概要
いすゞ自動車株式会社(以下、いすゞ自動車)は、普通免許で運転可能な小型トラック「エルフミオ」の発売に合わせ、車業界では先駆的なオンライン購買システム「ELFmioストア」を立ち上げました。複雑な仕様選定や見積作成をデジタル化することで、これまで接点のなかった顧客層とのファーストコンタクトを実現しています。ソフトバンクによる集客からシステム構築、運用後のデジタルマーケティングの支援を通じ、いすゞ自動車は商用車販売の新たなスタンダードの確立を目指しています。
- 深刻なドライバー不足や免許制度改正に伴う、トラック市場の担い手不足の中で、従来の対面・訪問型営業だけではリーチできない、自営業や個人事業主といった「自家用小口層」への認知を拡大したかった。
- 商用車特有の複雑な見積・契約プロセスにより、販売現場の負荷と新規顧客の心理的ハードルがあった。
- デジタル広告とECを連動させることで、Webサイトへの来訪と非対面での商談を強化。多くの成約実績を創出した。
- 最短5分で概算見積が完了する「見積シミュレーター」により、24時間365日気軽に検討いただける環境を整備した。
導入サービス
橋本 めぐみ 氏
免許制度の壁を越え、物流の裾野を広げる小型トラック「エルフミオ」
日本の物流インフラは今、大きな転換期を迎えています。少子高齢化による深刻なドライバー不足に加え、2017年の道路交通法改正により、車両総重量3.5t以上のトラックの運転にも「準中型免許」が必要となりました。高校を卒業して働き始めた若年層や、普通免許しか持たない方々にとって、トラックを運転すること自体が大きな障壁となっています。
エルフミオの販売に関するオペレーションを担う橋本氏は次のように語ります。
「トラックドライバーの担い手不足のような社会課題を解決するために、『普通免許で乗れる唯一のディーゼルエンジントラック』として投入したのがエルフミオです」(橋本氏)
小型トラックのターゲットは運送事業者だけではありません。建築や農業、さらには商店を営む個人事業主といった、仕事の延長線上でトラックを必要とする自家用小口層も主要な顧客層ですが、従来の販売手法ではそれらのお客さまに対して十分な接点を持てずにいました。同じ営業推進グループに所属する大塚氏は続けます。
「物流業界の課題解決に向け、普通免許で運転できるエルフミオを、商用車メーカーである我々がこれまでタッチできていなかったユーザー層の方々にいかにして届けていくか。その点が大きな挑戦でした」 (大塚氏)
エルフミオのコンセプト:「だれでもトラック」
ECへの挑戦を決めた背景
「だれでも乗れる」トラックを届けるためには、買い方も「だれでも買える」仕組みに変える必要がありました。そこで立ち上がったのが、ECサイト「ELFmioストア」の構築プロジェクトです。
「多様化するお客さまに対し、いつでもどこでもトラックを購入できる利便性を提供したいと考えていました。また、1台のみを購入される小口のお客さまに対しても、オンラインで商談から契約まで完結できる仕組みを構築することで、販売会社の営業スタッフの負担を軽減し、より効率的な営業活動を支援したいという狙いもありました」(橋本氏)
続けて、同営業推進グループの前澤氏は次のように語ります。
「だれでもトラックというコンセプトでしたが、いざトラックを購入しようと思っても、どうやって買えばいいのか分からない方も多くいらっしゃいました。また、いすゞ店舗では大きなトラックの取り扱いをしているイメージが多かったり、トラックは車型も多いためすぐに実物が見れないという背景もあります。そうした方々に購入できる環境を提供し裾野を広げ、『買いたい』『興味はあったが買い方が分からなかった』という方々に向けて情報を発信したいと考えていました」(前澤氏)
商用車業界における「前例のない挑戦」
一方で、商用車業界におけるEC化は、まさに「前例のない挑戦」でした。
「正直なところ、『本当にトラックをオンラインで購入する人がいるのか』という不安もありました。また、商用車はこれまで価格をWeb上に掲載する習慣がなく、さらにナンバープレート登録やリース審査といった法的・業務的に複雑な手続きも伴います。これらをどのようにECサイト上で行い、お客さまに納得してもらうかが大きな壁でした」(橋本氏)
「仕事で利用するトラックは『生産財』です。お客さまのビジネスを支えるインフラである以上、故障などで稼働を止めることは避けなければなりません。だからこそ、納車後のアフターフォローを含め、販売会社との連携など販売スキームだけではなく業務スキームやシステムの整合性のハードルがありました」(大塚氏、前澤氏)
見積もりを「1週間待ち」から「最短5分」に
これらの課題を解決するために誕生した「ELFmioストア」は、単なるカタログサイトではなく、顧客体験を大きく変えるプラットフォームとなりました。
ELFmioストア(記載内容は2025年12月時点)
特に注力したのが、3Dで完成形を確認できる「見積シミュレーター」です。
