【自治体DX事例】
津久見市が挑むスマートメーター活用による水道DX

2026年4月24日掲載

【自治体DX事例】 津久見市が挑むスマートメーター活用による水道DX

日本各地で進む水道インフラの老朽化と、自治体DXの必要性の高まり。それに加えて、人口減少に伴う深刻な「人手不足」は、今や地方自治体にとって待ったなしの課題となっています。特に、離島や山間部などのいわゆる「難検針地区」においては、定期的な検針業務の維持や異常時の迅速な対応が極めて困難になりつつあります。

こうした社会課題を解決し、持続可能なインフラ運営を実現するための切り札として期待を集めているのが「スマートメーター」の導入です。その運用を支える通信基盤として、ソフトバンクのIoT通信も活用されています。

今回は、過疎化や地理的制約といった課題に直面する中で、スマートメーターの導入に踏み切った大分県津久見市(つくみし)の石川市長と上下水道課の豊田氏、スマートメーターと配信システム「アイチクラウド」を提供する愛知時計電機株式会社(以下、愛知時計電機)の鳥居氏にお話をうかがいました。

自治体が抱えるリアルな課題から、導入決定の裏側、現場にもたらされた想定以上の付加価値、そしてこれからのインフラを支えるIoT通信の重要性まで、現場の生の声をお届けします。

目次

お話をうかがった方

大分県 津久見市 市長 石川 正史 氏
大分県 津久見市 市長
石川 正史 氏
大分県 津久見市 上下水道課 豊田 将也 氏
大分県 津久見市 上下水道課
豊田 将也 氏
愛知時計電機株式会社 福岡支店 水道管理営業課 鳥居 花凪 氏
愛知時計電機株式会社
福岡支店 水道関連営業課
鳥居 花凪 氏

地理的制約と人手不足がもたらす水道管理の課題

──大分県津久見市の紹介をお願いします。

石川市長:津久見市は大分県の南部に位置する海沿いの港町です。人口は約1万5,000人で、人口規模としては九州の市の中では3番目、全国792市の中でも13番目に少ないですが、その分、行政と市民の距離が非常に近い「スモール・ベスト」なまちであると感じています」

今回、スマート水道メーターが先行導入されたのは、そんな津久見市の中でも特殊な地理的条件を持つ、離島の「保戸島(ほとじま)地区」と、半島部にある「四浦(ようら)東地区」の簡易水道区域です。

※ 簡易水道:給水人口5,000人以下の小規模な水道施設

──保戸島はどのような島でしょうか。

石川市長:「保戸島地区は、マグロの遠洋漁業の一大拠点として栄えた島です。平地が限られているために3〜4階建ての民家が密集して建てられています。海から見ると「東洋のナポリ」や「東洋のアマルフィ」とも呼ばれる独特の美しい景観が残っており、現在は約307世帯、497人が居住しています」

保戸島地区

──四浦東地区はどのような場所でしょうか。

石川市長:「四浦東地区は、風光明媚な半島部で、九州で最も早く咲く河津桜の名所として知られています。開花時期の約3週間には、市の人口の何倍にもあたる6万人以上の観光客が訪れる人気エリアであり、現在は約117世帯、165人が暮らしています」

四浦東地区の河津桜

──津久見市の水道インフラでは、どのような課題に直面していたのでしょうか。

豊田氏:「私たち上下水道課は、市内全域の水道施設の維持管理や料金請求などを担っています。保戸島や四浦東地区のような離島・半島部は、市内中心部から離れている上、過疎化や高齢化が進んでいます。人口が減っても生活インフラとしての『水の安定供給責任』は変わりませんが、検針業務を担う方の高齢化が進み、後継者が見つからないという『担い手不足』が非常に深刻になっていました」

石川市長:「実際に別のエリアで検針員が退職された際、新たな後継者が見つからず、市役所の職員でカバーしていた時期がありました。しかし、職員数にも限界があり、コロナやインフルエンザなどによる欠員対応も難しい状況です。
加えて、離島である保戸島や半島部で同じことが起これば、天候不良で船が欠航した際などに検針時期が大きくずれてしまい、市民の皆さまに不均一な料金請求をしてしまう恐れがあります。また緊急時には、市役所からすぐ現場へ駆けつけるのが難しいため、地理的制約による『緊急対応の遅れ』も大きな課題でした」

