PBLとは? 産学連携で広がる大学教育-関西学院大学事例

2025年7月29日掲載

PBLとは? 産学連携で広がる大学教育-関西学院大学事例

近年、デジタル化やグローバル化の進展により、社会課題はより複雑で多面的になっています。そんな中、求められるのは、知識を持つだけではなく「自ら課題を見つけ、考え、行動し、解決する力」です。

この力を育てる教育手法として、今、注目されているのが「PBL(Project-Based Learning/課題解決型学習)」です。教育現場ではもちろん、企業や自治体と連携して「学びを社会につなげる」取り組みとして広がっています。

本記事では、PBLとは何か、その特長と企業にとっての意義、そしてソフトバンクが実際に関西学院大学と取り組む授業事例を通じて、その可能性について分かりやすく解説します。

目次

PBLとは

PBLとは「Project-Based Learning」の略で、日本語では「課題解決型学習」と呼ばれます。学生が実社会に近い課題やテーマに対して、チームでリサーチを行い、仮説を立て、アイデアを出し、最終的な解決策を提案する。そうした一連の学びのプロセスを体験する教育手法 です。

特徴的なのは、「正解がひとつではない」課題に取り組む事。学生は知識だけでなく、思考力や行動力、対話力など、社会で必要とされる力を総合的に育てる事ができます。

アクティブラーニングとの違い

PBLはアクティブラーニング(能動的学習)の一形態ですが、両者には明確な違いがあります。アクティブラーニングは、グループディスカッションや反転授業、プレゼンテーションなど、学生が主体的に学ぶすべての手法を指します。

一方、PBLは「プロジェクト」を中心とした学習であり、「実社会の課題」に対して解決策を導き出すという明確な目的を持っています。学びのゴールが現実世界と強く結びついている点が、ほかの学習手法との最大の違いです。

項目
アクティブラーニング
PBL(課題解決型学習)
学習の形式
活動中心の授業(対話・思考・協働)
課題解決型のプロジェクト遂行が中心
目的
主体的な学び、理解の深化
実社会的な課題への探求・問題解決力の育成
期間・規模
授業内の短期活動(1コマ~数回)
中長期(数週間~)の継続的プロジェクト
教師の役割
ファシリテーターとして学習を促す
コーチとしてプロジェクト全体を支援
評価方法
活動への参加、振り返り、発表など
成果物とプロセスの両面を評価

PBLの特長とメリット

PBLには、大学・学生・企業それぞれにとって多様なメリットがあります。

大学にとっては、教育の質を高める実践的な学びの機会であり、地域や企業との連携によって、社会とつながる教育の基盤を築く事ができます。一方、学生にとっては、チームでの議論や現地調査などを通して、主体性・協働性・課題解決力を自然に身につける機会となります。また企業にとっては、Z世代の視点や柔軟な発想に触れる事ができ、次世代との接点づくりや、自社の社会的価値の発信にもつながります。

このように、PBLは、大学にとっては教育の質を高める実践的な学びの場となり、学生には主体性や課題解決力を育む機会を、企業には次世代との接点づくりや新たな気づきをもたらします。三者がそれぞれの立場で学び合い、社会とつながる価値あるプラットフォームと言えるでしょう。

現場レポート:関西学院大学 × ソフトバンクのPBL授業

2025年春学期、ソフトバンクは関西学院大学の「PBL特別演習014(企業と挑む『情報化社会における課題』)」において、協働パートナーとして授業に参画しました。

全14回のうち第2回では、ソフトバンクが企業紹介を実施し、学生が社会課題を設定する際の参考となるよう、弊社が掲げる「社会課題に、アンサーを。」というメッセージや、実際の取り組み事例について紹介しました。

その後の授業でも、質疑応答や学生のアウトプットに対するコメントを通じて、継続的に学生と並走しながら授業に関わりました。

授業の様子 授業の様子

教員インタビュー:向井 光太郎 准教授(ハンズオン・ラーニングセンター)

