AX with SoftBank ~次の一手がここにある【基調講演レポート】
2025年07月24日掲載
ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2025」が、今年も7月16日に開催されました。ソフトバンク株式会社の創業者 取締役の孫と、社長の宮川の講演に続き、ソフトバンクの専務執行役員の桜井が、ソフトバンクのAI活用を牽引するリーダー牧園、丹波、砂金と登壇し、ビジネスシーンにおけるAX(AIトランスフォーメーション)の未来についてリレー形式で語りました。
本記事は、2025年7月16日に開催されたSoftBank World 2025での講演を再編集したものです。
ビジネスシーンにおけるAXの未来 ~桜井 勇人~
午後の基調講演に登壇した桜井は、午前中に行われた孫と宮川の基調講演を振り返りながら、今後のビジネスシーンではAIエージェント同士がつながり合い、次の答えを導き出すと語り、いまからその準備段階に入っていくことを「Cristal Ready」な世界と表現しました。
「すでに皆さまの会社でも、AIはさまざまな形で使われていると思います。いずれ一人一人やシステムごとのAIエージェントが登場し、単なる情報処理や検索にとどまらず、自ら目標を設定し、タスクを実行する『自律的なAI』になるでしょう」
こうしたAIエージェントが真の力を発揮するためには、適切な環境と準備が不可欠です。桜井はその土台として特に重要なのが、“データ整備”と“ガバナンス”であると強調しました。
さらに桜井は、自身が「AXインテグレーター」として企業のAI活用を支援していきたいと述べ、「AIソリューション」「技術基盤」「制度設計」の3本柱を軸とした構想を紹介。それぞれの課題に応じた多様なAIソリューションをすでに展開していることにも触れました。
ソフトバンクが提供するAIソリューション・技術基盤・制度設計
「我々は皆さまが安心してAI活用ができるように技術基盤を構築しています。本日はクラウドやデータセンターといった技術基盤の話に加え、国産AIやコールセンター業務を代替するAIソリューションについても紹介します。そして、多くの企業が直面する制度設計の課題を乗り越えた先に、Cristal Intelligenceの世界があります」
続いて、ソフトバンクが描く各部門におけるAIエージェントの姿として、「営業支援エージェント」の動画を紹介しました。動画では、通勤時に商談情報が通知され、出社後には顧客ごとに最適化された資料やスクリプトが自動生成される様子や、商談中に顧客の反応に応じて資料を提示したり、次の提案をリアルタイムで示唆するといった様子が紹介がされており、さらに、商談終了後には次回提案の準備や日程調整までもAIが先回りして対応。営業プロセス全体がAIによって高度化・効率化される半歩先の未来像が示されました。
また、エンジニアや購買、コアネットワーク保守のAIエージェントについても紹介し、各部門での対応や判断、交渉や支援までを実施し、現場の付加軽減や障害対応の心身的なストレスも軽減すると語り、各部門におけるAIエージェントの活用を通じて、業務の効率化にとどまらず、働き方そのもを最適化していくと続けました。
そして桜井は、「Cristal Ready」の実現をさらに具体化する上で重要な役割を担う3名をプレゼンターとして紹介し、丹波へとバトンを渡しました。
AIの価値を社会に届ける基盤の中核「Sarashina」 ~丹波 廣寅~
丹波がCEOを務めるSB Intuitions株式会社は、ソフトバンクグループにおいて日本語に最適化された国産大規模言語モデルの研究開発を担う企業です。国内完結型のAIの構築に注力しており、日本企業が安心してAIを導入・活用できる土台を提供しています。
「本日の基調講演ではAIについて多くの話がありましたが、AIは単体では力を発揮できません。これまでも企業は業務に合わせてソリューションやアプリケーションを開発し、クラウドやデジタル化によって改善を積み重ねてきました。今後はこれらを“AIネーティブ”にしていく必要があります」
続いて丹波は、現在取り組みを進めているソブリンクラウド・ソブリンAIによって構築される“デジタル公共インフラ”の必要性について語りました。
