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株式会社バローホールディングス
東海地方を拠点としてスーパーマーケット・ドラッグストア・ホームセンターなど多岐にわたって事業を展開する株式会社バローホールディングス(以下、バローホールディングス)。
同社では、以前より気象データを活用した需要予測が出来ないかと検討を行っていました。
商品の購買需要を予測するのではなく店舗への来店客数から予測を行うため、ソフトバンクと一般財団法人 日本気象協会(以下、日本気象協会)が共同開発した、人流統計データ※1や気象データを活用したAIによる需要予測サービス「サキミル」の実証実験を始めました。
グループ企業で中部地方を中心にドラッグストアを展開している中部薬品株式会社で実証実験を行ったところ、平均93%※2という高い精度の予測を実現しました。
今後はスーパーの食品製造にもデータ活用の幅を広げていき、フードロスの改善にも取り組んでいく予定です。
「来店客数に応じてデリカなどの生産計画を立てることで、材料の発注や在庫の最適化を行い、食品ロスの改善につなげる運用を検討しています」
株式会社バローホールディングス
流通技術本部 システム部 次長 近藤 貴志 ⽒
需要予測に関する課題について、近藤氏は次のように話します。
「これまでグループ企業の『スーパーマーケットバロー』などのスーパーマーケットやドラッグストア『Vドラッグ』、『ホームセンターバロー』などのホームセンターでさまざまな需要予測を試してきましたが、2つの課題がありました。
1つ目は、商品の売れ方の違いです。スーパーマーケットやドラッグストアでは、日持ちしない日配品という商品を取り扱っています。これらは在庫を多く抱えてしまうと廃棄の可能性が高くなりますので、過不足なく売り切ることが必要です。一方でホームセンターでは、今日明日で消費期限を迎えるような商品は多くありません。商品の売れ方に違いがあるため、ひとくくりのロジックで需要予測を行うことは困難です。
2つ目は、投資とのバランスです。例えば、100SKU(Stock keeping Unit:在庫管理上の最小の品目数を数える単位)の商品に対して毎日需要予測をすると、需要予測の運用だけで 月額百万円以上がかかるといった費用感になります。店舗には1万SKU以上の商品を取り扱っていますので、全商品を需要予測するとコストとして現実的ではありません。
これらの問題から、商品予測ではなく客数に対応する需要予測『サキミル』を選びました」(近藤氏)
需要予測への取り組みを始めた背景について、芳尾氏は次のように語ります。
「商品の発注管理の観点では、各店舗での担当者が発注が行う際、担当者自身が来店客数を予測・判断していることが課題でした。これまで、商品の発注は担当者の経験をもとに行っていたため、担当が変わると在庫の過不足が大きくなっていました。これを解消すべく、自動発注(需要予測)の取り組みを開始しました」(芳尾氏)
近藤氏は、この取り組みを始めてみて分かったことがあったと話しました。
「本部が在庫の持たせ方をコントロールできることもメリットです。バローホールディングスでは約1,200店舗ありますので、指示を出しても全店舗統一で動いてもらうことは難しいですし、時間もかかります。年末で在庫を多めに持つ、期末で在庫を抑えるといった調整も本部主導でできるようになりました。店舗担当者の属人的な運用から本部での一括運用にすることで、店舗ごとの在庫管理のばらつきも少なくなっています」(近藤氏)
これまでの気象データ活用について、芳尾氏は次のように話します。
「過去、小売業界でもコンビニなどで気象データの活用がされていると思いますが、バローホールディングスではこれまでインターネットで天候を調べる手法しか行っていませんでした。台風や大雪が近いと分かったら、前年の同じ天候のときの売り上げと比較して、今回の売れ行きはこうだろうと予想するのです。天候に対する変化には、担当者の経験で対応していました。『サキミル』では気象データも加えたうえで客観的な予測ができるので、大きな利点だと考えています」(芳尾氏)
近藤氏は日本気象協会のデータについて、次のように話しました。
「他社のサービスでは、降水量といった簡易的なデータ活用はできるものの、気温や日射量、風速、湿度などの詳細なデータまで活用することはできませんでした。『サキミル』は日本気象協会のデータを加味した予測を行っているので、その正確さも強みだと感じています。実証実験を行った際も、確かに効果が出ていました」(近藤氏)
導入前に行った実証実験で得られた結果について、近藤氏は次のように話します。
「グループ企業の中部薬品株式会社で実証実験を行った結果、来店予測の精度については93%※2と高い結果が得られました。来店客数の予測が生み出した利益の一部を投資に充てるなどして、今後さらに精度は向上し続けていきたいと考えています」(近藤氏)
芳尾氏によると、気象データによる効果もありました。
「雨の日と、その後の客数予測でも結果が出ています。ドラッグストアでは、曜日によってポイントアップデーを設定していますが、そのときに雨が降ると通常の日以上に来店数が減少していました。これを予測できてないと、過剰に発注をしてしまい廃棄ロスにつながります。
一方で、雨のためポイントアップデーに来店されなかったお客さまが、その翌日にいらっしゃることもあります。この増加も予測して発注しないと機会ロスにつながってしまいますが、『サキミル』では、これらの影響も踏まえて計算されていました。ここで機会ロスや廃棄ロスが多く出ていたのだと、実証実験で明確に分かりました。これまではチラシなどの販促に合わせた予想しかできませんでした。雪や台風の影響、地域ごとの影響は、日本気象協会のデータを使わないと、店に合わせた予測は難しいのだと思っています」(芳尾氏)
今後の展望について、芳尾氏と近藤氏は次のように話します。
「惣菜や弁当などのデリカを生産している企業でも、来店予測のデータを利用できないかという事を考えています。デリカ商材は、基本的には購入した当日に食べる商品になりますので特に客数と販売数の相関性が高く、機会ロスを減らす代わりに廃棄ロスが増えるという構造になってしまってしまう商材になっております。
将来的には、来店客数の予測データから最適な製造計画数を予測し、その製造計画数を確保するために最適な量の材料を確保する。そうして欠品も廃棄も良化できるように、データを活用していきたいと考えています」(芳尾氏)
「予測には気象データだけでなく人流統計データ※1も含んでいますので、今後人の動きが大きく変わったときにも柔軟に対応できることを期待しています」(近藤氏)
日本では多くの食品が廃棄されており、大きな社会問題となっています。
ソフトバンクと日本気象協会は、「サキミル」を通してデータやAIなどのテクノロジーを活用し、フードロスの削減や生産性の向上に貢献することでSDGs(持続可能な開発目標)の達成を支援します。
TBSラジオにも取り上げられた本サービスは、人流統計データ・気象データ・店舗データをもとに来店客数を予測します。正確な需給予測で食材発注やシフト作成を容易にするため、業務属人化の解消や経費削減に貢献します。来客数増減に合わせた販促が可能になり、売上向上に寄与します。
※掲載内容は2022年1月現在のものです。
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