AI時代のモダナイゼーション ソフトバンク社長 宮川潤一 特別講演レポート

2026年7月16日掲載

AI時代のモダナイゼーション 宮川潤一 特別講演レポート

「激動の時代において、素早い実行こそ最大の防御になります。AI時代においては、企業システムのモダナイゼーションを進め、社会基盤全体を守り抜くことが必要です」

ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2026」が2026年7月14日に開催されました。AIによるサイバー攻撃の脅威が現実味を増す中、企業システムの在り方そのものを見直す必要性が高まっています。

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一は特別講演で、AI時代に企業が取り組むべきモダナイゼーション(従来の人間中心だったシステム開発の前提を、AI前提へ刷新すること)について語りました。

目次
SoftBank World 2026で講演する宮川潤一

歴史が示す「基盤からつくり替える」重要性

講演の冒頭、宮川は1871年の大火災から復興したアメリカ・シカゴの街を例に、基盤からつくり替える重要性を問いかけました。

「1871年、アメリカ・シカゴで発生した大火災は、街の大部分を焼き尽くす甚大な被害をもたらしました。しかしシカゴは、従来の街並みを復旧するのではなく、基盤からつくり替える道を選びます。その選択が後の高層建築や近代都市の発展を支える土台となったのです。

この歴史は、現代の企業システムにも通じます。事故や災害、サイバー攻撃が起きるたびに個別対応を重ねるだけでは、根本的な強さは手に入りません」

宮川は、グループ企業であるアスクルで発生したサイバー事故にも触れ、サイバー攻撃は業務停止や売上減少だけでなく、企業の信頼低下、さらには事業継続に直結するリスクがあると述べました。

「AIの進化により、企業を取り巻く環境はかつてないスピードで変化しています。だからこそ、システムも過去の延長線上で維持するのではなく、止まらない基盤へと刷新することが必要です。今日は、『AI時代に向けた企業システム全体のモダナイゼーション』についてお話します」

AI時代に向けた企業システム全体のモダナイゼーション

プレAGI時代からポストAGI時代へ

続いて宮川は、AIの進化が劇的に加速していることを説明しました。

「2023年のAIは、主にテキストを理解し、人の指示に応じて答えを返す存在でした。しかし2026年のAIは、テキストに加えて視覚・音声・空間・計測データなど、あらゆる情報を理解するマルチモーダルな存在へと進化しています。

また、人の指示を待つのではなく、AIが自ら考え、判断し、行動するエージェントとしての性能を持つようになりました。AIは『単なる道具』から『自律的に仕事を進める存在』へ変わりつつあります。さらに、これまでAIはデジタル(オンライン)の世界でしか動かないものでしたが、昨年にはフィジカルAIが搭載されたロボットも登場し、現実世界で動くようになってきました」

また、宮川は人類がAIの処理能力に追いつくことは難しくなっているとの見方を示しました。

「残念ながら我々人類はAIの処理能力に追いつくことはできないと感じています。これからは、AIとの共存社会にどう向き合っていくのかを考える、そんな時代に突入してきたのではないでしょうか。

これからおそらく1年以内にAGI(Artificial General Intelligence)の到来が宣言されると思います。現在をプレAGI時代とすれば、1年後にはポストAGI時代になるということです。AGIの登場によって、全く違う世界が来ると想像しています」

人類の叡智を超えた知識を常に隣に持つ時代が到来する中で、人とAIがどのように共存していくのかが問われる段階に入っているという考えを示しました。

現在をプレAGI時代とすれば、1年後にはポストAGI時代が到来

実証から実装へ。デモで見るAI活用の最前線

AIはすでに実用段階に入りはじめています。宮川は、コミュニケーション領域やコールセンターでのソフトバンクのAI活用事例をデモを交えて紹介しました。

まず、グループ企業であるSB Intuitionsが開発した国産生成AI「Sarashina(さらしな)」を用いたリアルタイム翻訳のデモが実施されました。Sarashinaは、日本語や日本文化への高い理解を特長とするAIモデルです。デモでは宮川が話した日本語が本人の声でリアルタイムに翻訳される様子が実演されました。これには、Sarashina translate(翻訳特化モデル)と、Sarashina TTS(ボイスクローン)という技術が使われており、話者の声質や抑揚を保ちながら、言葉の壁を越えてメッセージを届ける、新たなコミュニケーションの可能性が示されました。

国産生成AI「Sarashina(さらしな)」を用いたリアルタイム翻訳

続いて紹介されたのは、同じくグループ企業であるGen-AXが提供する次世代AIオペレーター「X-Ghost(クロスゴースト)」です。昨年の講演でも紹介されたX-Ghostは、生成AI技術を活用したコールセンター向けの音声対話ソリューションです。今年さらに進化し、企業ごとの業務フローや接客ノウハウを柔軟に取り込める新機能を披露しました。デモでは、業務マニュアルを取り込むだけで複雑な業務フローを統合・手順化し、現場の判断や暗黙知を対話によって反映できることを紹介。単なる問い合わせ対応の自動化にとどまらず、時代のトレンドや各社の企業文化、接客思想などに合わせて進化し続けるAIオペレーターの可能性を示しました。

次世代AIオペレーター「X-Ghost(クロスゴースト)」の新機能

Sierraとの連携で、AIコールセンターによる顧客体験変革を加速

さらに宮川は、AIコールセンター事業を世界で展開する米Sierra(シエラ)と戦略的パートナーシップを締結し、日本市場で独占販売代理店として販売開始したことを発表しました。

