2040年「ASI Economy」への道筋。孫正義 特別講演レポート
2026年7月16日掲載
ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2026」が2026年7月14日に開催されました。今年は「- AX for Japan - 未来をつくる力が、ひとつになる場所。」をテーマに、さまざまな講演やセッションが行われました。ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫正義の特別講演では、「2040年のASI Economy」における未来の姿が、具体的な「期限」や「数字」をもって提示されました。本記事では、その講演内容をレポートします。
経営の本質は「ビジョンと戦略」にあり
講演の冒頭、孫は会場に集まった多くの企業の経営者や幹部に向けて強いメッセージを投げかけました。
「経営トップにとって一番大切なこと、それは『ビジョン』であり『戦略』です。いくら組織がまとまっていたとしても、進むべき方向を誤り、船が丘の上に上がってしまってはいけません。そして『たくさん』『すごく』という曖昧な形容詞ではなく、より鮮明なビジョンがなければ具体的な戦略は立てづらいのです。そこで今日は、『期限』と『数字』をもって、私なりのビジョンをお伝えしたいと思います」
孫が示した期限は今から約15年先となる「2040年」。この未来に向けて、ASI(Artificial Superintelligence)がもたらすエコノミー(以下、ASI Economy)がどれほどの規模になり、ASIがどういう形で社会へ実装されるのかについて、具体的なデータを交えて語り始めました。
孫は、1995年に始まったインターネット革命の歴史を振り返りながら、AI革命において、日本経済が同じ失敗を繰り返してはならないという強い危機感とともに、次のように述べました。
「インターネット革命が始まった当初、インターネットは『ビジネスモデルがない』『お金は稼げない』と非難されました。しかし今、世界の経済を引っ張るトップ企業のほとんどは、インターネットを本業とする会社であり、大きなキャッシュフローを生み出しています。インターネット革命のときも、最初の20年でほとんど勝負は決まりました。AI革命が始まってすでに数年が経ちました。今日は、2040年のAIの世界についての私なりの意見を、数字をもってコメントしたいと思います」
2040年のASI Economyがもたらす衝撃──世界GDPの20%(7,000兆円)の巨大市場
2040年に到来する「ASI Economy」の規模は、これまでのどのような産業革命をも遥かに凌駕するものになると孫は語ります。
「今から15年のうちに、世界全体のGDPの約20%がAIの世界に置き換わります。残り80%は今までの生活や産業とあまり変わりません。この20%という数字は、世界全体の年間GDPで言えば約7,000兆円になります。 仮に利益率が50%近くになれば、AIによって毎年約3,500兆円の利益が生まれ、その利益を担う企業が複数誕生することになります。これらの企業は、株式の時価総額で言えば、世界全体の約80%を占めるようになるのではないかと思います。時価総額は将来の利益の伸び率を伴ったものになるため、GDPに占める割合よりはるかに大きな存在感を持つことになります。
かつてインターネットは、世界全体のGDPのわずか1%である『広告』の領域を置き換えたに過ぎなかったのですが、GAFAMに代表されるような巨大な時価総額企業を生み出しました。しかし、今後AIが世界GDPの20%になったときの規模感は、従来のインターネット広告市場の比ではなく、桁違いに大きなものになるのです」
これほどの巨大な規模のビジネスが創出される未来を前にして、いまだに「AIはバブルか」と冷ややかに静観する風潮に対し、孫は疑問を呈しました。
「『AIはバブルか』というのは、とんでもない愚問です。『AIなんて』と言う人に限って、AIをほとんど使ったことがなく、それは飛行機に乗ったことがない人が飛行機を語り、自動車に乗ったことがない人が自動車を語るようなものです。インターネットの初期も、触ったことがない人が非難していました。私は朝起きて最初にAIに触れ、寝る直前までAIに触れています。日々使い倒しているからこそ、この『20%』という数字がいかに現実的であるかが確信できるのです」
100兆個のAIエージェントが常時稼働
現在、AIエージェントという言葉は急速に広まっています。孫は、2040年には、このAIエージェントが「100兆個」規模にまで拡大すると述べました。
