エヴァンジェリスト・西脇氏に聞く、生産性向上40%を実現した日本マイクロソフトのコミュニケーション変革

エヴァンジェリスト・西脇氏に聞く、生産性向上40%を実現した日本マイクロソフトのコミュニケーション変革

(2020年1月6日掲載)

  • 働き方改革のためには社内カルチャーの変革が必要
  • 顧客第一が働き方改革を推進する
  • UniTalkは日本の固定電話サービスの代替となる音声通話サービス
  • コミュニケーションツールを統合していくことで、生産性が向上する

2019年10月、日本マイクロソフトは全社で実施した週休3日プロジェクトの結果を公表した。
その成果として、同月に前年比40%の生産性向上を実現*。働き方改革が多くの企業の課題となる中、
この取り組みは大きな話題を呼んだ。
*2019年8月の労働生産性(売上/社員数)が前年比+39.9%

「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」の成果発表
日本マイクロソフトが週休3日制を含めて今夏に実施した働き方改革プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」の成果発表

また、日本マイクロソフトは2019年8月、ソフトバンクと共同で音声通話サービス「UniTalk」をMicrosoft Teams内で提供を開始した。クラウド上に固定電話機能を実装することにより、煩雑化するコミュニケーションツールを統合していくという画期的なサービスだ。

UniTalkはどのような考えのもと誕生し、ビジネスパーソンの働き方にどのような影響を与えていくのだろうか?自ら働き方改革の成功例を示した日本マイクロソフト エバンジェリストの西脇資晢氏に話を聞いた。

日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏

西脇 資哲氏

日本マイクロソフト エバンジェリスト

約40%の生産性向上を実現した日本マイクロソフトの働き方

――日本マイクロソフトは今年8月に働き方改革プロジェクトを推進し、生産性が大きく向上したというレポートを発表されました。具体的にはどのような取り組みだったのでしょうか?

西脇 日本マイクロソフトでは全社的に社員の生産性向上に取り組んでいます。週休3日制度、つまり週勤4日への時短はその一環ですね。
ビジネス習慣の中には無駄な時間がたくさんあるのです。それを極限まで削減したら、労働時間は短くなり、生産性は高まるのではないかと。8月の試験導入では金曜日を休暇とし、オフィスを閉鎖し、従業員に働き方の自由と選択を与えました。

――かなり抜本的な取り組みですね。

西脇 並行して社内の会議時間は30分以内、会議参加者は5名までという制度を設け、運用していました。
社内会議のために資料を作る必要すらないので、印刷する手間やコストも削減できます。データが必要ならクラウドを使って共有すればいいですし、会議を記録したものを共有すれば多くの人が会議に参加する必要もない。

「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」の成果発表
「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」の成果発表より

――その結果、約40%の生産性向上が見られたと。凄い数値です。

西脇 加えて電力使用量が約25%削減、印刷代20%削減。社員へのアンケートでは、試験導入に関して90%以上がポジティブな反応でした。
私たちはビジネスパーソン向けのツールを提供する企業として、まずは社内から業務効率化に取り組んでいます。弊社がヘルシーに働ける環境でなければ説得力がありませんからね。

働き方改革を成功させる4つのポイント

――一方、日本では大企業を中心に多くの企業が働き方改革に取り組んでいますが、なかなか成果に結びつかないという実情があります。その理由をどうお考えですか?

西脇 個人レベルでは、うまく適応している人とそうでない人がはっきり分かれていますよね。
若い人を中心にWeWorkのようなシェアオフィスやコワーキングスペースを使い、自ら働き方をフレキシブルに変えていける人。
一方で、会社の用意した環境で、固定席を利用し従来通りに働いている人もいる。大きく二極化している印象です。
業種にもよりますし、双方の働き方にもメリット・デメリットがあるので一概に評価をすることは難しいです。ただ、今の社会では両者が一緒になって働いていることによりさまざまな問題が生じているのではないでしょうか。
私生活ではスマホ1つで簡単にすむことが、社内では複雑な手続きを要する。であれば、より便利な環境を社外に求め自ら利用するのは自然なことです。
なので、企業単位では社員に合わせフレキシブルに働ける環境を提供していかなければ、優秀な働き手はどんどん流出いくことになるでしょう。

日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏

――日本企業の働き方改革が上手くいかない原因はどのようなものでしょうか?