「これまでの対面商談では、ヒアリングから見積もり、リースの審査やリース価格の設定など、どんなに早くても数日、長ければ1週間以上かかっていました。それがELFmioストアでは、お好みの車型や色、架装オプションを選んでいくだけで、その場でリース費用まで算出されます。最短5分で概算費用を算出できるようになりました」(大塚氏)
商用車であるトラックは荷台の仕様やオプション仕様が多岐にわたり、展示場ですべてを見ることは不可能だという課題も改善しました。
「3Dシミュレーターを見ることで、用途に合った完成形を想像して検討できる点は、これまでトラックとの接点が少なかった方々にとって、大きな安心材料になったと感じています」 (橋本氏)
また、Web上でレビュー動画も多めに配置し、プロの視点だけでなくユーザー視点での情報提供も強化していきました。さらに、非対面での不安を解消するため、オンライン商談ツールも導入し、対面と同じ安心感をWeb上でも再現できるようにしています。
必要な機能を選び、完成イメージも確認できる見積シミュレーター
システム構築から運用支援までのソフトバンクによる一気通貫サポート
いすゞ自動車が求めたのは、単なるシステム開発ではなく、新しい市場を開拓するための「マーケティング」と「システム」を融合させた一気通貫の支援でした。このEC構築プロジェクトのパートナーとして選ばれたのが、ソフトバンクです。ECサイト構築に加えて、情報をいかに活用していくかというマーケティング・コンサルティング目線も良かった と橋本氏は語りました。
「我々にはECの知見が全くありませんでした。ソフトバンクさんは他業界やメーカーでの実績も豊富で、分からないことに対して過去の経験に基づいた具体的なアドバイスをいただけたのが大きかったです。単にECサイトを作るだけでなく、集客やデータ分析含め、どうやって成功まで導くかという視点で伴走してくれました」(橋本氏)
いすゞ自動車では、ECサイトで得られたデータに加えて、Yahoo! JAPANやSNS広告などのデジタルマーケティングを活用し、どの流入経路が商談につながったかを可視化する取り組みも進めています。
試乗なしでも成約。ECサイトで得られた成果と確信
2024年夏の稼働以降、プロジェクトの成果は数字として、そして何より「お客さまの反応」として現れています。
「正直、不安もありました。過去(ELFmioストア立ち上げ前)にWeb販売のトライアルを行った際には成約に至りませんでした。しかし今回は、立ち上げ後すぐに商談が決まり、成約に至りました。一番驚いたのは、一度も実車を見ずに購入されるお客さまが想定以上に多かったことです」(橋本氏)
橋本氏はそう語ります。レンタルなどでトラックに乗った経験があるお客さまは、シミュレーターだけですぐに利用イメージを具体化でき、「仕事で必要な時期が決まっている」「乗り換えのため試乗は不要」といったお客さまは、すぐに購入手続きができる点が好評だったと言います。
「買う場所や買い方が分からなかった方々にとっても、ELFmioストアは大きな助けになっています。店舗だけでは出会えなかった新しいお客さまとつながれる。ECの可能性を実感しています」(前澤氏)
インタビューの様子(左より)
いすゞ自動車株式会社 国内営業部 営業推進グループ 橋本 めぐみ 氏
いすゞ自動車株式会社 国内営業部 営業推進グループ 大塚 将人 氏
いすゞ自動車株式会社 国内営業部 営業推進グループ シニアエキスパート 前澤 吉昭 氏
今後の展望:「稼働」を支え、物流を身近にする
いすゞ自動車の挑戦は、まだ始まったばかりです。
「初年度からWeb販売で多くのご契約をいただき、非対面でも購入いただけることが分かりました。今後は取扱車種を増やしたり、シミュレーターで選択できる仕様数を増やしたりすることで、ELFmioストアのラインアップを強化していきたいと考えています」(橋本氏)
「ECサイトでの販売によって非対面でも結果が出ています。今後はアフターフォロー含めてお客さまの満足度をさらに高めつつ、非対面で提供できる範囲を広げられるように、しっかり取り組んでいきたいと考えています」(前澤氏)
「エルフミオはトラックを利用されているユーザーだけでなく、今までトラックを利用してこなかった方々にも知っていただき、利用していただきたいという考えがあります。オンラインのELFmioストアを通じて、トラックをより身近な存在として感じていただきたいですね。まずは、このECサイト販売を確立し、今後は車種や車型を増やすことで、お客さまの選択肢を広げ、簡単にトラック購入できる環境を作れれば良いと考えています」(大塚氏)
89年の歴史を持つ商用車メーカーが、デジタルという新たなエンジンを積み、物流の未来へと走り出しました。ソフトバンクというパートナーとともに、いすゞ自動車の挑戦はこれからも続いていきます。
本事例での導入サービス
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