ソフトバンクのデジタル人材を自治体DXの即戦力に【藤枝市編】
2023年5月29日掲載
「誰一人取り残さないデジタル化」の実現を目指すソフトバンクでは、数多くの自治体にデジタル人材を出向させることで、自治体での市民サービス向上や業務の効率化、地域活性化に協力しています。
静岡県藤枝市は、ソフトバンクが包括的な連携協定を締結した初めての自治体です。産学官が連携して「藤枝ICTコンソーシアム」を立ち上げ、先端的な取り組みを積極的に推進している藤枝市では、これまでも複数の実証実験や共同事業にソフトバンクとともに取り組んでいました。ソフトバンクのデジタル人材がいかに自治体をアップデートしていくのか、その取り組みを取材しました。
なぜ藤枝市ではデジタル人材が必要だったのか
最初に、河野副市長に伺います。藤枝市はDXにおいて何を目指しているのか、その方針について教えていただけますか。
河野副市長: 藤枝市は、『幸せになるまち藤枝』を目指しています。幸せというのは、安心・安全に暮らして、なおかつ夢をもって生きていくことであると考えます。その実現のために、行政としては「健康」「教育」「環境」「危機管理」(=4K)を重点分野とし、DX活用によって「4Kの日本一」を目指しています。
なぜ民間企業からデジタル人材の受け入れが必要だったのでしょうか。
河野副市長: DX活用によって市民サービスの向上と幸せを実現させることが我々の目標ですが、現在人口減少を抱えている中、人手に頼っているだけでは「4Kの日本一」は実現できません。
マンパワーに頼らずにDXを行政に根付かせるには、全庁の全職員がその意識をもって取り組まないと成功しないと認識しております。
庁内でも職員向けに勉強会も実施しておりましたが、全ての職員の意識改革はまだ道半ばの状況でした。そのため、デジタル技術に関する専門知識を持ちつつ、職員の輪の中に入り、同じ職場で汗を流していただける人材が必要と考え、民間企業からのデジタル人材を登用することにしました。
包括連携協定先であるソフトバンクさんにこの旨を相談したところ、山田統括監を派遣してくれたという経緯です。
ソフトバンクのデジタル人材による藤枝市のDX推進
次にソフトバンクの山田さんに伺います。藤枝市に出向が決まったときはどのように感じましたか。
山田: 当時担当していたプロジェクトが終了したタイミングで、自治体への出向を打診されました。自治体の業務はやったことがない分野でしたが、新しいことに挑戦しようという気持ちで出向を決めました。
藤枝市に来てからはどのような業務を行っているのですか?
山田: 現場に近いところで仕事をしたいと思っていたので、初年度は庁内の方々に顔と名前を覚えてもらうところから始めました。
また、市民の状況を理解するため、シニア向けのスマホ教室を担当したり、シルバー人材センターの業務を手伝ったりもしたことで、市民の皆さんが実際にどんなことで困っているのかを肌で感じることができました。
また、藤枝市の『DX推進ビジョン』を策定する必要があったので、全部で70以上ある課のほぼ全てにヒアリングを行いました。そのようにして各課の課題を聞きながら、市民・まち・市役所の3つの領域でDXをどう進めて行くのか決めていきました。
こうして策定した『DX推進ビジョン』のテーマは『全ての人にやさしいデジタル活用で、豊かな暮らしを実現できるまちへ』なのですが、この「やさしい」には2つの意味を込めました。
1つは、『Kindly』です。デジタルに不慣れな方でも『Kindly』な形でDXを進めて行きましょうという想いです。もう一つは『easy』で、「簡単」にという職員の想いを込めています。
現場の課題をうけて、次年度以降はどういった取り組みをされたのでしょうか。
山田: 2022年度は、デジタル田園都市国家構想推進交付金事業であった『書かない窓口』と『多機能カーブミラー』の2つを進めてきました。
「書かない窓口」は、市民が市役所に住民票の申請などに来た際、窓口で申請書を書かなくても手続きができるという取り組みです。例えば住民票と印鑑証明書が必要な方は2通の申請書を記載していただく必要がありました。「書かない窓口」では市民の方は職員に住民票と印鑑証明書が欲しいと伝えれば、職員が作成した書面にサインをいただくだけで受け取りが可能になります。
もう1つの『多機能カーブミラー』は、AIセンサーによって車がくるとカーブミラーの枠が光るようにしたもので、交差点での出会いがしらの事故を防ぐのが狙いです。こちらは市内に5機設置しました。
