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2020年10月、5Gを活用した最新テクノロジーを体験できる施設「5G X LAB OSAKA」が大阪市の「ソフト産業プラザTEQS」内にオープンした。大阪市、中小企業やスタートアップの支援を行う大阪産業局、i-RooBO Network Forum、ソフトバンクの4者で共同運営しており、5Gを活用した新ビジネスの創出を目指す企業をあらゆる面からサポートしている。
「5G X LAB OSAKA」には、製造業、建設業、小売業、放送業、地域向けなどの幅広い業界に向けた最新テクノロジーが常時20点以上展示されている。直接見て触れて体験することで、5Gによってビジネスや暮らしがどう変わるのか、より具体的な未来を描けるはずだ。
今回の記事では、「5G X LAB OSAKA」の最新展示の一部をレポート。より詳しく知りたい方はぜひ予約のうえ来場し、直接未来を体験してみてほしい。(予約サイトは本記事の最後に紹介)
以前から力触覚伝達型遠隔操作システムの開発に取り組んできた大成建設。今回、グレードアップした最新バージョンが「5G X LAB OSAKA」に展示されている。
遠隔操作ロボットアームの作業性の要となるのは力触覚(物に触れた時の感覚)だ。「ピックアンドプレイス ロボットアーム」では、5Gならではの低遅延、大容量通信を生かして、離れた場所から操作するアームが物をつかんだときの力触覚をリアルに再現。
また、遠隔地で複数の角度からロボットアームの先端を撮影した高画質映像をリアルタイムに確認できるので、まるで現地で作業しているかのような安心感とリアル感を持って操作することができる。遠隔操作ロボットアームはわずかな遅延が出るだけでも使いづらく、ときには大きな事故につながることもある。遅延なく、リアルタイムで力触覚と映像を伝えることは遠隔操作に欠かせないのだ。
導入が実現すれば、工場の生産性の向上や自動作業ラインの構築、災害現場の遠隔復旧作業などに役立つだろう。
AR・MR※向けに最適化した3D CADやBIMなどの詳細なデータをデバイスに取り込み、「HoloLens2」で体験することで、合意形成や課題発見に生かすことができる。
※MR:Mixed Realityの略称で仮想世界と現実世界を融合させる技術
「HoloLens2」を装着すると、AR表示された建物の詳細なデータが目の前に存在するかのように現れる。指先で操作して拡大、回転ができるだけでなく、実寸大の建物内部をのぞき込んだり、階段や柱などのパーツを移動したりすることも可能。さらには、建物をスライスして見たい角度の断面図も見られる。
「HoloLens2」で見ているARデータは複数人で閲覧できるので、施工検証や施工支援などの業務効率化に役立つはずだ。
「Voysys」は、180度カメラをつけたラジコンカーからの視界をVR映像で見ながら、遠隔運転をするデモンストレーション。VRゴーグルを装着して操作席に座るとラジコンカーから見える世界が目の前に広がり、ペダルを踏むと「5G X LAB OSAKA」内の床に描かれたコースに沿って遠隔操作でラジコンカーを走らせることができる。5Gによってラジコンカーの映像をモニタに低遅延で配信するとともに、ペダルの操作情報をラジコンに送信するという仕組みだ。
こうした遠隔運転システムは、鉱山や港湾などでのクレーンの遠隔操作、工場や発電所などの遠隔監視などへの活用が期待される。また、5Gと遠隔操作システムを使うことで、将来的には災害時の救援や復旧に必要な道路の啓開(けいかい)にも生かされるだろう。
5G時代にはネットワークにつながるモビリティや端末が増え、それらをリアルタイムに確認できるインターフェースが求められる。それを可能にするのが、デジタル地図のプラットフォームである「Mapbox」だ。気象データ、交通量や走行ルートのデータ、商圏データ、売上データなど、企業が保有、あるいは必要とするさまざまなデータをニーズに応じてリアルタイムに地図へ反映し、それらのデータを地図上で可視化することにより、データドリブンなビジネスを加速させることが可能となる。