Sierraの特長は、構築から導入までの早さと高い応対品質です。ソフトバンクのコールセンターで実施した検証では、API接続とシナリオ確認を経て、わずか2週間で実装。短期間ながら、課題解決率 97%、ユーザー満足度 93%という高い結果が得られました。

デモでは、Wi-Fi料金に関する問い合わせをAIが受け付け、本人確認、契約内容の確認、より適したプランの提案、手続き用リンクのSMS送付までを一連の流れで実施する様子が紹介されました。音声での自然なやり取りに加え、SMS連携や顧客の利用状況に応じた瞬時の判断・提案まで行うなど、従来は人のオペレーターが判断していた領域にもAIが踏み込んでいることが示されました。

ソフトバンクのコールセンターで実施したSierra(シエラ)導入の検証結果

AIによるサイバー攻撃は、企業システムの前提を変える

AI活用事例の紹介を終えると、宮川は講演の中心テーマであるサイバーセキュリティへと話題を戻しました。

「サイバーモデルとは、一定の安全管理のもとで制限を緩和し、高いサイバー能力を実現したAIモデルのことです。古いソフトウェアや設定ミス、脆弱な認証といったシステムの穴をつなぎ合わせ、想定される攻撃の道筋まで分析できます。つまり『どこが危ないか』だけでなく、『どこから侵入され、何が狙われるのか』まで見えるようになるということです」

サイバーモデルは、『どこが危ないか』だけでなく、『どこから侵入され、何が狙われるのか』まで見つけることができる

ソフトバンクはサイバーモデルを使い、社内システムを検証。その結果、自社でソースコードを持つ700システムから1万500件の脆弱性が見つかったと説明しました。

また、2026年6月に発表したAIを活用して脆弱性の検出から修正支援までを行う新ソリューション「Patching as a Service(PaaS)」には137社から診断要望が寄せられ、すでに診断が完了した企業から、商用レベルのシステムにおいて平均280件の脆弱性が確認されたと話しました。

こうした状況を踏まえ、サイバー攻撃のリスクは企業の基幹システムだけにとどまらないことも示されました。

「AIによるサイバー攻撃の脅威は、もはや絵空事ではありません。サイバーモデルがオープン化(モデルのコードなどが公開され、第三者も利用・改変しやすくなること)されれば、攻撃のハードルは大きく下がります。専門家でなくても個人レベルで高度な攻撃を実行できるようになり、24時間365日、複数の攻撃を同時並行で進めることができます。」と宮川は述べ、企業が備えるべき脅威の前提そのものが変わりつつあることを強調しました。

AIによる攻撃の多様化・拡大

AI時代のモダナイゼーションが、企業の防御力を左右する

続けて、サイバーモデルを用いたデモを紹介しました。デモは、許可を得た上で検証用環境を用意し、一般的なECサイトを想定して実施しました。

「このECサイトにはファイアウォール(FW)が導入されていました。『ファイアウォールがあるから大丈夫』というのが今までの通説でしたが、サイバーモデルは、さまざまな角度から攻撃経路を見つけ出して防御を突破します。AIから見れば、我々が行ってきた対策は防御になっていないのかもしれません。だからこそ、これから必要になるのは『企業システム全体の総点検』と『最先端AIに対応したソースコードの入れ替え』だと思います」と説明しました。

AI時代のモダナイゼーションが、企業の防御力を左右する

そこで示されたのが、「AI時代のモダナイゼーション」です。

「AI時代のモダナイゼーションとは、従来の人間中心だったシステム開発の前提を、AI前提へ刷新すること、つまりサイバーAIに対抗できる設計、運用、コードへと変えていくことです。

従来の企業システムは、人間中心でつくられてきました。複数の人と複数のベンダーが設計する中で、入力漏れや想定外の連携ミス、コードの実装ミスなどが生まれます。人間には完璧に見えているシステムでも、AIから見ると攻撃可能な穴が残っている可能性があります」

企業システム全体のモダナイゼーションには時間がかかります。宮川は、まず緊急で取り組むべき対策としてPaaSを挙げ、「PaaSによる脆弱性診断は企業システムにとってのワクチンであり、弱点を見つけて耐性をつけていくこと」だと表現しました。ソフトバンクでは、脆弱性診断から修正提案までの自動化を進めるとともに、1,000名の支援体制を編成し国内企業 3,000社へ提供していくとしました。

PaaS全体像

「AIは大きな恩恵をもたらしますが、一方でサイバー攻撃のような怖い一面もあります。全てがつながる社会である今、自社だけを守ればいいという考えではなく、ともに協力し合って、日本の社会基盤全体を一緒に守り抜いていく必要があります。激動の時代だからこそ、素早い実行が最大の防御になります。それを1社だけではなく束で実行することが強い国づくりにつながっていくと思います。一緒にポストAGI時代に向けて、強い日本をつくっていきましょう」と宮川は講演を締めくくりました。

SoftBank World 2026で講演する宮川潤一

AIによる記事まとめ

本記事では、SoftBank World 2026における宮川潤一の特別講演をレポートしました。AI時代に企業システムを基盤から刷新する「モダナイゼーション」の必要性について語りました。宮川氏はシカゴ大火後の再建を例に、個別対処ではなく構造的な強化が重要だと説明します。講演では、AGI時代の到来、リアルタイム翻訳やAIオペレーターの実用事例、AIによるサイバー攻撃の脅威を示し、モダナイゼーションを通じて、社会基盤全体を守る重要性が語られています。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

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