いずれも、現場の課題と伴走することで新たな課題も抽出できたので、実装後の改善に向けて解決策をさらに検討しています。
加えて、職員向けには人事課と一緒に動画での自治体DX研修を検討し、1本当たり10分以内にまとめた動画を4本作成しました。受講者からも業務の隙間時間に受講することができてよかったし、分かりやすかったといった声をもらっています。
「市民・まち・市役所」という3つの領域で幅広く取り組まれてきたんですね。ソフトバンクで培った能力はどんなところで生かされていると感じますか。
山田: ソフトバンクでは、お客さまにサービスを売る前に必ず自分たちで使ってみます。その理由は、自分で経験した事柄は説明しやすくなるからですが、DXを進めるに当たっても同じことが当てはまると思います。
職員の意識改革のためには、やっぱり身をもって経験して『腹落ち』してもらうのが一番だと思っているので、できるだけ現場に入って一緒に汗をかくようにしています。
この『腹落ち』してからアクションを促すというソフトバンクの考え方は、藤枝市のDXを推進するにあたって非常に役立っていると思います。
山田さんが今後成し遂げたいと考えているDX構想を教えてください。
山田: 行政サービスの基本である『市民の皆さんにむけたDX』を進めていきたいです。
ですので、第一には、市民の皆さまがより快適に、安心・安全に幸せを感じられるまちになるための取り組みです。例えば、今後、教員の働き方改革の一環として中学校の部活動を地域が担うようになりますが、ソフトバンクとしても提案できるサービスを検討中です。
第二には、自治体の職員の仕事は減らないので、それをいかに効率化できるかという点です。例えば新型コロナウイルスのワクチン接種では、自治体職員が通常業務に加えて行っているケースがほとんどです。行政の仕事というのは、決まった仕事以外にもどんどん出てきますので、それらを効率化する『市役所の中のDX』はこれから平行して進めていかないといけないと思います。
第三には、職員の意識改革にもしっかり取り組んでいくことです。繰り返しになりますが、人間は『腹落ち』すればアクションが伴うというのは昔から言われていることです。『腹落ち』しないままではよい仕事ができないので、『どう体験してもらうのか?』に重きをおいて、DXを進めて行きたいと思っています。
デジタル人材を受け入れて何が変わったか
最後に河野副市長へ質問です。ソフトバンクからデジタル人材を受け入れて、どのような変化があったでしょうか。
河野副市長「山田統括監は、職員の兄貴分としてよい相談役になっているなと思います。DXを進めるにあたっても、話を聞いて進める手法のおかげで、職員の意識づけも大きく変わってきたと思っています。
また、行政にはスピードが求められます。ほかの市などで事故が起きた際などは、1分1秒でも早く、うちの市でもこういう対策をとります!と市民に周知する必要があります。そのときに、どの施策ならば技術的に可能なのか?を即断即決できることは、デジタル人材を受け入れた一番のメリットかなと思います。
市民サービス提供のスピードアップに貢献できているということですね。
河野副市長: そうです。なにか事故があっても、半年も経てば記憶が薄れてしまいます。市民の皆さんの関心が高いうちにスピーディに施策を行えることは、最大の魅力だと思います。
加えて、山田統括監が行政側の気持ちをうまくソフトバンクに繋いでくれることによって、行政サービスの幅も向上していると思います。新しい事業だと、どこの会社を選ぶかも試行錯誤して時間がかかります。そんなときも瞬時に情報を提供してくれるのでとてもありがたいです。
市民のためのデジタル化をより推進できているということですね。
河野副市長: はい。山田統括監が『やります!』といえば、技術的にはできるんだ、と職員を一発で納得させられるところがすごいですよね。説得力が違います。
何より、ソフトバンクという会社全体で藤枝市を応援してくれていることが嬉しいです。そういう意味でもソフトバンクさんの人材は間違いないと思っていますし、第一号包括連携協定の締結から今まで続くお付き合いの中で、ソフトバンクさんからのサポートに感謝しています。
デジタル活用で藤枝市の魅力が一層高まることを期待しています。ありがとうございました。
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