デモンストレーションでは、開発中のシステム「Vision SDK」の活用例も紹介されている。「Vision SDK」はルート案内や運転中のアラートといったナビゲーション機能をモバイルアプリに実装することができるソフトウェア開発キット。
「Vision SDK」を搭載したスマホアプリを起動し、運転中の映像を写すと、中央分離帯や車線、歩道などが色分けして表示され、走行している車の周辺環境をリアルタイムで把握していることがわかる。
Vision SDKで開発されたアプリを搭載するモバイル機器を自動車に取り付ければ、カメラで収集した映像から周囲を認識し、ARによる細かな運転指示を出す、といったことが可能になる。
伝統的な建築物や文化財などの3Dデータを採取して保存しARコンテンツとして楽しむことができるのが「KYOTO’S 3D STUDIO」のデモ展示。
ソフトを起動して最新のMR デバイス「HoloLens2」を装着すると、目の前に設定された歴史的建造物のリアルな3D映像が浮かび上がる。指先で建物をつまんで動かすだけで、建物がぐるりと回転したり、大きくしたり小さくしたりと自在に操作でき、実際に実物を間近で眺めているような臨場感たっぷりの体験ができる。
もともとは災害などで破損した文化財を事前予防としてデジタルアーカイブ化し、未来に受け継いでいくという思いからスタートした「KYOTO’S 3D STUDIO」の事業。5Gと組み合わせることで、高精細のAR映像を直感的に操作することが可能になる。実際に現地に行かなくても文化財の細部まで拡大して観察できるため、新しい観光コンテンツの提供や、教育現場での歴史教育への活用などが期待される。
新型コロナウイルス対策として、商業施設やオフィスなどでは混在回避とソーシャルディスタンスの徹底が呼びかけられている。そこで役立つのがこの「密回避サイネージ」だ。
画面上部にカメラとセンサがついており、4メートル四方にいる人数を検知。人数が多い場合や、互いの距離が近くて密になっている場合は、「ソーシャルディスタンスに配慮をお願いします」「距離をとってください」といったメッセージが告知される。
さらに、本デモでは画面の前に立つ人の性別や推定年齢、どこを見ているかも測定。広告の効果測定や来場者データの分析をすれば、店鋪やオフィスのレイアウト設計への活用も期待できる。
AI、ロボティクス、IoTなどを活用したビジネスを手がけるスタートアップ、デナリパム社が開発したコミュニケーションデバイス「デナポータル」。表情豊かに動く等身大のキャラクターをデジタルサーネージに表示し、商品やイベントの告知、企業紹介などをキャラクターの言葉と動きでリアルに伝えることができる。
表示内容はスマホのアプリで簡単に切り替えが可能。画面の下には移動用ロボットが設置されており、コントローラを使って遠隔操作で移動させることができる。その様子はまるでキャラクターが自ら動いて話しかけているようで、イベントや展示会場で来場者の目を惹きつけること間違いなし。目の前にいる人に合わせたコンテンツの配信も可能だという。
超高速データ通信を可能にする5Gなら、より高精細でリアルタイムの配信が実現できるように。イベント会場で人の代わりにバーチャルロボットが案内をする光景も、いずれ当たり前のように見られるかもしれない。
製造工程で、製品に傷や欠けている部分がないかなどをチェックする「外観検査」。これまでは目視で行われるのが一般的だった。微細な傷などを素早く見つける職人芸ともいうべき工程をAI画像認識で代替するのが、「AI外観検査」だ。
「AI外観検査」の特長はAI処理をクラウド上で行うこと。固定カメラが複数回のフラッシュにあわせて写真を撮影し、クラウドにアップ。クラウド上でAIが画像認識を行い、ディスプレイに「OK」「NG」の判定が表示されるという仕組みだ。
クラウドでAI処理するため、必要なのは「固定カメラ」「PC」「通信モジュール」のみ。PCのCPUもRaspberry Piと同等レベルで事足りるという。
撮影から判定が出るまでに時間がかかることが課題だったが、それも低遅延な5G通信を活用することで解消。今後、製造の現場に導入されれば、人手不足解消や生産性向上に多いに役に立ってくれるだろう。