西脇 まず大前提として、社内のカルチャーを変革させることは必須です。働き方改革が進まない企業の課題は大きく4つに分類できます。

1つは経営層やマネジメントクラスが意識を変えられていないこと。私の拝見する限り、上手くいっている企業はトップが徹底して働き方の改善にコミットしています。

2つめはコストで問題を解決しようとしていること。オフィスや家具を新調するとかハード面の投資を改革だと考えている。目に見える変化はあるかもしれませんが、これは本質的ではありません。

3つめは労働時間に対する意識が甘いこと。労働時間に対して賃金が発生しているという考えでは働き方改革は難しいですよね。会社に出社してさえいれば賃金が発生する環境であれば、労働時間は長くなる一方です。

4つ目は働き方改革自体が目的化してしまっていること。なぜ働き方を変える必要があるのか、社内で定義し、しっかりと合意をとった上で導入していかないといけません。

働き方改革が失敗する4つのパターン

――「働き方改革」が目的化してしまうというのは、日本特有の課題のようにも感じます。

西脇 そうだと思います。やはり欧米企業の方が総じてリーダーシップが強いですし、上司の考えがスタッフに行きわたるよう徹底する組織文化があります。それでいて個人が大変尊重される仕組みですね。
階層構造が強い日本企業だとなかなか現場の人間にまで意識が浸透していきません。また、海外企業と比較するならば、「自己投資」への考え方も大きな違いです。

――自己投資、ですか?

西脇 海外のビジネスパーソンはパフォーマンスを高めるために自分自身に投資を行うという考えが根付いています。日本では企業からの投資を待ってしまうんです。
手前味噌ですが、例えば日本マイクロソフトでは自分の働き方を改善するためのサービスやアプリケーションを自分で選択するんです。
こうしたサービスを導入するプロセスが煩雑だと導入までに時間を要します。ビジネスパーソンにとっては時間が何より貴重な資源なので、これは大きな損失です。
一方コンシューマサービスのデジタル化は劇的に進んでいますよね。買い物や飲食店の予約などスマホ1つで簡単に済みます。企業内でも本当は同じぐらい手続きを簡略化できるはずです。

「顧客第一」の視点が働き方改革につながる

日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏

――日本では上司の承認を取った上、経理や総務部への申請がある場合も少なくないですよね。現場の人間に裁量があるかどうかが、大きな差を生みますね。

西脇 日本企業はリーダーシップが弱いと言われていますが、「Lead(=導く)」というのは、自ら推進するということです。リーダーが目的を失うと、間違った方向に進んでしまいます。
現場とマネジメント、どちらか一方ではなく、リーダーが率先してムードをつくった上で、双方が改善する意識に立つことが理想的な環境だと思います。

――現場のプレイヤーから働き方を変えていくためには、どのようなプロセスを踏むのが効果的でしょうか?

西脇 カスタマーエクスペリエンスを第一に考え、情報システムを組み立てていくことにフォーカスすることですね。
「お客さまのためになるから」という説明を繰り返しながら、ツールを導入し、現場のオペレーションを組み立てていく。それに尽きます。
しかし、日本人は変化に柔軟に対応することが苦手だと言われています。現場レベルでもここが大きな障壁となります。
時代に合わせて働き方やツールはどんどん変わっていく。それも、より加速度的に変化は早まっています。変化に臆するのではなく積極的に「新しいものを使いこなそう」というマインドを持つことが何よりも重要です。

クラウドの「利便性」と固定電話の「信用」を合わせ持つ音声通話サービスUniTalk

――日本マイクロソフトは業務効率化を促進するツールを多数提供されています。先日は音声通話サービスUniTalkを発表されましたね。どういった特長があるのでしょうか?

西脇 UniTalkは「Microsoft Teams」向けの音声通話サービスです。固定電話をクラウド上に実装できる、というとイメージしやすいかもしれません。
PC、タブレット、スマートフォン、あらゆる機器で固定電話番号での発着信ができるようになるので、場所に縛られず利用できます。

UniTalkとは

西脇 弊社は「Microsoft Teams」に業務上のあらゆるコミュニケーションを集約し、ユーザの作業効率の向上を目指しています。その中で、これまで独立していた固定電話もクラウド上で統合していこうと。

――オンラインツールが発達した現在、固定電話回線を利用するメリットはどこにあるのでしょうか?

西脇 日本の商習慣上、固定電話の果たす役割はまだまだ重要です。名刺の記載が固定電話であることは信用に繋がりますし、実際、金融機関が審査を行う際にいまだに評価のポイントにしていますよね。
また、番号から発信元の地域がわかるので、ローカルなお客様からの信用はさらに増します。お金を扱うビジネスでは、特にその意味合いは強いです。
そこで、弊社が10年以上にわたり推進してきたオンライン会議のサービスと、日本の商習慣として根強く残る資産である固定電話を統合したいと考えたのです。
そのパートナーとして、固定電話とインターネット、両方の事業ドメインで実績のあるソフトバンクさんと協業させていただくことになりました。

――オンラインツールの「利便性」と固定電話の「信用」を併せ持つサービスだということですね。

西脇 そうですね。「信用」といった無形の概念はそう簡単にリプレイスされないんです。

――想定するユーザ、利用シーンはどのようなものでしょうか?