インタビューに答える石川市長

インタビューに答える石川市長

スマートメーター「アイチクラウド」と、それを支えるソフトバンクのIoT通信基盤

そうした「検針員不足」と「地理的制約」という地方自治体特有の深い課題を解決するために採用されたのが、愛知時計電機のスマートメーターとデータ配信サービスの「アイチクラウド」でした。

鳥居氏:「愛知時計電機は一般家庭用の水道メーターやガスメーターなどを製造している精密機器メーカーです。最近では、社会課題の解決に寄与する『スマートメーター化』のご提案に非常に力を入れています。今回、津久見市様に導入いただいた『アイチクラウド』は、各家庭に設置されたスマート水道メーターからの検針データを、ソフトバンクのIoT回線を介して自動的にクラウド上へ収集するシステムです。これまで人が現地に足を運んでいた検針業務を『自動』かつ『遠隔』で行うことができ、大幅な業務効率化につながります」

アイチクラウドとは

この「アイチクラウド」の通信インフラとして、ソフトバンクのIoTプラットフォームが採用されています。ソフトバンクの携帯電話ネットワークを利用したIoT通信基盤は、自治体DXを支える重要なインフラとして、全国のさまざまな社会実装を支えています。

鳥居氏:「スマートメーターにおいて、検針値のデータをクラウドへ送る通信ネットワークは、システムを支える極めて重要なインフラです。私たちが扱うのは全国の水道局様のデータであり、市民の皆さまの生活インフラに関わる重要な情報です。従って、通信プラットフォームを選定するにあたっては、日本全国をカバーできる『人口カバー率の高さ』はもちろんのこと、『過酷な環境下でも途切れない通信の安定性』、そして『データを安全に送受信できる強固なセキュリティ』を最も重視しました。これらの高いレベルで満たしていたのが、ソフトバンクのIoTプラットフォームでした」

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ソフトバンクのIoT回線サービス
通信モジュール

離島ならではの「電波不安」

── 津久見市様にとって、新しい技術であるスマートメーターの導入は大きな決断だったと思います。導入の決め手は何だったのでしょうか。

豊田氏:「毎日自動でデータが上がってくるため、検針のために現地へ行く必要がなくなり、検針日が統一されて料金請求が標準化される点が非常に魅力的でした。ネックとなったのは『コスト』でしたが、国の地方創生交付金(旧デジ田交付金)にエントリーし、内示を受けられたことが強力な後押しとなりました。2025年4月に内示を受け、秋から工事に着手し、2025年内には設置を完了するという非常にスピーディーなプロジェクトでした」

インタビューに答える豊田氏

インタビューに答える豊田氏

── 離島や半島部となると、「本当に電波が届くのか?」という通信環境の不安があったかと思います。

豊田氏:「まさに一番の懸念事項でした。しかし、愛知時計電機の方が何度も現地に足を運んでくださり、一緒に島内を回って緻密な電波環境の調査を行ってくれました」

鳥居氏:「離島や山間部では、場所によって電波環境が不安定になるケースが想定されます。そのため弊社では、導入前に必ずスマートメーターがつながるかどうか事前の電波調査を実施し、現地の通信状況を正確に把握するようにしています。地形の特性などを踏まえ、最適な通信方法と設置方法を選定することで、自治体様に『これならデータが取得できる』という安心感を持っていただくことを第一に考えています」

実際スマートメーター設置の様子

実際のスマートメーター設置の様子

導入がもたらした効果。大規模な漏水の早期発見とデータの付加価値

── 実際に運用を開始されてみて、どのような効果や変化を感じていらっしゃいますか。

豊田氏:「まだ導入して間もないですが、すでに現場の職員から『すごいね』との声が上がっています。
実は導入直後、四浦東地区で普段はほとんど水を使われていない水栓から、異常な水量が流れ続けていることが管理画面上で検知されたのです。すぐに現場を確認したところ、大規模な漏水が発生していることが判明しました。これまでの1カ月に1回の現地検針であれば、発見が大幅に遅れていたはずです。リアルタイムにデータが見えることの威力を目の当たりにしました」