「私たちは課題や問題を提示された際、必ずしも具体策を検討するわけではないという、独自のスタンスを持っています。我々人間は、ある視点や考え方にとどまって考えること、じっくり目を向けて考える時間を持ったり、具体策にアクションすることはなかなかできていません。

例えば、ゲレンデのリフト終点駅で、スキー板やボードをいったん脱いで、その場でじっくり考える事に時間をかけてみる事はないでしょうか。後ろに並ぶ早く滑りたい人にとっては『寒いなぁ・・・なんでそこに座るの?早く滑りたいのに』とじらしてしまう事もあるでしょう。しかし、その時間をとる事で、滑るためにリフトに座っていただけでは見えなかったコースやレーンの様子がたくさん見えてくるはずです。新しい世界が見える事できっと楽しい気持ちになることでしょう。このように、その場でしっかり考えを重ねていく事で、自ら課題を社会に示し、本当の問題を浮かび上がらせるのです。

PBL授業を通してして、我々は学生の方々にその実感、手応えを感じてもらいながら、学生の皆さんのアイデアとソフトバンクの皆さんが持つ(持とうとしている)知識や技術をミックスして、社会に光をもたらしてもらいたいと強く願っています。そんなトレーニングをみんなで積んでいる教室がPBL特別演習です。ソフトバンクの皆さんがかかげる『社会課題に、アンサーを。』を私たちの教室で解釈しているものと言えるでしょう」

学生インタビュー

授業の中でソフトバンクの取り組みを聞いた学生たちからは、多くの気づきと驚き、そして新たな関心が寄せられました。

「この授業で一番印象に残っているのは『課題設定』です。スキー場で“リフトを上って下る”という向井先生の例えが本当にしっくりきて、“すぐに見える課題”ではなく、“本質的な課題”を掘り下げていく事の大切さを実感しました。焦らず立ち止まることで、自分の視野が広がった気がします。既存の枠にとらわれず多角的に物事を捉えたいと意識するきっかけになりました」

「ソフトバンクの講義で聞いた『社会課題に、アンサーを。』という言葉が、授業を通してだんだん自分に向けられた問いのように感じられるようになりました。担当の方がいつも真摯に応えてくださって、“テクノロジーで人を幸せにする仕事”って、思っていたよりずっとリアルなんだと気づかされました」

「最初はソフトバンクに“通信会社”のイメージしかなかったんですが、LINEやPayPay、自動運転、スマホ教室まで…すごく幅広くて驚きました。特に、デジタルデバイドや地方創生など、自分の家族や地元の暮らしに直結する話も多くて、社会課題って本当に身近なんだと実感しました」

学生達のアウトプット 学生達のアウトプット

ソフトバンク スマートキャンパス推進室 担当コメント

「正直、最初は“学生に何を話せばいいのか…”と少し緊張しました。でも実際に授業に参加して高齢者のスマホ教室の話や、過疎化が進んでいる地域での新たな移動手段の確保などの話をすると驚きと共感があり、地元の祖母が正にそのような状況で過ごしているなど高齢化を始めとする社会課題を自分ごととして認識している事に驚きました。皆さんの視点がとても柔軟で、自分たちが抱えるリアルな社会課題にも真剣に向き合ってくれているのが伝わってきて、むしろこちらが刺激を受けました」

「今回のようなPBL型の授業は、ほかの大学でも再現できる取り組みだと実感しています。ソフトバンクとしても、単なる“話し手”ではなく、学生と一緒に考える“共創のパートナー”として、今後もこうした場に関わっていきたいと考えています」

今後に向けて

PBLを通じて、学生が社会課題に向き合い、企業とともに学び合う実践の場が生まれています。こうした取り組みは、大学の中にある“学び”と、社会にある“問い”を結びつける貴重な接点です。ソフトバンクは、今回のようなPBLに限らず、全国の大学と多様な連携を重ねながら、スマートキャンパスや大学DX、キャリア支援、地域連携、デジタル人材育成といった幅広い領域で、教育の現場に伴走していきたいと考えています。

教職員や学生の皆さまと信頼関係を築きながら、“次の学び”をともに創り出すパートナーとして、これからも教育と社会をつなぐ取り組みを続けていきます。

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