西脇 営業やお問い合わせ窓口が想像しやすいかと思います。携帯電話だとマンツーマンのコミュニケーションになりますが、UniTalkは代表番号をチームで共有できるのでチームとしてお客さまと接点を維持することが可能です。
運用コストも高くなく、現在利用中の電話番号を引き継ぐことができるナンバーポータビリティもリリースされましたので、導入ハードルはかなり低いはずです。
大企業はもちろん、個人的にはスタートアップや士業の方々にも利用していただきたいですね。特に士業の方、コンサルティング業界の方にとって信用は命綱なので利用する価値は十分にあるかなと。
また、スタートアップの文化ではSkypeやZoomで商談を行うこともありますが、お客さまが初めて使うツールの場合、商談が円滑に進まないこともあります。であるならば、誰もが簡単に利用できるUniTalkによる従来通りのコミュニケーション手法は合理的な選択になるかと思います。

UniTalkの4つの特長

――オンライン通話サービスは音声の品質が長年課題とされていますが、UniTalkの通話の品質に関してはいかがですか?

西脇 IP電話の通話の品質は固定電話に劣ると言われていましたが、近年はソフトバンクさんの努力もあってかなり向上してきています。UniTalkに関しては固定電話と遜色なく利用できるはずです。両者のメリットを併せ持ったサービスです。

あらゆるツールを1つに統合。
「Intelligent Communication」が目指すもの

――誰もが簡単に導入・運用でき、コミュニケーション格差を無くしていけるというのは、働き方という観点からも、大きな可能性を持ったサービスですね。

西脇 UniTalkの「Uni」は「unified=統一された」という意味です。その名の通り、私たちは煩雑化してしまっているコミニケーションツールを一元化していきたいという思いがあります。その思想を元に作られているのがMicrosoft Teamsであり、UniTalkの設計思想です。
その背景には、日本マイクロソフトが提唱する「Intelligent Communication」という考えがあります。

――「Intelligent Communication」とは、どういったものでしょうか。

西脇 連絡手段が電話、FAXからメールに変わっても、電話は無くなっていませんよね。さらにチャット、ビデオ会議システムなどコミュニケーションツールはどんどん増えてしまった。
その結果、TPOに合わせてツールを使い分け、接続するコストを支払ってきた。先ほど申し上げた「時間」の点で考えれば大きな損失です。だからそれを1つに束ねようと。
Facebookの「いいね」やスタンプのように、オフタイムのコミュニケーションはどんどん簡略化されています。画像や動画など、その手法も多様化し、質も高まってきている。
なのに、なぜそれがビジネスでは実現できないのか。これを変えていきたい。

――ビジネスにおけるコミュニケーションコストを下げていこうということですね。

西脇 個人間のチャットのように、企業間のコミュニケーションにおいてなくてはならない重要なピースになることを目指しています。
実際、日本マイクロソフトが提供するソフトは1つのアプリケーションに集約されていく予定です。UniTalkを含むMicrosoft Teamsがツールを意識しない状態を作り出していきます。

――「Intelligent Communication」により、シームレスな環境が整っていく。その先にはどのような展望があるのでしょうか?

西脇 無駄な時間とコストを下げ、自己投資に当てるというサイクルを生み出したい。そして、効率化だけでなくウェルネスの分野にもより力を入れていきます。
実際、Office 365には文書作成ツール以外にAIが働き方を評価してくれる機能が搭載されているんです。
誰とどのような仕事をしていると生産性が高いのか、適切な休息が取られているのか。また、「深夜に送ったメールを相手がいつ開封しているか」「翌日だとすれば深夜にメールを送付するが必要ない」ということまで、細かいフィードバックがユーザに配信されます。
働き方改革と同様、日本マイクロソフトのツールはあくまで手段にすぎません。業務効率化を通じて、一人でも多くの方により良いビジネスライフを提供していければと考えています。

後記

西脇氏に話を伺って何より驚かされたのは社内の取り組みからサービスの開発までが「Intelligent communication」という一貫した思想のもと行われていたことだ。グローバルに展開する大企業でありながら、全社が同じビジョンに向かっている。これは西脇氏が指摘する「働き方を変えるためにはトップから現場までが強い意識で改革に取り組むこと」の実践だ。マネジメント層からプレーヤーまであらゆる立場のビジネスパーソンにとってヒントとなる言葉が次々と飛び出した取材だった。

関連リンク

UniTalk

「UniTalk」は、Microsoft Teamsの通話機能を拡張するクラウドボイスサービスです。
オフィスに専用の設備や電話回線の敷設工事が不要で、固定電話番号での発着信が可能となるほか、魅力的な通話料金体系でシンプルかつ最適な電話環境を構築することができます。

Microsoft Teams

Microsoft Teamsとは、チャットやオンライン会議はもちろん、統合されたOffice 365アプリでの共同作業など、Office 365でのチームワークを実現するためにハブとなるコミュニケーションツールです。