非化石証書とは? 実質再エネ化を実現するために企業が知っておくべき基礎知識と活用法

2025年3月31日掲載

非化石証書とは? 実質再エネ化を実現するために企業が知っておくべき基礎知識と活用法

近年、環境問題への関心が高まる中、企業活動においても再生可能エネルギーなどの持続可能なエネルギーの利用が求められるようになっています。その中で「非化石証書」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、その具体的な内容や役割については、まだ十分に知られていないかもしれません。今回は、非化石証書とは何か、企業が活用するメリットについて、分かりやすく解説します。

目次

非化石証書とは?

非化石証書とは、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料を使わずに発電された電気の環境価値(二酸化炭素を排出しない環境に優しい方法で作られた電気であるという付加価値のこと)を証明する証書のことです。
具体的には、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーと、原子力を含む非化石エネルギーによって発電された電気は、その環境価値を電力市場で証書として切り離して取引できます。
企業や団体が非化石証書を購入することで、自社が使用する電力が非化石エネルギー由来であることを主張できます。この証書を活用することで、電力の環境価値を取引し、自社の環境貢献度を証明することが可能です。

非化石証書とは

非化石証書が生まれた背景とその目的

地球温暖化や気候変動の深刻化に伴い、CO2排出削減が世界的な課題となり、日本も2050年にカーボンニュートラルの達成、すなわち温室効果ガスの実質的な排出をゼロにすることを目指しています。そのため、2030年、2035年、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ46%、60%、73%削減することを目標としています。
しかし、電力は同じ電線を通じて供給されるため、消費者が使用する電力のエネルギー源を特定するのは困難で、企業や消費者が非化石エネルギーを選択的に利用することが難しい状況でした。そこで、非化石エネルギーの環境価値を証書化し取引可能にする「非化石証書」制度が導入されました。これにより、環境に優しいエネルギーを積極的に選択・利用できるようになりました。
非化石証書の目的は、非化石エネルギーの利用を促進し、CO2排出削減の目標達成に貢献することにあります。

非化石証書の種類

非化石証書には、発電方法や認定内容により主に以下の3種類があります。

①FIT非化石証書
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)によって発電された再生可能エネルギー由来の電力(主に太陽光、風力、小規模水力、バイオマス、地熱など)に対して発行される非化石証書です。「非化石性」や「CO2フリー」の環境価値を証明するために発行されます。

②非FIT非化石証書(再エネ指定あり
日本の電力市場において、FIT制度を利用せずに発電された再生可能エネルギーに対して発行される証書です。再エネ指定があるため、この証書を取得すると自社が再生可能エネルギーを使用していることや二酸化炭素排出削減への貢献を明確に示せます。

③非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
再生可能エネルギー以外の非化石エネルギー、主に原子力発電などに対して発行される証書です。CO2を排出しないエネルギー源として位置付けられています。再エネ指定がないため、環境への貢献度や再エネ利用のアピールには適していない点に注意が必要です。

非化石証書の種類

資源エネルギー庁「非化石価値取引について」(2024年2月7日)をもとに当社にて作成

トラッキング付き非化石証書とは?~2024年度変更点あり~

トラッキング付き非化石証書は、発電された電力の詳細な情報が付加された証書です。2024年度から上で述べたFIT非化石証書、非FIT非化石証書のすべての非化石価値でトラッキングが開始になりました。

具体的には、発電方法、発電所名、発電所の所在地、運転開始後15年未満か否かの情報などが含まれます。これにより、企業はどのような非化石エネルギーを利用しているのかを示すことができます。

特にRE100などの国際的な環境イニシアチブに参加する場合、トラッキング付き非化石証書の利用が必須となります。RE100は、企業が事業運営に使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すグローバルな取り組みです。トラッキング付き非化石証書を活用することで、使用する再生可能エネルギーの由来を明確に証明でき、RE100の基準を満たすことができます。

