ソフトバンクのデジタル人材を自治体DXの即戦力に【宮崎市編】

2023年03月13日掲載

ソフトバンクのデジタル人材を自治体DXの即戦力に【宮崎市編】

「誰一人取り残さないデジタル化」の実現を目指すソフトバンクでは、自治体の市民サービス向上や業務の効率化、地域活性化を図ることを目的に、多くの自治体にデジタル人材を出向させています。

全庁的なデジタル技術活用に向けてDXの推進を担う人材を公募していた宮崎県宮崎市では、2022年5月からソフトバンクの社員1名をCIO※補佐官として受け入れています。ソフトバンクのデジタル人材がいかに自治体をアップデートしていくのか、その取り組みを取材しました。

※CIO:最高情報統括責任者

目次
宮崎市 副市長 CIO 帖佐 伸一 氏

帖佐 伸一

宮崎市 副市長 CIO

宮崎市 総務部長 亀田 英信 氏

亀田 英信

宮崎市 総務部長

宮崎市 総務部 参事 CIO補佐官 若林 卓也 (ソフトバンクから出向)

若林 卓也

宮崎市 総務部 参事
CIO補佐官
(ソフトバンクから出向)

なぜ宮崎市ではデジタル人材が必要だったのか

最初に帖佐副市長にお伺いします。宮崎市がDXに取り組む背景をお聞かせください。

帖佐副市長:宮崎市では以前から、RPAを使った事務作業の効率化などデジタル技術を活用した業務改革に取り組んできました。これは将来の人口減少に伴う職員数の不足に備えるためです。長年続けられてきた業務フローが立ち行かなくなり、行政サービスの品質を維持できなくなることに危機感を抱いていました。

2022年に総務省から「自治体DX推進手順書」が公表され、これをベースに宮崎市でも全庁的なDXを進めようと、市長・副市長・部次長級の職員で構成する「宮崎市DX推進会議」を正式に立ち上げています。

なぜ民間企業からデジタル人材を受け入れたのでしょうか。

帖佐副市長:本市では、副市長がCIOを担うのですが、DX方針の策定や事業推進のためにはデジタル技術に精通したCIO補佐官を必要としていました。ほかにもCIO補佐官の業務は、デジタル技術を活用した地域・産業の活性化企画、職員へのDX意識浸透、それらの施策のマネジメントと多岐に渡るため、庁内の人材の知見だけでは難しい領域です。また宮崎市DX推進会議は職員だけで構成されていますので、利用者目線の改革を進めるためには外部からの意見が大事だろうという思いもありました。

こうした経緯で、デジタル技術に関する専門的な知識と経験を有する人材を、民間から登用することに決めました。

そこから、公募という形でデジタル人材を募集した訳ですね。

帖佐副市長:当初はどのように募集を行ったらよいか分からず、総務省に相談しながら人材登用の手順をアドバイスいただきました。また、ほかの自治体では、外部人材を登用する際に非常勤の立場で業務していただくことが多いようですが、DXの場合それでは上手く進まないのではないかと懸念していました。そのため、宮崎市では常勤で数年間働いていただくことを基本に公募をはじめました。

数名の候補の中から、デジタル活用のノウハウを行政サービスに反映させる知識を有し、職員や地域の皆さまとともにDXを推進できるコミュニケーション能力を持つ人材を選定した結果、本市が求める人物像にマッチしていたのが若林さんでした。

インタビューの様子

ソフトバンクのデジタル人材による宮崎市のDX推進

次に若林さんに伺います。これまでソフトバンクでは自治体に関わる仕事をされていたのでしょうか。

若林:私は法人事業統括で代理店営業を行う部署にいました。ここでは、中小規模の企業を対象とした営業や販売推進、デジタルマーケティングに携わっています。また、西日本、東日本それぞれのエリアで全体統括なども行ってきました。

なぜ宮崎市の公募を受け、自治体のDXに関わろうと思ったのでしょうか。

若林:実は以前から、デジタル技術を活用した地域の課題解決に興味を持っていました。例えば私には高齢の両親がいるのですが、歳を取るごとに外出するハードルが上がると考えると、デジタル化で行政サービスをもっと便利にしたいと日頃から考えていました。

そんな中で、ソフトバンク内でも自治体に出向して活躍しているメンバーがいると聞き、自身の知識や経験を活かせる機会がないか公共本部に相談した次第です。このタイミングで宮崎市の公募が開始されたため、キャリアプランとして自治体のDXにチャレンジすることを選び、私は休職という形で宮崎市に出向することにしました。

では実際に、若林さんが宮崎市でどのような業務を行っているか聞かせてください。

若林:宮崎市は、2022年の7月に「宮崎市デジタルチャレンジ宣言」を発出したのですが、職員の意識改革や働き方改革を目的とした市役所改革推進プランを策定しており、それを後押しする施策としてデジタル化が重要な要素を担っています。そこで、まずはDXの推進方針の策定を行いました。

また、デジタル化が必要だという認識は職員全員持っているのですが、何から進めたらよいか分からない、全庁を動かす手立てを見出せないという課題がありました。そういった状況を踏まえ、まずは最初に取り組みやすい施策として、管理職に向けたDX研修や、ペーパーレスの推進を行っています。