「今我々が取り組んでるのがデジタル公共インフラの構築です。AIの力を引き出すには安全なクラウド環境や計算基盤が欠かせません。日本は南北に広く災害の多い国なので、データセンターを一極集中させるのではなく、全国に分散配置する必要があります。万が一通信障害があった場合も全体の活動が止まらない仕組みが必要です。これを各社が持つのではなく共通のインフラとして持つという発想がデジタル公共インフラです。この構想の中核にあるのが、国産AIモデル『Sarashina 』です」
日本語・日本文化に根ざしたSarashina の特長について丹波はこう続けます。
「日本のユーザーがAIに指示を出す際は、当然ながら日本語で細かなニュアンスを伝える必要があります。応答も、正確で自然な日本語で返ってこなければ違和感を覚えるでしょう。扱う情報も日本の歴史・文化・法制度などの背景を理解していなければ有効に機能しません。そのため、我々は日本に特化した国産AIモデル「Sarashina」を開発しています」
国産であるからこその安全性やデータ主権や技術主権の観点についてもこう続けます。
「企業がAIを活用する際、機密情報を海外に預けるのはリスクがありますし、技術の主導権が海外にある場合、使いたくても制限されるリスクもあります。我々は「ソブリンAI」と「ソブリンクラウド」という国内完結型の仕組みを整備しています。
全ての業務に対応できる単一のAIは存在しません。ジェネラルな知識を持つSarashina と、業界や業務ごとに最適化されたモデルを組み合わせることで、現場に合った柔軟な活用を可能にします。海外の技術を排除するという意味ではなく、目的やリスクに応じて使い分けられる環境を整えることが重要です。ソフトバンクは、AIモデルからインフラまでを全て国内で構築し、安心して使えるAI基盤を提供していきます」
丹波のプレゼンテーションを受け、桜井は次のように話しました。
「Sarashina は間もなく皆さまにもご利用いただける環境を整備中です。ソフトバンク社内でもさまざまなAIを業務に活用していますが、お客さまの現場に目を向けると、AIへの期待が高まる一方で、データ整備やセキュリティといった多くの課題が存在しています。こうした課題にどう向き合い、何から取り組むべきか。そのヒントを、続いて牧園よりご紹介いたします」
AI活用の制度設計・データ整備の重要性 ~牧園 啓市~
IT・プロダクト技術責任者である牧園が登壇し、AIを活用する際の企業としての向き合い方について語りました。
「すでにビジネスシーンにおいて、AIは『ツール』として選ぶものではなく、『意思決定に使われる存在』になりつつあります。そのときに、ソフトバンクのIT責任者としてAIとどう向き合い、どう共創していくのかについてお話ができればと思います」
牧園は「日本企業はAI活用に大きなポテンシャルがあるが、制度設計やデータ整備といった土台の準備に多くの企業が苦戦している」と語り、次のように続けました。
「2010年頃からSaaSやRPAの普及により“ITの民主化”が進みましたが、その裏では野良SaaSやRPAが乱立し、全体を管理しきれないという課題も浮き彫りになっていました。当時のIT活用は、主に定型業務を効率化・削減する『道具』としての役割が中心でした。 しかし、2022年に生成AIが登場したことでその位置づけに大きな変化が起きています。これからは、『どのツールを選ぶか』ではなく、AIを経営とともに構想し、共創していく―― そうした意識の転換が、企業に強く求められているのです」
従来のように、人間が決めた選択肢の中からAIに選ばせる段階は終わり、これからは“AIが予測し、判断し、自ら意思決定していく”という世界になると語り、人とAIが役割を分担していく、“オーケストレーター”のような未来が実現しつつあると述べました。その実現に向け、牧園は4本柱の設計について語りました。
「AI活用を全社で進める上で重要なのは、1つ目は『ガバナンス』です。AIエージェントを使うにも作るにも人が基盤になります。社員一人一人のリテラシーを高め、適切な責任のもとでAIを活用できる状態を整えることが最初のステップです。2つ目は『システム連携』で安全かつ柔軟にシステムと接続できる仕組みが求められます。3つ目の『認証・認可』は、エージェントが扱う情報やシステムへのアクセス権限を、動的にかつ会社のルールに従って制御する仕組みが不可欠です。そして最後が『データ整備』です。大量のエージェントが生まれる時代には、データを使える状態に加工・連携し、データの構造化をすることでAIが最大のパワーを発揮します」
