本部長 薬剤師 大西 素子氏(右)と
株式会社ユニスマイル 東関東事業部 第一ブロック 副ブロック長 猪瀬 明宏氏(左)
ユニスマイル薬局 鹿嶋平井店 ~高齢化地域に求められる役割~
鹿島病院の門前薬局として親しまれているユニスマイル薬局 鹿嶋平井店(以下、鹿嶋平井店)。この地域は高齢化率が全国平均を上回っていることもあり、門前や近隣の医療機関からだけでなく、幅広く処方箋をお持ちいただける薬局を目指して、数年前からLINEによる処方箋送信やオンライン服薬指導に取り組んでいます。
猪瀬氏「鹿嶋平井店には、薬剤師6名・事務スタッフ5名が所属しています。外来患者さまの処方箋調剤業務を中心に、在宅訪問や介護施設の対応など幅広く業務を行っています」
まだ薬剤師がご自宅に伺うことがメジャーではない頃から、薬剤師による在宅医療の提供を行っていますが、以前はさまざまな課題があったようです。
現地取材したユニスマイル薬局 鹿嶋平井店
在宅訪問先で必要な情報が足りず、その場で対応できないことも
猪瀬氏「ひと月に10回以上の在宅訪問を行っていますが、以前は訪問先でPCをインターネットに接続することができず、紙のメモを持ってうかがっていました。しかし、個人情報の取り扱いに制限があるので必要な情報を十分に持ち出せない、これまでの薬の履歴が確認できないためその場で患者さまからの質問に正確に対応するのが難しい、往診同行し(医師の訪問診療に同行すること)処方提案する際に情報が不足するなど、訪問先で過去の薬歴が確認できないのは大きな課題でした」
大西氏「訪問先で必要な情報にすぐにアクセスできれば、業務効率があがり、患者さまの満足度も高まる。その実現のために、セキュアな状況で利用できるデバイスが必要だろうと考え、医療従事者向けスマートフォンの『コラボモバイル』を貸与することを決めました」
リアルタイムで在庫情報が確認でき、欠品対応にも役立つ
「コラボモバイル」はスズケングループが提供する医療機関・保険薬局・介護事業者向けのスマートデバイスです。
コラボモバイルイメージ 医療介護に特化していて、デジタルヘルスサービスのコラボポータルも利用できる。
猪瀬氏「コラボモバイルを用いてテザリングが利用できるようになったことで、在宅訪問先で専用パソコンから電子薬歴をリアルタイムで確認できるようになり、現場の対応精度が向上して信頼性の高い服薬指導が可能 になりました。
また、『AI在庫』というアプリを利用することで、外出先で医薬品発注や薬局の在庫の確認も可能になり、業務効率の大幅な向上が実現 しました。往診同行している薬剤師が、患者さまの自宅にいながら在庫状況をリアルタイムで把握して医師に提供できるため、必要なお薬を欠品なく確実にお渡しでき、患者さまの薬物治療に対しても好影響を与えていると思います」
大西氏「コロナ禍以降、薬の流通不安がずっと続いています。薬不足が常態化している中で、自分の店舗の在庫だけでなく、店舗間で薬の融通をきかせることも多くなっているので、他店の在庫を見られることもメリット ですね」
AI在庫の画面イメージ 医薬品名、在庫数量、最終処方日などが確認できる。
携帯端末の物理的な受け渡しも不要に
鹿嶋平井店は休日・夜間にも調剤や患者さまの相談に対応する体制で運営されています。
猪瀬氏「今までは各薬局に携帯電話が1台だけ貸与され、薬剤師が持ち回りで緊急時の電話対応を行っていました。今ではそれぞれがコラボモバイルを持っているので、1週間に1回、緊急対応用の電話番号の設定を変えるだけで担当者の端末につながるようになり、携帯電話を受け渡す煩雑さはなくなりました」
スマートフォンのさまざまな活用を進めるユニスマイル
コラボモバイルを活用することで、経営関連の情報や社内の教育コンテンツなども共用パソコンを使用せずに見られるようになり、業務や学びに大いに役立っているようです。
大西氏「コラボモバイルは単なる通信機器としてではなく、デジタルデバイスとして貸与しています。薬剤師が訪問したときに患者さまの体調悪化やお怪我に気づいたら、写真を撮って連携ツールにアップして医師に確認いただくことで、スピーディーな治療につながったというような事例も増えてきました。リアルだけではなかなか行き届かなかったり、時間がかかってしまったりしていた部分が、デジタルを介することで改善され、よりきめ細やかなサービスにつながっています」
