自治体職員が語る!生成AIを活用できる自治体業務とは

2023年7月7日掲載

自治体職員が語る!生成AIを活用できる自治体業務とは

チャットGPTに代表される生成AI。ビジネスでの活用シーンが徐々に見られる中、全国の自治体においても、業務への活用を検討したり、検証を始める動きが見られるようになりました。
本記事では、自治体での具体的な活用方法や導入メリット、検証すべきポイントについて、ソフトバンクに出向中の自治体職員のインタビューを通じてご紹介します。

※ 生成AI(ジェネレーティブAI)とは?

そもそも生成AIとはどんなものか、どんなことに期待されているのか、といった疑問をお持ちの方向けに、こちらのページで分かりやすくご紹介しています。

目次
静岡県から出向中の木下氏

木下 雅貴 氏

静岡県からソフトバンクへ出向中

秋田県から出向中の斎藤氏

齊藤 零 氏

秋田県からソフトバンクへ出向中

職員に聞く、生成AIが活きる自治体業務は?

まず前提として、なぜ自治体業務に生成AIが必要だと思いますか?

木下氏: 第一には、自治体職員の業務を効率化できるためです。議会答弁や議事録、定例文書の作成支援のほか、住民からの問い合わせや申請書の処理をAIに任せることで、職員の負担を減らすことができます。また、24時間、迅速に対応できることで市民サービスの向上も期待できます。
さらに、データ解析と予測モデルを活用して住民行動や需要予測を行うことができれば、EBPMの考えに基づいた、より効果的かつ効率的な施策の立案も可能になると思います。

齊藤氏: ご存じのとおり、日本は人口減少と少子高齢化が進み、それに伴い労働力人口が将来的にも大きく不足することが予想されています。その影響は当然自治体にも及んでおり、少ない職員数で業務を回せるように効率化し、かつ、いかに効果的な施策を展開できるか、ということを考えていかなければなりません。そしてこれは、日本全国どの自治体においても検討すべき喫緊の課題となっています。
そんな状況の中で、生成AIの活用は、この課題解決に向けた糸口になる可能性を大いに秘めていると思います。

では、生成AIは具体的にどんな自治体業務に活用できそうですか?

木下氏: 自治体業務での基本とも言える文書作成での活用に期待が持てると考えています。例えば、定型的な業務としてよく行っているプレスリリースや、上席・財政部局への予算折衝のために作成するポンチ(事業概要等をA41枚にまとめた資料)の作成には活用できそうですね。いくつかの条件と一緒にChatGPTに読み込ませるだけで、そのままだと冗長で分わかりにくい文章を要約してもらえるので、これまで1から作成していた時間と手間がだいぶ省略できると思います。

齊藤氏: 私は観光振興などを行う部署に在籍していたので、通常業務としてSNSへの投稿を行うことがありました。持ち回りで毎日投稿するのですが、字数制限や見やすさ、分かりやすさ、親しみやすさなど、1つの投稿を考えるだけでもそれなりに労力がかかっていました。そこでChatGPTを使うことで、これまでよりもはるかに早く投稿文を作成できそうだと思っています。これはSNSだけでなく、クリエイティブを扱う広報、産業振興、移住促進などの部署でも同じような活用ができるのではないでしょうか。

<生成AIの活用が見込まれる業務まとめ>

効率化
・文書作成補助└プレスリリース
└議事録
└答弁や条文の作成支援
└不備のチェック・情報収集└庁内資料の検索
迅速な対応
・問い合わせ対応└FAQの作成
└応答の自動化
予測と施策立案
・予測に基づく施策立案の補助
└ 住民行動、ニーズの予測
└予測に基づく事業アイデアの創出
コンテンツ作成補助

・ライティング補助
└ 広報文
└キャッチコピー
└SNS投稿文

・画像/動画の作成

生成AIを導入するにあたり、考慮すべき自治体ならではのポイントはありますか?

齊藤氏: 自治体職員としては機密情報・個人情報の扱いは気になります。仮に(インターネットに繋がらない)クローズドな環境で生成AIが使えるようになったとしても、情報が絶対に外部に流出しないと確認できなければ導入は難しいと思います。

木下氏: 生成される文章やコンテンツの正確性・安全性も確認すべき点ですね。本当に正しい情報なのか、という懸念に対してはやはりまだ人間の目によるチェックが必要だと思いますし、画像や動画のコンテンツに関しては著作権にも気を配る必要があります。
まずは自治体としてどんな課題があって、どう解決したいかをはっきり示した上で、取り扱いガイドラインの策定と、それに並行してAIに関する職員研修なども実施していく必要があるのではないでしょうか。

齊藤氏: 情報の流出を心配せずに、安心して使える環境を構築できるベンダ(事業者)を選定できるように、ネットワークと提供サービスの仕組みについても職員がよく理解しておく必要がありますね。

生成AI導入に向けて検証すべきポイント

ここまで、現場の感覚を知るリアルな視点から、生成AIの具体的な活用方法や検討すべきポイントをお伝えしてきました。生成AIには、情報の正確性や流出のリスクといった課題はありつつも、自治体業務の効率化において多くの可能性を秘めていることがご理解いただけたのではないでしょうか。

最後に、これから導入を検討したい、実証を始めたい、とお考えの自治体職員の皆さまに、生成AIの導入にむけて検討すべきポイントを整理してみました。

<生成AI導入にむけた検討ポイント>

セキュリティ(安全性)
個人情報や機密情報の取り扱いに注意し、十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。
事実確認の体制
AIによる判断・回答に誤った情報が含まれたり、作成物が法令に触れたりする可能性があり、その結果に基づいた意思決定が間違ってしまうことがあるため、事実確認の体制を整える必要があります。
コスト
(費用対効果)
上記2つの課題をクリアしつつ生成AIを活用するには、相応の費用が発生します。初期導入と保守・運用を考慮し、コストに見合った成果を上げられるか、検証が必要となります。
人材育成
生成AIを正しく、かつ効果的に活用するには、職員への教育が必要となります。

現状そもそも何が課題なのか、生成AIを活用することでその課題にどうアプローチできるのか、導入に向けて何をクリアすべきかなど、状況の整理にぜひ上記検討ポイントをご活用ください!
本記事が多くの自治体の課題解決にむけた一助となることを願っています。生成AI導入検討に関してのご相談はこちらからご連絡ください。

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ビジネスブログ「 Future Stride」編集チーム
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