企業が非化石証書を利用するメリットと効果

非化石証書を活用することで、企業は環境への取り組みを強化し、社会的な信頼性を高めることができます。

メリット① 環境目標の達成
CO2排出量の削減目標を掲げる企業にとって、非化石証書の利用により、新たな発電設備への投資を必要せずにCO2排出量を削減することが可能であり、効果を具体的に表す手段となります。

メリット②ブランドイメージの向上
環境配慮型の企業活動は、消費者や取引先からの評価を高め、ブランド価値の向上につながります。

メリット③投資家からの評価向上
ESG投資の観点から、環境への取り組みを積極的に行う企業は投資家からの評価が高まります。

※企業の環境(Environment)、社会(Social)、およびガバナンス(Governance)に関する取り組みを評価し、それらを投資判断に積極的に取り入れる投資手法のこと。

メリット④市場競争力の強化
環境意識の高い市場において、競合他社との差別化を図ることができます。

これらのメリットを享受することで、企業は持続可能なビジネスモデルを構築し、中長期的な発展につなげることができます。

また、テナントに入居している企業でも非化石証書を購入することで再エネ化を実現できる点もメリットです。実際に導入いただいているお客さまからも効果について以下の声をいただいています。
「テナント契約のため、電力契約を自由に決められず、実質再エネ導入がオーナー判断でしたが、非化石証書のみの購入により、テナント契約の電力についても実質再エネ化が実現しました」

非化石証書の取得方法と導入時の注意点

非化石証書を取得するためには、電力小売事業者を通じて購入する方法が一般的です。契約している電力小売事業者に非化石証書付きの電力プランがあるか確認し、必要に応じて契約内容を変更します。また、直接JEPXで証書を購入することも可能ですが、手続きや専門知識が必要となるため、専門の事業者に相談することが望ましいでしょう。

導入時の主な注意点

①購入タイミングの考慮
取引は主に日本卸電力取引所(JEPX)の非化石価値取引市場で
年4回(2月、5月、8月、11月)オークション形式で売買が行われるため、
計画的な購入が必要です。

②価格の考慮

非化石証書の購入には追加のコストが発生します。
需要と供給に応じて価格が変動する点に注意が必要です。

③証書の適切な管理

取得した非化石証書は報告や開示の際に必要となるため、
適切に管理することが重要です。

④最新情報の確認

制度や市場価格は変動する可能性があるため、
最新の情報を常に確認し、適切な対応を行う必要があります。

まとめ~非化石証書を活用して持続可能なビジネスへ~

非化石証書は、企業が環境への取り組みを具体的に示すための有効な手段です。非化石エネルギーの利用を推進し、持続可能な社会の実現に貢献することで、企業自身の成長にもつながります。環境問題への対応が求められる現代において、非化石証書の活用は企業戦略の一環として検討する価値があると言えるでしょう。ぜひ、この機会に非化石証書の活用を踏まえたビジネス戦略を考えてみてはいかがでしょうか。

また、再生可能エネルギーの導入や脱炭素への取り組みを具体的に検討する際、「何から始めればいいのか分からない」「コストや工数がどれほどかかるのか不安」「取り組む時間やリソースが足りない」とお悩みではありませんか?
ソフトバンクでは、非化石証書代理購入サービスの提供や、お客さまのニーズに沿った再生可能エネルギー導入の支援をしています。ぜひサービスページもご覧いただきお気軽にお問い合わせください。

関連資料

tag
pg16721
displayCount
1

関連サービス

関連セミナー・イベント

Future Stride
ビジネスブログ「 Future Stride」編集チーム

ビジネスブログ「 Future Stride」では、ビジネスの「今」と「未来」を発信します。

DXや業務改革をはじめとしたみなさまのビジネスに「今」すぐ役立つ最新トレンドを伝えるほか、最先端の技術を用いて「未来」を「今」に引き寄せるさまざまな取り組みにフォーカスを当てることで、すでに到来しつつある新しいビジネスの姿を映し出していきます。

同じカテゴリーの記事をみる

Tag
オペレーション最適化
Display
part
/common/fragments/sidebar