OpenAI CEO & Co-founder Sam Altmanとの対談 孫正義 特別講演レポート

2025年8月26日掲載

OpenAI CEO & Co-founder Sam Altmanとの対談   孫正義 特別講演レポート

ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2025」が、7月16日に開催されました(今年の臨場開催は招待制)。今年は「AX、到来。ーテクノロジーの結集で、ビジネスが加速するー」をテーマに、講演やセッションが行われました。

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員、ソフトバンク株式会社 創業者 取締役 孫正義の特別講演では、前半にOpenAI CEO & Co-founder Sam Altmanとの対談、後半にプレゼンテーションが行われました。

この記事では、前半の対談内容をレポートします。(本記事は英語で実施した対談を日本語翻訳し再編集したものです。内容および解釈については原⽂が優先されます。)

目次
孫正義とSam Altmanの対談の様子

エージェント時代の到来とAIの進化

孫正義(以下、孫):AIエージェントの最新の動きについて、どう思いますか?

Sam Altman(以下、Sam):まず最初に、ここに呼んでくれてありがとう。あなたは最も偉大なビジョナリーの一人であり、私たちの最も深く、親しいパートナーであり友人の一人です。今日はAIエージェントについて話しますが、そもそもあなたが、私たちやコンピュート(計算能力)、AIに確信を持って支えてくれなければ、私たちは今こうしてこの話をすることすらできなかったと思います。

さて、初期のChatGPTは、「どんな質問にも答えてくれるAI」でした。そして今、AIエージェントが登場したことで、「あなたのために何かをしてくれるAI」になりました。詩を読んだり、調査レポートを作成したり、ナレッジワークを代行したり、インターネットを使ったりすることができます。これは本当に驚くべき進歩です。自然言語でコンピュータに曖昧で複雑なタスクを頼むと、それを理解し実行してくれます。これが世界にもたらす生産性と可能性は、非常に大きいと思います。

Stargate Projectと計算資源の未来

孫: あなたと1月に発表したStargate Projectについてお話しましょう。Stargate Projectについてのあなたのビジョンを教えてください。

Sam: これは私たちが共有しているビジョンで、本当に素晴らしいパートナーシップです。

私たちは、世界で最も強力で効率的なコンピュータをどう構築するかを模索しています。私たちは懸命に取り組んでおり、プロジェクトは順調に進んでいます。いくつかの大規模なプロジェクトを一緒に進めています。初期の目標は10ギガワットのコンピュートですが、それがうまくいけば、さらに大幅に拡張する予定です。

孫: 一部の人はこれ以上コンピュートを増やしてもAIの大きな成長にはつながらない、そのためそんなに多くのコンピュートは必要なくなると言っています。しかし、あなたはこれからもコンピュータのスケールを拡大しようとしていますね。

Sam:コンピュータのスケールを拡大し続ける理由は2つあります。1つは、スケーリング則はこれからも長く続くということです。私たちは、より優れたモデルの作成を可能にする素晴らしく新しい研究を目にしています。もう1つは、AIのコストが下がるにつれて、より多くの人がAIを使いたくなるということです。例えば、AIのコストが10分の1になれば、人々は30倍の量を使いたくなる、という感じです。世界におけるインテリジェンスの需要は非常に大きく、この先さらに増していくと感じています。

次世代インターフェースとロボティクス、人間の仕事

孫: では、AIのインターフェースについてはどう思いますか? これまではキーボード、そしてスマートフォンでしたが、次は何でしょうか?

Sam: おっしゃる通り、これまでに起きた大規模なコンピュータインターフェースの革命は2つしかありません。キーボード、マウス、モニターと、タッチスクリーン付きのスマートフォンです。

しかし今、私たちには人間のことを深く理解し、複雑な作業を行い、文脈の変化を理解し、我々の代わりに行動してくれるAIがあります。人とコミュニケーションをとったり、情報を取捨選択したりすることもできます。そのため、まったく新たなインターフェースが生まれると考えています。今のハードウェアはそのようなインタラクションに適していません。

孫: AIは5年後、10年後、30年後はどうなっていると思いますか? 私は、5年後には間違いなくAGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)は達成されていると思います。

Sam: 5年後には、AGIを達成していると思います。今できないことができるようになっているでしょう。10年後には、科学の進歩や経済成長のスピードが今とはまったく違っていて、自己改善のサイクルがあらゆる分野で本格化していると考えます。30年後については私にも分かりません。それを想像するのは難しすぎます。

孫: あなたにとっても難しいのですね。でも、30年後には、ASI(Artificial Super Intelligence、人工超知能)にできないことを想像すること自体が困難になっているでしょう。それがロボットとつながれば、物を動かすことも、生産することも可能になります。私もあなたも、ロボティクスの未来を信じていますよね?

Sam: 非常にワクワクしています。ロボティクスは、まさに自己改善サイクルの1つです。数百万台のロボットが、数十億台のロボットを作れるようになります。大量のロボットがあれば、世界に物質的な豊かさを生み出すことができると考えています。それは人類にとって良いことです。

孫: そうですね。ASIと結びついたロボットがいれば、あらゆる知的活動が可能になり、大量生産も長期生産も可能になる。では、人間の仕事はどうなりますか? 30年後も私たちは懸命に働いているのでしょうか?