AI活用に必要な制度設計の4本柱
最後に牧園は、AIに何の業務を任せるのか、そのためのルールをどう整備するのか。その検討を今行うことが、10年後の企業価値を決めていくと強調しました。
牧園のプレゼンテーションを受けて桜井は、「制度設計は本日の与えられた時間では収まらないぐらいの深さがある」とし、今後も随時皆さまに情報を案内していくと述べました。最後のプレゼンターは、より具体的な業務におけるAI活用について、Gen-AXの砂金が語りました。
進化するコールセンターでのAI活用最前線 ~砂金 信一郎~
最後に登壇したのは、ソフトバンクグループの100%子会社であるGen-AX株式会社の砂金です。同社は生成AIを活用したSaaSプロダクトの開発・提供と、企業のAXを支援するコンサルティングサービスを提供しています。営業や技術力の分野でソフトバンクおよびSB Intuitionsと連携しながら、主にコールセンターおよびカスタマーサービスにおけるAI活用を進めています。
「我々がフォーカスしているのが『コールセンター』でのAI技術の活用です。長らくAIとコールセンターは相性が良く、解決できる課題が多いとされてきましたが、その業務内容の複雑さゆえにこれまでのAI技術だけでは実現が難しく困難が多くありました。しかし昨今のAIの進化が非常に著しく、音声での自然な対話ができるようになり、本日デモ動画でお見せできるまでになりました」
Gen-AXではすでに、バックオフィス業務を支援する「X-Boost(クロスブースト)」の提供を開始しています。さらに今回の講演では、自律思考型のAIオペレーター を実現する新たなプロダクト「X-Ghost(クロスゴースト)」について紹介を行いました。砂金は「X-Ghost」のデモ動画の紹介を挟み、AIの進化についてこう話します。
「『X-Ghost』は、人間とAIの発話が重なっても自然な応答を維持できる点が特長で、従来のように、人がかぶせて質問しても一方的に話し続けてしまうということがない部分が大きな進化であるのがお分かりいただけると思います」
さらに砂金は、「X-Ghost」ではAIによる自然な対話の裏で業務処理がシームレスに進行していることを紹介しました。AIが裏側で課題をチェックリスト化し、業務フローを事前に学習しています。コールセンターの予約変更のリクエスト時は、外部システムと安全に連携しながら処理を進め、結果を返すまでを一体で実行できるよう設計されていると語り、「まずは限られた領域から着実に皆さまに価値を提供し、最終的には皆さんと“Cristal Ready”な世界を目指すため、ともに伴走していきたい」と締めくくりました。
Cristal Readyが導く未来へ
最後に再び登場した桜井は、ビジネスシーンにおけるAI活用の未来を語りました。
「ソフトバンクが展開するAIサービスは、汎用ツールから業務特化型エージェントまで多種多様にご支援ができます。今後は、特に業務ごとに最適化されたエージェントをさらに増やし、社員向け・顧客向けの両面で活用領域を拡大していきます。私たちは、AIソリューション・技術基盤・制度設計 の3つの軸で、お客さまの事業変革を支援し、AIが収益を生む世界、すなわち“Cristal Intelligence”の実現を目指しています。AIは『もはや待ったなしの時代』に入り、経営や働き方のスピードを変え、人とAIがともに生きる新たな社会が始まろうとしています。私たちはその先導者として、この未来を皆さまとともに創っていきたいと考えています」
AIによる記事まとめ
この記事は、2025年7月に開催されたSoftBank Worldの講演を編集したものです。ソフトバンクが描く「AX(AIトランスフォーメーション)」の全体像や Cristal Readyが導く未来について、専務執行役員の桜井と、AIを牽引するリーダーたちが成功の一手について語ります。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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レポートではお伝えしきれなかった講演の様子を動画でご覧いただけます。ぜひご視聴ください。