私物スマホが会社のセキュリティを危険にさらす?今すぐできる対策とルールの見直しポイントを解説
2025年8月27日更新
2025年7月29日掲載
昨今、業務の効率化を目的として、社員が私物のスマートフォンを使うケースが中小企業でも一般化しています。しかし、その当たり前の行動が、知らず知らずのうちに情報漏えいやセキュリティ事故を引き起こすリスクをはらんでいることがあります。本記事では、私物スマホ利用の具体的な危険性と、今すぐ見直すべき対策ポイントについてわかりやすく解説します。
私物スマホ、こんな使い方していませんか?
今や、スマートフォンは誰もが毎日使うツールとなり、業務の中でもその利便性が重宝されています。特に中小企業では、コストや柔軟性の観点から、社員が自分のスマホを使って業務をこなすケースも少なくありません。
しかしその当たり前の使い方が、もしかすると重大なセキュリティリスクをはらんでいるかもしれません。
よくある私物スマホの業務利用例とそのリスク
・写真撮影:工事現場や商品など社外秘の画像を、私物スマホで撮影。写真データは社員の個人端末にそのまま保存され続けるため、社員の退職やスマホ紛失の際に企業としてコントロールができません。業務データが個人端末に保存され続けるリスク があります。
・LINEで取引先とやり取り:メールより手軽で返信も早くて便利というメリットはあるものの、やり取りの履歴が社内に残らず、トラブルが発生した場合に証拠が追えないという重大な問題をはらんでいます。ログが残らず、トラブル時に証拠が不明確と いうリスクです。
・メモアプリで顧客情報を記録:営業の場面では、顧客との商談中に会話を素早く記録するために、メモアプリに個人情報を入力することもあります。しかしそのスマホを紛失してしまえば 、大切な情報も一緒に消えてしまう というリスクがあります。
・個人のクラウドストレージに資料をアップロード:資料を共有するために、個人のクラウドストレージへ業務ファイルをアップロードするというケースも少なくありません。利便性は高いものの、会社としての情報管理が及ばなくなり、そのまま持ち出されてしまうリ スクがあります。
これらはすべて、「業務をスムーズに進めたい」という 善意 から行われることが多いのです。しかしその善意が、企業にとって 深刻なセキュリティホール になることを、私たちは見過ごしてはいけません。
企業が見えない状態のシャドーIT、BYODとの違い
企業が把握・管理していないIT機器やクラウドサービス、アプリケーションを利用すること を、シャドーIT といいます。社員が自分の判断でスマホやアプリを業務に使っているものの、それを 会社が知らない、管理していない、許可もしていない 状態です。
企業が把握していない端末で、いつ、誰が、どんな情報にアクセスしているのかという、この見えない状態がリスクの温床となり、トラブルが起きたときに企業が対処できなくなってしまう危険な状態になります。一見便利で身近な私物スマホですが、業務に使用することで以下のような想定外のリスクが発生します。
・セキュリティソフト未導入
業務用端末とは異なり、多くの個人スマホには企業向けのセキュリティ対策が施されていません。 ウイルス感染やスパイウェアの侵入が、いつ起きても不思議ではない状況です。
・紛失・盗難リスク
スマホは日常的に持ち歩くため、落としたり盗まれたりするリスクも高いです。
企業管理外の私物スマホでは、リモートロックや遠隔初期化もできず、情報漏えいの被害が拡大する恐れがあります。
・家族とのアプリ共有
1台のスマホを家族と共用する、アカウントを家族と共有しているなどのケースでは、無自覚なアクセスや誤操作による情報流出のリスクも見逃せません。
・不正アプリ・マルウェア感染
個人でインストールした出所不明のアプリが、知らぬ間に業務データへアクセスすることも。私物スマホでは、そのアプリが安全かどうかを企業側で把握できません。
また、シャドーITとよく似ている言葉にBYOD(Bring Your Own Device)があります。違いは次のとおりです。
シャドーIT
BYOD
また、BYODを導入している企業では、以下のような対応が事前に行われます。企業配下で管理するためには、一定のルールとポリシーを徹底する必要があります。
①利用可能な端末・OS・バージョンなどの条件を定義
②セキュリティアプリやMDMのインストールを義務化
③アクセス可能なシステムや保存可能な情報の制限
④利用者へのガイドライン周知と同意取得
⑤紛失・退職時の対応ルール明記 など
しかしながらそもそもこのポリシーが適用できないという状況に陥っている場合もあります。社員が自分のスマホで仕事のメールを見ていたとしても、それが企業の許可とルールに基づくBYODなのか、それとも社員の独断によるシャドーITなのかで、リスクの種類も対処可能性も大きく変わります。
中小企業こそ対策が遅れがち
中小企業では「人数が少ないからなんとかなる」「社員を信頼して任せている」といった理由で、シャドーITを黙認・放置しているケースも多く見受けられます。同じ「私物スマホの利用」であっても、ルールがあるかないか、管理されているかされていないか で、リスクの見え方も対応力も大きく変わるのです。
まずは自社で「どこまでが許可されたBYODで、どこからがシャドーITなのか」を棚卸しし、曖昧なグレーゾーンを見える化すること が、リスク管理の第一歩になります。
リスクに備えて企業がとるべき4つのルールの見直しポイント
では、企業はどのようにしてこれらのリスクに対応していくべきでしょうか?