「我々が行う業務は、大体10個から100個程度のタスクを繰り返すものが大半です。今後は、100兆個のAIエージェントが24時間休まずに動き合い、AIエージェント同士がコミュニケーションを図ります。今までは人間同士がコミュニケーションを取ることで社会や経済が回っていましたが、インテリジェンスのやりとりが『人間中心の世界』から『AIエージェント中心の世界』になるということです。『人間を超えて物事が進むわけがない』と言う人がいますが、とんでもない間違いです。AIエージェントが自らの判断で、自らアクションを起こしてコミュニケーションをしていくのです」
10億台のヒューマノイドが「労働の主役」に
AIエージェントの活動領域は、仮想空間だけには留まりません。物理的な世界へと展開することで、労働市場の構造そのものが一変すると孫は続けます。
「仮想空間に存在するAIエージェントが、ヒューマノイド(人型ロボット)に宿ったとしたらどうなるでしょうか。ロボットは自らの判断で物理世界で動いていき、自らほかのAIエージェントと会話をしながら稼働するようになります。そのようなロボットが地球上に『10億台』生まれると予測しています。24時間労働のロボットは人間に換算すると30億人に相当し、かつ人間よりもはるかに早く正確に作業ができるため、1体で10人分に近い仕事をこなすことになるでしょう。つまり、100億人相当分の仕事をするということです。ヒューマノイドは、人類の労働人口をはるかに超える仕事をこなす、労働の主役となるのです」
これらの100兆個のAIエージェントや10億台のヒューマノイドを支えるためには、インフラとエネルギーの変革が必要となります。孫は、2040年におけるAIデータセンターの消費電力量を「3TW(テラワット)」と見積もっており、AIデータセンターだけでより多くの電力が必要になることを示唆しました。
AIインフラへの投資対効果
2040年のAIインフラに必要な演算規模(Compute)とそれに伴う巨額の投資、そしてその投資対効果(ROI)について、孫は次のように続けます。
「現在の最先端チップであるNVIDIAのGB300は1基あたり約20 PFLOPS(ペタロップス)ですが、これを1,000基つなぐと20EFLOPS(1018:エクサフロップス)になります。単位はエクサからさらに、ゼタ(1021)、ヨタ(1024)、ロナ(1027)へと進み、2040年の3TWのAIデータセンターの世界では、ついに『クエッタ(1030)』の演算能力に達します」
このQFLOPS(クエッタフロップス)級の巨大なAIインフラを地球上に構築するためには、どれほどの投資が必要になるのか。孫はここで「年間5兆ドル」という数字を提示しました。
「年間5兆ドル(約800兆円)の投資が必要になると思っています。毎年800兆円と聞くと、多くの人は破綻していると言うでしょう。しかし、先ほど申し上げたように、2040年の世界GDPの20%をAIが占め、7,000兆円のGDPと3,500兆円の利益が生まれるのであれば、毎年800兆円の投資は十分に賄えます。経営として十分に成り立ちます。インフラを整備するにあたって、電力の確保や許認可を含めたさまざまな経営資源の用意に時間がかかるからこそ、15年先の未来を見据えなければなりません」
人類は「Super Human」として進化
このAIインフラを土台として、社会はどのような変革を迎えるのか。孫は人類の進化を振り返り、以下のように語ります。
「今からわずか100年間で、人類はこれまでの400万年をはるかに超える進化を遂げることになります。その原動力となるのが、地球上の生命誕生からバクテリアが繰り返してきた『自己増殖』と『自己進化』というたった2つのアルゴリズムです。AIエージェントがさらに次のAIエージェントを自ら生成し(自己増殖)、これを繰り返すことで自らを進化させていく(自己進化)。この2つのメカニズムが備われば、AIエージェントの数は百兆個に留まらず、数千兆個へと勝手に増大していきます。地球上の(知性の)頂点は、もはや人間ではなく超知性(ASI)へと移り変わります。これは良いか悪いかではなく、止められない現実なのです」
そして、孫は「AIが嫌いでそれを非難することは、自らの進化を拒絶することと同じだ」と強調します。
「人は、車によって速く移動できるようになり、飛行機によって高く飛べるようになりました。自身の手足の延長だったこのような過去の発明とは異なり、ASIによって初めて『頭脳の延長』が可能になります。超知性を身にまとい、自らを『Super Human』として進化させることが必要です。自分専用の優秀な分身(AIエージェント)を身近に置き、自らの経験や思考を学習させていけば、人間は自分の身体的な制約や労働から解放されます。
自分がゴルフや散歩、旅行を楽しんでいる間も、AIエージェントが夜中も休日も代わりに仕事をこなしてくれます。では、人間は何をするのか。自分が最もやりたいこと、最も感動し、興奮することに時間を使えば良いのです。ある人は陶芸、ある人は新しいビジネスの企画、ある人は家族との対話。そういうものに時間を使えば良いのです」
AIがもたらす価値の拡張
AIの価値は、日常の知的労働や肉体労働を代替するだけに留まりません。