Sam: 仕事の内容は大きく変わっているでしょう。今私たちがしている仕事も、100年前や500年前の人たちが想像することはできませんでした。そして、彼らに今の私たちの仕事を見せたとしても、理解できなかったと思います。

未来も同じです。新しい仕事や意味、情熱が生まれるでしょう。今の私たちにはそれが想像できなくても、未来の人たちにとっては重要で意味のある仕事になると思います。

孫: つまり、新しい種類の仕事や新しいワクワクすることは、今後も生まれ続けるということですね?

Sam: はい、その通りです。

AIによる産業革新と創造性の再定義

孫: 医療分野はどうでしょうか? AIの活用によって、多くの進歩があると思いますか?

Sam: それこそ、私が最もワクワクしている分野の1つです。本当に驚くべき、素晴らしい進歩が起きると思っています。私たちは皆、もっと健康になり、多くの病気を素早く治療・管理できるようになるでしょう。

孫: 教育についてはどうですか? 一部の人は、「子どもにAIを使わせないでほしい」と言っていますし、実際、多くの教師たちは生成AIの使用を禁止しています。これは子どもたちの教育や私たちにとって、良いことですか、それとも悪いことでしょうか?

Sam: まず第一に、私たちはAIが身近にある世界に生きています。例えAIが学習にとってマイナスな面を持っていたとしても、子どもたちはAIがあふれる世界で育っていくわけです。だから、子どもたちはこのツールを使えるようになる必要がありますし、AIが存在しないかのように振る舞うのは大きな間違いだと思います。

さらに、必要なスキル自体が変化していくでしょうし、学校で子どもたちがやるべきことも変わっていくと思います。全員がもっと有能になり、賢くなり、より多くのことができるようになるでしょう。期待値も上がりますが、人間が生み出せる成果もそれ以上に増えるはずです。そして、私たちは新しい考え方を習得することになるでしょう。

例えば、私が学生だった頃にGoogleが登場しました。当時、教師たちは「学生たちはもう歴史の暗記をしなくなるのでは」と神経質になっていました。正直言って、私の世代は10歳上の世代よりも、歴史の事実を暗記していないかもしれません。でも、Googleで瞬時に情報を得られることで、私は自分の頭脳をもっと高度な問題を考えるために使えるようになったと思っています。

電卓が出たときも同じです。人々は「もう対数表や計算尺を使わなくなる」と心配しましたが、結果的にはもっと高度な数学をより早く学べるようになったのです。同じことがAIにも当てはまると思います。ただし教育のやり方や評価方法は、確実に変えていく必要があります。

孫: 発明についてはどうでしょう? 人類はこれまで多くの技術を発明してきました。ASIによって新しい物質、新しい物理法則、驚異的な製品などが生まれると思いますか?

Sam: ぜひ、そうなってほしいと思っています。私は、科学の進歩が人類の進歩の中で最も重要な要素だと考えています。もしAIが、技術の発明を早めてくれるなら、それは素晴らしいことです。そういう未来を歓迎すべきだと思います。

孫: 素晴らしい。さて、あなたには子どもがいますね。彼らにAIを一日中使うよう勧めますか?

Sam: はい。でも、小さな子どもには勧めません。彼らには、外を走り回ったり、遊んだりするよう勧めます。私は、小さい子どもはアナログな世界でたくさん身体を動かすことがとても大切だと思っています。

でも、子どもたちがある程度成長したら、AIと一緒に学ぶことを強く勧めたいですね。

Cristal intelligenceによる企業変革とソフトバンクグループの挑戦

孫: ところで、今日ここにはたくさんの企業幹部の皆さんがいらっしゃいます。数カ月前に私たちは「Cristal intelligence(クリスタル・インテリジェンス)」を発表しましたね。

Sam: はい。とてもワクワクしています。随分前にあなたが私に言ってくれたことがあります。「このコンシューマー向けAIも素晴らしいが、本当にAIが変革をもたらすのはエンタープライズ(企業)だ」と。

ソフトバンクグループは、私たちにとって最大級のエンタープライズパートナーの1つになりました。非常に光栄なことです。そして、ソフトバンクグループが最初の大規模エンタープライズ顧客になってくれたことを、心から誇りに思っています。

また、あなたが発案してくれたのが、これをプロダクト化してほかの企業にも「パーソナル・インテリジェンス」として提供しようというアイデアでした。ですので、この場にいらっしゃる企業のCEOの皆さんとお話しできることを楽しみにしています。ソフトバンクグループとともに進めてきた取り組みを土台に、AIによって企業のあり方を変革し、大きな価値を生み出せると考えるとワクワクします。

孫: 昨日私は、ソフトバンクグループ内でのCristal intelligenceの進捗報告を受けました。ソフトバンクグループ内で「10億 AI agents 」を超える規模を目指していますが、その進展に非常に満足しています。

Sam: 素晴らしいですね。それを聞けて本当にうれしいです。

孫: はい。これは本当にワクワクする素晴らしいパートナーシップです。これを一緒に大きく本気で進めていこうとあなたのチームにもお伝えください。

Sam: もちろんです。お招きいただき、ありがとうございました。

孫: ありがとう、Sam。

講演の内容をYouTubeで配信中

レポートではお伝えしきれなかった講演の様子を動画でご覧いただけます。ぜひご視聴ください。

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