アイチクラウド画面イメージ

アイチクラウド画面イメージ

鳥居氏:「そうしたお声をいただけるのは非常にうれしいですね。スマートメーターというと『検針業務の人件費削減』に目が行きがちですが、豊田様がおっしゃった漏水の早期発見や老朽化した配管の補修優先度の決定、さらに有収率(供給した水量のうち料金として回収できた割合)の向上といった水道経営改善効果まで含めて考えると、その価値は水道事業全体の高度化につながるものになります。
1時間ごとのデータが毎日送信されることで、水道利用状況の可視化精度が一気に高まります。ほかの自治体様でも、クラウドのデータを遡って解析することで異常の原因究明に至ったケースがあります」

石川市長:「将来的な『高齢者の見守り』への活用にも大きな期待を寄せています。例えば『1日のうち、ある一定時間まったく水が使われていない』といったデータは、これまでなら分かり得なかった情報です。これを異常検知として捉えることで、過疎化が進む地域における安否確認の一助になるのではないかと考えています」

インタビューに答える鳥居氏

インタビューに答える鳥居氏

水道事業を持続可能にする「基盤整備」と機械・人の協働

── 最後に、全国で同じような課題を抱える自治体様・企業様へのメッセージをお願いいたします。

鳥居氏:「多くの事業体様とお話しする中で、『スマート化をやってみたいけれど、コストが…』というお悩みを必ず耳にします。弊社としては、単に製品を納入して終わるのではなく、お客さまが抱える問題に対してどのような寄り添った提案ができるかを常に考え、インフラ課題を共に解決するパートナーとして信頼される存在を目指してまいります」

豊田氏:「水道事業は、これから人口が減少し職員数も減っていく中で、いかにして『持続可能なもの』にしていくかが最大のテーマです。スマートメーターの導入は、業務効率化といった側面だけでなく、地域の安心・安全を確保し、水道事業そのものを未来へつなぐための『必要不可欠な基盤整備』の一つだと強く実感しています。いきなり市内全域への導入は難しくても、離島や半島部など、物理的に最も対応が困難な地域から順番に導入していくアプローチは非常に有効だと思います」

石川市長:「現在、行政においても各種DXやAIの活用が叫ばれていますが、私は単に『機械を導入すること』自体が目的化してはならないと考えています。大切なのは、機械やデジタルに任せられる部分はしっかりと任せ、それによって生み出された時間で、私たち職員が『より市民の方々に直接向き合い、血の通ったアナログな対応』をする時間を増やすことです。これこそが、機械と人間の正しい『協働』のあり方だと信じています。
今回のスマートメーターも、エリアを区切って段階的に小さな成功体験を積み重ねることで、水道DXは十分に実現できるという手応えを得ました。この取り組みによって、これまで手が届きにくかった地域の課題に対しても、よりきめ細やかなケアができる行政サービスを目指していきたいですね」

集合写真

おわりに

大分県津久見市と愛知時計電機が挑む水道インフラDXの事例は、日本の地方自治体が直面する「インフラの老朽化」と「深刻な人手不足」という共通課題に対し、地方自治体における水道DXおよび自治体DXの具体的な解決策のひとつを示すものでした。

単なる業務の自動化にとどまらず、漏水被害の最小化や高齢者の見守りといった「新たな付加価値」を生み出すスマートメーター。そして、その価値の根底には、全国の過酷な環境下でも安定してデータを送り続けるIoTプラットフォームの存在があります。

持続可能な地域社会の実現に向け、通信インフラの力は今後ますます重要になっていきます。インフラ課題に直面している自治体の皆さまにとって、本事例が未来を切り拓くヒントとなれば幸いです。

AIによる記事まとめ

この記事は、津久見市におけるスマートメーター活用による水道DXの取り組みについて扱っています。離島や半島部における検針員不足や地理的制約といった課題に対し、IoT通信を活用した遠隔検針(スマートメーター)を導入した経緯を解説します。さらに、漏水の早期発見やデータ活用による新たな価値創出、持続可能な水道事業に向けた段階的導入の重要性について具体的に述べています。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

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辻村昌美

ソフトバンクビジネスブログ編集チーム

辻村 昌美

ソフトバンクで新規事業立ち上げなどを経験後、法人向けマーケティングに従事。中小企業や既存のお客様向けマーケティングを担当し、2022年よりコンテンツ制作に携わる。
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