ここでは、中小企業でも実践しやすい4つの対策 をご紹介します。
1.業務専用スマホの配布も検討
特に営業職や現場スタッフなど、外出先でスマホを頻繁に利用するリスクの高い職種では、個人スマホを業務に転用するよりも、専用端末を支給してセキュリティを確保する方が、長期的には安心かつ効率的です。業務専用スマホであれば、セキュリティ設定も一括管理でき、安心感があります。近年では法人向けの低コストな端末や回線プランも登場しており、導入のハードルも下がっています。
2.MDM (モバイルデバイス管理)の導入
MDMを活用することで、企業が業務で使用されるスマホを一元管理できるようになります。例えば、スマホを紛失した際に遠隔からロックをかけたり、必要に応じてデータを削除したりといった対応が可能になります。以前は「導入が難しそう」「コストが高そう」といった印象がありましたが、近年ではクラウド型のMDMサービスも登場しており、コストを抑えてスモールスタートしやすくなっています。
3.社員向けリテラシー教育
どれほどシステム的な対策を講じても、使う側の意識が低ければリスクは完全には防げません。「なぜ私物スマホの業務利用が危険なのか」「実際にどのようなトラブルが起こり得るのか」といったことを、身近な事例を交えて社員に伝えることで、具体的な理解と自覚を促すことができます。特に“善意の行動”がリスクになるという視点は、多くの社員にとって盲点です。
4.利用ルールの明文化
私物端末を業務に使うこと自体を禁止するか、条件付きで許可するかは企業によって異なりますが、いずれにしても「曖昧な状態」が最も危険です。利用可能なアプリの種類や、クラウドの使用可否、情報保存の制限などについて、「どのような用途ならOKか」「何は禁止か」をガイドラインとして明確に示し、社員に周知・同意を得ることが必要です。これにより、トラブルが起きた際の対応もスムーズになります。社員にしっかり周知し、合意形成を図りましょう。
これら4つの対策は、いずれも特別なITスキルや大規模な投資を必要としない、中小企業でも始めやすい現実的なステップです。重要なのは、「何か起きてから」ではなく、「起きる前に備える」姿勢を持つことです。
スマホの利便性とセキュリティの両立のために、今すぐできる対策は何か?
今や、スマートフォンはビジネスに欠かせないツールです。 しかし、その便利さが情報漏えいやセキュリティ事故といった深刻なリスクを引き起こすきっかけになり、企業のセキュリティを脅かす裏目となる時代でもあります。
企業規模にかかわらずセキュリティリスクは存在します。「うちの規模なら大丈夫」「うちは社員を信頼している」といった油断や性善説に頼るのは危険であり、ひとたび事故が起これば、取引先との信頼やブランド価値に致命的な打撃を与える可能性があります。
企業の安全性とスマホの利便性の両者をバランスよく保つために今すぐできる対策として、自社の現状を一度立ち止まって見直すことが重要です。「うちの会社にも当てはまるかもしれない」と気づいた今このタイミングでまずは、どこで私物スマホが使われているのか、どのような情報が管理されているのかを見える化し、ルールを明文化してみましょう。そうして、管理体制と社員の意識を少しずつ整えていくことで、スマホの利便性を損なうことなく、企業としての安全性も同時に高めていくことができます。「便利」と「安心」の両立は可能です。小さな一歩が、会社全体を守る大きな力になります。
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