ほかにも、コラボモバイルはマイナ保険証の読み取りにも活用されているそうです。
インタビューの様子
スマートフォンの活用アイデアコンテスト
ユニスマイルでは、コラボモバイルの活用をさらに進めるため、コラボモバイルを提供する株式会社コラボスクエアとともに「コラボモバイルを活用して実現したい202X年」という、社内コンテストを開催しました。(コンテスト発表はソフトバンク竹芝本社で執り行いました)
大西氏「昨年度の『つなぐ』という事業戦略のもと、このデバイスを使ってユニスマイルの未来を社員と一緒に作っていきたいという思いがありました。コラボモバイルがその未来にどうつながるのか、社員からアイデアを募集したいと考え、ソフトバンク様の協賛もいただきコンテストの開催に至りました。
また、アイデアについて話し合うことで、薬局内でポジティブなコミュニケーションが生まれるだろうという期待もありましたね」
コラボモバイルコンテストの様子
社内公募で300件以上のアイデアが集まる
その結果、「つなぐ」をキーワードに、300件以上のアイデアが集まりました。
大西氏「顧客とのつながり強化、顧客満足度向上、業務改善、従業員満足度向上といったテーマを明示し、売上や社会貢献、独創性や実現性を評価ポイントに設定。事前にテーマを明確にしたことに加えて、1店舗1アイデアという目標を決め、地道にリマインドしながら募集したところ、多くのアイデアが集まりました。上位賞には副賞として賞金を用意したのも要因かもしれません。笑」
各事業部で一次審査、30件ぐらいまで絞った上で、役員が審査員として最終選考を行いました。その中で猪瀬氏のアイデア『社員同士がつながるモバイル』が3位に入賞しました。
受賞式風景(店舗名は旧称)
猪瀬氏「常日頃の疑問をアイデアにしました。例えば、もう少し他薬局との連携がとれれば効率化できるはずなのにとか、薬剤師1名体制の店舗では頼る相手がおらずすべて自分だけで対処しなければならないなどの薬剤師の不安を、コラボモバイルでつながることで解消できるのではないかと考えたのです。
また、グループでエントリーしたアイデア(こちらは敢闘賞)では、アイデアを考える中でメンバー間のコミュニケーションが増えたことも、チームの一体感を高める良い機会となりました。日々感じていた課題や知見を経営層に直接届けられたことは現場の声を形にする貴重な体験となり、スタッフのエンゲージメントの向上にもつながったかなと感じています」
ユニスマイルでは、上位30位のアイデア実現に向けてチームを立ち上げました。
大西氏「薬剤師間のコミュニケーションツールは今まさに検討しているところです。猪瀬から、一人薬剤師体制の不安感の話が出ていましたが、薬剤師の知識や経験などナレッジを手軽に収集して共有できる方法の検討を進めています。
ほかには、外国の方が多く利用している薬局もありますので、個人情報や医療用語に配慮した、医療従事者が使うコラボモバイルだからこそ実現できる翻訳アプリを入れていけないかというアイデアもコラボスクエアと話し合っています」
医療DXに向けて
患者さまや実際に働く薬剤師の環境向上に向けてスマートフォン活用を進めるユニスマイル。今後については、以下のように語りました。
大西氏「『つなぐ』という事業戦略の中で、まずはデジタル基盤をそろえようと3年間やってきました。その中で患者さま向けのデジタル、社内でのデジタルと分けてやってきたので、今後は店舗の業務の効率化に向けたタスク管理ツールを導入できればと思って動いています。
その先としては各種のシステムをつなげて、処方や購買情報、患者さまの個別情報やPHR(個人健康記録)などを一元管理することで、患者さまごとに適した情報や医薬品などをおすすめしていけるように広げていきたいですね」
今回は、スマートフォンを足がかりに、医療・薬局DXを進めるユニスマイル社の取り組みをご紹介しました。ぜひ御社のDX化の参考になれば幸いです。
ソフトバンクの担当 近藤とともに、集合写真
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