会場の観客の空気を読み取り、最も盛り上がる演出を構成するのがDJの仕事。そんなDJの仕事をAIで再現しようというプロダクトが、エイベックス・エンタテインメントとネイキッドによって制作された「HUMANOID DJ」だ。
4Kカメラの映像を元に観客の顔を画像認識して、口元の角度や目の大きさなどから表情を読み取る。加えて、モーションキャプチャや音声解析の結果も含めて総合的に会場の状況を判断し、盛り上げるために最適な選曲や演出を行う。
4K映像の伝送容量は膨大で、イベント会場の通信では遅延が生じるという課題があったが、大容量・低遅延の5G通信であればAIの分析結果をリアルタイムに演出へ反映できるようになる。
現実の空間で何かを行う際には、その場所について正確に把握しておく必要がある。例えば、展示会に出展する企業であれば、会場の下見は必須だ。そんな「空間を把握する」というニーズにバーチャルで応えるのが、「Matterport」。
360度カメラで約3メートル置きに空間を撮影すると、ソフトウェア上に自動で3Dモデルが作成される。作成された3Dモデルはスマホやタブレット端末で誰でも簡単に編集が可能だ。
展示会であれば、主催者が3Dモデリングを出展企業に送付することで会場の下見に行く手間を省くこともできる。また、3Dモデルにテキストやリンクを埋め込むこともできるため、そのまま3Dモデルを遠隔展示会場として利用することも考えられる。
もしも遠くの地に自分の分身を送ることができたら──。誰もが一度は想像したことのある夢を実現したのがtemi USA inc.が開発したパーソナルロボット「Temi」だ。
利用者はオンライン会議ツールのZoomを通じて「Temi」のカメラが捉えた映像をリアルタイムで確認し、遠隔対話ができる。「Temi」は人の後ろ姿を認識して自動追従することができるほか、遠隔から指示したポイントまで障害物を避けながら自律走行することもできる。
ビジネスシーンにおいては、例えば工場視察や展示会場の案内など、これまで現地まで出向く必要があった業務を、「Temi」越しに行うことができる。コロナ禍で移動や集会に制限がある状況下において、需要が高まることが予想される。
すでに自社で5Gを活用した商品やサービスの開発に着手している企業も多いだろう。こうした企業に向けて、「5G X LAB OSAKA」では試験用の5G基地局を使える「検証ラボ」を設置している。外部からの電波を遮った環境で5Gの通信環境をテストすることが可能。利用を希望する企業は誰でも無償で使うことができる。すでに、大阪産業局が支援するスタートアップ企業からも利用の相談が持ちかけられているという。
大阪市、大阪産業局、i-RooBO Network Forum、ソフトバンクが共同で運営する「5G X LAB OSAKA」は、5Gビジネスの最新ソリューションの展示にとどまらず、大阪や関西に拠点を置く企業どうしのコラボレーション創出の場にもなっている。技術やアイデアを持つ企業を結びつけ、大阪発の5Gビジネスを生み出していくことが狙いだ。
オープンして間もないが、すでに大阪産業局で支援しているスタートアップ企業にソフトバンクが声をかけ、5Gを活用した新しいサービスの開発を目指す事例も生まれている。本記事冒頭で紹介した「KYOTO’S 3D STUDIO」や「デナポータル」はその好例だ。
「自社の強みを生かして、新たに5Gビジネスに挑戦したい」「一緒に5Gビジネスに取り組むパートナーを探している」といった思いがすでに芽生えている方には、ぜひ「5G X LAB OSAKA」を訪れてほしい。新しいヒントや発見が見つかるはずだ。
大阪市、大阪産業局、ソフトバンク3者へのインタビュー。彼らが目論む5Gビジネスとは?
5G X LAB OSAKAの詳細、見学予約は「5G X LAB OSAKA」の公式HPよりお申し込みください。
5G X LAB OSAKAの詳細、見学予約は「5G X LAB OSAKA」の公式HPよりお申し込みください。
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