管理職研修ではどのようなプログラムを実施したのでしょうか。

若林:どのように宮崎市の行政課題を解決していくか参加者とベクトルを合わせるために、ほかの自治体のDX事例や先進的なデジタルサービス、ベンダが提供している便利なソリューションなどを織り交ぜながらお話ししました。研修後には参加者それぞれが担当している領域において、どのようにデジタル化を進めたらよいか相談される機会が増えました。研修を通してDXの機運が高まっていると実感しています。

ペーパーレスの取り組みについても教えてください。

若林:ペーパーレスの取り組みはテレワーク環境の構築と重なる部分があるのですが、やはり紙を中心に業務を行っているとどうしても庁舎で業務せざるを得ません。これでは思うようにテレワークを推進できないので、まずは身の回りのペーパーレス化から取り組んでいるところです。例えば、幹部会議や打ち合わせなどの紙資料を廃止し、サーバ上のファイルで共有してPCで閲覧できるようにしました。次の工程としてクラウドサービスの導入やネットワークの整備をまさに進めているところです。

ほかにも進めているDXの取り組みがあれば教えてください。

若林:宮崎市の主要産業である観光と農業についてもDXをはじめています。

宮崎市には有名なゴルフコースがありますし、フルーツや野菜、チキン南蛮や炭火焼鳥など美味しいものばかりです。また有名な観光地だけでなく、体験型のアクティビティも豊富です。しかし、コロナ禍によって、宮崎市の観光も例外なく大打撃を受けました。再び宮崎の観光を盛り上げるためにも、マーケティングデータや人流データなどを活用して、政策に反映したいと考えています。チャーター便ではありますが、韓国と台湾の航空路線が戻りつつありますので、海外にも目を向けて集客していきたいですね。

もう一つの農業については、人手不足への対応を進めています。例えば、ため池の水位を遠隔監視することで現地に行かなくても氾濫の予兆を検知できる仕組みを導入中です。また、農業従事者の高齢化が進む一方で後継者が不足していますので、栽培のノウハウを絶やさないためにも、データをAIに蓄積して次の世代に受け継いでいこうと考えています。

非常に多岐に渡るプロジェクトが同時進行しているのですね。ソフトバンクで培った能力が活かされていると感じますか。

若林:そうですね。プロジェクト完了までの道筋を逆算して、この時期までに何をやるべきかロードマップを描くスキルは、ソフトバンクで働いていたからこそ培われたと思います。それと技術的な知識のみならず、組織をいかに動かすかというのも私の役割ですので、プロジェクトマネジメントのノウハウを生かしながら、職員の皆さまと協力してDXを進めていきたいと思います。

若林さんが今後取り組んでいきたい宮崎市のDX構想があればお聞かせください。

若林:データを有効活用するための基盤整備を進めたいですね。現在は業務にあわせて一つ一つデータを加工しているので、答えを導き出すまで一苦労な上に正確性も疑わしい状況です。ですので、庁内で利用しているさまざまなデータを一つのプラットフォームに集約し、簡単に分析できる仕組みを取り入れることで、政策にも生かしやすくなると思います。いずれはセンサーや人流データなども一つの基盤に集約し、地域の皆さまにオープンデータとして公開できればと考えています。

このように職員の皆さまにとっても住民の皆さまにとっても、便利に使えるサービスを実現していきたいです。

インタビューの様子

デジタル人材を受け入れて何が変わったか

それでは亀田総務部長に伺います。若林さんへの評価をお聞かせください。

亀田総務部長:DX推進室は5人というコンパクトな組織ではありますが、その中で参事としてメンバーを纏めていただいて、スピーディに業務推進していただいております。やはり、専門的な知識を持った若林さんが発言すると説得力が違いますし、市長からの信頼も厚く直接相談を受けられたりしていますね。

今後は庁内のネットワーク環境の刷新にも取り組むということで、大変頼もしく感じております。現在は閉域ネットワークでテレワークしにくい状態ですが、インターネット環境で業務できるようになれば働き方が大きく変わり、多くの職員がDXの効果を実感できるものと思います。

宮崎市のDXが成功するか否かはここ2~3年が勝負だろうと思っていますので、残りの任期でもますます成果を出していただけることを期待しています。

最後に帖佐副市長に伺います。ソフトバンクからデジタル人材を受け入れて、どのような変化があったでしょうか。

帖佐副市長:若林さんに来ていただいてから、私たちのデジタル化の意識は大きく変わったと感じています。行政というのは慣れない文化だったと思いますが、各部局との協議を進めて組織間の壁を突破していただきました。横の連携がなければDXは進められない訳ですが、デジタルの知識と持ち前のコミュニケーション能力で道筋を切り開いてくれています。

また、若林さんに関わっていただいたことで立派なDX推進方針を策定することできましたが、今年はそれを実行するフェーズに移ります。DX推進のために予算も確保しましたので、引き続きアドバイスをいただきながら事業の創設を推進いただけるものと確信しています。

実は私は面接官として若林さんの採用に関わっていたのですが、本当に期待以上の活躍をしていただいています。

今年は宮崎市のDXがより一層加速していきそうですね。帖佐副市長、亀田総務部長、若林さんありがとうございました。

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野邊 慎吏
ソフトバンクビジネスブログ編集チーム
野邊 慎吏
2021年よりソフトバンク法人マーケティング部門でドキュメント制作に携わる。主に中小企業の経営者を対象にした定期刊行冊子の編集を担当。

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