「AIは個人のデータを解析し、あなたの残りの健康寿命を極めて高い確率で予測できるようになります。それだけでなく、パーソナライズされた高度な医療や遺伝子治療薬を開発し、健康寿命をさらに10年追加で延ばしてくれるようになるのです。余命をさらに10年、健康な状態で延ばせるとしたら、お金は惜しくないと思う人は数多くいるはずです。これこそが、AI時代において巨大な産業となり膨大な価値を生み出す源泉になるわけなのです」
そして未来の壮大なビジョンだけでなく、現場でもAIの実装は圧倒的なスピードで進んでいます。孫は「私が毎日使い倒している『ChatGPT 5.6』は、人間が行う多くの業務タスクの約99%で人間の専門家を上回っています」と紹介しました。
1万500件の脆弱性が示す現実
あらゆるものとAIが結びつき進化する一方で、AIがサイバー攻撃に悪用され、攻撃を高度化・自動化する可能性も指摘されています。
「これまでのサイバーアタックは人間が手で行っていましたが、現在はAIがアタックする武器や手法を作り、機関銃のように攻撃を仕掛ける世界になってきています。ソフトバンクは通信というライフラインを預かる立場として、相当真剣に対策をしています。それでも自社の何十億行というシステムコードに対し、AIによるサイバー攻撃テストを行った結果、実に『1万500件』の脆弱性(サイバー攻撃の穴)が検出されたのです。我々はすぐに脆弱性を埋めるパッチワーク作業を行いました」
この深刻な事態は、一企業の問題に留まりません。6月のPaaS(Patching as a Service:サイバーセキュリティー対策ソリューション)発表以来、ソフトバンクが63社を対象にシステムの脆弱性診断を実施したところ、脆弱性がゼロだった会社は1社もなく、全ての企業がサイバー攻撃の穴を抱えていたと述べました。
「この重大な危機に対し、我々はただちに防衛体制を取るべきだと判断し、サイバーアタックから日本を防御するための『1,000名規模の専門部隊』を作りました。この精鋭部隊をもって、まずは国内の重要インフラを担う企業3,000社のセキュリティを守り抜く体制に入ります」
強固なセキュリティを持たなければ、一瞬の攻撃で全てを失いかねない。この現実を直視し、防衛体制を整えることが求められています。
過去の常識をリセットし、未踏の未来へ
講演の締めくくりとして、孫は日本企業の経営者やリーダーたちに向けて、激変するASI Economyを生き抜くための新しい経営指標の提示と、リーダーシップの本質について熱く呼びかけました。
「今日お集まりの経営者の皆さんに、私は新しい指標を提案したいと思います。従来の『ROA(Return On Assets)』ではありません。『ROA(Return on AI)』です。AIに投資をした結果、生産性がどれだけ上がり、どの程度の収益価値を創出できたかを測る物差しです。ROAは短期間の物差しではなく、3年ほどのスパンで計算してください。その中で投資を超すリターンが来ると信じたならば、とことんやるべきです」
さらに孫は、「AIに仕事を奪われるのではない。AIを使う企業に、AIを使わない企業が仕事を奪われるのだ」と強調しました。
「世界全体のGDPは成長を続けます。したがって仕事自体がなくなるわけではありません。AIを味方につけた『Super企業』や『Super Human』が、AIを拒絶して進化を止めた企業の仕事を奪っていきます。だからAIを敵とみなすのではなく、『チャンスが来たぞ』と捉えていただきたいです」
最後に孫は「ビジョン」の定義について再び語り、講演を締めくくりました。
「ビジョンとは、期限と数字を明確に描くことです。ありとあらゆるものを真剣に考え、そこから遡って『今、何をするべきか』『来年、何をすべきか』を逆算して準備を始めなければなりません。
100兆個のAIエージェント、10億台のヒューマノイドが動き回る未踏の時代において、常識は完全に変わります。15年後の姿から逆算して、今こそ準備をしていくべきだと思います」
AIによる記事まとめ
本記事では、ソフトバンク最大規模の法人イベントSoftBank World 2026における孫正義の特別講演をレポート。2040年に向けて予測される「ASI Economy」の世界を提示しました。100兆個のAIエージェントや10億台のヒューマノイドが稼働する未来、それに伴う3TWもの電力需要と年5兆ドルのインフラ投資の必要性、そして急務となるサイバー防衛などの客観的な事実を、15年後の姿から逆算する経営視点とともに語っています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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(Patching as a Service)
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