IoT×クラウドで酪農DXを実現した「蒙牛乳業」

2021年7月26日掲載

蒙牛乳業のWebサイト 蒙牛乳業のWebサイト

中国で著名な乳業メーカーは続々とIT企業と手を組み、スマート化・DX化を進めています。中国各地で商品が手に入る大手乳業メーカーの「蒙牛乳業(以下、蒙牛)」もその一社で、Alibaba Cloudと手を組んで、スマート化を進めています。日本でも導入ケースはありますが、Alibaba Cloudが行った導入事例を紹介します。

蒙牛のDX化は大きく3つ挙げられます。牧畜だけでなく、生産と配送、それに顧客分析の3つです。

まず牧畜についてです。蒙牛では全体で約800ヵ所の牧場があり、計100万頭の牛を抱えています。牛舎には無線ネットワークが行き届いており、リアルタイムで各牛の活動量がわかるのです。活動量の計測方法ですが、各牛には歩数をチェックするIoTの歩行器がかけられています。

例えば、歩数が少なければ体調が悪い可能性があるので隔離して休ませる、歩数が多ければ発情している可能性があるので牡牛を用意、この際牛のしっぽに特別な重力センサーを装着するなど、歩数計のデータから牛をお世話する方法を調整するのです。分娩前だとわかるしっぽの動きを感知すると、通知があり分娩の対応をします。

歩数のほかにも各乳牛一頭一頭の生理状況や、歩行数や、餌の量や牛乳産出量を記録。発情期の予測もAIで行います。より細かくデータがとれて競争力を高める一方、生産量は5%増加し、牛乳生産コストは9%の削減を実現しました。これまでの蒙牛の畜産のノウハウをもとに、IoTとクラウドでスマート化が実現できたわけです。今後は運用の中でデータをフィードバックした結果、さらに牛によい環境づくりができるようになるだろうとのこと。

次に生産と配送についてですが、牛乳はずっと保存できる商品ではありません。一番よい方法で中国全土に配送できるように、あらゆる条件から分析を行うプラットフォームを用意します。

具体的には、平日か休祝日か、天気、季節、競合ブランドの動向、キャンペーンの季節化という天候やイベント的要素、各牧場での牛乳の量と生産可能量といった生産増強、それに中国各地で提携する卸も含めた5,000超の店舗の在庫状況、配送時間、物流ネットワークのキャパシティといった要素となり、これらから自動的に、どこでどれだけ生産してどこに運ぶかのベストな選択が選ばれるわけです。

生産量が決まると自動的に各地の牧場で生産量を通知、それに基づいて生産します。さらにこれまでの各種販売データをビックデータとして蓄積することで、さらなる正確な予測に役立つのです。人の経験で近いことができるにしろ、やはり構築したシステムに正確さとスピードで倍以上の差があり、かつ企業が巨大化し、拠点や生産量が増えるほど人の手での振り分けが厳しくなるので、自動化は役に立つとのこと。

また牛乳の消費量や、道路状況や天気といった物流の変化の要因、ネット上の口コミによる牛乳熱、平日に届くのか休日に届くのかなど、考えうる要素のデータも自動的にインプットし、どこの牧場と加工工場と倉庫をどれくらい活用するかについて、数分以内に最適解を出すことができます。

これが新型コロナウイルスの感染拡大時に、特に活躍しました。中国全土に牧場をはじめとした事業所があるなかで、「感染リスクがあるため稼働できない」というところも出てきました。ですが事業所が稼働できないかわりに、どこの牧場を使い、どう物流を活用すれば、最適なカバーができるかを自動で割り出すことができたので、アクシデントを乗り越えることができたのです。

最後に顧客分析です。各種データから、どんな人がどれくらい買っているのかを分析するほか、SNSやECサイトやWebページなど様々な状況を口コミ把握します。そして各消費者に向けて営業戦略を行うべく、購入者を詳しく分析し、異なる購入者層にビッグデータを活用して営業戦略を出します。この手の口コミ分析システムは中国では競争が起きていて、その分析技術が向上しています。

今後はどこで生産され、物流はどこを利用したのかという、トレーサビリティを強化するとのこと。DX化以降のビッグデータ運用により、より安全で新鮮な牛乳が飲めることでしょう。蒙牛だけでなく、他の企業も導入しています。中国全体で牛乳の品質が向上しそうです。

参考リンク

Alibaba Cloud中国サイトでの紹介記事
蒙牛:云上养牛记
从饲养到产奶,阿里云联合蒙牛启动“数字奶源计划”

おすすめの記事

条件に該当するページがございません